バレエ音楽は、チャイコフスキーやラヴェル、ストラヴィンスキーと言った歴史的な作曲家によって生み出されてきました。歴史的作曲家が残している楽曲だからこそ、音楽的にも非常に優秀であり、価値が高く、オーケストラ公演の演奏プログラムとしても人気があります。
チャイコフスキーのバレエ音楽は『三大バレエ音楽』とも呼ばれ、「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」の三曲は現在でも世界中に愛される作品となっています。交響曲作曲家だけではなく、バレエ音楽作曲者としても、チャイコフスキーは天才だったのです。
誰もが知るバレエ音楽は、チャイコフスキーの曲同様、高い音楽レベルを保っています。今回はバレエ好きだけでなく、クラシック音楽好きも含め、絶対に知っておかなければならない10作品を厳選しました。教養と知識を身につける上で老若男女問わず、知っていて損はありません!
バレエ音楽とは
バレエ音楽とは、バレエの伴奏を目的として作られた舞踊音楽の事です。バレエ団からの依頼に基づき、作曲家がバレエの為だけに作曲します。バレエには必ず台本があり、台本家、バレエ団、作曲家の三者が作り出す舞踊音楽の総合芸術です。
音楽性が高いバレエ音楽は、バレエ公演に留まらず、オーケストラの演奏曲目としてプログラムに乗る事があります。数十曲のバレエ音楽が、純粋に音楽鑑賞用として演奏されています。「春の祭典」などはプログラムのメインを飾る重要なレパートリーとなっています。
「白鳥の湖」
初演当時の評判はあまりぱっとせず、しばらく日の目を見ませんでしたが、1895年に復活公演され、それ以降バレエ界の重要なレパートリーとして現在に至っています。
復活後様々な演出家が振付を行ない、多くの版があります。ストーリー、登場人物、曲順など版によってかなり異なり、悲劇で終わる版もあるし、ハッピーエンドの物もあります。
ただし白鳥たちの登場する第2幕はプティパ=イワノフ版が決定的な影響力を持っており、イワノフの振付がほとんど原形のまま見られる版が多くなっています。オーケストラ演奏用として組曲もありますが、これは作曲家自信が選曲した物ではありません。
白鳥の湖のストーリー
王子ジークフリートとオデット姫の悲恋の物語です。長い話なので簡単に説明するのは大変なのですが、二人は恋仲になるのに悪魔に騙され、引き裂かれます。この仕打ちに対して死を持って魔法を解き、来世で二人は結ばれる悲恋物語です。
一方、死人が踊るのはおかしいと言うことで、生きている間に二人は結ばれるというハッピーエンド版も存在します。どちらのストーリーがいいかは好みですので、一概に良し悪しは言えません。どの演出で見るかを事前に知ってから、お出かけください。
白鳥の湖の音楽について
ピョートル・チャイコフスキーによって1876年作曲、翌年初演。チャイコフスキーの三大バレエ曲のひとつで、これが三大バレエ曲の第1作目です。ハープの短い序奏のあと、オーボエがソロで主旋律を吹く「情景」が特によく知られています。
「白鳥の湖」名盤ランキング!
