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カラヤン 録音



帝王としてヨーロッパ楽壇に君臨したヘルベルト・フォン・カラヤン。死して30年経つというのに、カラヤンの残した膨大な録音の数々は手を替え品を替え商品化され、発売されるやいなや、今でもクラシック音楽界としては生前と同じようにヒット商品となって売れています。

デジタル以前の録音でも、今では、デジタル・リマスター化されて、次々に状態の良いものに置き換えられ、市場に投入されています。これがまた売れているのですから、ドイツ・グラモフォン始め、多くのレコード会社も競って企画物を作っては売り出してる状況です。

恐るべし、カラヤン!忘れ去られるどころか、未だに、これだけの人気を保っているのです。カラヤンの残した膨大な録音の数々はクラシック音楽界の遺産でもあります。これら、カラヤンの遺産についてや魅力、また記録面などをこれから伝ていきたいと思っています。

カラヤンの遺産

record
カラヤンの残した膨大な録音には、これは音楽の神様の領域に達した物と思われるものが多く存在します。特にこれは人類のベストではないかと思われるものまでも存在しています。音楽の真髄がここにあり、カラヤンの魅力が伝わってきます。これらは、まさにカラヤンの残した遺産です。

ベートーヴェン交響曲全集や、『白鳥の湖』、『ツァラトゥストラはかく語りき』、『惑星』などはその際たる物です。その他の数多くの楽曲にも、カラヤン印が刻んであり、そのグレードの高さは見事な物です。カラヤンの音楽には本当にこれは聞くに堪えない録音という物がありません。

カラヤンの作る「美」の素晴らしさ。カラヤン・レガートと呼ばれた音楽の技法は、カラヤンが考えた音楽美を表現するために発想されたものでした。それがカラヤンの良さをどれだけ上手く聴衆たちに伝えたのか、これだけ膨大な録音・録画のなかで確認する事がで出来ます。

カラヤンの録音に関する記録は、もうこれからの指揮者には破られそうもない記録ばかりです。録音曲総数、録音アルバム総数、レコード・CD売り上げ総枚数などはまさに偉大なる遺産としか言えないものになっています。さすがは帝王カラヤンたるゆえんがここにもあります。

カラヤンの録音へのこだわり

カラヤン
カラヤンはレコード、デジタル録音、CD、映像メディアをいち早く重視し、これらを最大限活用することに情熱を注ぎました。彼の総売上枚数が1億枚を超えたのが私がクラシック音楽ファンになって数年後だったような気がします。それが今では2億枚にまで達しています。

レコーディング・プロデューサーのウォルター・レッグはこう言っています。「彼のレコードが受け入れられた要因としては、「鉱脈占い師的な本能」を発揮し、どんな作品からも美しい旋律線を紡ぎ出すことができたことが最大の理由だ」。録音に対する意識が人とは違っていたのでしょう。

スタイリッシュな流線型サウンドが大衆の耳をひきつけたことなども挙げられますが、それと同時に、「カラヤン・ブランド」のイメージ戦略が助けになったことも間違い無いでしょう。彼はそのイメージに見合うだけの内容を持つ音楽だけではなくスター性を提供してきたのです。

カラヤン独自の演奏法

カラヤン
カラヤンは伝統的なドイツ・オーストリア音楽の系譜に連なりながら、自己流の音楽をやった人です。これをスタンダードとするには、あまりにもレガートが過剰であり、リズムやアンサンブルの細かいズレにも拘りません。あくまでもカラヤンは自分の道を究めた人物だったのです。

おそらくカラヤンは、自分の体にしみ込んだ拍節感と後天的なレガート志向の噛み合わせから時折生じるズレを、音楽の大きな流れの中でダイナミズムや高揚感に還元させることができると考えていたのでしょう。そのやり方は多くの成功例を生み出しました。

目を閉じて指揮をするスタイルも異様です。これは神秘主義の態度に近いものです。一方で、聴きやすいものに仕立てあげる合理主義的な面も備えていました。神秘主義の面と合理主義の面とを無理やり合体させたような彼のスタイルを指揮者のスタンダードとみなすことには無理があります。

カラヤンが望んだ音楽

カラヤン
カラヤンは、自身の目指す音楽的境地について、「私が常に到達したいと望んでいたのは、フルトヴェングラーの夢想とトスカニーニの厳密さを結びつけた境地だった」と語っていました。嫌っていたフルトヴェングラーの名を出すあたりが面白いです。憧れの部分も存在したのだと思います。

フルトヴェングラーは後期ロマン主義、トスカニーニは新即物主義者と全く対極的にいる指揮者でした。その二人を引き合いに出してこういう言葉を語るカラヤンはとても賢い人物だと思います。ただ、カラヤンはトスカニーニが好きだったとも言っています。自分と同じ路線ですからね。

カラヤンは自身の言っていた音楽的境地に辿り付けたと思っていたのでしょうか。今となってはカラヤンからその答えを聞き出すことは不可能となりました。しかし、その音楽的境地に接近した人物だったからこそ、カリスマ性が生まれ、あれほどの人気があったのだと思います。

カラヤンの美学

カラヤン指揮
カラヤンの音楽は、音楽の流れが絶対に途切れません。カラヤンの指揮は、常に音楽が止まる瞬間がなく絶えず流れています。それは指揮を見ていてもわかることですが、指揮の動きも決して止まる瞬間がなく、常に、それがほんの指の一本でも、必ず動いています。

息をしている事と同じ様に「音楽が流れている」ということです。そして、「響きが美しい」のです。究極的に美を求めた人だったと思います。美しくない響きは好まない。だから基本的に美しく響かない音楽は、彼に取って演奏するのが難しかったかもしれません。

