クラシック音楽ファンなら聴いてなければいけない楽曲が存在します。ましてやクラシック通と自他共に認めているなら尚更です。クラシック界の長い歴史の中で生まれてきた膨大な数の名曲達。そんな中から厳選して100曲の交響曲を選んでみたいと思います。
絶対的名曲は何ぞやといった基準を明確にして選定していきたいと思います。多少は私の好みも入ってくるでしょうが、それはご勘弁願います。また、各作曲家の中から何曲などの制限は設けません。名曲と思うものは1人の作曲家で何曲も選びます。
クラシック音楽を心から愛する私自身が名曲と思う交響曲を基本的には音楽史順に載せていきます。みなさんの愛する交響曲もきっと入っている事でしょう。まだ聴いた事ないよ!という楽曲はぜひ一度聴いてみてください。きっと心を揺さぶられるはずです。
交響曲100選の選定基準
今回100選として選ぶ交響曲は次の要件を満たす物とします。そうは言っても何項目も並べ立てて、重箱の隅をつつくようなガッチガチの基準は作りません。皆が納得する単純な物にします。
- 優れた楽曲である事!
この1語に付きます。この言葉自体抽象的ですが、他に例えようがありません。ベートーヴェンの『第9』のような誰もが納得する楽曲もあれば、現代音楽家の中にもそんな楽曲もあるかもしれません。そこはクラシックを愛するおじさんの判断をどうか信じてください。
この意味で前文に書いたように私の好みが入る余地がありえます。音楽は嗜好です。当然好き嫌いが出てきます。その辺りは納得していただきたいです。この企画は順位付けではありません。作曲家の楽曲の前の数字は単なる整理番号だと思ってください。
古典派の交響曲
交響曲が完成を見た古典派からのスタートです。ハイドンは104曲もの交響曲を作りました。モーツァルトも41曲。ベートーヴェン、シューベルトは9曲ずつ。さて、ハイドンとモーツァルトの楽曲から何を選べば良いものか。クラシックファンとして最高に楽しく、大変な大仕事です。
1:ハイドン【交響曲第44番「悲しみ」】
ハイドンはこの曲を殊の外気に入っていて、第3楽章の緩徐楽章を、自分の葬儀の際に演奏して欲しいと言ったそうです。ハイドンの追悼演奏会ではこの楽章が演奏されています。この曲の「悲しみ」という通称はそこに由来しています。
2:ハイドン【交響曲第45番「告別」】
ハイドンの初期の交響曲の中では、第44番「悲しみ」と、この第45番の「告別」は最も有名な作品です。
3:ハイドン【交響曲第88番「V字」】
第1楽章は壮大な旋律とのどかな旋律との、前者を軸とした展開が見事。第4楽章のポコポコした快速のユーモアも楽しい。第2楽章は元祖「英雄」です。
4:ハイドン【交響曲第92番「オックスフォード」】
後にロンドンで作曲される12曲の「ロンドン・セット」に劣らない素晴らしい曲で、私個人も愛してやまない名曲です。
5:ハイドン【交響曲第94番「驚愕」】
第2楽章のティンパニが有名です。あだ名の由来にもなっています。演奏中のおしゃべりや眠っている人たちを注意するために「驚愕」させたわけです。
6:ハイドン【交響曲第99番「驚愕」】
品の良い作品です。その代わりに目立った特徴も無いですが、ひそかな愛好者が多いのがこの交響曲だと思います。第1楽章は華やかで輝かしく軽く切ない。フルートの安らぐ第二楽章は最高です。
7:ハイドン【交響曲第100番「軍隊」】
「軍隊」という愛称は、有名な「トルコ軍楽」の打楽器(トライアングル、シンバル、バスドラム)が第2楽章と、終楽章の終わりで使われているためです。
8:ハイドン【交響曲第101番「時計」】
第2楽章の伴奏リズムが時計の振り子の規則正しさを思わせる事から「時計」という愛称で呼ばれていますが、それは作曲者自身が付けたものではなく、19世紀になってから付けられたものです。
9:ハイドン【交響曲第102番】
勇壮で豪快で男性的な雰囲気をもつ名曲です。ハイドンが演奏直前、ホールの中央の大きなシャンデリアが突然落下し砕け散った事件があって有名になりました。
