ピアノ

第18回ショパン国際ピアノコンクール(以下、18回ショパンコンクール)は2021年10月3日から10月21日にかけて開催されました。新型コロナのため1年遅らせての開催となった第18回大会でしたが、その最終結果に様々な感想を持たれた方は多くいる事でしょう。

予備予選を勝ち抜き、本選第1次審査に残ったのは総数87名、日本人は14名でした。その中からファイナルまで進んだのは12名、そして優勝はカナダのブルース・リウとなったわけです。

2021年11月5日に第3次予選までの採点結果が発表になりましたので、それを参考に今回の18回ショパンコンクールを振り返ってみたいと思います。

(注)コンテスタントの名前は英語圏以外の方たちの呼び名を日本語でどう発音すればいいのか分からない点もあるので、敢えて翻訳していません。

予備審査

予備審査は2021年7月12日から7月23日まで行われました。2021年の予備審査応募者は総数で500名を超えたそうです。

書類審査を通り、実際に演奏までした予備審査参加者は151名となりました。その人数を審査する方もさぞや大変だった事でしょう。

そこでの上位78名と予備審査免除者9名の合計87名が第1次予選に進出となりました。それを国別で見てみましょう。

【国別の本選出場者】

第1位:中国 22
第2位:ポーランド 16
第3位:日本 14
第4位:韓国 7
第5位:イタリア 6
第6位:アルメニア 1
第6位:カナダ 1
第6位:台湾 1
第6位:キューバ 1
第6位:ラトヴィア 1
第6位:ロシア 1
第6位:タイ 1
第6位:米国 1
第6位:英国 1
第6位:ベトナム 1

中国人の本選出場者が22名とTOPです。今や中国を抜きにして音楽は語れない時代になったのですね。
中国、日本、韓国を合わせると43名にも達するよ。約半数がこの3カ国で占められるのも時代の流れなんだ。

本選審査員

カタジーナ・ポポヴァ・ジドゥロン(ポーランド)審査員長
ドミトリー・アレクセーエフ(ロシア)
サ・チェン(中国)
ダン・タイ・ソン(ベトナム)
海老彰子(日本)
フィリップ ジウシアーノ(フランス)
ネルソン・ゲルナー (アルゼンチン)
アダム・ハラシェヴィチ(ポーランド)
クシュシュトフ・ヤブウォンスキ(ポーランド)
ディーナ・ヨッフェ(ラトビア)
ケヴィン・ケナー(アメリカ)
ヤヌシュ・オレイニチャ(ポーランド)
ピオトル・パレチニ(ポーランド)
エヴァ・ポブウォツカ(ポーランド)
ジョン・リンク(アメリカ)
ヴォイチェフ・シュフィタワ(ポーランド)
アーサー・モレイラ・リマ(ブラジル)

ネルソン・フレイレ(ブラジル)は病気のためアーサー・モレイラ・リマと交代しました。また、マルタ・アルゲリッチ(アルゼンチン)も彼のそばに付き添いたいという理由で辞退しています。このため審査員は総勢17名になりました。

第1次予選

第1次予選は2021年10月3から7日にかけて行われ、ここで87名から45名に絞られました。

規定では次のステージに進むためには審査員の3分の2以上の「YES」(つまりYES率63%以上)が必要となっていますが、それでは40名に届かず、救済措置として「YES率」56%まで予選通過としたため規定より5名多い45名になったと思われます。

採点表には文字通り各審査員の採点結果が載っているわけですが、最も大切なのは「次のステージでこの演奏者の演奏を聴きたいか」の問の回答(“YES”または“NO”)ですので、今回の検討ではこの項目を中心に見ていきます。

第1次予選採点表抜粋

この表での「YES率」とは審査員の中でどれだけの人がYESと応えたかを示す指標です。17名の審査員全員がYESの場合は100%、全員がNOの場合、0%となります。

