演奏の良し悪しが分かるようになるための方法はただひとつ【耳を育てる方法を徹底紹介】

ライヴでもCDでも同じですが、出来る事なら良い演奏で聴きたいと思います。そのために演奏の良し悪しを判断できる耳を持ちたい方は多くいる事でしょう。音楽を聴く楽しみが増えてきますし、この演奏家は将来有望だ、などということも分かってきます。

私がクラシック音楽を本格的に聴き始めてから40年以上過ぎます。その日のコンサートが良い出来だったのかどうかは何となく分かるようになったとは思っています。それでもなお本当に自分の判断は正しいのかどうかは正直分かりません。

どうすれば演奏の良し悪しが判断できるのか、正式な理論に基づいた方法などは無いと思っています。ここでは、私がやってきた事を下敷きにしてその方法を考えてみたいと思います。

プロのオーケストラはいつでも最高のパフォーマンスを披露してくれるのではないのですか?
演奏家だって人間だから、調子がいい日とそうでもない日があるのだよ。毎回上手くいくわけではないのだ。

オーケストラのシャワーを浴びる

とにかく演奏を数多く聴く事が最大の勉強です。数をこなしてくると、次第にオーケストラの違いや、指揮者によっての違いなどが分かって来るようになります。

定期会員になる

まだ、私がクラシック音楽初心者だった頃、自分なりにクラシック音楽のレパートリーを増やしたいために、オーケストラの演奏を数多く聴きに行こうと思いました。そこで考えたのがNHK交響楽団(N響)と新日本フィルハーモニー交響楽団(新日本フィル)の定期会員になる事です。

N響は日本一のオーケストラで指揮者もソリストも世界的な演奏家が聴けるため、新日本フィルは小澤征爾の演奏が聴けるために定期会員になったわけです。定期公演では自分の知らない曲も豊富に聴く事ができます。

外国のオーケストラを聴く

外国のオーケストラを年10回は聴くようにしました。毎年各国から著名オーケストラが来日します。ベルリン・フィル、ウィーン・フィル、コンセルトヘボウ、ボストン交響楽団、バイエルン放送響など懐具合が許す限りは聴きに行きました。

そうする事によって有名な指揮者も何人も聴く機会を持ちました。カラヤンは勿論、クライバー、マゼール、バーンスタイン、アバドなど様々な指揮者に出会えたのはとても有益だったと思います。

東京都交響楽団のファミ・コンを聴く

東京都交響楽団(都響)のファミリー・コンサートも良く聴きに行きました。現在はどうなのか分かりませんが、一番は入場料が安かったからです。A席で1200円位だったと記憶しています。名曲コンサートですから有名な楽曲しかやりませんが、何より生オケが聴ける事は魅力でした。

その当時は東京都に住んでいたので、往復はがきで申し込む無料のコンサートも良く行っていました。もちろんオーケストラは都響です。都響の実力は当時からN響並みでしたからずいぶん楽しんだ事は忘れられません。

知らないプログラムの予習

知らない曲がメインになっていると、演奏会の前にCDを買って予習しました。そうやって演奏会に行くとこの指揮者とCDの指揮者はこんな違いがあると比較もできますし、この後こう演奏するはずだと不安なく楽曲に没頭できます。

余談ですが、この事で自分のCDライブラリ(最初はLPでした)が充実してきました。好きな楽曲のCDばかりを買っていると変な偏りが出てきますが、これをする事によってある程度音楽史を俯瞰できるようなライブラリになってきます。

昔はYouTubeや音楽専用サイトなどなかった時代でしたから、こういった事をするしかなかったのです。今はその点は楽になりました。

アマチュアオーケストラを聴いてみる

とても簡単に出来る事は大学のオーケストラを聴く事です。町のガクダンこと市民オーケストラよりはとても上手いですから、是非聴いてください。入場料も安いので懐の心配も必要ありません。

プロのオーケストラの演奏とは違う事が分かるはずです。指揮者の解釈やテンポの問題では無くて、響きの貧弱さや、音色のくすみ、ダイナミックさに欠ける事などが直ぐに分かります。

