パリ菅首席指揮者空席

パリ管弦楽団の首席指揮者は現時点で空席なので、どうしたのかなと調べてみると、ダニエル・ハーディングが契約の延長をせずに辞任したと分かりました。そこには大変面白い事実があったのです。何と彼はパイロットになるために辞めたのでした。

カラヤンが小型ジェット飛行機のライセンスを持っていて移動に使っていたという話は有名ですが、まさか商用航空会社の本物のパイロットになる指揮者が出て来たとは本当に驚きです。そのために、ハーディングは2019年でパリ管弦楽団の首席指揮者の座を去ったのでした。

ハーディングが指揮者として築いてきた道を捨ててまで、何故パイロットに転身したのか、とても気になります。全く音楽界で売れない人物なら話は分かりますが、人から羨まれるようなポストに就いている指揮者がそれを捨ててまでの転身とは何があったのかを探ってみたいと思います。

指揮者がパイロットに転身ですって!こんな事もあるのですね!
音楽界初めての出来事で、関係者はみんな驚いているよ。思い切ったね。

ダニエル・ハーディング概略

ダニエル・ハーディング
1975年8月31日、イギリス、オックスフォード生まれ。1994年、サイモン・ラトルのアシスタントとして指揮者のキャリアをスタートします。1994年にバーミンガム市交響楽団を指揮してデビュー。クラウディオ・アバドに認められ、アシスタントになります。

1996年、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮。同年には、BBCプロムスにも最年少指揮者としてデビューしました。デビュー後は主要オーケストラの音楽監督を歴任、2019年まではパリ管弦楽団の首席指揮者を務めていました。

現在、スウェーデン放送交響楽団の音楽監督、マーラー・チェンバー・オーケストラからは終身桂冠指揮者の称号を与えられています。ベルリン・フィル、ウィーン・フィルなど主要オーケストラに客演する一方、オペラにもその才能は進出、好評を得ています。

航空機操縦免許取得


ハーディングは子供の頃から飛行機が大好きで、航空機操縦は夢だったといいます。40歳近くになって自分を見つめた時に、その夢を諦めたくなかったのでした。指揮者としての忙しい仕事の間に時間を取って、エール・フランスのパイロット養成学校に入学します。

4年間の厳しい訓練の末、2018年8月、養成学校を卒業し、夢だった商業用航空機の操縦免許をついに取得しました。免許の機種はエアバスのA320だそうです。エール・フランスにも無事採用され、まずは副操縦士から出発します。

仕事の間に養成学校に入り、操縦免許を取ったなんて素晴らしいですね!
人気指揮者だったのに良く免許を取れたと思うよ。本当に凄い事だ。

なぜ指揮者からパイロットになったのか

これが最大の疑問です。子供の頃からの夢は分かります。飛行機の操縦がしたかったなら、カラヤンのようにプライベートジェットのライセンスを取って、操縦するという手もあります。しかし、ハーディングが選んだのは商用航空会社のパイロットだったのです。

年齢的問題

一番の理由は年齢の問題だと思います。パイロットを選択した時の40歳という年齢は、ぎりぎりの年齢です。免許を取得したのが44歳、副操縦士から機長になるまでにはそれなりの期間を必要とします。逆算して行けば最後の分岐点だったのです。

ハーディングはこう言っています。「パイロットの定年は65歳。指揮は95歳までできる。あと20年は多様な飛行機の操縦桿を握りたい」。彼がパリ管弦楽団を辞める時に「1年間サバティカルを取る」と言っていました。

これは、長期休暇を意味しますから、ゆくゆくは指揮者として戻ってくるという含みを持たせています。1年というのは延長されるだろうとメディアは伝えていますが、せっかくパイロットになれたのですから1年で終われるわけがありません。

多忙さの問題

ハーディングは若手の人気指揮者でしたから、1年の7割方は旅がらすの日々です。本当に休暇といえるようなものは、1年でわずかなものです。40歳を前にして本当に自分はこのままでいいのだろうかと考えたはずです。

音楽家の私生活は音楽に明け暮れる毎日ですから、それが正しい道なのかという疑問が湧いたのだと思われます。お金も名誉も手に入れたけれども、違う道があるのではないかと。超の付くような多忙さから解放されて、自分の夢を叶えてもいいのではないかと思ったのでしょう。

指揮者としてのキャリアよりも子供の頃からの夢を優先したのですね。
年齢的にこの選択が出来るタイムリミットだったし、超多忙な音楽生活を変えたいという思いもあったのだろう。

ハーディングの今後は

2020年から副操縦士となりましたが、新コロナ問題で世界の航空会社はほとんど運航していませんでした。各国とも次第に国内線が運航し始めましたが、ハーディングも、デビューしたのかどうかは分かっていません。

いずれにしても、暫くはパイロットとして活躍する事でしょう。それが5年なのか10年なのかは誰にもわかりません。指揮者からパイロットへの華麗な転身をした人物は彼が初めてです。その道での成功を祈るだけです。

指揮者としての復帰は、彼が「サバティカル」と言っているだけに、十分あり得ます。しかし、それがいつになるのかは本人でさえ分かっていない事でしょう。有能な指揮者が1人抜けてしまったのですから、音楽界としては大いなる損失です。

まとめ

指揮者からパイロットの道に進む人物が現れるとは思いもしませんでした。自分のやりたい事をしただけだとハーディングは言う事でしょう。当分指揮者としての復帰は無いものと思っています。子供からの夢を叶えた事は素晴らしいですね。

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