10:ハイドン【交響曲第103番「太鼓連打」】
「太鼓連打」の愛称は第1楽章の冒頭と結尾で、ティンパニの長い連打があることからこのように呼ばれています。
11:ハイドン【交響曲第104番「ロンドン」】
ハイドンが作曲した最後の交響曲です。ロンドン交響曲と呼ばれるロンドンで作曲された交響曲の白眉。『ロンドン』の愛称は19世紀になってから付けられたもの。もしハイドンで1曲しか選んではいけないと言われればこの曲を挙げます。
12:モーツァルト【交響曲第25番】
映画『アマデウス』の冒頭部分で使用され一躍有名になったこの交響曲は、モーツァルトがわずか17歳の時に作曲されました。
13:モーツァルト【交響曲第31番「パリ」】
作品はモーツァルトとしては異例なほど推敲を重ねた上、ル・グロの注文により第2楽章を書き直すという過程を経て完成し、1778年6月18日のコンセール・スピリチュエルの演奏会で初演され、大成功を収めました。
14:モーツァルト【交響曲第35番「ハフナー」】
モーツァルトの交響曲第35番「ハフナー」は、1782年にハフナー家のためにモーツァルトが作曲した交響曲です。
15:モーツァルト【交響曲第36番「リンツ」】
モーツァルトは1783年のリンツ滞在中に、伯爵であったトゥーン・ホーエンシュタインの予約演奏会のため、この曲を4日間という早さで作曲しました。
16:モーツァルト【交響曲第38番「プラハ」】
『交響曲第38番』は、1787年1月19日にプラハにて初演されたため「プラハ」というあだ名が付けられています。
17:モーツァルト【交響曲第39番】
最後の3つの交響曲の中では最も明るく優美でエレガントな作品です。個人的にモーツァルトの交響曲の中で1番好きな曲です。
18:モーツァルト【交響曲第40番】
モーツァルトの全楽曲の中でも、最も有名な曲の1つ。モーツァルトの交響曲のうち短調のものはこの作品を含めてわずか2曲しかなく(もう1曲は第25番)、こちらを「大ト単調」と呼ぶ事もあります。
19:モーツァルト【交響曲第41番「ジュピター」】
モーツァルトの最後の交響曲です。モーツァルトを崇敬していたリヒャルト・シュトラウスは、「ジュピター交響曲は私が聴いた音楽の中で最も偉大なものである。終曲のフーガを聞いたとき、私は天にいるかの思いがした」と賛辞しています。
20:ベートーヴェン【交響曲第3番「英雄」】
ベートーヴェンの最も重要な作品の一つで、その斬新さ、密度の濃さは交響曲の歴史に革命を起こしたともいえる作品です。個人的にはベートーヴェンの楽曲の中で最も好きな作品です。
21:ベートーヴェン【交響曲第4番】
ベートーヴェンの交響曲の中では古典的な均整の際立つ作品で、ロベルト・シューマンは、「2人の北欧神話の巨人(第3番と第5番のこと)の間にはさまれたギリシアの乙女」と例えたと伝えられています。
22:ベートーヴェン【交響曲第5番】
有名さ、演奏される回数の多さ、人気において、すべての交響曲の中でもこれに勝るものはありません。
23:ベートーヴェン【交響曲第6番「田園」】
田舎に着いた時の穏やかな風景が目に浮かぶような楽曲です。特に第2楽章はゆったりと流れる小川のほとりで、身も心も癒されるような時が過ぎていくのを感じます。
24:ベートーヴェン【交響曲第7番】
お馴染み『のだめカンタービレ』のメインテーマ曲。大変に生命力にあふれた曲で、リズム感溢れる音楽です。
25:ベートーヴェン【交響曲第8番】
ベートーヴェンの交響曲の中では比較的小規模で、従来の古典的な形式に則っていますが、独創的な工夫と表現にあふれています。
26:ベートーヴェン【交響曲第9番「合唱付き」】
まぎれもなくベートーヴェンの最高傑作の一つです。第3番、第5番とこの曲はベートーヴェンの輝ける栄光そのものです。これらを超える楽曲はこの世に存在しません!
