亡くなって惜しいと思う指揮者にも様々な人物がいますが、この人ほど惜しまれつつ逝った人物も珍しいのではないでしょうか。非常に気難しい人で、あちこちのオーケストラでトラブルを起こしているとの噂が絶えませんでした。また、キャンセルの話題にも事欠きませんでした。

でも、コンサートに登場する度に会場は拍手の嵐に包まれました。とにかくどの音楽も凄く速いテンポで駆け抜けていきます。まるで、龍が空からやってきて、その辺で暴れまわって帰って行ったという感じ。とても、満足感に溢れるコンサートばかりでした。

オペラだって、ほとんどが『ばらの騎士』と『メリー・ウィドウ』。『ばらの騎士』が、また、もの凄い演奏。本当に、当日コンサートに来てくれれば、人々を感動の渦に巻き込む人物でした。しかし、嫌な時は決して指揮をしない人物でした。

カルロス・クライバー略歴

1930年7月13日、ベルリン生まれ。父は世界的指揮者エーリヒ・クライバー。一家はナチスから逃れるためアルゼンチンに亡命し、カールをカルロスに改名します。1958年にミュンヘン・ゲルトナープラッツ劇場の練習指揮者になり、1954年ポツダムで指揮者デビュー。

その後、デュッセルドルフ、チューリヒ、シュトゥットガルトなどの歌劇場で活躍し、1968年バイエルン州立歌劇場の指揮者となり名声を確立しました。1973年ウィーン国立歌劇場、翌年英国ロイヤル・オペラとバイロイト音楽祭にデビュー。

その後も著名な歌劇場やオーケストラの指揮台に立ちましたが、一生涯フリーの立場を貫きました。クライバーのキャンセルについては、彼があがり症で、ミスを恐れて怖くて指揮台に立てないなどの噂がありますが、本当のところは謎です。2004年7月13日スロベニアで亡くなりました。

カルロス・クライバー人物像

本当にこんな指揮者は彼以外知りません。自分の目指す音楽が完璧に表現できないと容赦なくキャンセルをしてしまう指揮者なんて、そしてそれで許される指揮者なんて、彼だからこそ出来えた事なのでしょう。そこまでしても、彼の演奏を心待ちにしているファンが多かったのです。

  • 振りたいと思えば振る。そうでない時は振らない

普段は契約書にサインさえしない(つまり当日まで指揮台に現れるか解らない)ことで有名だったクライバーの口癖だったそうです。この言葉に振り回された関係者は多い事でしょう。そして、我々聴衆は、本番の日に彼が機嫌が良い事を願うのみでした。

カルロス・クライバーの演奏

例えばカルロス・クライバーがウィーン・フィルと録音したベートーヴェン『交響曲第7番』の演奏を聴いてみましょう。とにかくこの演奏を聴き始めるともう何もできなくなってしまいます。何が起こるかわからないから一瞬も気を抜くことができないようになります。

一音も聞き逃すことなく聴いていたいという衝動に駆られてきます。このクライバーの音楽に引き込んでいくエネルギーには圧倒され続けます。緩んだかと思うと音楽が締まるし、また逆もしかりと変幻自在な演奏をやっているのです。目が回りそうです。

クライバーの残したCD、DVDは本当に少ないけれど全てがそんな感じ。どえらい指揮者だったのです。もう少し録音を多く残してくれていればと思う指揮者でした。もう二度とこんな指揮者は現れないでしょう。本当に素晴らしい指揮者でした。

カルロス・クライバーの残した録音

気に入らないと録音セッション中でも平気でキャンセルしてしまう人物でしたので、セッションで無事にレコーディングを終えたのはドイツ・グラモフォンでの9曲の録音だけです。しかもその約半分はオペラでした。彼の性格で良くも9曲も残せたものだと感心しています。

あとはソニーから出た『ニューイヤー・コンサート』とかオルフェオの名盤ベートーヴェン『交響曲第4番』などがあるものの、ほとんどがライヴ録音で、それらを合わしても公式発表されているディスコグラフィとしては映像作品も含め21種しかありません。

中でもベートーヴェンの『第4番』『第5番』『第7番』、ブラームスの『第4番』、J・シュトラウス『こうもり』、DVDでのR.シュトラウス『ばらの騎士』はクラシックファンならば絶対にチェックしておかねばならないものです。クライバーの神髄が詰まっている録音です。

まとめ

本当にレパートリーの少ない指揮者でした。それでも、カリスマ性があって、スーパースターの指揮者でした。我々は、彼の事を生涯忘れる事は無いでしょう。彼の残してくれた数少ない録音と日本に来た時のライブの思い出で、今後も我々の心の中で輝いている指揮者の一人です。

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