人間生きていれば誰しも心が落ち込んだり塞いだりする日があるものです。しかし、そんな日でも、心の中の憂鬱な気分を吹き飛ばしてくれる素晴らしい音楽がクラシックには存在します。落ち込んだ日に私が実践しているのは、指揮の真似事をしながら元気いっぱいの音楽を聴く事です。
心が折れた日にエネルギーを貰うには、元気のある楽曲を聴くのが一番です。お酒を飲んだり、やけ食いをする事でもストレスは発散できますが、身体への影響を考えるとマイナスです。お酒で酔ってしまうと、ますます、ストレスが強くなったりもする場合があります。
音楽を聴く事は身体にも負担にならず、精神衛生上とても良い効果を生み出します。騙されたと思って、一度試してみてください。その効果に驚く事、必至です。クラシック音楽の小品ではなく、敢えて交響曲を選びました。分厚い弦楽器と激しい管楽器によって意欲が湧いて来る筈です。
第10位 ベートーヴェン『交響曲第3番』第1楽章
ベートーヴェンが己の壁を突き破った記念碑的交響曲の『英雄』。その第1楽章は雄大で大陸的な広がりを持っている音楽です。とても洒落た音楽でテンポも良く、心も程よく興奮してきます。些細な心の迷いなどどこかへ吹き飛んでしまいます。
ナイル川やアマゾン川のように大河がとうとうと流れていくような、全てが大きな音楽です。人の好みは多様ですから、この音楽を聴いて『英雄』たる雄大さを感じられるかどうか、その点が不安でもあるので第10位です。
第9位 チャイコフスキー『交響曲第5番』第4楽章
チャイコフスキー『交響曲第5番』は名曲の一つですから、普通に全曲通して聴いて欲しい音楽です。しかし、落ち込んだ時はこの音楽の第4楽章から元気を貰いましょう。音楽の盛り上げ方はチャイコフスキーの天才ぶりをいかんなく発揮しています。
音楽自体が、ごくごく速いテンポでグイグイと引っ張って行ってくれます。それに身を委ねましょう。聴いた後に爽快感が生まれてくるはずです。10位よりは分かり易い楽曲ですが、ただ単に騒々しい音楽と捉えられるかもしれないので第9位とします。
第8位 ベートーヴェン『交響曲第7番』第4楽章
リヒャルト・ワーグナーが「舞踏の権化」と呼んだ交響曲です。どの楽章もリズム感あふれ元気が出ますが、特に第4楽章はベートーヴェンの音楽が荒れ狂っています。天才の音楽とはこういう物を指すのでしょう。ファイト、いっぱつ、元気が出ます。
リズムよく音楽がたたみかけるように降り注いできます。8位のような騒々しさは感じないと思われますが、ベートーヴェンに対してアレルギーを持つ方もいますので、この楽曲は第8位とさせていただきます。
第7位 ブラームス『交響曲第1番』第4楽章
ブラームスが20年かけて作曲した名曲です。第1楽章もぐいぐいと胸に迫ってきますが、第4楽章の盛り上げ方は見事の一言に付きます。どの部分を取り上げてもブラームスの才能が湧き上がってきます。心のもやもやが晴れてきます。聴き終わると満足感でいっぱいになります。
特に第4楽章の9分ごろから始まるハ長調のテーマが始まるところは、この曲を聴くたびにいつでも涙が出そうになります。それ以降は感動的に最後まで盛り上げてくれます。如何にも交響曲的過ぎて、自分には向かないという方もあり得ますので第7位とします。
第6位 ショスタコーヴィチ『交響曲第5番』第4楽章
第4楽章は初めから終わりまで管弦楽が作り出す嵐のように激しく凄まじい音楽です。血や肉が湧き上がるような音楽で、心の落ち込みなんて無くなってしまうようです。聴いた後に疲れまで感じる様な激しさのある音楽。感動物です!!
