世界に認められた一流オーケストラの演奏は脳髄がとろけるほど甘美で、耳が喜んでいると感じるほど素晴らしいです。クラシックの伝統が生み出す芸術です。今も世界に愛されているクラシック音楽は、常に高みを目指してきた歴史的音楽家たちの弛まぬ努力の結晶と言えます。
超一流と言われるオーケストラが時を超えて演奏のレベルを維持し続けていくことは容易ではありません。しかしそんな困難を成し遂げ、いつも変わらぬ素晴らしい演奏を提供してくれるオーケストラは必ず独自のカラーを持っています。ブランドと言い換えてもいいでしょう。
時代を超え研鑽してきた一流オーケストラの演奏スキルをぜひ生で聴いて頂きたい。この耳で聴き、絶対におすすめできる一流のオーケストラをランキング形式で紹介して行きます。いずれも超一流オーケストラですが、音色の深さやリズム感など、意外と違いがあるものです。
ランキングの前提条件
1.私自身が実際にライブ演奏を聴いたことがある事
オーケストラの実力はライブでこそ良く分かるものです。これは一番大切な条件とさせていただきます。CDやDVDではなくライブこそ本当の実力が伝わると思っています。しかし、正直1度しか聴いていないオーケストラもあり、録音も参考にしていますのでその点はご了承ください。
2.オーケストラが機能的である事
- 指揮者の意図を汲み取って演奏が出来ている
- 弦楽器が艶やかな音を奏で、金管楽器はより輝かしく、木管楽器は表情に溢れている
- 最弱音から最強音まで音に余裕があり、揃っている
- どのパートにも欠点がない
- 最強音の和音に濁りがない
3.オーケストラ自体のカラーを持っている事
これは自分たちの音楽を持っている事とも言い換える事が出来るかと思います。たとえ、常任指揮者が指揮しなくても、普段通り自分たちの特色を表現できているオーケストラである事です。こういったオーケストラは意外と多くはないのが現実です。
第20位 NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団
旧称は、1945年創立のハンブルク北ドイツ放送交響楽団です。まだ旧称であった頃、ブルックナーを聴きました。2017年に新しい本拠地のホールが出来て、現在の名称に代わりました。ドイツのオーケストラらしく、音色が深く、渋さがあり、さすがは名門と言った演奏でした。
現在の首席指揮者は2019年から世界的な指揮者であるアラン・ギルバートになりました。しかし、ホールも新しくなって、環境にも恵まれ、自分たちの音楽を向上させるには絶好の機会です。ドイツ正統派の音楽をこれからも演奏して行ってもらいたいと思います。
第19位 チューリヒ・トーンハレ管弦楽団
1868年創設の伝統あるスイスのオーケストラです。1987年から1991年にわたり、若杉弘が主席指揮者を務めたため、日本での評価が上がりました。また、第1オーボエを宮本文昭が吹いていた事も、日本人に親近感を与えてくれたオーケストラでした。
私がこのオーケストラを聴いたのは、若杉が主席指揮者だった時の来日公演でした。あの時のマーラーは未だに忘れられません。第5番でした。弦楽器が実に美しい音色で鳴っていて、木管もとても印象的でした。若杉が若くして亡くなってとても残念でなりません。
第18位 バンベルク交響楽団
1946年創設のオーケストラですが、ドイツの古き良き時代の音色を出してくれるオーケストラです。現在の首席指揮者はヤクブ・フルシャです。歴代の首席指揮者も著名な指揮者ばかりであり、音響の良い本拠地を持ち、ドイツの中でも恵まれたオーケストラの一つです。
最初に聴いたのはヨッフムとのベートーヴェン6番と7番。次に聴いたのはホルスト・シュタインとのシューベルト『グレート』でした。どちらも、まさにドイツ物は俺らに任せろといった演奏でした。
第17位 サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団
1882年の創立された伝統のあるオーケストラです。昔の名前をレニングラード・フィルハーモニー交響楽団と言います。旧ソ連の崩壊で現在名に代わりました。政治に翻弄されたオーケストラでもありました。しかし、実力は世界的レベルを維持しているところが凄いです。
私が聴いた初めての外国のオーケストラでした。思い出深いです。当時はレニングラード・フィルハーモニー交響楽団の時代で、もう随分過去の事になりました。この時に聴いたチャイコフスキーの第4交響曲は永遠に忘れないでしょう。弦の音色と管の上手さに度肝を抜かれました。
第16位 hr交響楽団
2005年までは、フランクフルト放送交響楽団と名乗っていたオーケストラです。1929年創立したドイツの名門オーケストラの一つです。現在の首席指揮者はアンドレス・オロスコ=エストラーダが努めています。放送局が運営しているオーケストラですので、レパートリーは広いです。