27:シューベルト【交響曲第7番「未完成」】
あだ名通り、2楽章だけの未完成の曲ですが、美しい旋律に溢れています。
28:シューベルト【交響曲第8番「グレート」】
そのスケールや楽想、規模は『ザ・グレート』の名に相応しく、現在ではこの曲の通称として定着しています。
ハイドンからシューベルトまでを見て来ましたが、何といってもベートーヴェンの偉大さは音楽史の上で燦然と輝いています。個人的には第1番、第2番も取り上げたかったのですが、まだまだハイドンの亜流に留まっていると思い、泣く泣く外しました。ベートーヴェンの音楽はハイドン、モーツァルトがいたからこそ生み出されたものです。
ロマン派(前期)
ここからはロマン派(前期)の作曲家を取り上げていきます。ロマン派の作曲家は大勢いますから、分割して選曲していきます。
29:ベルリオーズ 幻想交響曲
麻薬で死のうとした青年が死に切れず、ボーっとして見た夢の世界を音楽化しています。とにかくハチャメチャな音楽で、私のお気に入りの交響曲です。
30:メンデルスゾーン 交響曲第3番「スコットランド」
メンデルゾーンがこの曲を着想したのがスコットランド旅行中だったことでこのあだ名がつきました。第3番ですが5つの交響曲の中で1番最後に作曲された楽曲です。
31:メンデルスゾーン 交響曲第4番「イタリア」
メンデルスゾーンの交響曲の中では最も有名です。「イタリア」の標題通りイタリア旅行中に作曲されました。とにかく明るく、メロディが美しくメンデルスゾーンらしい魅力にあふれている曲です。
32:メンデルスゾーン 交響曲第5番「宗教改革」
曲のモチーフにルター作曲のコラール『神はわがやぐら』、そしてドイツの賛美歌『ドレスデン・アーメン(英語版)』が用いられているのが特長です。
33:シューマン 交響曲第1番「春」
この曲の初演は好評で、シューマンは「ベートーヴェン以降の近代の交響曲として、かつてない共感を得られた」と書いています。自信作だったのでしょう。
34:シューマン 交響曲第3番「ライン」
「ライン」のあだ名は、シューマン自身が付けたものではありませんが、シューマンがライン川の川下りやそれを取り巻く環境に大いに触発され、その音楽もまた関連が深いことは間違いありません。
ロマン派前期としては妥当な選曲かと思います。皆さんもこれは納得してくれるでしょう。シューマンの第2番はどうしたのかという声もありそうですが、今回は厳しめに「優れた楽曲」では無いと判定しました。
ロマン派(新古典派)
ロマン派新古典派の登場です。ベートーヴェンの後継者とされる作曲者の登場です。ブラームスとマーラーですが、私はこの2人は全ての交響曲を選択しました。音楽史上、確たる道標となるべき楽曲ばかりだからです。本当にこの2人はクラシック音楽の歴史を作ったと思います。
35:ブラームス 交響曲第1番
20年の歳月を掛けて作られた労作です。第4楽章にはベートーヴェンの第9交響曲の「歓喜の歌」とそっくりのメロディが使われています。余程ベートーヴェンを敬愛していたのですね。
36:ブラームス 交響曲第2番
「ブラームスの田園交響曲」と呼ばれることもあります。オーストリア南部のペルチャッハの大自然から受けた感動を、即興的につづった曲で、牧歌的で自然への憧憬に満ちています。
37:ブラームス 交響曲第3番
第3楽章がフランソワーズ・サガン原作の映画『さよならをもう一度』の中で使われ、特に有名になりました。
38:ブラームス 交響曲第4番
52歳の時に作曲されたブラームス最後の交響曲。最もブラームスの魅力が凝縮されているというという声が多い曲です。ブラームス自身もこの曲が1番出来が良いと考えていました。
39:マーラー 交響曲第1番「巨人」
マーラーの若さ溢れる音楽です。冒頭の森の描写が上手く森の様子が頭に浮かびます。また終楽章のホルン7本による演奏は感動物です。「巨人」はマーラーの愛読書であったジャン・パウルの小説『巨人』に由来します。
40:マーラー 交響曲第2番「復活」