表は「YES率」、「平均得点」の降順です。

《第1次予選採点表》
順 位
氏 名
国 名
YES率
平均得点
最終順位
1
Bruce Liu
Canada
100%
23,00
1位
2
Jakub Kuszlik
Poland
100%
21,67
4位
3
Eva Gevorgyan
Russia/ Armenia
100%
21,66
ファイナル
4
J J Jun Li Bui
Canada
100%
21,49
6位
5
Piotr Alexewicz
Poland
100%
20,69
3次敗退
6
Szymon Nehring
Poland
100%
20,33
3次敗退
7
Alexander Gadjiev
Italy/ Slovenia
94%
22,66
2位
8
Hao Rao
China
94%
21,69
ファイナル
9
Aimi Kobayashi
Japan
94%
21,43
4位
10
Xuehong Chen
China
93%
20,87
2次敗退
11
Adam Kałduński
Poland
93%
20,13
2次敗退

第1次採点表の結果について

第1次予選から「YES率」が満点のコンテスタントは6名しかいませんでした。ひとりのみ「NO」があった人を含めても11名しかいません。この表が全てです。

87名のコンテスタントがいた中で、審査員全員が次のステージでも聴きたかった数としては少ない気がします。しかし、前回の2015年大会の第1次予選も同じような数でしたので、そう問題ではないのかもしれません。

第1次予選のベスト10の中でファイナルまで残ったコンテスタントは7名です。7名/12名ですから、第1次予選から審査員たちはそれなりの評価をしている事が分かります。

表にはありませんが、第20位で「YES率」が80%です。3人の審査員がNOを出した事になります。日本の反田恭平は17位の80%でした。

公式の第1次予選採点シートはこちら

第2次予選

第2次予選は10月9日から12日まで行われ、45名から23名まで絞られました。

規定では第2次予選通過者は20名となっていますが、審査員の3分の2以上は18位までである事から追加措置が取られたと思われます。

「YES率」が20位で56%、21位53%、22位50%、23位47%となっており、なぜ半数以下の23位まで予選通過させたのかはよく分かりません。

審査委員長がより多くのコンテスタントの演奏を聴くべきだとの審査員たちの意見を受け入れたとの旨の発言をしていますから、第1次予選の結果も踏まえた上で23位までの通過としたのではないでしょうか。

第2次予選採点表抜粋

第2次予選の「YES率」が76%までのコンテスタントを表にしています。

表は「YES率」、「平均得点」の降順です。

《第2次予選採点表》
順 位
氏 名
国 名
YES率
平均得点
1次予選順位
最終順位
1
Bruce Liu
Canada
100%
23,03
1位
1位
2
J J Jun Li Bui
Canada
100%
22,91
4位
6位
3
Szymon Nehring
Poland
94%
21,47
6位
3次敗退
4
Michelle Candotti
Italy
94%
20,37
26位
3次敗退
5
Kyohei Sorita
Japan
88%
21,50
17位
2位
6
Aimi Kobayashi
Japan
88%
20,47
9位
4位
7
Jakub Kuszlik
Poland
88%
21,20
2位
4位
8
Alexander Gadjiev
Italy/ Slovenia
76%
21,41
7位
2位
9
Piotr Alexewicz
Poland
76%
20,74
5位
3次敗退
10
Martin Garcia Garcia
Spain
76%
20,14
40位
3位
11
Nikolay Khozyainov
Russia
76%
20,08
24位
3次敗退
12
Eva Gevorgyan
Russia/ Armenia
76%
20,04
3位
ファイナル

第2次予選採点表の結果について

Bruce Liuが第1次予選に続き「YES率」100%、「平均得点」も2次予選までトップをキープしました。同じカナダのJ J Jun Li Buiも100%で第1次予選4位からのジャンプアップです。満票はこのふたりだけでした。

イタリアのMichelle Candottiは第1次予選26位から第4位へ。反田恭平も17位から第5位へ。スペインのMartin Garcia Garciaは何と40位から第10位へ。ロシアのNikolay Khozyainovも24位から11位へ躍進しました。

一方で順位を下げたのが、ポーランドのJakub Kuszlikで2位から7位へ、ロシア・アルメニアのEva Gevorgyanも3位から12位へと後退です。

公式の第2次予選採点シートはこちら

第3次予選

第3次予選は10月14日から16日まで行われ、23名からファイナリスト12名が選ばれました。

規定の10名より2名多くなっています。規定の通りであると9名しか選ばれないため、何処まで追加するかの判断は「YES率」50%を超えるコンテスタントまで拡大したのだと思います。

