
若手指揮者の登竜門として世界的に知られるフランスのブザンソン国際指揮者コンクールの決勝が2019年9月21日にあり、青森県出身の沖澤のどか(32)が優勝しました。彼女は、2018年の「東京国際音楽コンクール」指揮部門の優勝者でした。才能が認められ嬉しい限りです。
同コンクールは2年に1度開かれており、日本人では、1959年に小澤征爾、1989年に佐渡裕など、合計で10名が優勝しています。まさにプロを目指す指揮者の世界的なコンクールで、現在活躍しているミシェル・プラッソン、ズデニェク・マーカルなどの指揮者を輩出しています。
沖澤のどか栄冠をつかむ
今年は270人が応募し、20人が本選に進出しました。そのうちアジアの国・地域の出身者が8人を占めた事は音楽界の変化の兆しかもしれません。沖澤のどかは、中国人とフランス人とともに決勝に臨み、リヒャルト・シュトラウスの交響詩「死と変容」などを指揮しました。
沖澤のどかは決勝で2人を打ち負かし、見事優勝に輝きました。また、観客が選ぶ「観客賞」と演奏したオーケストラが選ぶ「オーケストラ賞」にも輝いきました。1人で全ての賞を独占したわけです。日本人の女性では松尾洋子についで2人目の女性という事もその価値を高めました。
沖澤のどか優勝後のインタビュー
「指揮の勉強を始めて、最初に知ったコンクールがブザンソンだった。この大きな賞に恥じないように今から気を引き締めて頑張りたい」と語りました。また、「緊張もしたが、すごく楽しくやれた。日本からのメールでの応援も励みになった」と述べました。
また、「栄誉ある賞をいただいたことはもちろん、全てのラウンドで素晴らしい経験をさせていただきました。大変なのはこれからだと思いますが、自分のペースで努力を続けます」とコメントしています。我々も、今後の彼女の動向に注目したいと思います。
沖澤のどかとは
1987年、青森県生まれ。日本音楽界の最高峰「東京藝術大学」の音楽学部指揮科を首席で卒業した本当に才能溢れる女性です。その後はベルリンのハンス・アイスラー音楽大学を修了し、2017年はロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のマスタークラスに参加しています。
2018年にも「東京国際コンクール」でも優勝するなど、その才能は一際違っていました。32歳と少し出遅れ気味ですが、指揮者の世界では30代はまだまだ新人扱いです。50歳を過ぎなければ本当の評価をして貰えない特殊な職業です。これからは自分の内面性を高めて行って貰いたいです。
ブザンソン指揮者コンクールと日本人
ブザンソン国際指揮者コンクールは、今回が56回目の開催となります。1951年の創設時から毎年開かれていましたが、1993年以降は隔年となりました。日本人の優勝者は1959年の小澤征爾から沖澤のどかまで合計10人となりました。沼尻竜典や山田和樹ら、多くの才能を発掘しています。
女性では1982年の松尾葉子(現・セントラル愛知交響楽団特別客演指揮者)に次いで、沖澤のどかが2人目です。沖澤のどかが師事した広島交響楽団音楽総監督、下野竜也も2001年、同コンクールで優勝しています。教え子のコンクール優勝に喜ばれています。
下野竜也は教え子の優勝を「ずば抜けた才能。昨年の東京のコンクールでの優勝といい、まさに開花しているところですね」とコメントしています。
まとめ
また1人、世界に羽ばたく人材が出現しました。女性というハンデキャップをものともせずの優勝です。しかし、今後活躍できるかどうかは、本人のがんばり次第にかかっています。自身の音楽を表現するにあたって、女性という要素を巧みに利用すればよいと思います。
ハンデキャップと思わずに、逆に、それを武器にして、厳しい指揮者の道を歩んでほしいと思っています。とにかく、ブザンソン指揮者コンクールの優勝者として、恥じぬよう、より一層の検討を期待しています。今回は本当におめでとうございました。