ショスタコーヴィチがソ連の体制側に批判され、満を持して作曲した作品。途中で瞑想的な部分があり、そこからまた様々な楽器が重なり合い盛り上がりを見せ、終曲します。しかし、この楽曲は好き嫌いが激しそうです。ですので第6位としました。
第5位 マーラー『交響曲第1番』第4楽章
第4楽章は20分位の長い楽章です。激しい部分だけではなく、おとなしく優しい部分もあります。とにかく、もやもやを発散したい人は最後の4分間だけでも十分かもしれません。最後の盛り上がりは素晴らしいです。管楽器が活躍し、感動的な音楽で結ばれます。
マーラーがまだ青年の頃に書き上げた交響曲で、彼の若さが存分に発揮されている楽曲です。マーラー好きには堪らない楽曲ですが、彼の楽曲にはなじめない人も多いため、この順位としました。決してマーラーは難しくありません。そんな方には、この機会にぜひ一聴してほしいです。
第4位 ドヴォルザーク『交響曲第9番』第4楽章
第4楽章は最初から最後までドンチャラ騒ぎの音楽で、不安や迷いを連れ去って行ってしまいます。誰にも分かり易い作りの音楽で、その意味ではこの企画の中でも第4位に置くのも勿体ないかなとも思ってしまいますが、第3位からがもっと素晴らしい楽曲が並んでいます。
とても親しみやすい音楽のオンパレードで、ついつい引き込まれてしまいます。クラシックっぽくないのもあっているかなと思います。気軽に聴く事が出来る音楽です。第4位に置いたのは余りにも通俗すぎるかなと思ったためです。一度聴いたら飽きるかもしれないですね。
第3位 ベートーヴェン『交響曲第5番』第1楽章
『運命』第1楽章は冒頭から最後まで「ジャジャジャジャーン」のリズムが織りなす音楽になっています。弦楽器も管楽器も全てがこの運命動機により成り立っています。最後まで息をつめて一気に聴いてしまいます。聴いた後の心地よさはこの楽曲の完成度の高さによるものです。
ベートーヴェンと言ったら『運命』。ほとんどの方がこの冒頭の部分だけは知っていると思います。第1楽章はどの部分を取り出しても『運命』だとわかるパーツで出来上がっています。第3位の理由は聞き飽きたというコアなファンがいるかなと思うからです。
第2位 ベートーヴェン『交響曲第5番』第4楽章
第2位も第3位と同じ『運命』を持ってきました。本来はこの全曲丸ごと第2位としても良かったのですが、30分間の楽曲は長い事も考慮に入れ、楽章単位で選びました。『運命』の第4楽章はテンポよく走り回る楽曲です。この音楽を聴いたらスカッとします。
第4楽章のパワーはとにかく凄いものがあります。ベートーヴェンがこの交響曲で伝えたい事が満載で、溢れんばかりに詰まっています。ここからエネルギーを貰わない手はありません。第2位の理由は第3位と同じ事と、第1位には敵わないかなと思うためです。
第1位 チャイコフスキー『交響曲第6番』第3楽章
『悲愴』のタイトルを持つこの曲ですが、第3楽章だけは異質な音楽で、特に管楽器が派手派手な楽曲になっています。私は、落ち込んだ時はこの第3楽章を流し、指揮者の真似事をして楽しみます。スッキリします。この第3楽章に叶う物を私は知りません。
とにかく元気になる音楽ですので、是非皆さんにもお勧めしたい方法です。私はカラヤンのちょっと早いリズムのものでやっていますが、そこは好みに応じて、試してもらえばよいと思います。要は音楽から元気を貰いたいわけですから、自分に合った演奏を見つけてください。
まとめ
元気が出るクラシック音楽を10曲、ランキングの形で紹介してきました。私が最も自分に合うのが、第1位に挙げたチャイコフスキーの交響曲第6番の第3楽章でした。あなたにも自分に合った音楽があるはずです。ランキングで10曲取り上げましたから、ぜひ聞いて見て欲しいと思います。