オルガンやバンダ(舞台外の楽隊)を含む大編成の管弦楽に加え、第4楽章と第5楽章(合唱もあり)に声楽を導入しており、立体的かつスペクタクル的な効果を発揮します。感動的な終楽章です。
41:マーラー 交響曲第3番
全6楽章からなり、第4楽章にアルト独唱、第5楽章にアルト独唱と児童合唱、女声合唱を導入しています。マーラーの交響曲としても、また通常の演奏会で採り上げられる交響曲としても、最長の曲として、かつては「世界最長の交響曲」としてギネスブックに掲載されていました。
42:マーラー 交響曲第4番
マーラーの全交響曲中もっとも規模が小さく、曲想も軽快で親密さを持っています。ワルターは、この曲を「天上の愛を夢見る牧歌である」と語っています。冒頭の鈴の音が印象的です。
43:マーラー 交響曲第5番
「第1楽章」は葬送行進曲で、トランペット1本のみで始まる不吉なファンファーレが、重々しい葬送行進曲の開始を告げます。第4楽章アダージェットはハープと弦楽器のみで演奏される、静かな落ち着きに満ちた美しい楽章です。
44:マーラー 交響曲第6番「悲劇的」
マーラーとしては1番充実していた時期の交響曲です。全体を通して聴くとやりつくしたぜ!的な感じを覚えます。ハンマーの打ちつけとかドキッとする場面もあり、迫力ある交響曲になっています。
45:マーラー 交響曲第7番「夜の歌」
マーラーの楽曲としては評価の分かれるものです。「構成的に難がある」という方もいますが、多調や無調の明確な誕生を予感させる楽曲と評価する方もいます。
46:マーラー 交響曲第8番「千人の交響曲」
大規模な管弦楽に加えて8人の独唱者および複数の合唱団を要する、巨大なオラトリオあるいはカンタータのような作品となっています。この楽曲を演奏する時は本当に大勢の人員が必要なため、滅多に演奏されません。
47:マーラー 「大地の歌」
「交響曲」と「連作歌曲」とを融合させた作品と考えられます。交響曲としてはかなり破格の存在であり、「9番目の交響曲」であるという点も影響してか、マーラーは交響曲の番号を付与しませんでした。俗に言う「第9」の呪いを気にしたのですね。
48:マーラー 交響曲第9番
音楽とテーマの普遍性、独自性、書法の大胆さ、表現の崇高さなどにおいて第9番はマーラーの最高傑作だと思っています。全曲が「別れ」や「死」のテーマによって貫かれています。暗いテーマですが心に染みてきます。
新古典派として結局2人の作曲家の交響曲全てを選曲しました。音楽史上聴かねばならない交響曲と思っているためです。これには反論が多くあるかと思いますが、わたしは全てが「優れた楽曲」と信じています。心から素晴らしいと思わずにはいられません。
ロマン派(後期)
ロマン派の中でも主に1850年を境に以降を後期ロマン派と呼んでいます(ただし、国民学派を除く)。後期ロマン派も夥しい数の作曲家が存在します。その中から選択したのは次のとおりです。
49:フランク 交響曲
フランスにおけるこのジャンルを代表する曲のひとつであり、19世紀後半における最も重要な交響曲のひとつとして高く評価されています。
50:サン=サーンス 交響曲第3番「オルガン付き」
この作品の作曲についてサン=サーンスは「この曲には私が注ぎ込める全てを注ぎ込んだ」と述べ、彼自身の名人芸的なピアノの楽句や、華麗な管弦楽書法、教会のパイプオルガンの響きが盛り込まれています。
51:ブルックナー 交響曲第4番「ロマンティック」
ブルックナーが作曲した9つの交響曲の中では、この楽曲が最も変化に富んでおり、印象に残るメロディも使われています。ブルックナーの交響曲の中でも人気のある交響曲です。
52:ブルックナー 交響曲第7番
第4番と並んで彼の交響曲中、最も人気が高い曲の一つです。ハース版とノヴァーク版では違いがありますが、私はブルックナーではこの楽曲が1番好きです。
53:ブルックナー 交響曲第8番
演奏時間80分を越すこともある長大な曲で、後期ロマン派音楽の代表作の一つに挙げられます。ブルックナーはこの交響曲以降、ベートーヴェンの『交響曲第9番』と同様の第2楽章にスケルツォ、第3楽章に緩徐楽章を置く楽章配置を採用するようになる。
