音の大きい楽器ランキング

我々の生活の中で楽器は意外と身近な存在です。ピアノ、ギターなど家にある家庭は結構あるものだと思います。しかし、子供のピアノ練習は近所に迷惑かけているかなという方も多い事でしょう。楽器は音楽にもなるし騒音にもなります。

今回のテーマは楽器の音量ランキングです。我々が日常体験する騒音レベルも載せましたので、比較しながら楽器の音量を想像してみて下さい。意外と楽器の音量が大きい事が分かって貰えると思います。こんな事でも雑学として話のネタになりますよ。

ランキング基準

  1. 一般的な楽器である事
  2. 測定された音量の最大値を比較
楽器の音量比べをやるのですね。
ほとんどの楽器はうるさいぐらいの騒音レヴェルまで音量が大きいのだよ。

音量と騒音レベルについて

音量と騒音レベルについての一般的な関係を載せておきます。自分が体験している行動がどのぐらいの音量なのかが良くわかる事でしょう。また、楽器の音量の最大値はどのレベルなのかという比較が出来て分かり易くなるはずです。

《音量と騒音レベルの関係表》
音量(デシベル)
騒音レベル(距離)
30
郊外の深夜・ささやき声
40
市内の深夜・図書館・静かな住宅地の昼
50
静かな事務所・家庭用クーラー(室外機)・換気扇(1m)
60
静かな乗用車・普通の会話・洗濯機(1m)・掃除機(1m)・テレビ(1m)・トイレ(洗浄音)・アイドリング(2m)
70
騒々しい事務所の中・騒々しい街頭・セミの鳴き声(2m)・やかんの沸騰音(1m)
80
地下鉄の車内・電車の車内・布団たたき(1.5m)・麻雀牌をかき混ぜる音(1m)
90
犬の鳴き声(5m)・騒々しい工場の中・カラオケ(店内中央)・ブルドーザー(5m)
100
電車が通るときのガード下・液圧プレス(1m)
110
自動車のクラクション(2m)
120
ジェット(飛行機)エンジンの近く
130
落雷(至近距離)

(注)この表は「日本騒音調査(ソーチョー)」社の『騒音値の基準と目安』を参考にさせて頂きました。

楽器の音量ランキング

ここからがランキングの始まりです。各楽器の音量はどうなっているのでしょうか。打楽器や金管楽器は大きそうだというイメージはありますが、さて、実際はどうなのか見ていきましょう。

落雷に匹敵するような楽器などもあるのでしょうか?
もしかしたらそこまでの音量を出す楽器もあるかもしれないよ。

第10位 チェロ

最大音量:87㏈

楽器の音量ランキング第10位は何とチェロでした。騒音レベルで比べると、87㏈ですから騒々しい工場やカラオケ店に迫る音量です。第10位から騒音レベル大ですね。集合住宅で演奏したら苦情が殺到しそうなほどです。

しかし、コンサートホールでチェロがうるさいと感じる方はいないでしょう。騒音どころか心地よくコンサートホールに響きが溶け込んでいます。環境によって音の意味合いが違ってくるのですね。これだけの音量があるからチェロは素晴らしい音楽を生み出すのです。

第9位 ヴァイオリン、ギター

最大音量:90㏈

第9位はヴァイオリン。チェロよりちょっと上の音量となっています。ヴァイオリン奏者が難聴になりやすいと聞きますが、これだけ大きな音を耳のすぐ近くで聴いているわけですから無理もない話です。第10位からして騒音レベル大ですから、ヴァイオリン練習も注意が必要です。

身近な楽器ではギターもヴァイオリンと同程度の音量です。基本的に楽器はテレビの音量などの日常音よりは大きくなるように作られています。ですから、自宅での練習では近所迷惑にならないように心配りが必要です。

ヴァイオリンの音量はカラオケ店と同じ騒音レベルなのですね!
ヴァイオリンだけでなく身近なギターまでがそこまでの騒音レヴェルとは!家で弾く時は細心の注意が必要だね。

第8位 フルート

最大音量:92㏈

楽器の音量ランキング第8位は木管楽器のフルートでした。おしとやかな令嬢が演奏しているイメージがある楽器です。ですが、意外と大音量でびっくり!そういえばフルートの名手たちはほとんど男性でした。実際は男性のように肺活量の多い人向けの楽器なのです。

木管楽器はソロとなる機会が多い楽器ですから、この程度の音量がないとコンサートホールに響き渡りません。騒音ではなく、良い音楽作りにはこれだけの音量が必要なのです。不思議ですね、場面によって騒音となったり良い音楽となったりします。

第7位 チューバ

最大音量:97㏈

楽器の音量ランキング第7位はチューバ、ついに金管楽器の登場です。100㏈近くとは電車のガード下レベルなのですね。会話が成り立たなくなる騒音レベルです。常にこんな最大音で吹いているわけではありませんが、奏者の負担は相当なものになります。

いよいよ金管楽器の登場。チューバにしてもう電車のガード下と同じ騒音レベルなんて信じられません!
金管楽器の1番下の音量でさえこんなにもあります。金管楽器が如何にホールで目立つのかが良く分かりますね。