ロンドン交響楽団(1976年録音)
ロンドン交響楽団も、プレヴィンと呼吸のあった演奏を聴かせてくれます。場の雰囲気を良く伝えてくれる演奏です。プレヴィンが大人のために切々と歌い上げている録音で、内容的にぎっしりと詰まっている録音です。とても品のある「白鳥の湖」です。
【2位】ワレリー・ゲルギエフ指揮
マリインスキー劇場管弦楽団(2006年録音)
素晴らしい演奏です。録音も優秀でオーケストラの響きが本当に美しいです。全体的にテンポが速く私好みです。マリインスキー劇場管弦楽団のレベルの高さと、ゲルギエフの才能の見本市のような録音です。流石は歌劇場のオーケストラ、バレエ演奏のお手本です。
【3位】サー・ゲオルグ・ショルティ指揮
シカゴ交響楽団(1988年録音)
抜粋盤。落ち着いたテンポの運びで、流麗になり過ぎず、歌い過ぎず、やや冷たい感じもありますが、素晴らしい演奏です。ソロの精巧さは流石のシカゴ交響楽団!ショルティにして可能な自在さが窺える演奏です。重低音、ゆったりとした歌いまわしなどが特徴です。
「眠れる森の美女」
「白鳥の湖」とは違って、このバレエは初演から好評を博しました。しかし、世界的な大ヒットはチャイコフスキーが亡くなった後でした。3時間以上の超大作で、現在では上演時間の関係から縮小版が用いられます。このバレエにも様々な演出があり、最後は決まっていません。
眠れる森の美女のストーリー
子どもを欲しがっている国王夫妻にようやく女の子が生まれます。ところが魔法使いにより呪いをかけられます。そして王女は十五歳の時に眠りに落ちます。
呪いは城中に波及し、そのうちに茨が繁茂して誰も入れなくなります。百年後、近くの国の王子が噂を聞きつけ城を訪れます。王女は目を覚まし、2人はその日のうちに結婚、幸せな生活を送りましたというストーリー。
眠れる森の美女の音楽について
ピョートル・チャイコフスキーにより、1889年作曲、翌年初演。チャイコフスキーの三大バレエ曲のひとつで、これが三大バレエ曲の第2作目です。チャイコフスキーの良さが全面的に前に出ていて、素晴らしい楽曲だと思います。
「眠れる森の美女」名盤ランキング!
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(1979~1981年録音)
この録音の音はとても落ち着いていて好感が持てます。抜群の安定感で安心して聞くことのできる一枚です。数あるこの楽曲のCDの中で突出した名演・名録音かと思われます。ドラティの起伏のある音楽造りと、落ち着いたコンセルトヘボウの深い響きが最高です。
【2位】アンドレ・プレヴィン指揮
ロンドン交響楽団(1974年録音)
プレヴィン・ロンドン交響楽団の安定した音楽はとても小気味良いです。ですが、録音が今一つ物足りない感じがします。指揮者とオーケストラとの蜜月の時代を感じさせる充実した演奏を繰り広げています。この演奏は絶対に聴いて欲しい一枚です。
【3位】ワレリー・ゲルギエフ指揮
キーロフ歌劇場管弦楽団(1992年録音)
キーロフ歌劇場管弦楽団は現在、マリインスキー歌劇場管弦楽団と名称が変わっています。常日頃からバレエを演奏しているオーケストラらしい演奏です。ゲルギエフも見事な演奏をしています。このバレエを代表するにふさわしい一枚となっています。
「くるみ割り人形」
2幕物のバレエで、全曲の演奏時間は約1時間25分(第1幕約45分、第2幕約40分)かかります。初演は不評でした。しかし、じわりじわりと人気が出始め、今となってはバレエ公演にはなくてはならないほどポピュラーな曲になっています。クリスマス限定ですけどね。
初演が不評だったため、演出・振付にはこれといった定番がなく、現在でも新演出・新振付が作成されているというバレエです。現在では、第1幕と第2幕を同じダンサーが踊る演出と、違うダンサーが踊る演出の二つがあり、後者の場合第2幕はプリンシパルが踊る事が特徴になっています。
くるみ割り人形のストーリー
クリスマスイブの夜、少女クララは「くるみ割り人形」をもらいますが、兄が「くるみ割り人形」を壊してしまいます。その夜、クララは人形のように小さくなり、ネズミと兵隊の戦争に巻き込まれます。
兵隊の隊長は壊れた「くるみ割り人形」でした。隊長はネズミに勝利し、その後王子の姿になり、クララをお菓子の国へ誘い、楽しい時間を過ごします。しかし、これは夢だったのです。
くるみ割り人形の音楽について