54:ブルックナー 交響曲第9番
ブルックナーが取り組んだ最後の交響曲。結局第3楽章までしか完成できませんでした。しかし、コンサートでは未完のまま、3楽章まで演奏されます。それでも立派に1つの楽曲になっています。
55:チャイコフスキー 交響曲第4番
チャイコフスキーは『第4番』を「これまでのなかで最良の作品」と自負し、その出来に大いに満足していました。完成後にメック夫人に送った手紙で、「この作品は、テクスチュアや形式の点で、私の飛躍の第一歩となったに違いありません」と作曲家自身が自負していました。
56:チャイコフスキー 交響曲第5番
チャイコフスキー自身も曲の出来映えについて「こしらえ物の不誠実さがある」と手紙に書くほどでした。しかし、その後は演奏会のたびごとに大好評となり、成功作として本人も評価するようになった作品です。
57:チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」
チャイコフスキー最後の大作であり、その独創的な終楽章をはじめ、彼が切り開いた独自の境地が示され、19世紀後半の代表的交響曲のひとつとして高く評価されています。個人的には第5番のほうが完成度が高いと思っています。
58:エルガー 交響曲第1番
指揮者リヒターはこの作品を「当代最高の交響曲」と評しましたが、一部では構成に否定的だったり、主題の繰り返しがしつこいと指摘する向きもありました。いずれにせよ、初演は大変な反響を呼び、初演から1年で百回あまりも再演されたそうです。
59:ニールセン 交響曲第4番「不滅」
交響曲6曲中最も有名で、シベリウスの交響曲第7番のような単一楽章の交響曲です。古典的な4つの楽章に相当する部分が連続しながら、最後に第1楽章に相当する部分の第2主題が蘇るという構成を持っています。音楽と生命の不滅を高らかに歌い上げた交響曲です。
60:レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ 交響曲第5番
1943年大戦中に作曲された、全9曲の交響曲の中で最も小さい編成(2管編成で、打楽器はティンパニのみ)で、静かで穏やかな作品になっています。まるで平和への祈りをささげているかのようです。彼の交響曲の中ではナンバー1と思います。
61:レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ 交響曲第7番(南極航行曲)
随所に工夫が見られる幻想的で冒険的な雰囲気に、未知の世界への好奇心をかき立てられながら聴ける楽曲になっています。
62:レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ 交響曲第9番
これは入れようかどうかかなり迷いました。交響曲では超然としていた作風の作曲者が最後にたどり着いた境地として、私的な感情を盛り込んだ曲として感慨深いものがあります。
63:セルゲイ・ラフマニノフ 交響曲第2番
この交響曲はとりわけロマンティックです。この作品は冗長であるとして、たびたび改訂が施されました。演奏にカット版を用いる習慣が見られましたが、今日では、全曲版での演奏が定着しています。
64:リヒャルト・シュトラウス 家庭交響曲
この曲はシュトラウス自身の家庭の様子を曲にしたとも言われています。曲は切れ目無く演奏されますが、4部に分けることができます。
65:リヒャルト・シュトラウス アルプス交響曲
シュトラウスが14歳の時に、ドイツ・アルプスのツークシュピッツェに向けて登山をしたときの体験が、この曲の元となっています。単一楽章の交響曲です。
66:フランツ・シュミット 交響曲第4番
フランツ・シュミットが一人娘の追悼のために1932年から翌1933年にかけて作曲した交響曲です。単一楽章だが、実際には4楽章制の要素が取り入れられ、それぞれ3つないし4つに分けられている。
