フジコ・ヘミングというピアニストが現在でも大人気です。1999年、NHKのドキュメンタリー『フジコ〜あるピアニストの軌跡〜』で取り上げられ、一躍時の人となりました。その後、発売されたデビューCD『奇蹟のカンパネラ』は、発売後3ヶ月で30万枚のセールスを記録したほどです。

このCDは日本のクラシック界では異例の大ヒットとなり、第14回日本ゴールドディスク大賞の「クラシック・アルバム・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。60代後半という遅咲きのデビューながらも、20年にわたり、日本はもちろん、世界各地で精力的にリサイタルを行ってきたのです。

80歳を過ぎた現在でも、年間60回の公演をこなす超売れっ子ピアニスト。高齢ゆえ手押し車で舞台に現れるフジコ・ヘミングには、会場から大きな喝采が送られます。気取る事のない人柄の為、それが少しも恥ずかしいとは思っていません。そんなフジコ・ヘミングを紹介します。

フジコ・ヘミング略歴

ピアノを弾くフジコヘミング
本名、ゲオルギー・ヘミング・イングリット・フジコは、スウェーデン人で画家の父、日本人でピアニストの母のもとに生まれました。生年月日は本人が公表していません。

6歳からピアノを母に鍛え上げられ、世界的なピアニストのレオニード・クロイツァーに師事。東京藝術大学への進学、コンクールの受賞など、ピアニストの道を順風満帆に進んでいました。

35歳の時に、フジコ・ヘミングは世界的指揮者、レナード・バーンスタインに認められ、栄光を掴みかけたものの、リサイタルの直前に風邪が原因で聴力を失うという、信じられない悲劇に見舞われます。チャンスを逃し、人生のどん底をさまよい続けました。

病魔に見舞われながらも、治療を続け、決してピアノへの愛情は変わりませんでした。そして、1999年2月、ついに奇蹟が起こります。NHKのドキュメンタリー番組で、その波瀾の半生と魂の演奏が取り上げられ、フジコ・ヘミングの名は一夜にして全国に知られるようになったのです。

現在でも聴力は40%ぐらいしか回復していないようですが、リサイタルやオーケストラとの協演などを続けています。「魂のピアニスト」と呼ばれ、聴衆から愛され続けるピアニストです。素の自分を見せて、飾らない人柄も多くの人に支持される理由です。

フジコ・ヘミングの魅力

ピアノを弾くフジコヘミング
どうして、フジコ・ヘミングはこれだけ多くのファンを獲得する事ができたのでしょうか。勿論、ドキュメンタリー番組の効果は大きかったと思います。しかし、彼女のピアノに人を惹きつける魅力があったのも大きな要因の一つであると思います。

とにかく、「音が綺麗な事」は凄いと思います。一つ一つの音が良く伸びて、人々に語りかけてくるようです。

また、音楽の間の取り方が絶妙な事も彼女の魅力でしょう。メロディの歌い始め、歌い終わりでふっと緩める、そのやり方が彼女にしか出来ないものとなっているのです。

フジコ・ヘミングは現代のピアニストのようにヴィルトゥオーゾではありません。一時代遅れたようなピアニストともいえるかもしれません。テンポの遅さ、ミスタッチなど彼女は一切気にしません。自分のやりたいように演奏しています。この点も受け入れられた要因の一つです。

フジコ・ヘミングの言葉

ピアノを弾くフジコヘミング

「誰が弾いても同じなら、私が弾く意味なんてない。だから私は私だけの音を大切にしているの」
「ぶっこわれそうなカンパネラがあったっていい。魂が燃え尽きるほどのノクターンがあったっていい。機械じゃないんだから」
「この歳ですが、心は16歳の頃のままなの」

誰から何と言われようが、自分のやり方でやり通すーーーそんな意思が出ている言葉だと思います。事実、一部の音楽評論家からは批判されている部分も多くありますが、彼女はまったく気にしていません。ミスタッチや演奏の停止及び弾き直しなど意に関していません。

最近のフジコ・ヘミング

ピアノ協奏曲
毎日ピアノを4時間欠かさず練習するフジコ・ヘミングが、今一番気にしているのが健康問題です。もう80歳を超えた「おばあさん」ですからね。

現役で演奏している事自体が驚きです。どのコンサートもチケット完売ですから、その点も驚かせてくれます。

「腰が曲がっちゃって、今では手押し車で歩かなくてはならないの。医者からは体操をするようにと言われている。でも、座ってピアノを弾いてばかりいるからますます悪化しちゃって。それが悲しいわ」

そう語っていますが、手押し車で颯爽とステージに出ていく姿は格好良くもあります。

まとめ

自分の悲運を物ともせず、今出来る事を最大限行っているフジコ・ヘミングはとても魅力的な方です。そういう人柄もあって、人気が衰えないのでしょう。

来年の手帳もスケジュールがいっぱいで真っ黒だそうです。いつまでも元気でステージに表れる事を切に願っています。

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