最終的に全てにおいて、「美」というものに対する彼の審美眼が、すこぶる高かったのだと思います。指揮者にとって最も大切な物いくつもを持っていて、「美」のためなら、それを総動員して演奏に立ち向かう、そうする事が容易く出来た人物だったに違いありません。

音楽の深さ

カラヤンの音楽性
あれほどにダイナミック・レンジの大きな音楽をする人はいませんでした。最弱音も繊細で美しいものでしたが、フォルティッシモは本当に強烈な迫力でした。録音を聴いていておおっとと思ったことも何度もあります。「なるほど、作曲家はそう考えていたのか」と納得したものです。

そして何より、彼の音楽は作品の掘り下げ方がやはり尋常ではありませんでした。実に様々な面から深く研究していて、自然に、極めて普通に聴かせるまでに練りに練ってから演奏に臨むという、その背景があってこその演奏なのだと感心します。録音が輝きを増すのも当然です。

カラヤンはそこまでマスターしていたのですね。だから、他の演奏と比べたときに、誰が聞いても「やはりこちらの方がいいな」と思うのがカラヤンの音楽だと思います。でもその裏には彼の、莫大な時間をかけた勉強の積み重ねがある事は言うまでもありません。

カラヤン音楽の普遍性

カラヤン

録音を他の指揮者と聴き比べると、カラヤンの音楽は敢えて何も工夫していないように聴こえますが、その裏で彼は、細工なく自然にそれが流れ出てくるように研究していたのだと思います。カラヤンの音楽には、不自然な所がありません。実に明瞭、明確な音楽です。

実際に自然が大好きだった人で、その止まるところのない自然の「流れ」が好きだったようです。彼の奏でる音楽が自然体に聴こえてくるまでには、様々な工夫、試行錯誤があったと思います。自然に風が森の中を吹き抜ける、それを音楽でどう表現するかを様々考えた事でしょう。



こだわりを持って音楽をしないと、流れが止まってしまうということを、練習の時によく言っていたそうです。ベルリン・フィルと30数年、共に音楽をしてきたからこそ、彼らと一緒にそこまで到達できたとのだと思います。普通だと思わせることの偉大さを、今にして再認識しています。

カラヤンの偉大なる記録

カラヤン
カラヤンが残した遺産とはその音楽的なものだけではなく、数字上もうこれは破られないだろうというもの凄い記録も残しています。あれだけ熱心に最高を追求して演奏会や録音をしてきたカラヤン。ギネスに申請したら間違いなく「認定」となる記録ばかりです。

録音曲数

1人の指揮者が生涯録音した曲数1,189曲!
これはもう誰も破ることの出来ない記録でしょう。大作曲家の交響曲などの大曲ばかりではなく、いわゆるショートピースと呼ばれる小品もこつこつと録音した結果です。彼は演奏会に足を運べない人たちのためにも小品を録音したのです。

演奏会回数

生涯の演奏会数3,198回!
指揮者として活躍した62年間でこの数ですから、これももう破る者は出て来ないのではないかと思われます。これは62年間1週間に1回はコンサートを行なっていた計算になります。凄いとしか形容できません。しかも、その内容のレベルの高さも凄かったのです。

録音アルバム数

録音アルバム数、驚異の900点以上!
この数も人気指揮者でなければこれだけにはならなかったでしょう。ドイツ・グラモフォンを始めとする数社のレコード会社と組んで好きに録音させてもらった結果です。年間14枚のアルバムを毎年出し続けた計算になります。この記録も破る人物は出てこないでしょう。

レコード・CD売り上げ枚数

レコード・CD売り上げ枚数2億枚以上!
カラヤンのアルバム約900点の総売上枚数です。クラシック音楽界のレコード・CD売り上げ数としては突出しており、ポピュラー音楽界の歌手たちの世界と肩を並べられるような数字です。クラシック界ではもう絶対にこの記録も破られる事はないでしょう。

3回以上録音した楽曲数

複数回録音した楽曲数142曲!
どれほどカラヤンがこだわりの強い指揮者だった事が伺われます。最高の音楽を追求した結果です。DVDも入れると、最高で10回録音し直した曲は、チャイコフスキー『交響曲第6番「悲愴」』です。これを筆頭にしてベートヴェンの交響曲全集など多くの楽曲を何度も録音し直しています。

来日コンサートの観客総数

観客動員数 約300,000人!
合計11回来日しており、毎回全ての席が売り切れ完売となりました。彼が病気でキャンセルしたと時は2割ほどチケットのキャンセルが出ました。人気の高さが分ります。毎回チケットの争奪戦となり、私も徹夜して手に入れました。私も300,000人の幸せな人間の1人です。

生誕100年記念アルバム販売数

『アダージョ・カラヤン』販売数500万枚!
アダージョとはゆったりとした音楽を表す音楽用語で、このアルバムはカラヤンの録音した楽曲から、ゆっくり目の音楽だけを抜き出したアルバムでした。この売り上げにも驚かされました。

まとめ

カラヤンが亡くなって、はや30年。ポスト・カラヤンは誰がなるのか注目して来ましたが、彼を凌駕するどころか肩をも並べられない指揮者ばかりでした。彼がシェフだったベルリン・フィルの後釜を見ても、カリスマ性を感じられない人ばかりです。

改めてカラヤンの凄さを実感しています。彼のような自己の音楽性があって、カリスマ性があって、誰もが納得するような音楽を生み出せる指揮者は未だ出現していません。もう、巨匠的カリスマ指揮者は不要な時代なのでしょうか。

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