ピョートル・チャイコフスキー作曲のバレエ音楽です。1892年作曲、初演。チャイコフスキー三大バレエ音楽のひとつで、その最後の曲です。クリスマス近くになると、様々なバレエ団の公演が多くなります。チャイコフスキーらしく、子供向けの可愛らしい楽曲に溢れています。
オーケストラコンサートでは、組曲が演奏されることが多くあります。「花のワルツ」や「金平糖の踊り」などは有名な曲ですので、コマーシャルなどでも良く使われます。とにかく、チャイコフスキーはバレエ音楽に関しては、折り紙付きの大作曲家でした。
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ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(2009年録音)
全曲盤。流石ベルリン・フィルだなって音楽。この演奏では実際のバレエを踊ることは出来ないでしょう。音楽会用です。CDの帯には、音楽史上最大の衝撃的録音!この『くるみ割り人形』を聴かずして、チャイコフスキーは語れない!!とあります。何と大げさな。
【2位】ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1966年録音)
組曲盤。名盤というものの見本。流石カラヤンです。彼の手にかかるとこういう小品でも宝物のように輝いて聴こえます。少し古い録音ですが、現在でも十分楽しめます。組曲盤という事もあり、初心者はこれから聴くと良いでしょう。
【3位】シャルル・デュトワ指揮
モントリオール交響楽団(1992年録音)
全曲盤。見事な演奏です。録音も素晴らしいですし、デュトワの上手さが見事に伝わってくる演奏です。デュトワはフランス物だけではなく、こういった可愛らしい楽曲も得意らしいですね。モントリオール交響楽団もデュトワの指揮で見違える様な演奏を披露しています。
「ボレロ」
ボレロはラヴェルの晩年に作曲された楽曲です。当時、このボレロを聴いたバレエダンサーが「この曲は狂っている!」と叫んだという話です。「彼女だけがボレロを正しく理解していた」と後にラヴェルが語った有名なエピソードも残っています。
初演は1928年11月22日にパリ・オペラ座。以来、『ボレロ』は各地のオーケストラによって取り上げられる人気曲となり、こんな曲はヒットしないだろうと思っていたラヴェルは、その人気ぶりに大いに驚いたとのエピソードが残っています。
ボレロのストーリー
セビリアのとある酒場を舞台にしたバレエ音楽です。一人の踊り子が、舞台で足慣らしをしています。やがて興が乗ってきて、振りが大きくなってきます。最初はそっぽを向いていた客たちも、次第に踊りに目を向け、最後には一緒に踊り出すというストーリーです。
ボレロの音楽について
モーリス・ラヴェルにより1928年作曲、同年初演。同一のリズムが保持される中で、2種類のメロディーが繰り返されるという特徴的な構成を有しており、現代でもバレエの世界に留まらず、広く愛される音楽のひとつです。最後の1小節だけ全く違った音楽になるのも天才性が表れています。
ピアニッシモから始まり、曲の全体がに、クレッシェンドが掛かており、少しずつ音量が大きくなります。メロディは2種類だけ。これがずっと続きます。そして、最後にフォルテッシモまで大きくなり、ラストだけは転調し、急に終わります。全体で15分ぐらいの曲の長さです。
「ボレロ」名盤ランキング!
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1985年録音)
カラヤンはこういう小品が本当に上手いです。音が淡々と大きくなっていき、クライマックスに向かって盛り上がっていきます。流石帝王!と言わざるを得ない演奏です。ベルリン・フィルもこの楽曲を手の内に入れているため、名盤中の名盤です。
【2位】ピエール・ブーレーズ指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1993年録音)
カラヤン盤よりはちょっとおとなしめで綺麗な「ボレロ」です。ベルリン・フィルの弦楽器の響きの良さが良く出ています。ブーレーズの指揮をきっちりと受け止め、彼の意志通り演奏するベルリン・フィルは流石です。ブーレーズがこの曲を録音するとは意外でした。
【3位】アンドレ・クリュイタンス指揮
パリ音楽院管弦楽団(1961年録音)