滅多にコンサートでは演奏されないエルガーとかニールセンも是非聴いてみて欲しいと思い取り上げました。こういった楽曲は何かきっかけが無いと聴かないものですから、これを機にぜひに聴いてみてください。想像より良いなってなると思います。
ロマン派(国民楽派)
スメタナ、ドヴォルザーク、シベリウス等がこれにあたります。ドヴォルザークとシベリウスは交響曲を多く書いていますからどう選択しようかと悩む所です。雑に選んでいる交響曲はひとつもありません。本気で選んでこのような結果になりました。お楽しみください。
67:ドヴォルザーク 交響曲第7番
スラブ的な雰囲気を残しつつも内省的で普遍的な音楽として仕立てることに成功しており、作曲者自身この曲を「本格的なもの」と呼んでいます。「新世界より」ほどではありませんが、第8番と共にドヴォルザークの交響曲では良く取り上げられる楽曲です。
68:ドヴォルザーク 交響曲第8番「イギリス」
この交響曲は「チェコの作曲家」ドヴォルザークの最も重要な作品として位置づけることができる。ボヘミア的なのどかで明るい田園的な印象が特徴的で、知名度の点では第9番には及ばないものの、第7番などと同様に人気のある交響曲です。
69:ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」
『新世界より』という副題は、新世界アメリカから故郷ボヘミアへ向けてのメッセージ、といった意味があります。全般的にはボヘミアの音楽の語法により、これをブラームスの作品の研究や第7・第8交響曲の作曲によって培われた西欧式の古典的交響曲のスタイルに昇華させています。
70:シベリウス 交響曲第1番
シベリウスの交響曲と言えば「第2番」が有名ですが、同時期に書かれた第1番も美しいメロディが際立っています。シベリウスの交響曲作曲家としての出発点です。
71:シベリウス 交響曲第2番
楽曲全体の構成は古典的な4楽章制が採用されているが、第3楽章のスケルツォと第4楽章のフィナーレがアタッカで結合しています。あらゆる表現の限りを尽くして壮大なフィナーレへと向かうエネルギッシュな推進力、それを支える大地のように悠然とした時間感覚は、この交響曲の揺るぎない魅力です。特に、朗々たる賛歌の内に決然と世界が結ばれるフィナーレのコーダは圧巻というほかありません。
72:シベリウス 交響曲第5番
伸びやかで祝祭的な気分の交響曲です。癌による死の恐怖から解放された喜びを反映しており、生誕50年を自らも心から祝うことができる心理状態になっていたことを物語っています。
73:シベリウス 交響曲第7番
最後の交響曲であると共に、最も短い凝縮された曲でもあります。彼の持つ浪漫性と交響曲に必要な一貫性を見事に調和させた匠の曲です。楽章間の句切れはなく、いうなれば1楽章の交響曲となっています。
ドヴォルザーク、シベリウス共に交響曲は素晴らしい音楽ばかりです。特にシベリウスは絞りすぎたかなと思うところもあります。全曲入れても反論は少ないかも?
近代音楽
ロマン派に入りきらない音楽家をここにおきます。社会主義リアリズム作曲家もここに入れておきます。もう既に交響曲100選も終盤にさしかかっています。ただ好きな曲を選ぶだけなのになんとも言えないプレッシャーを感じています。どうかみなさま楽しんでください。
74:ヒンデミット 画家マチス
1933年から1934年にかけて作曲した交響曲で、代表作の一つ。ヒンデミットは同名のオペラも作曲していますが、この交響曲はその姉妹作と言える作品で、オペラの素材を再構成する形で並行して作曲されました。
75:プロコフィエフ 古典交響曲(交響曲第1番)
ハイドンが現代に生きていたらこのような曲を書くだろうというようなスタイルで書かれています。それで古典交響曲と呼ばれています。つまりスタイルは古典的で、和声(ハーモニー)は近代的。
76:プロコフィエフ 交響曲第5番
プロコフィエフの作品の中でも最も人気のある作品のひとつです。彼はこう語っています。「わたしの第5交響曲は自由で幸せな人間、その強大な力、その純粋で高貴な魂への讃美歌の意味を持っている。」
