絶対音感

音楽の世界に身を置く人間にとって憧れの才能でもある「絶対音感」は幼少期からの訓練によって養われるものです。その能力は人間の持つ素晴らしい才能のひとつですが、実は「絶対音感」を持つ多くの人はメリットよりも日常的にデメリットを感じることの方が多いようです。

一流音楽家を目指す上で必須の能力と考える人も少なくないのですが、実は「相対音感」があれば十分なのです。しかしながら一流になる音楽家の多くは幼少期からの英才教育によって副産物のようにその能力を身に着けてしまいます。

絶対音感を身に着ける方法やレッスンが巷でも多く紹介されていますが、実はデメリットの宝庫である「絶対音感のある日常」を紹介したいと思います。音楽家として生きていく上で重要な能力ではありますが、本気で音楽家を目指す確固たる意志がない人間には邪魔な能力とも言えます。

絶対音感とは

絶対音感
英語では「absolute pitch」と呼ばれ、その名の通り記憶の中にある音と、現在進行形で聞いている単一の音を紐づけし、比較を必要とせず絶対的に認識する能力です。音楽を聴いた時に「耳コピ」ができる事も絶対音感という能力の一端であると言えます。

音楽を生業としない一般人であっても高音と低音の差は容易に判断できると思います。そのだれもが持つ感覚をより正確に、そして明確に言い当てる事ができるようなレベルにまで昇華された技術が「絶対音感」と呼ばれる特殊技能として広く認識されているというわけです。

特殊技能とも言える「絶対音感」も当然、人によってその精度にはバラつきがあり、絶対音感を持つからと言って100%の正答率というわけにはいきません。しかし一流音楽家の持つ耳であれば実に95%近い数値で音を聞き分ける事ができる驚異の能力なのです。

絶対音感と相対音感の違い

絶対音感 ピアノ
よく「絶対音感」と「相対音感」を混同している人がいるので、違いを簡単に紹介していきたいと思います。簡単に言ってしまうと、誰もが訓練によって得られる能力と、ある種の才能が起因して生まれる能力の違いと考えてもらえればわかりやすいかと思います。

相対音感は絶対音感と違い「relative pitch」という英名からもわかる通り「単一の音」つまり比較しなくても音を判別する事ができる絶対音感と違い、相対音感はあくまで基準となる音との比較をする事で聞き分ける能力です。この能力は誰もが生まれながらに持っています。

誰もが持つ能力を訓練によって精度を高めたものを「相対音感」と呼ぶわけです。そのため能力と言うよりは技術と考えた方がしっくり来ると思います。部活や趣味レベル、もちろんプロの中にも相対音感だけで楽器を演奏している人間は数多く存在します。

絶対音感のある日常

騒音の溢れる町
世界的に名を轟かす一流音楽家にも日常は存在します。音楽に人生を捧げ、音楽の神に愛され、聴衆を魅了するレベルにまで達した人であれば「絶対音感」という特異な能力も職業病のひとつと考えれば良いかもしれません。それほど音楽家にとって最も身近で必要な能力です。

しかし幼少期よりピアノを趣味のレベルで習っていた人間が偶発的にこの能力に目覚めてしまった場合はどうでしょう。絶対音感を持つ人たちに話を伺ってみると、メリットよりも圧倒的にデメリットの方が多い事がわかります。

日常的に音に襲われる

絶対音感を持つ者は救急車のサイレンや、子供の泣き声など様々な生活音に過敏に反応する傾向にあります。一般的な耳であれば、生活音も騒音・雑音のようにわりきってしまえばいいのですが、絶対音感を持つ者にとって騒音も雑音も、等しく意味を持つ「音」として認識してしまいます。

そのため、何をしていても頭の中に音が流れ込んできてしまい日常生活に支障が出てしまう事も多いのだそうです。

絶対音感のココが辛い【口コミ】

学生時代、吹奏楽部に所属していたのですが、違うパートの人たちにも耳コピをお願いされる事が多かったです。始めはやりがいに感じていたのですが、あまりにも頼まれる事が多く、負担になる事の方が多かったです。

彼女と喧嘩している時、彼女の甲高い大声が「音」に聞こえてしまい思わず笑ってしまいました。彼女の怒りがその後更に肥大した事は言うまでもありませんね。

風邪で寝込んでいる時、雨のポタポタという音が気になってしまいまったく休めませんでした。練習中も心臓の音がうるさく感じる事もあって精神的に疲れてしまう事も多いです。

絶対音感のある人の前で歌うの恥ずかしいと言われ、カラオケに誘ってもらえなかった。たしかに音をはずす度に気になってしまうのは事実だけど、そんなの慣れてるから気付いても表情には出さないのにーー。

音楽をやっている人間なら絶対身に着けたい「絶対音感」も結構日常的には不便な事が本当に多いのです。オンオフを切り替えることが可能な能力ではないので非常に精神的ストレスになってしまうものと言えます。耳コピぐらいなら「相対音感」を鍛えればできるようになるので、音楽から遠のいた生活を送り始めると邪魔となる確率の方が高いみたいですね。

絶対音感が役立つ職業とは

イギリス王立音楽大学
はっきり言って音楽家という職業以外に「絶対音感」という能力を有効に使える職業はゼロと言っても過言ではありません。天ぷら屋が油のはじける音を聞き分けるために訓練をしていたらいつの間にか身についたなんて都市伝説もありますが特に必要はないです。

心臓外科医が微妙に変化する心音を聞き分けるために絶対音感や相対音感を持っている話なんかもありますが、手術中にクラシック音楽をかけている外科医のイメージによって生まれた都市伝説レベルの話だと思います。つまり音楽以外ではまったく役立たずという結論が間違いないでしょう。

音楽家は絶対音感を持っているの?

絶対音感
世界中の一流と呼ばれるミュージシャンや音楽家が絶対音感を必ず保有しているかと言うと答えはNOです。当然相対音感だけでやっていけない事はないですし、音楽的知識を持たずに活動しているミュージシャンは非常に多いです。

しかしクラシック音楽という分野において、超一流と呼ばれる作曲家やソリストたちは必ずと言っていいほど絶対音感を持っています。絶対音感を持たない音楽家を挙げろと言われるとまったく思い浮かばないほどです。クラシック界では絶対音感はあって当たり前。絶対音感のない音楽家はわざわざ口外しないというわけです。

まとめ

絶対音感という特別な能力についてみてきましたがいかがだったでしょう。音楽家を本気で目指す人が必ずしも必要な能力ではありませんが、やはり絶対音感があった方が有利である事は事実なようです。しかし今回はどちらかというとデメリットの方に注目した記事とさせていただきました。

素晴らしい能力であるが故に、常人では中々理解し難い苦しい日常を送っている事も多いのです。便利で素晴らしい能力だと考える人も多いですが、それに伴う苦悩もあることも同時に知っていただくことで、たくさんの我慢や努力によって生み出される音楽たちが一層素晴らしく感じてもらえたら幸いです。

 

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