NHK交響楽団は日本を代表するオーケストラです。予算規模、人気、実力、どれをとっても日本一。何といっても凄いのは音楽監督やそれ以外の客演指揮者たちの顔ぶれです。
これぞ世界的なオーケストラと言っても過言ではありません。「音楽はお金の音」という言葉があるように、予算がそれなりに潤沢でないとこれだけの有名な指揮者を呼ぶ事は不可能です。
NHK交響楽団の前身、新交響楽団からの客演指揮者の名前を挙げてみましたが、錚々たるメンバーに改めて驚かされました。これもひとえにN響の実力があっての事です。
NHK交響楽団の概要
客演指揮者を紹介して行く前に、NHK交響楽団の概要について簡単に説明しておきます。
NHK交響楽団の名称の変遷
1926年10月5日:新交響楽団(新響)発足
1942年5月から1951年7月:日本交響楽団
1951年8月から現在:NHK交響楽団
戦前から日本の西洋音楽を支え続けてきました。1951年からNHKが財政的な支援をする事もあり、現在のNHK交響楽団との名称を変更したのです。
常任指揮者
NHK交響楽団となってからの常任指揮者です。一時常任性を廃止しましたが、1996年から復活させました。
・1951年から1954年:クルト・ヴェス
・1954年から1957年:ニクラウス・エッシュバッハー
・1957年から1959年:ウィルヘルム・ロイブナー
・1959年から1962年:ウィルヘルム・シュヒター
・1965年から1995年まで常任制廃止
・1996年から2003年:シャルル・デュトア(途中から音楽監督)
常任指揮者になる以前から数回の客演がありました。よくぞデュトアを口説き落としたと当時話題になりました。
・2004年から2013年:ウラディーミル・アシュケナージ(音楽監督)
アシュケナージがNHK交響楽団の音楽監督を引き受けるとのニュースは衝撃的でした。
・2015年から現在:パーヴォ・ヤルヴィ(首席指揮者)
ヤルヴィも世界的な指揮者です。引き受けてくれたことを感謝しています。そして着実に今のN響は磨きがかかりました。
主な客演指揮者
NHK交響楽団に客演した主な指揮者を挙げていきます。一流な指揮者だけに絞りましたが、それでもこれだけの数になりました。
全て網羅しているわけではないので、有名な指揮者でも洩れている可能性がある事もご承知おきください。
フェリックス・ワインガルトナー
客演年:1937年
ワインガルトナーがN響(当時は新響)を指揮しに来ていたなど知りませんでした。ウィーン国立歌劇場の音楽監督を務めた指揮者です。フリーになって夫人と観光のつもりで来日したのでしょうか。
ジャン・マルティノン
客演年:1953年、1963年
1956年はヴァイオリニストのアイザック・スターンも来日していて、ベートーヴェンの協奏曲を共演。他に『幻想交響曲』やドビュッシー、ラヴェルを演奏。
ヘルベルト・フォン・カラヤン
客演年:1954年、1957年
1954年はチャイコフスキー『悲愴』、ベートーヴェン『運命』、ブラームス『第1番』を演奏。1957年は『運命』、モーツァルトを演奏。ベルリン・フィルと合同演奏会で東京体育館での演奏でした。
ベンジャミン・ブリテン
客演年:1956年
自身作曲の『鎮魂交響曲』を演奏。日本が起元2600年(1940年)祝賀のために委嘱した作品。しかし、祝賀に「鎮魂」という言葉は相応しくないとの事でこの作品は事実上お蔵入りとなっていた。
イーゴリ・ストラヴィンスキー
客演年:1959年
4回特別演奏会を開催。『火の鳥』と『ペトルーシカ』は演奏しましたが『春の祭典』はやりませんでした。作曲家といえど振るのが難しい作品ですから演目に入れなかったのかもしれません。
ヴィリー・ボスコフスキー
客演年:1963年
ベートーヴェン『交響曲第8番』などを演奏。おそらくウィンナ・ワルツも演奏したはず。
ヴォルフガング・サヴァリッシュ
客演年:1964年から度々客演
数えきれないほど来日しN響を指揮。ドイツ音楽の神髄を伝えまっした。1967年から1994年名誉指揮者、1994年から2013年桂冠名誉指揮者。
エルネスト・アンセルメ
客演年:1964年
得意の『展覧会の絵』他、ベートーヴェン『第7番』、ブラームス『第3番』、ファリャ、ラヴェルなどを演奏。
