カラヤンはクラシックファン以外の人にも名前を知られている偉大なる指揮者でした。惜しくも1989年に亡くなりましたが、今でもカラヤンのCDは売れまくっています。カラヤンの企画物のCDを出すとクラシック業界としては異例の売り上げを叩き出すのです。
亡くなって30年以上経つ今でもなぜカラヤンの人気が衰えないのでしょうか。それにはカラヤンのカリスマ性や音楽の完璧さなど、他の指揮者には無いものを多く持っていたからです。カラヤンの人気が衰えない理由を一つ一つ検証していきたいと思います。
1.カラヤンのカリスマ性
カラヤンにはカリスマ性がありました。他人を統率する才能に優れ魅力を持った人物でしたが、近寄りがたいオーラを燦然と放って、まるで神のような存在だったのです。オーケストラホールに登場するだけでその場の雰囲気がガラッと変わりました。
ルックス、威厳さ、指揮する姿、立ち居振る舞い、どれをとっても完璧なほどカラヤンは光り輝いていました。現代の指揮者に無いカリスマ性があるため、今でもカラヤンの人気は衰えずCD、DVDは売れ続けているのです。
2.カラヤンの秘密性
カラヤンは自分が努力している姿を絶対に公開しませんでした。さも自然に自分の内側から音楽が湧いてきたように常にオーケストラに向かっていたのです。プライベート自体マスコミにはかたくなに立ち入りを許さなかった人物でした。それがまた神秘性を増していきました。
大人気の指揮者ですが、プライベートの写真が余り出回っていないのはそのためです。そこにはカリスマ性を作り出すカラヤン側の戦略も絡んでいました。秘密性を維持する事で謎を秘めたカラヤン像が出来上がり、それが今でもカラヤンの人気が衰えない理由となっています。
3.カラヤンブランド
カラヤンは自分の写真や映像を取られる事を異常に嫌いました。写真やビデオ撮影を許す時にはカラヤン自信がうるさいぐらいカメラマンに注文を付けました。それも木之下晃など気に入ったカメラマンにしか取らせなかったのも有名な話です。
そして何より拘ったのが、汗をかいて指揮をしている姿は絶対に撮影禁止でした。自分の苦労の痕跡は一切見せたくなかったのです。神秘に満ちたカラヤンであり続けました。その事によりカラヤンはブランディングされ、今でも人気のある指揮者でいられるのです。
4.カラヤンのレパートリーの広さ
カラヤンのレパートリーの広さは驚くべき物でした。パッヘルベルなどのバロックからシェーンベルクなどの現代音楽まで守備範囲の広さは凄いものがあります。録音してきた楽曲は、普通、大指揮者になってからは録音しないような小品も取り上げてきました。
マイナーな作品でも幅広く万遍なく録音してきたカラヤン。メジャーな楽曲は勿論の事、マイナーな作品も録音していたため、クラシック入門者からクラシック通といわれる人までの選択の幅が広く、今でもカラヤンの人気が衰えずCDは売れ続けているのです。
5.カラヤンの音楽性
音楽的特徴はカラヤンレガートと呼ばれるレガート奏法(連続する2つの音を途切れさせずに滑らかに続けて演奏する事)が最大の特徴で、弦の輝きを失わせません。どんなに金管楽器を響かせても内声や弦楽器がしっかりそれをサポートしています。
ベルリン・フィルはコントラバスが一足先に音を出します。結果として重量感のある演奏を可能としました。カラヤンが作り上げた究極のオーケストレーションです。音楽の美を追求するため、先達たちがやっていない先進的な事を成し遂げて来たからこそカラヤンの人気が衰えないのです。
6.カラヤンの完璧さ
カラヤンは合奏力の完璧な正確さを要求しました。そして、より洗練さを求めたのです。べルリン・フィルに対する練習量はカラヤンが歳を重ねるごとにより増えていきました。完璧性の追求には終わりがなかったためです。
この完璧さゆえにカラヤンの録音ははずれがないとの信頼を勝ち得ました。演奏にむらが無いのです。誰にでも手本になるような音楽を残しました。カラヤンの信頼度は益々高まり、結果的に世界的に爆発的な人気をもたらしCD、DVDは売れ続けているのです。
7.カラヤンの音楽解釈
カラヤンの音楽解釈の普遍さは並外れた正確さが土台にあったからこそ実現できたことでした。いつの時点でも己の音楽を同じように演奏できるという事はその楽曲に対して十分に勉強が行き届いている事を意味します。いかに努力していたかを窺い知る良い例です。
音楽解釈とは楽譜をどれだけ深読みできるかとも言い換えられると思います。カラヤンの深い洞察力によって、音符の裏に隠れている事象まで探り出し、それを実際に演奏してきました。だからこそ、今でもカラヤンの人気が衰えないのです。
8.カラヤンの指揮
カラヤンの指揮は指揮棒を振り降ろした地点で音の打点を示すもので、見た目にも格調の高さがあります。ドイツのオーケストラは一般的に音が遅く出てきますから、カラヤンが打点を示したずっと後で音楽がドーンとなり始めます。彼はとても重量感のある音を求めたのでした。
カラヤンの指揮は見ているだけで感動します。指揮者という姿はかくあるべきという究極的な美しさが際立っているのです。目をつぶるなど非常に個性的ですが、指揮棒の動かし方は実に滑らか。だからこそ、カラヤンの指揮が見たくてDVDが売れているのです。
9.カラヤンの集中力
彼は指揮の時は目をつぶるようになりました。楽員の集中力と陶酔力を集めるために目をつぶり始めたと言われています。勿論、自身の集中力を高めるためにも必要な事だったのでしょう。
目をつぶる事には音楽の世界に没入させる魔法のような力があります。他の誰にも真似できないカラヤン独特のものでした。今の指揮者にもそんな事をする人はいません。カラヤンの人気が衰えない理由の一つでしょう。
10.カラヤンとレコードエンジニア
カラヤンは生涯数多くの録音を残しました。メジャーとの初めての契約はデッカ。その後、ドイツ・グラモフォンとEMIの契約となりますが、中でもドイツ・グラモフォンとは半世紀にわたって付き合いました。その中に彼が信頼できるレコード・エンジニアを見つける事が出来ました。
その名はギュンター・ヘルマンスとミシェル・グロッツ。異常なまでに音について神経質だったカラヤンを唸らせた2人でした。彼らがいたからこそカラヤンの最高の録音ができ、今でもCD、DVDが売れている理由の一つとなったのです。
まとめ
カラヤンの人気が衰えない10の理由を簡単に見てきました。カラヤンのカリスマ性や秘密性、彼の音楽の普遍性などが今でも人気が衰えない理由となっています。オーケストラ演奏や録音に対しての大変な拘りがあったからこそ、30数年経った今でも彼の音楽は現代に通用するのです。
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