12名であれば1日4名演奏で3日間の予定の中で収まりますから。

第3次予選採点表抜粋

表は「YES率」、「平均得点」の降順です。

《第3次予選採点表》
順 位
氏 名
国 名
YES率
平均得点
2次予選順位
最終順位
1
Bruce Liu
Canada
100%
23,22
1位
1位
2
Jakub Kuszlik
Poland
93%
22,00
7位
4位
3
Alexander Gadjiev
Italy/ Slovenia
88%
21,75
8位
2位
4
Eva Gevorgyan
Russia/ Armenia
88%
21,40
12位
ファイナル
5
Aimi Kobayashi
Japan
81%
22,36
6位
4位
6
Kyohei Sorita
Japan
80%
21,57
5位
2位
7
Martin Garcia Garcia
Spain
69%
21,09
10位
3位
8
J J Jun Li Bui
Canada
67%
21,31
2位
6位
9
Kamil Pacholec
Poland
64%
20,43
16位
ファイナル
10
Leonora Armellini
Italy
56%
20,55
13位
5位
11
Hao Rao
China
56%
20,22
17位
ファイナル
12
Hyuk Lee
Korea
53%
20,20
15位
ファイナル

第3次予選採点表の結果について

Bruce Liuだけが第1次予選から全て「YES率」が100%となりました。「平均得点」も全て第1位キープです。ここまで余裕の第1位といったところでしょうか。

第2次予選で順位を下げたポーランドのJakub Kuszlikが93%で第2位に返り咲きです。イタリア・スロベニアのAlexander Gadjievも第3位に、ロシア・アルメニアのEva Gevorgyanも第4位と巻き返しました。

第9位から第12位のKamil Pacholec、Leonora Armellini、Hao Rao、Hyuk Leeの4名は第2次予選では13位以下でしたから最後に滑り込んだと言ったところでしょうか。

ここで注目すべきは日本の小林愛実の「平均得点」が22.36と第2位になった事です。『24の前奏曲』は聴いていて感動しましたから、高得点だったのも当然かと思います。23点以上を付けた審査員が10名とは圧巻です。

第3次予選で審査員が最高点を付けたコンテスタントはBruce Liuが7名、小林愛実が6名、Alexander Gadjievが5名となっており、他のコンテスタントを圧倒していました。

公式の第3次予選採点シートはこちら

カナダのBruce Liuがここまで全てのステージでオールYESです。平均得点も全て23点超えと断トツに見えます。
テクニックの凄さには舌を巻くが、ここまで彼が評価されるとは誰も予想できなかったのではないか?

ファイナル

ファイナルは10月18日から10月20日にかけて行われ、最終順位が決定されました。

ファイナルの採点表はまだ公開されていないため、どの審査員がファイナリストたちにどんな点を与えたのかは明らかではありません。

それを踏まえた上での評価です。おそらく、こうだったのではないかといった形ですが、現時点での感想を記述したいと思います。

最終順位と第3次予選までの経過

表は「YES率」、「平均得点」の降順です。

《最終順位と第3次予選までのYES率》
最終順位
氏 名
国 名
1次 YES率
2次 YES率
3次 YES率
3次得点
1
Bruce Liu
Canada
100%
100%
100%
23,22
2
Alexander Gadjiev
Italy/ Slovenia
94%
76%
88%
21,75
2
Kyohei Sorita
Japan
80%
88%
80%
21.57
3
Martin Garcia Garcia
Spain
56%
76%
69%
21.09
4
Jakub Kuszlik
Poland
100%
83%
93%
21,75
4
Aimi Kobayashi
Japan
94%
88%
81%
22,36
5
Leonora Armellini
Italy
88%
71%
56%
20.55
6
J J Jun Li Bui
Canada
100%
100%
67%
21.31
X
Eva Gevorgyan
Russia/ Armenia
94%
76%
88%
21,75
X
Kamil Pacholec
Poland
86%
67%
64%
20.43
X
Hao Rao
China
94%
65%
56%
20.22
X
Hyuk Lee
Korea
64%
69%
53%
20.20

