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アンネ・ゾフィー・ムター

アンネ=ゾフィー・ムター、もう40年も前の話になってしまいましたが、彼女のデビューは衝撃的でした。突然、カラヤンとモーツァルトの協奏曲の録音を行い、世界的に評価され、それ以来、「天才ヴァイオリニスト」という形容詞が頭につくようになりました。

LPのジャケットは少女とカラヤンが会話してヴァイオリンを構えているところ。録音セッション中の写真と思われます。この少女がこんなに素晴らしい演奏をするのかと驚愕の思いで手に汗握ってレコードを聴いたことは今でも忘れません。

アンネ=ゾフィー・ムターは現在でも「天才」として演奏活動を続けています。その座は、デビューしてから一度たりとも誰にも譲った事はありません。少女の頃からもう完成されていた、素晴らしいヴァイオリニストだったのです。こんなヴァイオリニストを私は他に知りません。

天才ヴァイオリニスト

ムターのデビューはクラシック界に大きな旋風をもたらしました。特に最初の録音は、この歳にして完璧なヴァイオリニストであることを証明しました。このこと以外にも彼女の天才ぶりを窺い知ることができますので、それらを見ていきましょう。

ムターの初録音

やはり最初のレコードのことは書いておかねばなりません。なぜなら1978年に発売されたレコード(今はCDにリマスタリングされています)は、今でも聞かれている名盤であるからです。そう、今でも数十年と聴き継がれている名盤なのです。

モーツァルト『ヴァイオリン協奏曲第3番、第5番』の2曲のカップリング。モーツァルトのヴァイオリン協奏曲の中では最も人気のあるこの2曲。モーツァルトのヴァイオリン協奏曲の中で特にお薦めはと訊ねられたら迷わずこの1枚を推薦します。

特に第3番の第2楽章。これだけのアダージョ(ゆっくりした楽章)を誰が弾きこなせるでしょうか。14歳のムターはまるで天使が乗り移ったように見事に弾きこなしています。まさしく「天才少女」としか形容できない出来です。カラヤンがこの少女に惚れ込んだ訳が分かります。

ムターはコンクール経験なし

今どきの若き才能あふれるヴァイオリニストはコンクール優勝を目指し、それをステップとして世界に羽ばたこうとしていますが、ムターは最初から違っていました。カラヤンに13歳で見出され、それ以来カラヤンの秘蔵子として世界に認められていきます。

カラヤンに認められた事は非常に幸運な出来事で、それ以降の彼女のキャリアに大きな役割を果たしました。コンクール優勝以上のインパクトがあったでしょう。コンクール経験なしで世界的に活躍しているヴァイオリニストは他に五島みどりがいるぐらいで、ほんの一握りの天才だけです。

幸運をもたらした最大の理由は音楽的才能がその当時からすでに最高レベルだったからです。カラヤンはそれをいち早く見抜き、自分のコンサートで彼女をデビューさせました。カラヤン指揮ベルリン・フィルでデビュー出来るなんて前代未聞のことでした。

ムターのレパートリーの広さ

レパートリーは広く、ヴィヴァルディから現代音楽までを扱いますが、ムターが現代音楽を得意にしているとは思っていない人が未だに多くいると思います。でも、彼女はほとんどの時代の音楽を完璧に演奏します。過激な音楽でも、どうとでも対応する能力に非常に長けています。

現代作曲界の、ペンデレツキ85歳を祝うアルバムを作成したこともあります。現代最高のヴァイオリニストとして、新たなレパートリーの開拓にも情熱を燃やすムターはペンデレツキと非常に親しく、多くの作品を委嘱・初演しています。

『ラ・フォリア』、『協奏的二重奏』、『ヴァイオリン・ソナタ第2番』はムターの委嘱により作曲され、このアルバムに収録されている全ての作品がムターに捧げられています。素晴らしいことだと思います。作品の幅が広い事は、音楽的にも重要な要素です。

ムターの音楽

テクニックは素晴らしく冴え渡り、作曲家の書いた作品の最も大切な部分を自分から探り出し、きっちりと表現してみせる、つまり、一言で言ってしまえば「天才」なのです。もう、我々の常識を超えたところで勝負しているヴァイオリニストともいえるでしょう。

レパートリーの広さや、そのテクニックの凄さから、リリースするCDが良く売れています。これまで米グラミー賞を4度受賞。世界各国で1000万枚以上のCDを売り上げ、クラシック界では異例の販売枚数を達成しています。誰もが認める世界一のヴァイオリニストです。

まとめ

ムターに関してはもう誰も何の批判も出ない程の完成度の高い音楽家です。カラヤンとの運命的な出会いなど、デビュー以来話題には事欠かない人物でしたが、音楽的にはまるでぶれる事がなく、現在まで「ヴァイオリンの女王」として君臨してきました。

全てやりたい事をやり遂げてきた人物でもあります。今後も今のように音楽活動だけに留まらず、社会的活動も挑戦していくでしょう。そんな、ムターの生き方が好きだというファンは世界中に溢れています。今後も、その魅力を沢山振りまいて欲しいと願っています。

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