
ドイツには全国で歌劇場も含め約130団体ものオーケストラが存在します。ドイツの総人口は約8300万人ですから、その割合がいかに多いかがわかります。
日本の場合、日本オーケストラ連盟に加盟している正会員・準会員を含めて34団体ですから、クラシック音楽の提供数が違うのも当たり前です。
文化の違いと言ってしまえばそれまでですが、ドイツ人にとってクラシック音楽は日常に溶け込んでいることがこの数字だけでも明らかです。
これから、ドイツのオーケストラ数や団員数による格付け、給料規定、公的支援などがどれだけ入っているかなど、オーケストラに関係する情報を見ていきたいと思います。
ドイツのオーケストラ数
ドイツでも、日本の「日本オーケストラ連盟」のようなものがあります。「ドイツオーケストラ協会」(略してDOV)という組織で、日本と同様に様々な統計情報も明らかにしています。
2019年の統計を見るとオーケストラの加盟団体数は129団体となっています。この数だけで圧倒されますが、これでもドイツ統一時代からみると39団体減りました。
2020年は新型コロナが流行して演奏会が全く出来なかったので、もしかすると消滅するオーケストラもあるかもしれません。それにしても世界一なのは間違いなさそうです。
オーケストラの給料は規定がある
ドイツのオーケストラは組合と雇用者側で団体協約(略してTVK)を結び、給料や労働環境が規定されています。これは大きく分けると放送局に属するオーケストラとそれ以外になります。
放送局に属するオーケストラの団員は放送局に属するため特別な団体協約になっています。それは演奏会以外に放送局のテレビ番組やラジオ番組での仕事があるためです。
それ以外のオーケストラはオーケストラの規模により4つに分類されます。
A+(TVK A/Fと表記されることもある)は団員数130人以上。Aは団員数99人以上130人未満、B+は78人以上99人未満、Bは66人以上78人未満、Cは56人以上66人未満、Dはそれ以外の団体です。
TVKには団員数以外にも給料や特別手当など様々な事が規定されています。A+の団体の方がAよりも給料などの待遇は優れています。いわば格付けがなされているのです。
ベルリンフィルなどの名の知れている有名オーケストラはTVKをさらに発展させた独自契約になっていて、待遇はドイツでも別格のようです。
団員数が多いオーケストラ
団員数の多いオーケストラの第1位はライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の185人、2番目がSWR交響楽団の167人となっています。
第3位以下は、シュターツカペレ・ドレスデン159人、バイエルン国立歌劇場オーケストラ144人、シュターツカペレ・ベルリン136人と続きます。ドイツでは団員数100人を超えるオーケストラがなんと30団体もあります。
ドイツのオーケストラの団員数が多いのは、多くのオーケストラがオペラも演奏するので公演数がとても多いからです。
オペラは基本的に日替わりで年間300公演程度になります。ですから、オペラは公演毎に演奏者が入れ替わるために、多くの団員が必要となるのです。
ドイツの公的資金と団員数
2018年の統計によると、州や市などの公的支援を受けているオーケストラは全部で110団体、公的支援を受けている室内オーケストラが8団体、放送局所属のオーケストラが11団体と合計129団体あります。
2007年の統計になりますが、公的資金の総計は約21億ユーロ、現在のレートで約2兆5千億円です。それから10年以上経った今は人件費などの増加に伴いもっと多くなっているはずです。オーケストラにおける収入の内、公的資金の割合は8割に上っています。
公的資金額も日本と比べると破格の感があります。どの国も財政困難の中、ドイツの文化に対する考えはほかの国とは違うものがあるようです。
団員数は公的オーケストラが約8500人、室内オーケストラが約140人、放送オーケストラが約1100人で合計約9600人となります。
日本の場合、日本オーケストラ連盟正会員、準会員合わせても約2100人です。4.5倍の差があります。人口比で考えたらもっと開きがあるでしょう。
集客状況とチケット
ベルリン・フィルなどの超人気オーケストラは別として、オーケストラの平均入場者の割合は全体で70%を超える程度です。これは上限を8割程度に設定しているためと思われます。当日券の人たちの事を考えているのでしょうか。
しかし、観客数は年々少しずつ減少している事も事実としてあるようです。音楽関係者は頭を悩ませるところですね。
チケット代にも補助金が入っています。高すぎて地元の人がコンサートに行けない事を防ぐためだそうです。何から何まで手厚く保護されているのですね。羨ましいです。
ドイツ人はオペラ好き
世界でオペラが一番盛んな国は、意外や意外ドイツなのです。2015/16年のシーズンに上演された数はなんと総合計で6795回でした。断トツの1位です。
ウィーン国立歌劇場やザルツブルク音楽祭で有名なウィーンのあるオーストリアかと思っていましたが、そうではなかったのですね。振り返ってみれば、ドイツには30近くのオペラハウスがあります。上演数が高くなるのは当たり前ですね。
2位はアメリカで1657回でした。アメリカにはメトロポリタン歌劇場を始め10を超えるオペラハウスがあります。人口が多いのですから上演回数が多くなるのは当然です。
まとめ
ドイツのオーケストラ情報を簡単にまとめてみました。音楽という芸術に対して、公的資金がかなり使われている事にもドイツの人々のありようが見えてきます。
オーケストラの数の多さや団員数の多さにも驚きです。音楽で食べている人が多い事もわかりました。オーケストラを支える人たちや劇場関係者を含めたらその数は数倍に跳ね上がるでしょう。