ファイナルの結果発表

採点表から見る限り、カナダのBruce Liuは全ステージ及びファイナルで完全優勝と言ったところです。

「平均得点」は全てのステージ23点超え(満点は25点)ですから、ファイナルでも余程の変な演奏でもしない限り、彼の第1位は揺らがなかったでしょう。

第2位は2名選ばれました。ひとりはイタリア・スロベニアのAlexander Gadjievです。「YES率」の変動は少しありましたが、各ステージとも「平均得点」が安定していて、ファイナルの協奏曲も無難にこなし第2位となりました。

もうひとりは反田恭平です。各ステージとも安定して「YES率」が80%以上でしたし、ファイナルの演奏ではおそらくかなりの高得点だったでしょうから、第2位に食い込んできたと思われます。

第3位はスペインのMartin Garcia Garciaでした。「YES率」が56%、76%、69%とあまり良くありませんでしたから、大逆転の第3位入賞です。彼はコンチェルト賞を取ったぐらいなので、余程の高得点を獲得したに違いありません。

第4位も2名選ばれています。ひとりはポーランドのJakub Kuszlikです。第3次予選では第2位でしたから、ここは悔しい第4位でしょう。

第4位のもうひとりが小林愛実です。「YES率」が94%、88%、81%と安定した成績でしたので、その流れをそのまま引き継いだといったところかと思います。

女性で男性を捻じ伏せるには余程のパワーが必要ですから、この順位でも仕方がないでしょう。

第5位にはイタリアのLeonora Armelliniは徐々に順位を上げてきて見事な大逆転入賞でした。

第6位はカナダのJ J Jun Li Bui。2次予選までは順調でしたが、3次、ファイナルと少し躓いてしまい、この順位です。

  • 1位:Mr Bruce (Xiaoyu) Liu, Canada
  • 2位:Mr Alexander Gadjiev, Italy/Slovenia
  • 2位:Mr Kyohei Sorita, Japan
  • 3位:Mr Martin Garcia Garcia, Spain
  • 4位:Mr Jakub Kuszlik, Poland
  • 4位:Ms Aimi Kobayashi, Japan
  • 5位:Ms Leonora Armellini, Italy
  • 6位:Mr J J Jun Li Bui, Canada
結局Bruce Liuが優勝しました。反田恭平はファイナルの演奏が良かっただけに残念です。小林愛実もよく頑張りました。
中国や韓国勢にもいいコンテスタントがいたけれど手が届かなかったという結果だった。コンクールで勝つ事の難しさを実感している。

審査員の得点について思う事

以上見てきたように、大会は第1位から第6位までの順位が付けられ終了しました。

しかし、審査員の採点にこれだけクレームが付いた大会も珍しいかもしれません。この辺りの事情も考えてみないといけないでしょう。

審査員に対するクレーム

前回の17回大会は3人の戦いとの前評判が高く、最終的にチョ・ソンジン、シャルル・リシャール=アムラン、ケイト・リウの順に順位が付きました。

ファイナルの最初の演奏者がチョ・ソンジンで、彼の圧倒的な演奏を聴かされた聴衆はもうこの時点で優勝は決定と予想した程です。とにかく誰もが納得する結果でした。

今大会はどうだったかといえば、これと言った前評判の高い飛び抜けたようなコンテスタントは存在していませんでした。

第1次予選からこのコンテスタントを落とすのは納得できないという外野の声が大きかったのも、今大会の特徴とも言えるでしょう。

ステージが進むにつれその声が大きくなっていったのも今までの大会には見られなかった事かもしれません。

そして、今大会の採点表が開示され、これがまた火に油を注ぐような結果になりました。

最初からファイナリストはこのメンバーでと決まっていたと言うような審査員たちの陰謀説まで出てくる始末で、ここまで審査員を非難する大会も珍しいです。

勿論、私は各審査員は忠実に自身の耳で判断していたと信じていますし、かつてのチャイコフスキー・コンクールのような不正はなかったと信じています。

今大会の結果について思う事

今大会のファイナルの結果発表は予定時間から2時間半も遅くなりました。この事で多くの方が思ったのは第1位を出すかどうかで審査員たちが揉めているのではないかという事です。

前回の17回大会よりコンテスタントのレベルが低かったという意見の記事もありました。どんぐりの背比べで、別の意味で大変な大会ではなかったのかと。

以前2大会連続で第1位を出さない時がありました。これを受けて大会規定には書かれていませんが、なるべく第1位を出した方が良いのではないかという機運が審査員の間にできた事は否定できません。

