輝く本を開く青年

もしもモーツァルトやベートーヴェンが長生きしていたら、彼らの作曲する音楽はどうなっていたでしょう。そんな事を考えた事はないでしょうか。

彼らがハイドンの年齢ぐらいまで活躍していたら、音楽史も違っていたと思います。「たられば」は「たられば」でしかありませんが、想像してみる事でもっと彼らの音楽性に迫れるのではないかとも思うのです。

たまには想像の翼を広げて、作曲家のその先を考えてみるのも一興と思い、もしも音楽史を飾る有名作曲家たちの活躍する期間が長かったならばどうなっていたかを考えてみたいと思います。

また変な事を考えましたね。
たまにはこういう空想も楽しいと思うのだがな。

モーツァルト

モーツァルトは35歳で亡くなっています。天才モーツァルトと幼少期から持ち上げられて育った彼は、精神的に大人に成り切れぬまま成人した人物でした。歳を重ねたからと言ってそう変わりはないかと思われます。

モーツァルトが年齢を重ねたら

モーツァルトは歳を重ねても若い頃の気持ちのままで過ごす事でしょう。老いたモーツァルトなど想像が出来ません。常に悪戯しそうな茶目っ気を持っていそうです。

好きなお酒やギャンブルからは離れる事が出来ずに、借金を重ねながら、受けられる仕事は何でも受け入れる事は変わらないと思います。

モーツァルトの曲数は

35歳で作品番号が付いているものだけで626曲もありますが、もし彼が倍の70歳まで生きたと想像すると、1000曲は超えたかもしれません。

バロック期の作曲家や古典派のハイドンも多作家でしたからモーツァルトも同様に曲数は増える事でしょう。

ただし、後期のモーツァルトはウィーンでの人気が落ち、彼に作曲を依頼する人物も減っていた事は事実なので、その分は差し引いて考えねばならない事です。

とすれば、1000曲程度が妥当な所と言えるでしょうか。小品や悪ふざけの作品も、年齢が上がってくれば多少は減ると思われます。

モーツァルトの音楽ジャンルは

モーツァルトの時代にはようやくチェンバロからピアノに移る過渡期でもありました。ピアノの性能が上がる事により、ピアノ作品が増えていく事は予想されます。

ピアノ協奏曲、ピアノソナタなどを始め、ピアノが入る室内楽も増えるかもしれません。

交響曲、オペラ、弦楽四重奏曲なども引き続き作曲されていくでしょう。

モーツァルトの音楽の変化は

モーツァルト晩年の音楽の質は非常にクオリティが高いものばかりで、神が遣わしたような音楽となっていますので、引き続きこのレベルを保っていくものと思われます。

基本的にモーツァルトは歳を取っても枯れた音楽家になるとは思えませんので、日本でいうところのワビ、サビの利いた音楽に着地するのではなく、相変わらず、同じ土俵の上で活躍して行く事でしょう。

モーツァルトは老いるというイメージはないですね。
永遠の少年であり続けるイメージだね。歳を取っても変わらない気がするね。

ベートーヴェン

ベートーヴェンは56歳で亡くなりました。努力型天才のベートーヴェンですから、晩年は孤高の境地までに達しています。その事をベースに考えると、そこからより進んだ世界が広がっていくものと思われます。

ベートーヴェンが年齢を重ねたら

甥のカールとの関係に苦しみながらも、日課の散歩も欠かさず、使用人に悪態をつき、見た目は現在のベートーヴェン像と変わらないでしょう。年齢を重ねたからと言って、決して丸くなるような人物ではありません。

相変わらず、周りから白い目で見られながらも、自分は全くそれを意に介さず過ごしていると思われます。ただ、創作意欲は旺盛で、常に革新的な音楽の事だけを考えて生活しているのではないでしょうか。

ベートーヴェンの曲数は

56歳で作品番号138までですから、あと15年長生きしたとして、200まで行くかどうか。ベートーヴェンは自分に厳しいですから、もう少し厳選されて170程度かもしれません。

同じ古典派でもモーツァルトと違うところは、ベートーヴェンは1曲の完成密度がとても高いために多作家にはなれなかったという事です。どちらが良い悪いとかではなく、音楽の作り方が違いました。

ベートーヴェンは1音1音吟味しながら、これが良いか、いいやこれこそふさわしいと基礎部分からしっかりと構築していくタイプですから、時間が掛かって当たり前なのです。

それと音楽の規模にも違いがあります。ベートーヴェンは古典派の枠を超える様な作品も多く、それによって規模も大きくなりました。それを考えると170を超える程度とするのが妥当でしょう。

ベートーヴェンの音楽ジャンルは

交響曲、ピアノソナタ、弦楽四重奏曲が中心になる事は変わりがありません。交響曲は2曲か3曲、おそらく声楽付きのものはもう作らないと思います。交響曲に声楽を持ち込むにはハードルが高いのではないでしょうか。長大なものと簡素なものができそうです。

ピアノソナタ、弦楽四重奏曲にも名曲が増えると思います。中には大作もある事でしょう。これら3ジャンルは傑作が誕生すると思われます。

ピアノ協奏曲も作られると思います。他の楽器をメインとする協奏曲は作られないでしょう。

オペラも「フィデリオ」であれだけ苦労した事を思えばもう作りません。やはり3本柱中心の音楽作りとなる事でしょう。

ベートーヴェンの音楽の変化は

ますます高みに登って行く事でしょう。モーツァルトは同じレベルを維持すると書きましたが、ベートーヴェンの場合は精神性が高まり、それが音符に乗り移るような作品が多く登場してくると思われます。