オーケストラ自体は現代のオーケストラに比べて上手とは言えませんが、それ以上の魅力がある音楽です。古き良き時代の演奏で、これも敬意を表してご紹介です。私はこの楽曲のレコードを最初に買ったのがこの録音でした。個人的にも感慨深い録音です。
「ダフニスとクロエ」
この作品は、セルゲイ・ディアギレフが率いるバレエ・リュス(ロシア・バレエ団)により1912年にパリで初演されました。その後、1920年代にはパリ・オペラ座バレエの演目に加えられたバレエです。初演から100年を経過してもなおバレエのレパートリーとして生き残っています。
今日では、バレエ公演の回数は減り、オーケストラ演奏会のプログラムとして演奏される機会が多くなっています。これも、バレエとしてはB級でも、音楽だけはA級品として扱われている結果でしょう。ラヴェルは天才です。この曲を聴くたびにそう思います。
ダフニスとクロエのストーリー
クロエに恋心をいだくダフニス。ダフニスの踊りにクロエは魅せられ二人は恋に落ちます。海賊がやってきてクロエを誘拐。絶望したダフニスは、神に助けを乞います。
隙をみて逃げようとするクロエですが、なかなか逃れられません。そこへ神が現れて海賊をやっつけます。再会を喜ぶ二人。神を讃えながら、一同祝福の乱舞。これまたハッピーエンドの結末です。
ダフニスとクロエの音楽について
モーリス・ラヴェルが1911年に作曲、1912年初演。「ボレロ」と並ぶラベルの代表作のひとつです。ラヴェルの最高傑作と呼ぶ人もいます。演奏会用に第1組曲、第2組曲と二つの組曲があり、オーケストラのプログラムにも、良く取り上げられています。
第1組曲と第2組曲ですが、これは単にバレエ曲全曲を半分にしただけで、本来の意味の組曲とはちょっと違っています。この辺がラヴェルの変わっているところです。天才なのか、遊び心なのか、判断に苦しむところです。ラヴェルらしくていいところなのでしょうか。
「ダフニスとクロエ」名盤ランキング!
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン放送合唱団(1994年録音)
ニューヨーク・フィルとの旧盤も話題になりましたが、私はこのベルリン・フィル盤が名盤だと思います。録音も優秀で素晴らしい出来です!!音の色彩がどれも透明かつ濃く、しかも音楽全体というよりも、一つ一つの音が自己主張しています。
【2位】シャルル・デュトワ指揮
モントリオール交響楽団&合唱団(1980年録音)
仏ディスク大賞、モントルー国際レコード賞、レコード・アカデミー賞受賞の録音です。「フランスのオーケストラよりフランス的なオーケストラ」といわれるモントリオール管弦楽団ですから、素晴らしい出来栄えです。
【3位】アンドレ・クリュイタンス指揮
パリ音楽院管弦楽団、ルネ・デュクロ合唱団(1962年録音)
この指揮者とオーケストラにしか表現できない独特の雰囲気がありますね。フランスものはフランス人でという感じで、一番安心して聴ける演奏かもしれません。ただし、録音が古いのが難点です。このコンビの録音は、聴くべきものがたくさんあり、信頼感もあります。
「火の鳥」
ディアギレフが1909年に創設したロシアバレエ団(バレエ・リュス)の初のオリジナル作品です。作曲を当時まだ無名に近かったストラヴィンスキーに依頼し、作り出されたバレエです。1910年のパリ・オペラ座での初演はバレエ団メンバーの猛練習もあって大成功でした。
「火の鳥」は振付師でもあるフォーキン自身が踊り、バレエ・リュスとストラヴィンスキーの名はバレエ界に轟くことになりました。この事から、ディアギレフとストラヴィンスキーは有名な「ペトルーシュカ」「春の祭典」を作り上げていくことになります。
火の鳥のストーリー
火の鳥を捕えた王子が、逃がしてやる代りに魔法の羽をもらい、その後自分が魔王の庭園に入って捕えられそうになった時に魔法の羽の力で魔王を倒し、捕えられていた乙女達を全員解き放してやるという話です。めでたしめでたし・・。
火の鳥の音楽について
イーゴリ・ストラヴィンスキーにより1910年作曲、同年初演。この楽曲はロシアの作曲家リムスキー=コルサコフの息子アンドレイに献呈されました。手塚治虫の『火の鳥』はこの楽曲を聴いた(またはバレエを見た)彼がそれをヒントにして書いたものらしいです。
ストラヴィンスキーの三大バレエ曲の一つであり、その最初のものです。この楽曲も古いロシア民謡が取り上げられています。ストラヴィンスキーの拘りなのでしょう。ディアギレフとの初コンビでこの作品を世に送り出しました。
「火の鳥」名盤ランキング!