ロヴロ・フォン・マタチッチ
客演年:1965年から度々客演
1965年以降度々来日しN響を指揮。ベートーヴェン、ブルックナー、ワーグナーなどドイツ音楽を中心に演奏。1967年から1985年名誉指揮者。
ピエール・ブーレーズ
客演年:1967年、1995年
1967年はワーグナー『トリスタンとイゾルデ』、1995年はバルトーク『中国の不思議な役人』、ラヴェル『ダフニスとクロエ』を演奏。
オットマール・スウィトナー
客演年:1971年から度々客演
1971年から度々来日。ドイツ物を中心に演奏。1973年から2010年名誉指揮者。
ホルスト・シュタイン
客演年:1973年から度々客演
1973年から度々来日しN響を指揮。ドイツ物を得意としていた。1975年から2008年名誉指揮者。
ダニエル・バレンボイム
客演年:1973年
自身の弾き振りでシューマンの協奏曲、『交響曲第4番』、メンデルゾーン『ヴァイオリン協奏曲』(Vnピンカス・ズーカーマン)、チャイコフスキー『第4番』などを演奏。
ヴァーツラフ・ノイマン
客演年:1978年 ‐ 1990年
スメタナ『わが祖国』、ベートーヴェン、ヤナーチェク、ドヴォルザークなどを演奏。
ネヴィル・マリナー
客演年:1979年、2007年、2010年、2011年、2014年
マリナーは5回も指揮しています。初来日はブリテンなどのイギリス物中心のプログラム。
ギュンター・ヴァント
客演年:1979年、1982年、1983年
得意のブルックナーを始め、ベートーヴェン、シューベルト、シューマンなどのドイツ物を演奏。
キリル・コンドラシン
客演年:1980年
プロコフィエフ、ショスタコーヴィチ、チャイコフスキー、ドヴォルザークを演奏。
ヘルベルト・ブロムシュテット
客演年:1981年から度々来日
1981年からコンスタントに来日しN響を指揮。ドイツ物には定評がある。1986年から2016年名誉指揮者、2016年からは桂冠名誉指揮者。
イーゴリ・マルケヴィチ
客演年:1983年
『悲愴』と『展覧会の絵』という凄まじいプログラム。Bプロのみの演奏。
エサ=ペッカ・サロネン
客演年:1990年、2002年他
モーツァルト、メンデルスゾーン、マーラーなどの演奏。
エフゲニー・スヴェトラーノフ
客演年:1993年 ‐ 2000年
チャイコフスキー『第4番』、ブラームス『第3番』、カリンニコフ『第1番』などを演奏。
クシシュトフ・ペンデレツキ
客演年:1996年、2003年他
自作の『交響曲第1番』、日本人作曲家の現代曲を演奏。
ヴァレリー・ゲルギエフ
客演年:1996年、2002年、2009年
プロコフィエフ『交響曲第1番』、ムソルグスキー『展覧会の絵』、芥川也寸志、プロコフィエフ、チャイコフスキー『悲愴』などを演奏。
ズービン・メータ
客演年:1996年、2011年
1996年はマーラー『交響曲第1番』。2011年は震災直後の慰霊のためにベートーヴェン『交響曲第9番』を演奏。
ロジャー・ノリントン
客演年:2006年、2011年、2012年、2013年
モーツァルト『第39番』、ヴォーン・ウィリアムズ『交響曲第5番』、ベートーヴェン『運命』『田園』などを演奏。古楽器指揮者らしく弦楽器はノンビブラートの演奏。
クリストファー・ホグウッド
客演年:2009年
ベートーヴェン『第7番』、メンデルスゾーン『スコットランド』などを演奏。ホグウッドもモダン楽器を用いたピリオド演奏。
クルト・マズア
客演年:2009年
ベートーヴェン『交響曲第9番』を演奏。
ロリン・マゼール
客演年:2012年
スクリャービン『法悦の詩』などを演奏。
まとめ
NHK交響楽団に客演した有名指揮者をざっと挙げてきました。ここに挙げていない一流の指揮者もまだまだいますが、この顔ぶれを見ただけでもNHK交響楽団が如何に優秀なオーケストラかどうかが分かります。
ベルリン・フィルやウィーン・フィルへの客演が常連となっている指揮者がこんなにも多いオーケストラは、日本ではNHK交響楽団だけです。
NHK交響楽団のチケットは他の日本のオーケストラよりも高いかとは思いますが、定期会員になっていると素晴らしい指揮者やソリストと巡り合えるチャンスが多くなる事でしょう。