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交響曲第7番

ベートーヴェンの『交響曲第7番』は『運命』と共にクラシック入門者には無くてはならない楽曲です。不思議とクラシックファンになってすぐに聴き始める楽曲がこの2曲と相場が決まっています。入門者にとって入りやすい楽曲なのだと思います。

もう数えきれない位何度も聴いてきた今となっては聴き方が変わってきましたし、この楽曲に対する感じ方も大きく変わりました。どの部分の演奏が大事なのか、どの楽器に注意して聴かねばならないのかという基本部分が見えてきました。リズムの躍動感に単に感動するだけでなく、ベートーヴェンの意図している事が分かってきたのだと思います。

今回は『交響曲第7番』を取り上げて解説します。かのワーグナーが「舞踏の聖化」と呼んだこの作品は、現在でも人気のある交響曲です。リズムが聴き手をワクワクさせるこの楽曲の人気の秘密を探ってみましょう。ベートーヴェンが考えに考えて作った事が分かって頂けると思います。

ベートーヴェン『交響曲第7番』概要

1811年から1812年にかけて作曲。この楽曲は始めから終わりまでリズム感に溢れている音楽です。『田園』で実験した5楽章制や楽章にタイトルを付けるなどの改革をやめて、交響曲の原点である4楽章制に戻って、新たな交響曲を作曲しました。

舞踏の聖化

ワーグナーがこの楽曲に対して「舞踏の聖化」と呼び、リストは「リズムの神化」とこの楽曲を絶賛しました。賞賛派は主にリズムについての使い方に対しての評価が高くなっています。勿論、反対派もいます。ウェーバーは「ベートーヴェンは今や精神病院行きだ」との言葉を残しています。

また、ワインガルトナーは「他のいかなる曲よりも精神的疲労を生じさせる」と語っています。同じ有名な音楽家なのに評価が分かれるのも面白い事です。100パーセント全員を納得させる楽曲なんてありえません。名曲ほど評価が分かれるものです。

人気の秘密とは

この交響曲は数年前に流行った『のだめカンタービレ』のテーマでもありました。テレビドラマでも使われるぐらい人気がある楽曲なのです。この人気の高さは、やっぱり簡単に言わせていただくなら、暗くなく調子の良い曲だからに尽きるのではないでしょうか。

誤解を恐れずにいえば、皆で宴会をやっているような気分に浸れる楽曲だから人気があるのだと思います。明るくて、リズミカルで、調子が良いとなれば、人間乗ってきますよね。「この曲聴いているとワクワクするんだよ」・・・この楽曲は正にそんな感じの楽曲なのです。

名演奏の出易い音楽

普通の指揮者が普通にやっても、楽曲自体がリズミカルになっており、メリハリが効いて聴きやすい楽曲になっています。ですから、巨匠と呼ばれるクラスの指揮者が振れば、間違いなくブラボーの嵐になるでしょう。ベートーヴェンの他の交響曲に比べて分かり易い楽曲です。

そういう意味では名演奏の出易い楽曲だと思いますが、下手な指揮者がリズムに乗り切れず、最後までそれで突っ走ったら間違いなく悲惨な状態になってしまうでしょう。その辺が本当の巨匠と言われる人たちの違いなのだと思います。ポイント毎にチェックする能力が長けているのです。

ベートーヴェン『交響曲第7番』解説

この交響曲を楽章毎にみていきます。楽章毎に特徴のある楽曲なので、聴く時もメリハリを感じます。この辺が人気のある所以の1要素かもしれません。また、終楽章の熱狂的な感じも大変心地いいです。「ああ、オーケストラの演奏を聴いた」という感じになります。

第1楽章

トゥッティで力強い和音が鳴りオーボエがメロディを奏で、作品は始まります。ベートーヴェンの他の交響曲と比べて極めて長めの序奏です。序奏が盛り上がったところで、フルートによる楽しげな第1主題が登場し、特徴的なリズムに乗って演奏されます。

続いて第2主題も同じリズム「タッタラ、タッタラ」の上で奏でられます。この基本リズム「タッタラ、タッタラ」は一貫してこの楽章で使われます。ベートーヴェン得意の作り方です。しかし、どこにもいやらしさが出ないのが天才たる所以です。

展開部に入ってもこのリズムは繰り返し使用され、調子の良い音楽が流れ続けます。基本リズム「タッタラ、タッタラ」は再現部でもコーダでも引き継がれていきます。最後は盛り上がりの中で第1楽章は終わります。基本リズムでひたすら大騒ぎと言う感じの第1楽章です。

第2楽章

緩徐楽章の雰囲気ですが、ベートーヴェンはゆっくりとした楽章としては考えてなく、「ゆっくりだが普通の緩徐楽章よりは早めに」というイメージだと思います。少し重苦しい音楽ですが、決して不快なわけではありません。不思議な感覚の緩徐楽章です。

不滅のアレグレット

ワーグナーはこの楽章をさして「不滅のアレグレット」と呼んでいます。アレグレットですから、「やや早く」という意味。やや早くと言っても軽快ではありません。重々しい雰囲気の楽章です。「タータタ、タータ」という単純なリズムと単調なメロディーです。

単純なリズムと単調なメロディーが変奏を繰り返すことによって、この曲にしかない一種独特の雰囲気を創って行きます。単調なリズムとメロディが聴いている側の感性をより刺激するのかもしれません。第2楽章を聴いて感じるのは不思議な世界観です。