ショパンの意図した音楽を何処まで再現しているか、ショパンらしい演奏なのか、革新的な表現を生み出しているか等、審査する項目は多い事でしょう。

それがどのレベルに達していれば第1位なのか、そして今回のファイナリストの結果はそれを満たしているのか、この点が問われているわけです。

カナダのBruce Liuは第3次予選まで独走状態でした。しかし、彼のファイナルでの演奏を聴いて、これぞ最高のパフォーマンスでまさに優勝させるべきコンテスタントだと思った方は少なかったのではないでしょうか。

正当的なショパン弾きといえるコンテスタントがファイナルまでに残らなかった点も指摘されています。ここに審査員たちに対しての疑惑が囁かれる火種があるのです。

ホールで聴いていた聴衆たちにはどう聴こえていたのでしょうか。音響的に問題があるホールと言われていますから、我々がWEB上で見聞きした音楽と会場で聴いていた審査員を始めとする聴衆たちとのギャップがこの問題をより複雑にしているようです。

正当な結果を生み出せたのか

コンクールという魔物自体が水物と考えるしかなさそうです。審査員はコンテスタントのその時の演奏のみで審査せねばなりません。

ショパンの名を冠しているコンクールである限り、彼の音楽を最も忠実に表現している、若しくは彼が望んでいたであろう音楽に沿う演奏をしているコンテスタントに高い点数を付けるべきです。

そのためにポーランド人の審査員が8名も入っているものと理解しています。

審査員たちは個々の判断に従い、その場その場で思いの点数を付けたはずです。その結果に置いて各ステージでコンテスタントたちは振り落とされ、最終的にこの12名が残っただけです。

例として日本の牛田智大を取り上げます。彼はTwitterに書いていましたが、弾き始めて響きの悪いホールと思ったので意識してバス側の音量を上げようとしたようです。

  • 「響かないホールで無理やり音量を出すために、バスや最も重要な音を少し遅らせることで倍音の効果でピアノが鳴っているように聞こえさせることができるのですが、これをホールの音響を探るうちに無意識に多用してしまっていたようです。」
  • 「左右のズレは20世紀の典型的なテクニックではありますが現代ではあまりふさわしいとはいえません。」
  • 「計算違いが重なり想定していたものとはかなり違った音楽を提示する形になってしまいました」

本人も悔しいとは思いますが、予想もしなかった事が本番で起き、その対処について誤ったと認めています。審査員が気が付かないはずがありません。とにかくコンクールはそんな差を争うシビアな場なのだと思います。

ミスタッチのひとつやふたつ、審査員は気にしません。その演奏がショパンに相応しいかどうかを聴いているのです。ここは冷静になってみましょう。

審査員たちは正当な仕事をやり遂げたと思わざるを得ません。限られた時間の中で、どれだけのパフォーマンスをしたかを自分の判断基準で採点したのだと思います。あとは審査員の個性の問題だけです。

己の思うショパン像は人によって違います。大方は同じベクトルでしょうが、皆が100%同じではないのです。個人差が生まれて然るべきと思います。

そういった意味で私は今回のショパンコンクールの結果を受け入れるべきだと思うひとりです。アルゲリッチとフレイレが辞退せず審査員であったなら別の結果が出ていたのかもしれません。そんな事も含めてのコンクールなのです。

まとめ

第18回ショパンコンクールの採点表を基に書くステージごとの結果をみてきました。

日本人悲願の優勝は今回もなりませんでしたが、ふたりの入賞者を出した事は喜ばしい限りです。

審査員に対する不満が大きかった今回の結果でしたが、コンクールとはコンテスタントの粗探しと言う面もあり、評価に対しては様々な意見があって当然と思います。

毎回審査員が違いますし、同じ審査員でも年を経る上で音楽性が変わる事もあるでしょう。普遍的な評価を求めるならAIのような機械に任せるのもひとつのやり方と思います。

しかし、機械では評価できない芸術性があるからこそ、人による判断に頼っているのです。コンクールは総合評価によるもの。コンテスタントにも得意不得意の楽曲があります。

中には無情な結果と映る事もあるでしょう。わずか4回の演奏で結果を出さないといけないのですから、コンクールは水物なのです。 

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