日本の社会では「略語」が多く使用されています。スマートフォンも「スマホ」といった具合です。オーケストラの世界でもそれは同じ事。結構何でもかんでも略す事が多いそうです。だから仮に我々が音楽家同士の話を聞いていると、意味がわからない事もあるかもしれません。
音楽家だけではなくオーケストラの裏方さんやホールの裏方さんなどでも業界独特の「略語」、「符丁」があります。今回は裏方さんの物は置いといて、オーケストラの人達が使っている「略語」について書いてみようと思います。皆さん、これからのクイズを何個分かるでしょうか。
1.曲目を表す略語
音楽好きだったらすぐに分かる物から、これは難しいぞって言う物まで色々あります。業界用語って言うのでしょうか。面白いものがあります。最初は曲目に関係するものを何個か集めてみました。皆さんも答えを見る前に、一度何かなと考えながら読み進めると楽しめると思います。
「しべに」
何の事かわかりますか?答えを明かせばな~んだって思うでしょうね。シベリウスの『交響曲第2番』の略語です。これを書いてしまえば次からはすぐに分かってしまうでしょう。
「まらく」
「しべに」の意味が分かったのなら簡単な問題ですよね。そうです。マーラー『交響曲第9番』の事です。
「べとなな」
ここまでくれば簡単ですね。あの『のだめカンタービレ』で話題になったベートーヴェン『交響曲第7番』の事です。
全部作曲家と交響曲の番号の略になっています。でも、そこまで略さなくても、ベートーヴェンの7番でいいじゃないのって思うのは私だけでしょうか。長年かけてそう呼ばれてきた伝統ある「略語」なのでしょうね。明日は「しべに」をやるといわれても、我々には分かりません。
しかし、ベートーヴェンの『第9交響曲』だけは作曲家+交響曲の番号の略は使いません。この曲だけはやはり別格で、歴史的名作ですから『第9』と呼ばれています。そう、『第9』だけでベートーヴェンの『交響曲第9番』を意味するのです。
2.楽器系を表す略語
これからはちょっと違う略語です。これらも聞けばな~んだってしらけてしまいそうですが、あえて話を続けましょう。楽器を表現するときに使用するものです。口語だけでなく、楽譜上に書く場合も、この「略語」を使います。楽譜を読める人にはお馴染みですね。
「Vコン」
「ブイコン」と言っています。これはちょっと簡単過ぎましたね。ヴァイオリン協奏曲の事です。書き言葉では「V.Con」だけではなく「Vn.Con」と書くときもあります。もしかしたら後者のほうが多いかもしれません。
「Pコン」
「Vコン」の続きですから、すぐに分かってしまいますね。勿論、ピアノ協奏曲の事です。これは書き言葉でも「P.Con」です。
ではチェロ協奏曲はどう表記する?
チェロの正式名を知っていればすぐに分かります。さあ、どう略すのでしょうか。これは「略語」では言いません。単に「チェロコン」とか略すだけです。でも、書き言葉では他の楽器と同じように略します。チェロの正式名は「Violin Cello」ですから「Vc.Con」と表記します。
楽器の「略語」
- ヴァイオリン:Vn.
- ヴィオラ:Vla.
- チェロ:Vc.
- コントラバス:Cb.またはB
- ピアノ:Pf.
- フルート:Fl.
- オーボエ:Ob.
- ホルン:Hr.
- トランペット:Trp.
3.オーケストラ全般に使う略語
音楽の事だけではなく、練習などその他の事も色々略語があります。中には何も略す事ないのにねと言う物もあります。しかし、この分野は音楽の場合に留まらず、普通に演劇やバレエなどでも使っています。もうすでに一般的になっている「略語」なのかもしれませんね。
「トラ」
「エキストラ」の略です。「トラ」を多く使わないといけないオーケストラもあってあそこは大変そうというところもあります。
「パーれん」
これは意外と難しそうです。でも、答えが分かればなんだつまらないと言われてしまいそうです。「パート練習」の事です。
「ゲネプロ」
これは分かる人のほうが多いでしょうか。そうです。「ゲネラルプローべ」、つまり本番通りに行なわれる総練習の事です。
最後に聞きます。「たこご」って何?
ここまで数々の略語を紹介してきました。だったらもうお分かりですよね。「1:音楽を表す略語」の一つです。一般人には馴染みのない「略語」ですが、ここまで呼んでくださったみなさんには想像が付くと思います。作曲家の名前も途中の名前を使っていますから、ちょっと難しいかも?
「たこご」
作曲家+交響曲の番号のパターンです。正解は、ショスタコーヴィチの『交響曲第5番』の事です。「たこ」からショスタコーヴィチと連想するのが意外と難しかったですよね。
まとめ
音楽を聴くためには全く役に立たない情報でした。でもちょっとは楽しめた筈です。こんなクイズもたまには頭の体操になっていいかもしれませんね。音楽を聴くだけではなく、オーケストラの人たちはこんな「略語」を使っているんだと知って頂ければ幸いです。
コンサートなどの休憩時間に友人と話をする時など、ちょっとこの略語を織り交ぜて会話をすれば、意外とこいつクラシック通なんだって思われますよ。けれども使い過ぎにはご用心!逆になんだこいつって煙たがれてしまいます。ほどほどが一番です。