ショパンの聴いておきたいピアノ曲10選【ピアノの詩人が書いた名曲たち】

ショパンは「ピアノの詩人」と呼ばれ、作曲したほとんどがピアノ作品です。ピアノの詩人と呼ばれただけに、ピアノから様々な音楽を引き出しました。

作曲家としての作品数はさほど多くありませんが、名曲が多い作曲家です。ショパンは非常に繊細な心の持ち主でした。それが分かる作品が多いのも彼の特徴です。

そんなショパンの作品から、聴いておかねばならない10作品を選びました。10作に絞るのは大変難しい事ですが、ショパンを知る上で大事な作品を選んだつもりです。

ショパンは「ピアノの詩人」と称されました。その名の通り抒情性豊かな作品が多くあります。
ショパンはリストと同時期に活躍した作曲家。「ピアノの魔術師」と「ピアノの詩人」が腕を競い合っていたなんて凄い事だね。

『練習曲』作品10から「革命」

「革命のエチュード」の方が通りが良いかもしれませんね。作品10の『練習曲集』の12曲ある中で12番目の曲です。ショパンには作品25の『練習曲集』もあります。こちらも「木枯らし」などが有名です。

作品10の練習曲集の中には「別れの曲」や「黒鍵」など、他にも有名な曲が入っています。「革命」の名は旅の途中で、祖国の蜂起の失敗を聞いて付けられたといわれていましたが、これは後の作り話です。

「革命」というタイトルはリストが名付けました。リストほどのピアニストでも初見で弾けなかったために、ピアノの革命的曲だという事で名付けたようです。練習曲ですからそれなりに難易度は高くなっています。

『ワルツ第1番』「華麗なる大円舞曲」

ショパンが作曲した最初のワルツです。ショパンのワルツは19番までありますが、生前出版されたものは第8番まででした。また、第15番以降は習作的要素があり、出来栄えが前の14曲と違っています。

評論には定評のあるシューマンに言わせると、ショパンのワルツは「踊るにしても相手の婦人の半分は伯爵夫人でなければならない」と語っています。つまりは華やかな上流階級の社交界に合っている音楽だといいたかったのだと思います。

シューマンは音楽評論家時代にショパンを新聞で紹介し、「諸君、脱帽したまえ、天才だ」と評しました。その天才が作るワルツは踊りのためではなく、ワルツのリズムにあわせて抒情的なイメージを伝えるものでした。

『幻想即興曲』

ショパンの4曲ある即興曲のうち最初に作曲された作品です。『幻想即興曲』と名付けられたのは、ショパンの死後の事で、ショパンの友人が出版に際して、頭に「幻想」を冠しました。この作品のイメージによく合う命名だと思っています。

ショパンは自分の死後は燃やして欲しいと友人に頼んだ作品でしたが、友人は「幻想」という名前まで付けて出版してしまいます。こんなに素晴らしい作品を処分するように依頼した理由は分かっていません。

この作品はメロディの美しさが魅力的な事が特徴です。ショパンならではのものといって良いでしょう。繊細な心の持ち主のショパンだからこそ生み出せたメロディなのだと思います。

『24の前奏曲』から第15番「雨だれ」

バッハの『平均律クラヴィーア曲集』24曲に敬意を表して作られた作品です。24曲全てが違う調性で書かれています。24曲何れも小品であり、最長のものでも5分ほどです。

最近は個別に曲を取り上げるよりも、『24の前奏曲』として全曲を演奏する機会も増えました。全曲演奏しても45分ぐらいでしょうか。

「雨だれ」はこの曲の中で最も有名な楽曲です。ジョルジュ・サンドと暮らしたマジョルカ島で作曲されました。「雨だれ」はショパンが付けた副題ではありませんが、ショパンが雨をイメージして作った事は間違いないようです。

『ノクターン第2番』

ショパンは全部で21曲ものノクターン(夜想曲)を書きましたが、その中で最も有名なのがこの第2番です。この楽曲はリストが愛したピアノ、プレイエル社の社長夫人、マリー・プレイエルに献呈されました。

マリーは、ベルリオーズの元婚約者であり、プレイエル夫人となってからはリストと不倫関係に落ちてしまいます。マリーは社交界の華でしたから、このスキャンダルはたちまち広まりました。人の噂話ほど早く伝わるものです。