第6位 クラリネット

最大音量:98㏈

楽器の音量ランキング第6位はクラリネットです。木管楽器の中では最も音量があります。クラリネットはその構造上フルートと違って、木管楽器の中で最も大きく音量の幅が変えられる事も特徴です。しかし、ここまでの騒音レベルとは思いませんでした。

管楽器はソロ部分が多い楽器です。オーケストラの中に音が埋もれる様な事が無いようにこれだけの音量が必要なのです。コンサートホールの大きさを考えれば、これだけの音量があって丁度良い具合になります。

第5位 トロンボーン

最大音量:106㏈

楽器の音量ランキング第5位はトロンボーンです。ついに音量が100㏈を超えました。100㏈超えというと電車のガード下より高い数値です。きわめてうるさい騒音レベルになります。コンサート会場以外で吹かれたらたまったものではないですね。

トロンボーンは大編成の時でも多くて4人です。その場合でも4人は別々の音楽を吹いています。ですから、基本一人で自分のパートを奏でているのです。弦楽器の合奏に負けない音を奏でるにはこれだけの音量が必要となります。

第5位 ホルン

最大音量:106㏈

楽器の音量ランキングもう一つの第5位はホルンです。ホルンも100㏈以上出るとは驚きました。横で吹かれたら騒音以外の何物でもありません。騒音として捉えるとうるさ~い、勘弁してというレベルになります。

オーケストラの1楽器として考えると、ホルンの形状は音の出る部分が横を向いていますから響かせるためには音量が必要となります。ホルンの重厚な響きをコンサートホールに満たすためにはこれぐらいの音量が必要なのです。

第3位 グランドピアノ

最大音量:107㏈

楽器の音量ランキング第3位はグランドピアノです。しかもプロが弾くという条件が付きます。この辺になってくると数値の差はほんの少しです。人の耳の限界値に近づきつつあるのでしょう。これ以上の騒音レベルは危険な範囲に入ってくるのだと思います。

しかし、コンサートホールで、ポリーニやアルゲリッチの弾くピアノのフォルティッシモがうるさいとは誰も感じないでしょう。逆に残響がすうっと残ってより印象深い演奏になるはずです。あくまでもコンサートホールで聴かせるという前提の下で楽器は作られています。

グランドピアノって、もう自動車のクラクションに近い騒音なのですね!
これは私も驚きの値だよ。ホール一杯に響き渡るのも当然なのだね。

第2位 トランペット

最大音量:108㏈

楽器の音量ランキング第2位は金管楽器の王者トランペットです。ここまでくると騒音レベルは自動車のクラクションと変わりません。耳が痛くなるほどのレベルまで来ています。野球場で選手の応援として使われていますが、遠くまで良く聴こえます。

オーケストラの中でトランペットはソロが多い花形楽器です。音色といい響きといい気持ちの良い音楽を奏でます。ファンファーレでも中心の楽器です。コンサートホールでもよく通る響き。盛り上げる場面では欠かせない楽器となっています。

第1位 パーカッション、サックス

最大音量:110㏈

楽器の音量ランキング第1位はパーカッションでした。オーケストラではティンパニまたはバスドラムを指しています。ティンパニのフォルテはまるで雷鳴のような響きがしますからね。楽器の世界では騒音レベルMAXです。

しかし、『第9』の2楽章ではティンパニが大暴れして印象的ですが、うるさいと思った事などありません。むしろ、聴衆の興奮、感動をさらに盛り上げてくれます。やはり、コンサートホールでの楽器の存在は別なのです。

ドラムもここに入ります。小太鼓から大太鼓、シンバルなどうるさそうなのが沢山ついていますからね。近くで聴くと耳を塞ぎたくなってしまいます。聴衆として聴いていると不思議にうるさく感じません。面白いものです。

テナーサックスも同様です。ジャズには欠かせない楽器ですが、これでは普通の家では吹けないほどの音量です。集合住宅だったら全ての部屋から苦情が来そうですね。クラクションやジェット機に近い騒音ですからね。

第1位はパーカッション。至近距離の自動車のクラクションと同じ騒音です!
ティンパニで雷鳴を表現しているベートーヴェンの『田園』などの曲もあります。パーカッションが如何に凄い騒音レベルなのかが分かりますね。

番外編

100㏈には楽器ではありませんが、ソプラノ歌手が入ってきます。人間の声もかなり大きいのですね。考えてみればリサイタルではコンサートホール隅々にまで音が響いてきます。発声法もありますが、音量の大きさもあったのですね。

まとめ

取り上げた楽器は全て騒音として認識されるレベルで驚きました。それもかなりの大騒音レベルとなっています。しかし、オーケストラの楽曲としてコンサートホールで聴いてみると全体がフォルティッシモで演奏してもうるさいとは感じません。

楽器は2000人が入るコンサートホールで演奏する事を考えて作られていますから、それなりの大音量を必要とします。そこでは騒音ではなく、音楽という素晴らしい文化に昇華しているのです。場面が違うと騒音になったり音楽になったり不思議なものですね。

(注)音量データは「J-STAGE」の論文『各種楽器の音響パワーレベル』(志賀 勝氏、江沢定明氏共著)を参考にさせて頂きました。

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