77:プロコフィエフ 交響曲第7番「青春」
プロコフィエフ最後の交響曲。国立放送局児童部のために「シンプルな作品」を目指して作曲を始めましたが、書き進めるうちにアイデアが膨らみ30分を超える作品となりました。優雅で美しいメロディーや自身のバレエ音楽を彷彿させる爽やかなワルツの第2楽章など聴きやすい作品に仕上がっています。
78:ハチャトリアン 交響曲第2番「鐘」
第2次世界大戦中の1943年に完成された交響曲第2番「鐘」は、作曲当初から比較的ポピュラーで、CDの種類も多くあります。戦争を題材とした楽曲です。
79:ハチャトリアン 交響曲第3番「シンフォニー・ポエム」
いきなり15本のトランペットによるファンファーレが、複雑なリズムで奏でられ、度肝を抜かれてしまう冒頭部分。次いでパイプオルガンの早いパッセージが約3分爆走します。凄い音楽です。
80:ドミートリイ・ショスタコーヴィチ 交響曲第1番
19歳の、すでにそれまで4年間家族の経済を支えてきたしっかりした少年の模範的卒業作品。しかし、ここそこに彼の才能の爆発、以後の彼自身の心の支えになる独自の響き、形、性格が隠れています。
81:ドミートリイ・ショスタコーヴィチ 交響曲第5番「革命」
批判を受けた後に作られた交響曲です。革命賛歌という表面を持ちつつも、「そんなことチャンチャラ可笑しいわい」とばかりに、愛の訴えをしているとしたら、それも本心からの屈伏・服従とは程遠いということになりそうです。彼の交響曲の中では最も有名です。
82:ドミートリイ・ショスタコーヴィチ 交響曲第6番
『交響曲第5番』を作曲し、その名誉を回復した彼が1939年に書いた叙情的な作品です。前作とこの作品との関係は、ベートーヴェンの『運命』と『田園』の関係と似ています。
83:ドミートリイ・ショスタコーヴィチ 交響曲第7番「レニングラード」
ショスタコーヴィチの故郷レニングラードに捧げられた戦争と勝利の交響曲です。第一楽章の「戦争の主題」は健康ドリンクのコマーシャルソングにもなりました。
84:ドミートリイ・ショスタコーヴィチ 交響曲第8番
1948年にはジダーノフ批判の対象となり、1960年まで演奏が禁止された作品です。しかし、戦争の悲惨さを描き、かつての音楽技法を駆使したレベルの高さゆえに最近ではショスタコーヴィチの最も注目すべき作品のひとつとされています。
85:ドミートリイ・ショスタコーヴィチ 交響曲第9番
いわゆる「戦争3部作」の最後の作品です。第9番という事もあり、ベートーヴェンの様な壮大な楽曲を期待していた当局は落胆し、後にジダーノフ批判の対象となりました。
86:ドミートリイ・ショスタコーヴィチ 交響曲第10番
15曲あるショスタコーヴィチの交響曲のうち、声楽を伴わないものの中では傑作とされる作品です。
87:ドミートリイ・ショスタコーヴィチ 交響曲第13番「バビ・ヤール」
ソ連においてもユダヤ人に対する迫害や反ユダヤ主義が存在することをほのめかし、告発するような内容で、当局にも目をつけられた楽曲です。スターリン亡き後であったため、彼は当局の変更要請に従わずにいましたが、結局歌詞の一部分のみ修正しました。現在の演奏では、原曲が使われています。
88:ドミートリイ・ショスタコーヴィチ 交響曲第14番
11の楽章から構成されています。無調、十二音技法、トーンクラスターなどの当時のソビエトでは敬遠されていた前衛技法が、ショスタコーヴィチなりに消化した手法で用いられていることが特筆されます。
89:ドミートリイ・ショスタコーヴィチ 交響曲第15番
合奏よりもソロなどが目立つ室内楽的なオーケストレーションや、各楽章にちりばめられたさまざまな作曲家の作品からの引用、更にショスタコーヴィチ流の十二音技法など、ベテランならではの技巧も光る作品です。
90:アルベール・ルーセル 交響曲第3番
アルベール・ルーセルが1930年にボストン交響楽団創立50周年のためにクーセヴィツキーの依頼で作曲した交響曲です。特に第1楽章が秀逸です。
