2019年11月25日、『日本オーケストラ連盟ニュース』103号が公開されました。毎年恒例のランキングが発表されましたので紹介しておきたいと思います。『日本オーケストラ連盟ニュース』は3か月に1度刊行される小冊子で、通称「オケ連ニュース」と呼ばれています。
例年楽しみな記事は、毎年最終刊の「定期公演ランキング」です。その年度に定期公演でどの作曲家の演奏が一番多かったか、何の曲が一番演奏されたかのランキングを載せているのです。本会員の25オーケストラの定期公演の集計結果で、クラシックファンの嗜好が見えてきて楽しいです。
生誕100年などのアニバーサリーがあった作曲家は多く演奏されますし、また毎年上位に居続ける人気のある作曲家も分かってきます。クラシックファンとしては、この情報が結構面白く読む事が出来ます。2018年度は、どんな結果だったのかを見ていきましょう。
2018年度作曲家別演奏回数
まずは、定期演奏会で取り上げられた作曲家別の演奏回数を取り上げます。その年その年の特徴があり、面白く見る事が出来ます。各オーケストラの定期演奏会で取り上げたい音楽はその年のトレンドを表すもので、クラシックファンの動向を知る事にも通じます。
作曲家別演奏回数ランキング
第 2位:65回 ベートーヴェン
第 3位:43回 ストラヴィンスキー
第 4位:39回 ブラームス
第 4位:39回 R.シュトラウス
第 4位:39回 チャイコフスキー(没後125年)
第 7位:38回 ブルックナー
第 8位:36回 バーンスタイン(生誕100年)
第 9位:32回 シベリウス
第10位:31回 ラヴェル
首位争いについて
今年も昨年に続いて、モーツァルトが第1位獲得です。ベートーヴェンは第2位に甘んじました。この現象は昨年に続き2度目です。ベートーヴェンの人気が無くなった訳ではなく、2020年はベートーヴェンの生誕250周年があるために、意図的にセーブしているとも考えられます。
常連の作曲家
ブラームス、チャイコフスキーは常連で、ほぼ例年通りと言ったところです。R・シュトラウス、ブルックナー、シベリウス、ラヴェルも毎年顔を出したり出さなかったりとランキングぎりぎりの作曲家ですので、これらも特に変わりなく人気を保っていると言えそうです。
躍進作曲家
バーンスタインが初めてランキング入りしました。これは生誕100周年というアニバーサルのためです。しばらくは顔を出す事はないでしょう。ストラヴィンスキーは、ずっと圏外だったのがいきなり第3位と大躍進です。『春の祭典』の演奏が多かったのでしょうか。
2018年度曲目別演奏回数
これからは定期演奏会の曲目を取り上げます。曲名はその年度によって全く別物となっています。年度毎の傾向とかあまり見えてこないものですから、こちらはこんな曲が入ったかと言った事を思っていただければ十分かと思います。
曲目ランキング
第 2位: 9回 ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」
第 2位: 9回 ラヴェル ピアノ協奏曲
第 4位: 8回 バーンスタイン 交響曲第2番「不安の時代」
第 4位: 8回 ブラームス 交響曲第2番
第 6位: 7回 ドヴォルザーク 交響曲第7番
第 6位: 7回 ドヴォルザーク チェロ協奏曲
第 6位: 7回 マーラー 交響曲第4番
第 6位: 7回 シューマン 交響曲第3番「ライン」
第10位: 6回 ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲
第10位: 6回 バーンスタイン 「ウェスト・サイド物語」よりシンフォニック・ダンス
第10位: 6回 チャイコフスキー 交響曲第5番
曲目回数全体を見て
ベートーヴェン、ブラームス、チャイコフスキーと言った常連組は例年通りです。作曲家別ではモーツァルトが第1位でしたが、曲目別では各曲に分散されたせいでしょうか、1曲もベストテンに顔を出していません。面白い現象です。逆にどんな風に分散されたのか興味があります。
特記すべき作曲家
第1位にラフマニノフの『ピアノ協奏曲第2番』が入りました。没後75周年のアニヴァーサリーという事で第1位です。ラフマニノフの最も人気の高い楽曲です。そして、もう一人、バーンスタインが2曲もランクインです。こちらも、生誕100周年でした。
2曲の中でも『交響曲第2番』「不安の時代」が4位というのは驚きです。8オーケストラがこの曲を演奏したわけですので、日本のオーケストラも変わってきたのかなと感じています。『ウェスト・サイド物語』で、バーンスタインを代表させるものと思っていましたから。
まとめ
『日本オーケストラ連盟ニュース』103号の記事「2018年度定期公演ランキング」を簡単に見てきました。なかなか興味深く思える内容でした。現在の作曲家や曲目の人気度が良く分かり、定期演奏会とはいえ、ファンを無視して、プログラムは組めないですからね。
気は早いですが、来年はまた違った傾向を示すのかどうか、関心は高いものがあります。皆さんにも『日本オーケストラ連盟ニュース』はお勧めです。各オーケストラの動向や最新ニュース、プログラム案内など、様々な情報を得る事が出来ます。ぜひ、読んでみる事をお勧めします。