フランクフルト放送交響楽団と名乗っていた時に聴いた、エリアフ・インバルと演奏したマーラーの『第5交響曲』は名演でした。インバル自身がマーラーが得意な指揮者という事もあり、自分のマーラー像を良く出していた演奏でした。オーケストラも良く付いて行っていました。
第15位 ロサンゼルス・フィルハーモニック
1919年創立で、意外と伝統を持つロサンゼルスに本拠地を置くオーケストラです。このオーケストラもアメリカではエリート・イレブンと呼ばれ、アメリカを代表するオーケストラの一つです。現在の音楽監督はグスターボ・ドゥダメルが努めています。
カルロ・マリア・ジュリーニが音楽監督をしていた時にブルックナーの『第7交響曲』を聴きました。この長大な音楽を見事に聴かせてくれました。名演だったと思います。
第14位 サンフランシスコ交響楽団
1911年創立のアメリカの名門オーケストラです。こちらもエリート・イレブンの一つです。歴代の音楽監督も錚々たる顔ぶれで、かつて、小澤征爾の時代もありました。現在の音楽監督はマイケル・ティルソン=トーマスですが、2020年からはエサ=ペッカ・サロネンに代わります。
マイケル・ティルソン=トーマスはより一層このオーケストラの発展に寄与してくれました。私が聴いたのは、マーラーの『第1交響曲』。アメリカのオーケストラらしく、金管を良く鳴らし、ぶっ飛ぶようなコンサートだったと記憶しています。マーラー好きの私も満足しました。
第13位 イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団
1936年創立され、1948年からこの名称に代わりました。歴史は浅いオーケストラですが、ユダヤ人の集団という事もあって、特に弦楽器の響きは世界一と言われています。ズービン・メータが音楽監督でしたが、2020年からはラハフ・シャニになる予定です。
バーンスタイン指揮でマーラーの『第9交響曲』を聴きました。このコンサートも忘れ難いコンサートとなりました。演奏が終わった後の一瞬の静寂。その後のブラボーの嵐。イスラエル・フィルの弦の素晴らしさに感服。こんなコンサートは滅多に聴けません。メータと来日した時のマーラー5番も感心しました。
第12位 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
1743年創立。王宮以外のオーケストラとしては世界最古の伝統あるオーケストラです。歴代の指揮者はメンデルスゾーンを始めとする錚々たる顔ぶれで、現在はアンドリス・ネルソンスが努めています。ドイツの伝統的な響きを持つオーケストラとして知られています。
クルト・マズアが常任指揮者だった頃にベートーヴェン『英雄』を聴きました。ベートーヴェンというドイツ音楽を深い響きで表現していました。ドイツ正統派の音楽を聴かせて貰ったという感じです。まさに伝統あるオーケストラの重々しい響きを体験しました。
第11位 ニューヨーク・フィルハーモニック
1842年創立と大変伝統ある名門オーケストラです。アメリカビッグ5の一つです。ニューヨークは人口が多いのに、オーケストラはこのニューヨーク・フィル一つしかありません。そのために年間の公演を多く開催しています。歴代音楽監督も名指揮者が多く在籍していました。
何と言っても、私が初めてバーンスタインを聴いた時のオーケストラです。ショスタコーヴィチの『第5交響曲』。CDにもなっています。この時の記憶は鮮明に残っています。バーンスタインはかつての音楽監督でとても相性が良い関係にあります。渾身の演奏でした。
第10位 パリ管弦楽団
1967年に発足した比較的新しいオーケストラです。しかし、ミュンシュやカラヤンに鍛えられ、世界的オーケストラになりました。2020年から首席指揮者には女性指揮者であるカリーナ・カネキラスが就任しました。オーケストラがどう変化するのか楽しみです。
パリ管の演奏は忘れもしません。サントリーホールのセンター1番前で聴きました。バレンボイムがわずか2メートル先で指揮をしていました。ストラヴィンスキーの『春の祭典』。バレンボイムの息使いまで聴こえてきて、圧倒的演奏でした。パリ管の上手さが良く出ていました。
第9位 ドレスデン国立歌劇場管弦楽団
創立は何と1548年。デンマーク王立管弦楽団に次ぐ、世界で2番目に古いオーケストラです。ドイツ正統派の伝統を持つこの歌劇場管弦楽団は音色もドイツ音楽のどっしりした響きを保っています。オペラ座のオーケストラという事もあり、何でもこなしてしまうオーケストラです。
私が聴いたのはベートーヴェンの『英雄』でした。冒頭の「ジャン、ジャン」の和音からして痺れました。ドイツ本来の響きとはこういうものかと感動した覚えがあります。指揮はブロムシュテット。ドイツ物が得意の指揮者です。モーツァルトとベートーヴェンの演奏に感動しました。