『ノクターン第2番』はちょっと物憂げな感じがする、瞑想的な作品です。メロディが素敵なので、他の楽器に編曲されて演奏される機会も多くあります。

『ピアノ・ソナタ第2番』「葬送」

4楽章からなるピアノ・ソナタで、第3楽章が有名な葬送行進曲です。暗い絶望と激しさが全曲を支配しており、ショパンの死への恐怖感をそのまま音楽にしたような感じがします。

シューマンは楽章間の統一に難があるとの指摘もしていますが、ショパンの独創性が至る所に顔を出しており、むしろ名曲の部類に入れられる作品ではないかと思うのです。

ショパンの作ったピアノ・ソナタは3曲ありますが、2番、3番はショパンの作品の中でも一際完成度の高い名曲かと思います。

『ポロネーズ第7番』「幻想」

ショパンが作曲した最後のポロネーズとなりました。ショパン晩年の名曲です。リストは「この痛ましい幻影は芸術の枠を超えている」と評しました。ショパンが壊れたとも思ったのでしょうか。

全音ピースによれば難易度は最高のF(上級上)であり、技巧的にも難しくなっています。技巧だけでなく、聴いても良く分からないという難しさも大きいです。何を表現したいのだろうと悩んでしまいます。

それは、それまでのショパンの傾向と違っているからです。ショパンは変わろうとしたけれども、残された時間が足りなかったと考えると納得がいきます。ショパンの死は早すぎました。

『バラード第1番』

ショパン初期の代表作です。ショパンはバラードを4曲作曲しました。その中で最も人気があるのが第1番です。フィギュアスケートの羽生結弦選手が、平昌オリンピックで2連覇を成し遂げた時のショートプログラムの曲だった事もあり有名になりました。

バラードの特徴は物語のある音楽という点です。勿論、ショパンは物語に沿って音楽を作るような事はしませんでしたが、そこで感じた抒情性などを上手くこの曲の中に取り入れたのではないでしょうか。

第1主題の憂いに満ちた音楽、第2主題の悩み事が解決してホッとしたような気分が特徴的です。そしてこの第2主題が後半に見せ場を作ります。この第1番が人気があるのは後半部分の盛り上がりのためだと思います。

『ピアノ・ソナタ第3番』

『ピアノ・ソナタ第2番』も名曲でしたが、この『ピアノ・ソナタ第3番』はそれを上回る完成度、芸術性を持っています。この作品はショパンの全作品中でも最高傑作のひとつといえるでしょう。

体調を壊していたショパンが精魂込めて作り上げた作品です。霊感を感じるというピアニストもいるほどの作品で、これは外せないものとなっています。

勿論、難易度は最高難度です。非常に美しい楽想に満ちており、ショパンの抒情性がより表れています。第2番に比べると、全4楽章の統一感があり、曲想、楽想にも優れ、円熟期の傑作です。

『ワルツ第7番』

生前に出版された最後の作品のひとつです。華やかでありながらどこか憂いに満ちています。有名な曲ですから、どこかで聴いた事のある人は多いでしょう。

ワルツと名付けてはいますが、この作品で踊る事はできません。ショパンはそのために作ったのではないのですから。

難易度はショパンにしては易しい方ですが、ただ弾ければいいわけではないのがショパンの難しいところです。人に聴かせるレベルとなると非常に難しい作品です。

ショパンの数あるピアノ曲の中で聴いておいて欲しい10曲を挙げてきました。ここから先は各々レパートリーを広げて下さい。
ショパンの2つの協奏曲も聴いておかねばならない作品だな。ワルツ、ノクターン、ポロネーズなども多くあるので、ぜひ聴いて欲しいと思う。

まとめ

同じ時期に生きたリストは超絶技巧に拘りましたが、ショパンは抒情性や感情に訴えかける音楽に心を砕きました。お互いを意識していたでしょうが、目指すものが違っていました。

難易度で見ると『ピアノ・ソナタ第3番』を頂点とし、『革命のエチュード』『幻想ポロネーズ』『バラード第1番』などが続くのでしょうか。リストに負けず劣らず難しい作品が並びます。

ここに挙げた10作品でショパンの豊かな情感を感じてもらえると嬉しいです。そして、ここから次第に聴いていく作品を増やしていってほしいと思います。

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