サンフランシスコ交響楽団(1998年録音)
全曲盤。ライブの感動が伝わってくる録音です。サンフランシスコ交響楽団もやっぱり上手いですね。マイケル・ティルソン・トーマスの意図を良くくみ取って演奏しています。カップリングが「春の祭典」なのでそちらも楽しめます。
【2位】ピエール・ブーレーズ指揮
シカゴ交響楽団(1992年録音)
ブーレーズは旧盤(ニューヨーク・フィル)もありますが、こちらのほうがこの指揮者らしく演奏も緻密です。この指揮者でないと味わえない音楽。本当にブーレーズは学究肌の指揮者なのですね。シカゴ交響楽団は相変わらず素晴らしいの一語に尽きます。
【3位】バーンスタイン指揮
イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団(1984年録音)
「バーンスタイン没後25年記念」の限定版。テルアヴィヴでのライヴ録音です。ライヴらしい気迫のこもった素晴らしい演奏になっています。バーンスタインはやはりライヴでこそ輝く指揮者でした。感動的な演奏です。バーンスタインファンにぴったりの録音!!
「ぺトルーシュカ」
この作品はロシアバレエ団のディアギレフが依頼し、天才ニジンスキーがステージに立ちました。全4幕からなる全体で35分程度のバレエとなっています。ニジンスキーがどう踊ったのか、バレエファンには堪らないのでしょうね。
ぺトルーシュカのストーリー
主人公の操り人形・ペトルーシュカは、主人の魔術師から虐げられ、片想いするバレリーナの人形には相手にもされず、最後には恋敵であるムーア人の人形に惨殺されるという徹底的に救いの無い、言わばロシアのバッドエンド版ピノキオというべきストーリーです。
ぺトルーシュカの音楽について
イーゴリ・ストラヴィンスキーが1910年から1911年にかけて作曲。1911年初演。ストラヴィンスキーの三大バレエ音楽のひとつで、その2番目のバレエ音楽です。ストラヴィンスキーの中でも割と落ち着いた中に才能を垣間見せるといった音楽になっています。
初演はあまりぱっとせず、批判的な評論のほうが多かったといわれています。当時の聴衆たちにはまだストラヴィンスキーの天才さが理解できなかったと思われます。ストラヴィンスキーの音楽は50年先を行っていたのです。当時の聴衆には理解しろというのが、しょせん無理でした。
「ぺトルーシュカ」名盤ランキング!
モントリオール交響楽団(1986年録音)
まさにピエロのように軽やかな演奏。オーケストラを良く歌わせ、華麗にリードしています。素晴らしい演奏だと思います。デュトワはこういった演奏が上手いですね。モントリーオール交響楽団も手堅い演奏をしています。
【2位】アンタル・ドラティ指揮
デトロイト交響楽団(1981年)
名匠ドラティが指揮した、優秀録音で定評のあるデッカ盤です。ドラマティックな「ぺトルーシュカ」となっています。この時期にデトロイト交響楽団と録音した数曲の録音は、彼にとっての最高のものが多くあります。録音も優秀で、文句ありません。
【3位】ピエール・ブーレーズ指揮
クリーヴランド管弦楽団(1991年録音)
作曲家ブーレーズらしい曖昧さのない緻密でクールな演奏です。この録音も賛否分かれる演奏です。ブーレーズはとにかく、まるで研究者のように徹底的にスコアを調べあげ、とても冷徹な位な演奏を繰り広げます。これには好き嫌いがはっきり分かれるでしょう。
「春の祭典」
第1部「大地の礼賛」、第2部「生贄の儀式」の二部構成となっています。ロシアの古い民話から発想を得て、画家ニコライ・リョーリフによって原案が書かれています。特に地名や村を特定するようなものは、一切出てきません。あくまでも、古代を設定した内容です。
春の祭典のストーリー
二つの村人たちの対立が収束し、太陽神の怒りを鎮めるための「祭典」の物語です。大地礼賛から始まり、まず集団で若い娘たちを踊らせて脱落した娘が生贄に選ばれます。その娘は息絶えるまで踊らされ、最後に生贄に供なえるという、ちょっと血生臭いストーリーです。
春の祭典の音楽について
ロシアのイーゴリ・ストラヴィンスキー作曲です。1913年作曲、初演。ストラヴィンスキー三大バレエ曲のひとつであり、その中の最後を飾る曲です。バレエ公演よりオーケストラのメインプログラムとして演奏されるほうが多い曲です。私はこの曲は歴史的な名曲だと思っています。
変拍子の連続と調性に左右されない音楽が特徴的で、過度の不安感と大きな高揚感があり、聴いていて体の中の血が煮えたぎるような思いに駆られる音楽です。初演時に聴衆の賛否が分かれ、怒号が飛び交い、大変な騒動となった事が、容易に想像できます。
スコアを見ると分かるのですが、変拍子の連続で、4/4拍子、6/8拍子、2/2拍子、2/4拍子といった具合に次から次に変化していって、聴衆に不安感を与えます。現代音楽のはしりの様な音楽ですから、この時代には、まだこの音楽は早すぎたものでした。
「春の祭典」名盤ランキング!