あくまでもリズムありき

第2楽章は、ベートーヴェンの数多くの曲の中で、こんな重い曲はなかなか無いでしょう。リズムがテンポ良く進むのではなく、リズムが重く深く沈む感じです。こう言うと『英雄』の葬送行進曲のような感じと誤解されそうですが、全く異質の物です。

極めて簡素なリズム、旋律ですが深く神秘的に展開されていく音楽です。叙情的な美しさもあって、重々しさもあり、しかしアレグレットですからテンポ良く進行して行く、ベートーヴェンにしか書けない音楽です。簡単な音形の繰り返しですが、心に染みてきます。

第3楽章

ベートーヴェンが完成させた、古典派の特徴である第3楽章にスケルツォを置く伝統のスタイルです。スケルツォで、ユーモアのある楽章です。楽しい旋律がいっぱい出て来ます。まるで第2楽章の重たい雰囲気を振り払ってくれるようなイメージです。

先の楽章の気分を一気に吹き飛ばすような、活気あふれる楽章です。軽やかな楽しげな音楽が続いた後には、ゆったりとした「ターリラ、ターリラ、ターラリラララーラ」をはさんで、ピアノになったかと思うとフォルテで管楽器が演奏したりと自由な感じの曲です。

各楽器がまるで舞踏会の中で踊りながら会話をしているかのようです。実に面白い音楽です。非常に速く、弾力があり、底抜けに明るい楽章となっています。ユーモア溢れるだけではなく、時々雄大な調べも顔を出します。正に王道をゆったりと歩むベートーヴェンがそこにいるようです。

第4楽章

「いよっ、待ってました!」との掛け声が掛かる様な、爽快な楽章です。熱狂的なフィナーレです。最後の最後までリズミカルな音楽が続きます。まさに疾走するベートーヴェンです。この終楽章で感動を得られないような指揮者は廃業すべきですね。

熱狂的音楽

ファンファーレ風の短いリズムが2回鳴らされ、すぐに疾走感溢れるスピーディな第4楽章が始まります。このスピード感はこのまま最後まで続きます。狂喜乱舞する熱狂的なフィナーレです。「タンタカタン、タンタカタン」のリズムが最初から最後まで吹きまくるイメージです。

「タンタカタン」も前にアクセントがあるのではなく、後ろの「タカタン」にあります。カラヤンの録音なんかで聴くとポルシェのスポーツカーで疾走する感じの楽章です。やっぱりカラヤンファンとしてはそのイメージが強いものがあります。

バッカスの激情の勝利

音楽学者D.F.トーヴィが「バッカス〔ギリシア・ローマ神話の酒神〕の激情の勝利」と言い表したように、陶酔のきわみに達するフィナーレです。ベートーヴェンの同時代人のなかには、作曲者が酒乱状態で作曲したのではないかと思う者もいたようです。

繰り返すリズムの狂喜乱舞!邁進する音の塊!リズムの洪水!こんな終楽章の作り方は、第3楽章でも書きましたが、ベートーヴェンにしか書けない音楽です。とにかくこれだけのスピード感を持って、邁進する音楽の興奮は他に類を見ません。最初から最後まで延々とこのリズムが続きます。

この楽章はかなり表情に変化があり、この調子でスピード感のある熱狂的な雰囲気が延々と続きます。生で聴くと必ず盛り上がる曲です。恐らく、すべてのクラシック音楽の中でももっともエキサイティングな楽章の1つでしょう。ベートーヴェンの勝利です。

ベートーヴェン『交響曲第7番』初演

この交響曲の初演は完成から少し遅れて行なわれました。初演は好評であったと色々な記事が伝えています。指揮をしたのはベートーヴェン自身。好意的に受け止められて安心した事でしょう。それにしても、この当時の演奏会は曲目盛りだくさんで演奏する方は大変だったと思います。

好評の初演

1813年12月8日、ウィーン大学講堂で初演。この時は4曲演奏され、第7交響曲は1番最初に演奏されました。

【演奏プログラム】
1:ベートーヴェン『交響曲第7番』
2、3:メルツェルの機械式軍楽トランペットのための行進曲、2つ(ドゥセク&プライエル作曲)
4:ベートーヴェン『ウェリントンの勝利』
(※)2、3についてははっきり分かっていない。

『交響曲第7番』は好評でアンコールがあったとされています。客からの要望で第2楽章を演奏しました。しかし、この日1番人気だったのが最後の『ウェリントンの勝利』だったようです。現在ではほとんど忘れられた音楽です。時間の荒波には耐えられなかった駄作でした。

新聞社の批評

好意的に受け入れた新聞社もあるし、完全否定の新聞批評もありました。

【好評価した批評】
「ベートーヴェンのすべての交響曲の中でもきわめてメロディーに溢れた、きわめて好ましい、きわめてわかりやすいものであると思っている。」

【批判的な批評】
「この交響曲は、百から千へとまったく何の脈絡も無しに跳んでいき、嫌気がさすほど何度も繰り返され、過度の騒音によって太鼓の皮をほとんど破いてしまうような、悲劇的な、喜劇的な、真剣な、通俗的な着想の真のごたまぜである。このような狂想曲に喜びを見出すことなどいかにして可能であろうか。」

まとめ

ベートーヴェン『交響曲第7番』は音楽が芯から鳴り響き、風のように疾駆し、火を噴いています。この楽曲ほど生で聴いて欲しい物です。身体の血が沸き立つほど高揚し、興奮します。CDでもその良さは分かりますが、ぜひ、ライヴで聴いて欲しい音楽です。

ベートーヴェンの傑作の1つです。クラシック音楽入門者からヘビーな愛好者まで、感動させてくれる音楽です。どうぞこの感動に浸ってくださる事を願っています。

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