第8位 ロンドン交響楽団
1904年創立。名誉総裁にはエリザベス2世が就いており「女王陛下のオーケストラ」と言われています。歴代の指揮者にも多くの有名な名前が並んでおり、現在はサー・サイモン・ラットルが付いています。ロンドン5大オーケストラの一つですが、私は中でも1位と思っています。
アバドと来日した時に、マーラーの『巨人』を聴きました。アバドの指揮も初めて聴くものでしたが、この『巨人』は素晴らしく良かったです。イギリスのオーケストラをあまり良く思っていない時期でしたので、より驚いたことを覚えています。アバドの力量にも感動しました。
第7位 フィラデルフィア管弦楽団
1900年創立。アメリカビッグ5の一つ。ユージン・オーマンディによって40年以上鍛え上げられ、世界のオーケストラに成長しました。アメリカのビッグ5はどこも演奏レベルが高いものがあります。このオーケストラも超一流です。現在の音楽監督はヤニック・ネゼ=セガンです。
指揮者はムーティ、メンデルスゾーン『イタリア』とベートーヴェン『第7交響曲』を聴きましたが、どちらも上手かったという印象が残っています。フィラデルフィア・サウンド満載で、特に金管が派手に大音量を上げていました。アメリカのオーケストラの特徴です。
第6位 ボストン交響楽団
1881年創立。アメリカでも伝統を誇る名門オーケストラです。ビッグ5の一つです。フランス物にもドイツ物にも定評があります。小澤征爾が29年間音楽監督を務めた事で、日本でも人気のあるオーケストラです。現在の音楽監督はアンドリス・ネルソンスが努めています。
私は小澤征爾の指揮で2回聴いています。どちらもマーラーで『第3交響曲』『復活』の2曲です。どちらも凄い熱演でした。特に『復活』はより印象的です。出だしの音からして凄みがありました。弦楽器から管楽器、そして合唱団までが小澤に食らいついて、感動的なコンサートでした。
第5位 バイエルン放送交響楽団
1949年創立のミュンヘンに本拠地を置くオーケストラです。新しいオーケストラながらも、オイゲン・ヨッフム、ラファエル・クーベリック、コリン・デイヴィス、ロリン・マゼールによって、着実に実力を付けてきました。現在の首席指揮者はマリス・ヤンソンスが努めています。
コリン・デイヴィスでベートーヴェンの7番を聴きました。玄人のベートーヴェンを聴いた思いがした記憶があります。ドイツのオーケストラはやっぱり凄いなと感じたものです。
第4位 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
1888年創立。オランダのアムステルダムに本拠を置く伝統あるオーケストラ。以前はアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団と名乗っていました。しかし、1988年、創立100周年を迎えたコンセルトヘボウはベアトリクス女王より「ロイヤル」の称号を賜り、現在の名称に改称されました。
私が聴いたのはシャイーが主席指揮者を務めていた時でした。マーラーの『巨人』には驚愕しました。音楽の渦が会場中に響き渡り、滅多にない出来だったと思います。シャイーの腕とオーケストラの上手さが結び付くとこんな演奏ができるのかと感動しました。
第3位 シカゴ交響楽団
1891年に創立された伝統あるオーケストラです。アメリカビッグ5の一つでが、その中でも頭一つ抜け出した存在です。アメリカを代表するオーケストラですが、今ではアメリカに留まらず、世界最高峰のオーケストラの一つに数えられています。そのシカゴ交響楽団を簡単に紹介します。
シカゴ交響楽団の概要
1891年、ニューヨーク・フィルハーモニックのヴァイオリン奏者だったセオドア・トマスが設立し、創立当時はシカゴ管弦楽団と名乗っていました。初期からブルックナーやリヒャルト・シュトラウスの作品にも力を入れていたようで、最初から一流を目指す意欲溢れるオーケストラでした。
1931年に現在のシカゴ交響楽団を名乗るようになります。しかし、このオーケストラの黄金時代は第6代音楽監督のフリッツ・ライナーの時代まで待たねばなりません。ライナーは9年間に渡って、オーケストラを鍛え上げ、ヴィルトゥオーソ・オーケストラとしての基礎を作りました。
第2期黄金時代は第8代音楽監督のゲオルグ・ショルティの時代です。シカゴ交響楽団の名声を世界中に轟かせた時代です。ライナーが基礎を作り、ショルティがシカゴ交響楽団を世界のヴィルトゥオーソ・オーケストラに育て上げました。22年間に渡りオーケストラに磨きをかけたのです。
そして、第9代ダニエル・バレンボイム、そして、現在の音楽監督リッカルド・ムーティがしっかりとその輝きを守ってきました。現在でも世界有数のオーケストラとして君臨出来ているのは、これらの音楽監督の力量の賜物です。シカゴ交響楽団はこうして世界最高峰に進化してきたのです。