91:アルベール・ルーセル 交響曲第4番
リズミカルで明瞭な形式を持っていた第3番の作風を継承し、さらにより多くの楽想を加えた厳粛な美が感じられる音楽です。
プロコフィエフとショスタコーヴィチはかなり悩みました。特にショスタコーヴィチは選びすぎとの批判を受けるかもしれません。切るに切れない楽曲が多くて困りました。
現代音楽
遂にクラシック音楽の歴史も20世紀に突入です。私自身、数十年に渡ってクラシック音楽を聴いてきましたが、100年後の未来では今回取り上げる現代音楽が、ベートーヴェンやショパンのようにクラシック界の歴史に名を残す楽曲になっているのか楽しみで仕方ありません。
92:アルテュール・オネゲル 交響曲第3番「典礼風」
オネゲルは言っています。「私がこの曲に表そうとしたのは、もう何年も私たちを取り囲んでいる蛮行、愚行、苦悩、機械化、官僚主義の潮流を前にした現代人の反応なのです。周囲の盲目的な力にさらされる人間の孤独と彼を訪れる幸福感、平和への愛、宗教的な安堵感との間の戦いを、音楽によって表そうとしたのです」
93:オリヴィエ・メシアン トゥーランガリラ交響曲
オリヴィエ・メシアンの最初の大規模な管弦楽曲で、彼の代表作のみならず現代音楽の傑作のひとつとされ、今日、メシアンの作品中最も頻繁に演奏されるもののひとつです。
94:アーロン・コープランド 交響曲第3番
この作曲家が完成した最後の交響曲です。ショスタコーヴィチの『交響曲第5番』がロシア人の悲観主義を象徴しているように、コープランドの本作は、アメリカ人の楽観主義やヒロイズムを代表しているといえます。
95:アレクサンドル・グラズノフ 交響曲第4番
ロシア的情緒を全面に押し出した作品。冒頭に現れる憂鬱な旋律が曲全体を支配しています。
96:アレクサンドル・グラズノフ 交響曲第8番
第4楽章は一番霊感に溢れており、素晴らしい音楽です。しみじみとした感動や未来への希望や不安や回想を、ブルックナーのようなスケール感を伴って描いています。
97:チャールズ・アイヴズ 交響曲第3番「キャンプ・ミーティング」
彼は大きな保険会社の副社長を務めながら、その余暇に実験的な音楽をひっそりと書いた「日曜作曲家」でした。自分の作品が演奏されることを好まず、保険会社を勇退してからは世捨て人のような生活を送ったため、その作品は長く世に出ることがありませんでした。
98:コダーイ・ゾルターン 交響曲
アルトゥーロ・トスカニーニの求めに応じて作曲を始めましたが、実際に完成・初演されたのは、トスカニーニ亡き後でした。
99:アレクサンダー・フォン・ツェムリンスキー 抒情交響曲
ソプラノとバリトンの独唱者がベンガルの詩人タゴールによる詩(のドイツ語訳)を、6つの楽章にわたって歌います。この作品をツェムリンスキー自身が、出版社への書簡の中で、マーラーの「大地の歌」と比較している。
100:アルフレート・シュニトケ 交響曲第1番
モダニズムといったものに多少でも興味がない人にはただの騒音に聞こえてしまう可能性はあります。こういう作風の交響曲を書いて、ソヴィエト当局に目の敵にされる訳ですね。
現代音楽は私にとってはこれ以上出てきません。いや、正確にはこれ以上聴いていないので分からないです。お手上げです。科学は進歩した現代ですが、クラシック音楽に関してはまだまだ過去の作品たちを超えるようなものは出てきていないように感じます。ベートーヴェンなんて大した事ないと言わしめるような作曲家が出てくる奇跡は起こるのでしょうか。
まとめ
交響曲100はいかがだったでしょうか。「優れた楽曲であること!」を基準として、交響曲で私の知る限りの名曲と思われる楽曲を100曲選んでみました。現時点での私の考える100選です。終わってみればあっという間でしたが選考は本当に難しかったです。
ここまで読むのにかなりの長いお時間をちょうだいしたと思います。好みもあると思いますが、食べず嫌いはせず、聴いた事のない交響曲があったらぜひ聴いてみてください。最近はネットで簡単に視聴できますし、新たな発見もあるかと思います。