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マリア・カラス

マリア・カラスと言えば、その美貌と圧倒的な歌唱力で聴衆を虜にし、1950年代にオペラの殿堂、イタリアのスカラ座で黄金時代を築いた20世紀最大の歌姫です。その独特な声は時に「金属音」と揶揄されることもありました。偉大な歌姫として成功しながらも、スキャンダラスな半生でした。

1952年1月16日、イタリアのミラノ・スカラ座で「マリア・カラスの伝説」は幕を開けました。最初に演じたのはソプラノにとって最も難易度が高いといわれるベッリーニの「ノルマ」でした。今まで誰も聴いたことのない完璧な彼女の歌声に聴衆は熱狂しました。

スカラ座の女王となったマリア・カラスは世界の名だたる歌劇場に次々と出演し、「カラス現象」と呼ばれる熱狂の渦を巻き起こします。王族や大富豪も押しかけ、カラスの舞台を見ることは、ひとつの社会的ステータスにまでなったのでした。

マリア・カラス略歴

マリア・カラス
マリア・カラスは1923年12月2日、ニューヨークで生まれた、ギリシャ系アメリカ人のソプラノ歌手。20世紀最高のソプラノ歌手とまで言われました。1936年にギリシャに渡りアテネ音楽院で学び、1938年アテネ王立歌劇場で『カヴァレリア・ルスティカーナ』でデビューしました。

1947年にはヴェローナ音楽祭で『ラ・ジョコンダ』の主役を歌い、1950年にはミラノ・スカラ座に『アイーダ』を、1956年にはニューヨークのメトロポリタン歌劇場に『ノルマ』を歌ってデビューし、それぞれセンセーショナルな成功を収めました。

レパートリーはイタリア・オペラのロッシーニ、ベッリーニ、ドニゼッティらのベルカントオペラから、ヴェルディ、プッチーニなど、リリコ・スピントやドラマティコの声質むけの役柄でも並外れて優れた歌唱を行いました。彼女の魅力には歌唱力の他に演技力も挙げられます。

オペラ史を塗り替えたマリア・カラス

カラスが生きたのは、映画の技術的進歩により映画人気が起こりオペラはどちらかというと押され気味の時代でした。オペラがかつての輝きを失いつつあった頃合いでした。この流れに歯止めをかけるために、カラスは、オペラを変えようと3つの戦いに挑みます。

  • 美の追求:ヒロインは見た目も美しくなければならない、と50キロ以上落とし、美しく変身しました。
  • 演技の追及:演じられる歌手ではなく、歌える女優を目指すべきだと唱え、手の先まで神経のいきわたった白熱の演技を追及しました。
  • 楽譜の追求:カラスは常に、楽譜に忠実に、そこに書き込まれた感情を表現しました。

常に完璧を求めるカラスの凄まじい努力は、見る人の心を揺さぶるオペラを作り出しました。この努力のおかげでマリア・カラス人気もうなぎ上り。20世紀最高の歌姫と呼ばれるまでになります。この頃、世界ではマリア・カラスとレナータ・テバルディの二人で人気を争うようになりました。

スキャンダルの後半生

マリア・カラスの後半生はスキャンダルの連続でした。その事により、ソプラノ歌手としての寿命も縮めました。でも、そうすることでしか生きられないカラスだったのでしょう。恋に生きて、恋から見捨てられ、一人の女としての、やりたい事を全てやり抜いてきた人物でした。

  • 母親の呪縛から逃れ、28歳年上のパトロンと結婚しデビュー。
  • 肥満からサナダ虫ダイエットで50キロ減。歌唱力・演技力・容姿が揃った世界の歌姫へ。
  • 大統領臨席のローマ歌劇場第二幕ドタキャン事件。大バッシングの嵐。
  • ギリシャの海運王オナシスと出会い、既婚者同士の許されざる恋にどっぷり。
  • 年上夫の泥沼離婚劇。
  • 最愛のオナシスがジャッキー(ケネディ元大統領夫人)と電撃婚の事実を報道で知り、どん底に。

オナシスとの恋愛は彼女の人生の全てを捧げたものだったのでしょう。オナシスが彼女を裏切るなどという事は全く考えていなかった事でした。彼女は打ちひしがれ、歌までも捨てようとしますが、親友がそれを救ってくれました。その後、世界ツアーを二人で行い成功させます。

歌姫の最後

晩年、舞台からは遠ざかっていったカラスは、後進の指導に情熱を注ぎました。ジュリアード音楽院で開いた教室マスタークラスでは、未来を担う若者たちへ向けて自身のメッセージを伝えています。1977年9月16日、パリにある自宅のアパートで、ひっそりと53年の生涯を閉じました。

まとめ

正直に生きたからこそ、こんな形で人生を終えるようになったのでしょう。オペラ歌手としての活躍は僅か10年に過ぎませんでした。「たられば」は良くない事ですが、普通にオペラ歌手として生きていたら、もっと輝いたのでしょうか。それとも、オアシス無しには無理だったのでしょうか。

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