
ベートーヴェンの『交響曲第9番』を聴いた事が有るでしょうか。聴いてない方でも、『第9』の合唱部分の超有名なメロディーは多くの方がご存知かと思います。この曲はベートーヴェンが作曲した最後の交響曲です。ベートーヴェンは第9を作曲した3年後に亡くなってしまいました。
世界的に愛されている交響曲第9番ですが、当のベートーヴェンは知る由もない、第9に纏わる都市伝説が存在します。クラシック音楽界に様々な影響を与え続けてきた名曲の、闇をご紹介していきたいと思います。近年までこの都市伝説は信じられていたのでぜひお楽しみください。
交響曲第9番【死の連鎖の始まり】
ベートーヴェンの死後、交響曲を9番までしか作曲する事ができずに亡くなる作曲家たちが続きました。曲を作り続けたかったベートーヴェンの怨念なのか、それともただの偶然なのか。誰にもわからない事ですが、ベートーヴェンならそんな力があってもおかしくないと感じてしまいます。
ベートヴェンと親交のあったシューベルト(1797~1829)が『交響曲第9番』を作曲した2年後に亡くなります。最新研究では交響曲番号は8番が最後とも言われています。ドヴォルザーク(1841~1904)も交響曲は第9番までで、次の交響曲のスケッチを少しだけ残して亡くなりました。
ドイツを代表するブルックナー(1824~1896)も『交響曲第9番』(未完)を書いて数年後亡くなります。この3人の偉大な作曲家の死の事実から「交響曲第9番を作ると死ぬ」という迷信が生まれました。偶然に過ぎないのか、3人とも交響曲は9番までしか書くことが出来ませんでした。
交響曲第9番【都市伝説を信じたマーラー】
交響曲を第9番まで作曲した作曲家は死ぬという、都市伝説を異常に気にした作曲家がマーラーです。彼は自分が『交響曲第9番』を書くと死んでしまうという妄想に囚われてしまいました。そして第9番がなかなか書く事ができなくなってしまうのです。
最終的にマーラーは9番目の交響曲を作るのですが、第9番と名付けずに『大地の歌』という特別なタイトルをつけて作曲家に起こる死の連鎖を回避しました。しかし、それでは終わらなかったのです。ここから起こる事実が鳥肌ものの話です。
マーラーは『大地の歌』を作り見事に死の連鎖を回避したものの、勇気を持って『交響曲第9番』を作ってしまいます。そして次の曲を作っている最中に亡くなってしまいました。あんなにも『第9』恐怖症に襲われていたマーラーも第9番が遺作となってしまったのです。
交響曲第9番【新たな犠牲者】
現代にも名を知らしめるような超有名作曲家たちが4人も9番目の交響曲を書き上げた後に亡くなってしまっています。ここまで連続して有名作曲家が死んだ事実があると、この都市伝説も信憑性を含んできてしまいます。そして駄目押しの5人目の犠牲者が出てしまうのです。
イギリスを代表する作曲家ヴォーン・ウィリアムズ(1872~1958)も『交響曲第9番』を作曲後、次の年に亡くなってしまいます。この事が『第9』迷信の決め手となってしまいました。その結果『交響曲第9番』を書くと死んでしまうという迷信は20世紀にまで引き継がれてきたのです。
ベートーヴェンというクラシック界に様々な伝説を残してきた偉人も、まさか生み出してきた楽曲だけでなく「死の連鎖」を生み出した作曲家として知られるなんて夢にも思わなかった事でしょう。しかし実際に5人の作曲家が10番目の交響曲を完成できずに亡くなっています。
交響曲第9番【呪いの終焉】
第9を恐れていたマーラーも結局は9番までしか書けなかった事で益々、この迷信を信じるようになってしまいました。ベートヴェン以降も交響曲を作曲した作曲家は沢山いましたが誰一人『第9』までは到達できませんでした。そんな中ようやくクラシック界に救世主が出現します。
救世主の出現
この呪いとも言える都市伝説をいとも簡単に撃ち破った作曲者が現れました。旧ソ連のショスタコーヴィチ(1906~1975)です。ソ連という社会主義国家の中で様々な制限を受けながらも、彼は着々と交響曲音楽家としての地位を確たるものにしていきました。
音楽家なら誰でも第9の迷信を知っていた筈ですが、ショスタコーヴィチは面白い事に交響曲第9番を25分程度の軽い交響曲にしました。皆が注目する自分の『第9』を使ってメッセージを送ったのです。大交響曲ではない、軽い交響曲にした事で“第9の呪いなんてないんだよ”と。
そしてショスタコーヴィチの最大の敵、スターリンが亡くなり、共産党の重石がはずれました。そしてあっさりと『交響曲第10番』を作曲します。皆が気にしていた不吉な迷信もこの事実によってここで終焉を迎えました。彼は交響曲を一気に第15番まで完成させたのです。
まとめ
こういう都市伝説的なものはいつの時代でも好まれるのですね。ベートーヴェンが亡くなってから1世紀以上に渡って『第9』迷信が信じられて来ましたが、20世紀に入ってようやくショスタコーヴィチがベートーヴェンの残した交響曲第9番の呪いを見事打破しました。
様々な尾ひれが付いて益々不思議なイメージを膨らませます。死に纏わる都市伝説の汚名が無くなりベートーヴェンも草葉の陰でホッとしている事でしょう。それとも案外面白がって、喜んでいるかもしれませんね。
otomamireからのお願い

otomamireは日本のクラシック音楽界を盛り上げたいと言う気持ちで運営しています。しかし、楽器の価格は非常に高価で、中々次世代の子たちが購入できるものではありません。家に眠っている楽器があれば、ぜひ未来の音楽家の為にお売り頂ければと思います。