『ピアノソナタ第32番』『弦楽四重奏曲第16番』のような孤高の音楽が増える事でしょう。また、交響曲はどんな素晴らしいものが生み出されるのか分かりません。『第9』以上に感動するものが登場しそうです。

ベートーヴェンは年齢を重ねるにつれ、それ相応の変化が出てくるのではないでしょうか。
年齢に応じた深みが更に増してくるように思えるな。

シューベルト

シューベルトは31歳で亡くなっています。それで1000曲もの楽曲を残しているのですから、70歳まで生きたとするとその倍の楽曲を作曲した事でしょう。

シューベルトが年齢を重ねたら

シューベルトも老いるという事に関して、あまり想像の出来ない人物です。熱気に満ち溢れている訳でもありませんが、かといっていつまでもあの風貌から変わらなそうなイメージです。

シューベルティアーデを開催しながら、仲間内でわいわい騒いでいる事は続けていそうな気がします。老いてもなお自由人であり続けるのではないでしょうか。

結婚もする事はないと思います。それ以前に自分の生活もままならないのですから、高いハードルだと思います。

シューベルトの曲数は

70歳まで生きたと仮定するならば、2000曲はクリアしそうです。その半分以上は歌曲になる事でしょう。シューベルトの歌曲は全作品の6割を超えていますから、この傾向は変わらないと思われます。

シューベルティアーデの中で生まれてくる歌曲が中心となると思いますが、膨大な数になってきて後の研究者を悩ませそうです。

ただ、生活がどれだけ安定するかによって違ってくるかもしれません。おそらく彼の生前には有名な作曲家としては自立できないでしょうから、楽曲の伸びも頭打ちになる可能性はありえます。

シューベルトの音楽ジャンルは

歌曲が中心になるのは間違いないとして、それ以外には交響曲やピアノソナタ、弦楽四重奏曲を作曲していくでしょう。『未完成』はあくまで未完成のままで、『グレート』以降は、また長大なものになっていきそうです。

ピアノソナタも弦楽四重奏曲も数は増えていきそうですが、彼の傾向通り、歌曲との関連性があるものも増える事でしょう。

シューベルトの音楽の変化は

ベートーヴェンのように孤高の高みに達するというタイプではありませんので、現在考えられているシューベルト像から外れる事は無さそうです。

相変わらず仲間内で楽しみ、仲間から助けられながら作曲を続けて行くスタンスは変わらないと思います。

シューベルトは歳を取っても運がないように思います。
シューベルトは相変わらず暮らしに追われているイメージが強い。

ショパン

ショパンは39歳で亡くなりました。虚弱体質で、メンタルの弱さもあった人物です。彼が長生きしたとしても、ピアノのために楽曲を作り続けた事でしょう。

ショパンが年齢を重ねたら

神経質で気の弱いところは、歳を重ねても治らないでしょう。むしろ、その傾向は強まるのかもしれません。自己中心的で、人との交流を避けたがる事も変わらないでしょう。

その性格が彼の作品に投影されて繊細な楽曲が生まれているのですから、一生彼の神経質さは続くものと思います。

ジョルジュ・サンド以外に他の人を愛する事が出来るかについては、難しいと考えています。引っ込み思案のショパンは女性にリードして貰わないと恋愛自他が成立しないと思うのです。

ショパンの曲数は

現在、ショパンの作品で番号が付けられているものは74ありますが、これは例えば『24の前奏曲』をひとつとして付けられた番号で、曲数でいえば200曲近くになります。

身体の弱いショパンには多くを望むのは難しいですが、作品番号で140ぐらいになるでしょうか。

ショパンの音楽ジャンルは

「ピアノの詩人」と言われるショパンですから、ピアノ以外は歌曲を取り上げる程度です。それは彼の流儀ですから変わらないでしょう。

ピアノ協奏曲を始め、ワルツ、エチュード、ポロネーズ、マズルカなどのピアノの名曲を多く残してくれると思います。

ショパンの音楽の変化は

ショパン自身、既に「ピアノの詩人」として完成されていますから、ベートーヴェンのように神に近づくような高みに達するという事はないと考えます。

あくまでも現在のショパンのスタイルを崩したりしないでしょう。超絶技巧を求めたり、ピアノの奏法に革新的なものを取り入れると言った事には興味がないと思われますので、安定した作品を作り続けると思います。

ショパンも老いていく姿が想像しにくいですね。
ひょっとすると神経質さは酷くなるかもしれないね。しかし、楽曲は繊細な物を作ってくれるだろう。

まとめ

もしも作曲家が長生きしたらどうなっていたかを簡単に纏めてみました。4人の作曲家に登場して貰いましたが、これは空想の世界で、他愛もない絵空事です。

しかし、こうして比べてみるとベートーヴェンだけは異質の感じがあります。努力型の天才作曲家は、最後まで高みを追い求める姿勢を崩さないと思うのです。

あとの3人は若くして亡くなった作曲家たちですが、これ以上年齢を重ねたところで、今の評価とそう変化はないと想像できます。くだらない企画でしたが、こうして想像の世界に踏み入る事もたまには良いものですよ。

関連記事