クリーヴランド管弦楽団(1969年録音)
大反響をもたらした名盤です。この録音では実際、バレエの公演は出来ないと思います。ブーレーズという作曲家でもある指揮者が事細かにスコアを見直し、各楽器の音を吟味して演奏した歴史的名盤です。切れ味の鋭い演奏になっています。
【2位】コリン・ディヴィス指揮
アムステルダム・コンセルトへボウ管(1976年録音)
コンセルトへボウの上手さが出ている録音です。物凄いカオスの中にいると錯覚するほどの演奏は圧巻です。デイヴィスの指揮は流石に素晴らしいですね。この曲の良さを十分に引き出しています。録音は古くなりましたが、現在でも名盤の1枚です。
【3位】ワレリー・ゲルギエフ指揮
マリインスキー劇場管弦楽団(1999年録音)
この録音が出たときも反響が大きいものでした。やっぱりロシア人たちがやるロシア物って違うのですね。賛否両論ありますが私は肯定派です。ゲルギエフの名前を知ったのも、この録音からでした。
「ロメオとジュリエット」
4幕8場、52曲もあり、2時間半を超える大作で、実際に踊るバレエ団も、労力を使うバレエ曲。シェイクスピアの悲劇「ロメオとジュリエット」に基づいたストリーですが、初演は、終幕で、ロメオが早く駆けつけ、ジュリエットが生きていることに気付きハッピーエンドだったそうです。
ハッピーエンドにした理由は、振付家は、生きている人は踊ることができるが、死者は踊れないという理由で変えたそうです。しかし、その後、振付家たちと相談し、原作に忠実にすることが決定し、この結末を悲劇的な踊りで表現することになり、現在の形になりました。
ロメオとジュリエットのストーリー
モンタギュー家とキャピュレット家は仲が悪く、抗争を繰り返していました。しかし、モンタギュー家のロメオとキャピュレット家のジュリエットは初めて会った瞬間に恋に落ちてしまいます。ロメオは悩んだ末に、魔法によって、まるで死んだかのような状態になります。
それを知らないジュリエットは、ロメオが死んだと勘違いし、悲観に暮れ、自殺します。魔法が解け、生き返ったロメオは、自殺を図ったジュリエットを発見し、己のした事を後悔します。それも、後の祭り、ロメオもジュリエットの傍らで、自分の命を絶つという救いのない悲劇です。
ロメオとジュリエットの音楽について
セルゲイ・プロコフィエフが1935年から1936年にかけて作曲。初演1938年。4幕の長いバレエで全52曲もあります。全部通すと2時間半にも及びます。プロコフィエフの独創的な音楽が展開されています。まさに、彼でなくては作曲出来ない、素晴らしい音楽の数々です。
今日、オーケストラが演奏する場合、全曲演奏はなかなかありません。彼が作った第3番まである組曲の中から、指揮者が数曲選択し、プログラムに取り入れるパターンがほとんどです。純粋に音楽として聴く場合は、組曲盤で充分かと思います。全曲はバレエ鑑賞の方でどうぞ。
「ロメオとジュリエット」名盤ランキング!