音大オーケストラと一般大学のオーケストラを聴き比べるのも面白いです。こうしてひとつひとつの違いを見ていくと自然と何が良くて何が悪いかが分かってきます。勿論、音楽を楽しむことが前提です。粗捜しをするのではなく演奏に浸ってみる事で何が足りないのか見えてきます。

室内楽を聴く

ピアノやバイオリンのリサイタル、弦楽四重奏を聴くのも良い勉強になります。リサイタルの場合、一挺のヴァイオリンまたは一台のピアノでの真剣勝負ですから、その楽器本来の響きを肌で感じる事が出来るのです。

弦楽四重奏もオーケストラを完璧に縮小したものですから、弦楽器ひとりひとりの音が伝わって来ます。室内楽は楽器本来の音色、響きなどを感じる場面が多くあります。

ソリストのテクニック、表現力、音色の深さや美しさが直接的に分かります。演奏者自身をさらけ出しているので、上手いかどうかは分かってくるはずです。良い演奏者は音楽を楽しみながら、あるいは悲しみながら弾いているかどうか聴衆の心にすうっと入ってきます。

一台のピアノが自分の心の中に感動を生み出してくれたか、楽しみや喜び、悲しみが伝わってきたか、演奏者のテクニックに騙されることなくそう感じられればそのリサイタルは良い演奏会だったのです。

弦楽四重奏はオーケストラの原点と言われていると聞いたことがあります。
オーケストラをを極限まで小さくしたものなんだ。アンサンブルだけでなくソロも楽しめるよ。

オーケストラの違いが分かってくる

日本のオーケストラの定期会員になり、各国のオーケストラを聴き、また様々なコンサートやリサイタルを聴き、最低でも月3回はクラシック音楽を生で聴く機会を設けていました。そんな生活を続けていくと、遅くても1年位でオーケストラの違いが分かってきます。

N響、新日本フィル、都響と日本のオーケストラの響きの違いも分かってきます。外国のオーケストラの音色や響きは日本のものとは比較にならない事も分かってきました。

ベルリン・フィルやシカゴ交響楽団などの上手さは録音で作られたものではなく、ソリスト級の演奏家が集まっているオーケストラは掛け値なしに違っている事も実際に良く分かってきます。

また、ドイツ系のオーケストラとフランス系のオーケストラの違いなども次第に分かるようになります。音楽を聴く耳がこうやって出来てくるのです。

やり方が違っても結論はひとつ

自分自身がやってきたことを書いてきましたが、とにかく大事なのは音楽を聴く回数を増やす事、この一言につきます。初めは分からなくても10回、20回と経験を積めば分かって来るものです。そして同時に自分の好みも分かってきます。

それは、自分の中にある基準が出来た事の証明です。そこまで来たら自分なりの音楽の評価ができると思います。評論家が言う事も参考にはしますが、例え自分の評価と違っていても気にしない事です。

別の評論家は全く違う評価をしている事もよくある事だからです。よく音楽雑誌でベストCDの投票をしていますが、評論家によって評価は様々な事を思い出してください。

ヴァイオリンは弾き込めば弾き込むほど音色は良くなります。人間の耳も聴けば聴くほど磨かれていくのです。試行回数をいかに多くするかを考えましょう。そうすれば自然と音楽の良し悪しが見えてきます。

やり方は人それぞれです。自分に合った方法を見つけてください。共通するのは演奏を数多く聴くという事です。時間はかかりますが、それが一番の近道だと確信しています。

ひとつだけ注意点をあげると決して粗探しをしない事です。悪い点だけを探すようになると木を見て森を見ずの状態になってしまいます。音楽は楽しむものです。それを忘れてはいけません。

とにかく演奏を数多く聴く事が一番の近道なのですね。
私にはそれしか考えられないのだ。様々なオーケストラや様々なジャンルを聴く事が大事だと思っているよ。

まとめ

演奏の良し悪しが分かるようになるためのやり方をみてきました。結論は演奏を聴く回数を増やす事しかありません。他の方法を知っている方がいたら教えてもらいたいです。

ネームバリューに騙されてもいけません。昔、ピアニストのホロヴィッツの来日演奏会で「ひびの入った骨董」と論評した評論家の吉田秀和は音楽の本質を分かっている人物でした。今でも目指すのは彼のような耳を持つことです。

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