人様の懐具合を気にするのは良くない事と知りつつも、日本のオーケストラ楽員の年収はどんなものなのかと皆さん興味を持たれていると思います。巷間言われているように、本当に日本のオーケストラの年収は低いのかどうかを調べてみる事にしました。
年収はどのオーケストラも部外秘でしょうから、正式な数字は我々には分かりません。しかし、「日本オーケストラ連盟」が発行している『日本オーケストラ年鑑』(2018年版)には楽団員人件費の金額が載っていますので、単純にこの金額を楽団員数で割った数字で比較しました。
この計算で出てきた数字は実態とそう離れていない数字と思います。今回の結果は「えっ、そうなの」と驚かれるような結果となっています。御三家と呼ばれているオーケストラがベスト3を占めませんでした。さて、どのオーケストラがどんなランキングになっているのか見ていきましょう。
計算方法
「日本オーケストラ連盟」が発行している『日本オーケストラ年鑑』(2018年版)の支出欄に楽団員人件費という項目が載っています。
指揮者・ソリストのギャランティは事業費に、役員・事務局員の給与は運営管理費に計上されるとありますから、楽団員人件費は純粋に楽団員の給与に使われているのではないかと思うのです。
ですから、単純に楽団員人件費÷楽団員数で平均年収を出しています。
ただ、エキストラの人件費は事業費に計上されているのか、楽団員人件費に計上されているのか不明です。
あくまでも目安のひとつとして捉えてほしいと思います。
第10位 群馬交響楽団
平均年収:647万円(平均年齢47.7)
1945年に群馬県高崎市に設立された地方交響楽団としては老舗のオーケストラです。事業費の50%以上を地方自治体・文化庁からの支援に頼っており、オーケストラとしての運営は決して安定しているとは言えません。しかし、第10位にランキングされる事は地方オケとして立派です。
第9位 仙台フィルハーモニー管弦楽団
平均年収:650万円(平均年齢48.4)
1973年に宮城フィルハーモニー管弦楽団として発足した組織が、1989年に現在の名称へ変わり、現在まで活動しています。演奏会収入が約52%。それ以外は、地方自治体・文化庁・民間支援に頼っています。しかし、地方オーケストラでこの年収は高いものです。
第8位 名古屋フィルハーモニー交響楽団
平均年収:678万円(平均年齢44.0)
1966年に愛知県名古屋市に設立されたオーケストラです。名古屋市とトヨタ自動車からの支援を受けているため、地方オーケストラですが、財政的に安定しています。地方オーケストラとしては10億円規模の予算を持つオーケストラで、平均年収も上位に来ています。
第7位 日本センチュリー交響楽団
平均年収:689万円(平均年齢48.0)
1990年に大阪府運営の大阪府音楽団を発展的に解消する形で、大阪センチュリー交響楽団として設立され、2011年4月1日に現在の名称となりました。大阪府からの助成金廃止により、一時存続が危ぶまれる危機がありましたが、個人・法人のパートナー制度などにより頑張っています。
第6位 読売日本交響楽団
平均年収:706万円(平均年齢43.6)
1962年に発足したオーケストラ。新聞社が母体となるオーケストラは、世界でもこのオーケストラだけです。日本のオーケストラ御三家のひとつ。読売グループから年間14億円の支援があり、財政規模も23億円と安定したオーケストラゆえこの平均年収となっています。
第5位 京都市交響楽団
平均年収:747万円(平均年齢46.0)
京都市に本拠を置く、京都市が運営するオーケストラとして、1956年に発足。現在では京都市の運営を離れ、財団法人化しました。京都市から約7億円の支援を受け、財政的に安定したオーケストラです。予算規模も10億円を超え、地方オーケストラとしては恵まれたオーケストラです。
第4位 東京都交響楽団
平均年収:781万円(平均年齢45.5)
1964年の東京オリンピックの記念文化事業として、1965年に東京都によって財団法人として設立されました。日本のオーケストラ御三家のひとつ。東京都からの助成金が10億を超えており、財政的に恵まれているオーケストラです。安定した財源の元、この平均年収となっています。
第3位 札幌交響楽団
平均年収:782万円(平均年齢44.4)
北海道に本拠を置く唯一のプロ・オーケストラです。1961年発足。札幌市と北海道新聞に支えられているオーケストラといえます。財政規模も約10億円あり、地方オーケストラとしては成功しているオーケストラといえるでしょう。ランキング第3位は立派なものです。
第2位 オーケストラ・アンサンブル金沢
平均年収:835万円(平均年齢48.0)
1988年石川県と金沢市が中心となり設立したオーケストラです。地方自治体がバックについているため、財政的には安定しています。また、フル・オーケストラではなく、2管編制の室内楽オーケストラで34名と団員が少ない事もあり、この平均年収です。
第1位 NHK交響楽団
平均年収:1140万円(平均年齢44.4)
1926年に設立された日本で最も伝統あるオーケストラです。1951年からNHKの支援を受けるようになり、財政的に最も安定しています。2017年は14億円の支援があり、民間支援と合わせて16億5千万円、演奏会収入が13億円以上あり、予算規模が約30億円となっています。
財政的に恵まれているために、平均年収も1千万円を超えています。この平均年収はドイツの中堅オーケストラと同程度です。収入が安定していれば、オーケストラ活動に専念できるようになり、ますます、オーケストラのレベルは高くなるのは当然です。
まとめ
ランキングに上がったオーケストラは平均年収が600万円以上という結果になりました。これは単純平均ですから、実際の収入はある程度の幅があります。コンサートマスターやパートリーダーの人たちと一般団員の差は100万円位の幅があると思います。
やはり、日本のクラシック音楽に対しての公的支援は低いものと言えるでしょう。文化的背景などがあり、外国とは簡単に比較できませんが、現在はどの自治体も赤字体制が多くなり、将来的な見通しはあまり明るくはありません。日本のオーケストラよ、頑張ってと言いたいです。