クリーヴランド管弦楽団(1973年録音)
全曲盤。ACCディスク大賞をはじめ世界各国で数々の賞に輝いた名盤。クリーヴランド管弦楽団の腕っこきの名手達の演奏が素晴らしいです。マゼールならではの成しえる音楽です。この「ロメオとジュリエット」の一つの頂点を示すような素晴らしい録音です。
【2位】リッカルド・ムーティ指揮
シカゴ交響楽団(2013年録音)
組曲盤。以前に録音したフィラデルフィア管弦楽団盤と較べると、音楽性が豊かになったような感じがあります。ライヴとは思えない完成度を誇る録音です。自身が音楽監督を務めるシカゴ交響楽団を使って、見事な演奏を繰り広げています。
【3位】クラウディオ・アバド指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1996年録音)
抜粋盤。組曲と全曲から20曲を抜粋してストーリー順に配置してあります。アバドの指揮は、概ねダイナミックで切れ味も良いものです。ベルリン・フィルという豪華な楽器を使用して、アバドはやりたことを全てやりつくしたような録音となっています。
「コッペリア」
数あるバレエの中でも各バレエ団のレパートリーの中心を占める人気作品で、ストーリー的にはコミカルなものです。この曲は今まで見てきたバレエ曲と違って、現在ではオーケストラのプログラムを飾るよりは、バレエ公演として行なわれることのほうが多いです。
この作品が作られた当時、フランスではバレエの芸術としての価値が弱まっていた時期でした。そこでフランスバレエの中心であるパリ・オペラ座で、バレエを再び盛り上げようと総力を結成して、この作品に取り組んだそうです。その甲斐あって現在では立派なレパートリーとなりました。
コッペリアのストーリー
ドイツの小説家E.T.A.ホフマンの『砂男』が基となっていて、陽気で明るい喜劇として描かれています。人形と知らずコッペリアを愛した青年が、様々な事があって実はコッペリアが人形と分かり、青年を愛していた少女とめでたく結ばれるという滑稽なストーリーです。
コッペリアの音楽について
レオ・ドリーブが1870年に作曲、同年初演。バレエ音楽ということもあって、綺麗な曲が多く、初心者でもオーケストラの魅力を楽しめる曲が多くあります。バレエ全曲が録音されたものもありますが、ハイライト版や作曲家ドリーブの「バレエ音楽集」みたいなものもあるようです。
「コッペリア」名盤ランキング!
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1961年録音)
組曲盤。この曲をこの録音で知ったので、今でもこれが1番と思っています。楽しそうなバレエの様子が浮かんできます。カラヤンの手にかかると、こういった滑稽物は、さらに面白さが出てきます。
【2位】エルネスト・アンセルメ指揮
スイスロマンド管弦楽団(1957年録音)
昔はこれとカラヤン盤ぐらいしかありませんでした。バレエ音楽とはこんなものですよ風の音楽。とにかく懐かしい録音ですが、現在でも立派にその役目を果たしています。ただ、録音の古さはいかんともしがたいです。何枚か聴いた後に聴くような録音でしょうか。
【3位】ジャン=バティスト・マリ指揮
パリ国立歌劇場管弦楽団(1977年録音)
フランス人指揮者とフランスの歌劇場のオーケストラが演奏するフランスのバレエ音楽!!日本でいえば、歌舞伎を日本人役者が歌舞伎座で披露するようなものです。やっぱり伝統と言う物が合って、その国の人物ではないと伝えられないものがあります。
まとめ
バレエ音楽の傑作や名盤を紹介してきました。クラシックやバレエ音楽は本当に素晴らしいものばかりです。外国の一流ビジネスマンやキャリアウーマンは教養として学ぶそうです。今回紹介させていただいた作品たちは超有名で、知らなければ恥ずかしい程、歴史的作品たちです。
バレエの好きな方は「ジゼル」「ドン・キホーテ」「シンデレラ」などが取り上げられていない事に疑問を持った方も多い事でしょうが、10選という事で私の好みで選ばせてもらいました。
バレエ音楽に興味を持った方は、ぜひ、オーケストラを聴きに行きましょう。もう一歩進んで、実際のバレエ公演を見るのも楽しいと思います。