シカゴ交響楽団鑑賞記
初めてシカゴ交響楽団を聴いた時は衝撃が走りました。なかなか来日公演と仕事の日程が合わず、チケットをようやく取れた時は、シカゴ・サウンドが聴けると喜んだものでした。ショルティ指揮でマーラーの『交響曲第5番』。金管楽器の輝かしい響きに感動しました。超一流のオケでした。
個人的に私は力業で音楽を進めていくショルティの指揮が嫌いですが、この日のマーラーは冒頭のトランペットからして違ったものでした。まさに脱帽です。管楽器が良く取り上げられるオーケストラですが、弦楽器も魅惑的な響きを奏でていました。
第2位 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
第2位はウィーン・フィルです。19世紀の宮廷音楽時代からの伝統を守り続けている、ウィーンが世界に誇るオーケストラです。ウィンナ・ワルツの独特の三拍子や弦楽器の艶っぽい響き、管楽器の昔からの伝統の響きなどは、国宝級のオーケストラです。
ウィーン・フィルの概要
1842年にオットー・ニコライにより創立されたウィーン・フィルは、最初のコンサート以来、世界中の観客を魅了してきました。その音楽の均質性は、常に次の世代に引き継がれており、とても長い歴史があります。最初からこんなにレベルの高かったオーケストラは他にありません。
ウィーン・フィルは他に類を見ない自主運営のオーケストラで、ウィーン国立歌劇場管弦楽団のメンバーのみがウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のメンバーになることができるのです。まずはウィーン国立歌劇場管弦楽団に入団し、少なくとも3年間、その力を実証しなければなりません。
それらが認められて、はじめてウィーン・フィルのメンバーとなる申請ができるのです。ここでは、すべて自主運営ですから、全て総会で討議して決定します。定例総会が年1回、特別総会が年5、6回あるそうです。総会で選出された管理委員会がメンバーが全ての運営を委託されています。
ウィーン・フィルはまた、音楽監督を置かないオーケストラです。次のシーズンに誰に指揮を任せるかも、自分たちで決定します。国立歌劇場のオーケストラがいわば本職で、ウィーン・フィルは趣味のように気楽に運営しているからあんなにも素晴らしい演奏ができるのかもしれません。
ウィーン・フィル鑑賞記
私がウィーン・フィルをライブで聴いた中で最も印象に残っているのは、マゼール指揮のベートーヴェン『第8交響曲』と『英雄』です。場所はNHKホール。2階の中央席でした。まず思った事は、ウィーン・フィルの響きが他のオーケストラと違うという事でした。
弦楽器も管楽器も伝統を感じさせる音色で、ベートーヴェンは俺たちの音楽だという自信に満ち溢れた演奏をしていました。アンコールの『レオノーレ第3番』も楽しませてくれました。ウィーン・フィルも完璧とも形容できるオーケストラの一つです。
第1位 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
第1位はベルリン・フィルハーモニー管弦楽団です。このオーケストラほど、機能性、自立性、自主性に溢れたオーケストラはありません。現代のオーケストラの、いわば完成形と言っても間違ってはいないでしょう。絶えず、向上心を持ち音楽に接している姿勢は他にはありません。
ベルリン・フィルの概要
1882年に創立されたベルリン・フィルは、その常任指揮者たちによって、世界一のオーケストラに成長してきました。ルートヴィヒ・フォン・ブレナー、ハンス・フォン・ビューロー、アルトゥル・ニキシュ、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、レオ・ボルヒャルト、セルジュ・チェリビダッケ、そしてヘルベルト・フォン・カラヤン!
特にヴィルヘルム・フルトヴェングラーとヘルベルト・フォン・カラヤンはベルリン・フィルにとって大変な功績があり、この二人によってベルリン・フィルの名声は世界一の座を不動のものにしました。優れた人材をより丁寧に磨き上げると、こういう結果が出るという素晴らしい見本です。
ベルリン・フィルも自主運営団体です。彼らも自分たちの事は自分たちで決定します。最終的には楽員1票を持つ選挙で何でも決定します。常任指揮者と言えど団員と同じ1票しか持てません。自分たちで運営するという気概が良く表れていて、練習も、本番も凄いエネルギーを発散します。
ソリスト級のスターが集まり、自分たちの向上心をむき出しにして音楽に臨んでいるのですから、これ以上の事はありません。楽員全てが、協力者であり、競争者という立場で切磋琢磨しているのですから、玉にはさらに磨きがかかる事は当然の結果です。
ベルリン・フィル鑑賞記
カラヤンが常任指揮者の頃、何度も聴きに行きました。その内の1回はカラヤンが病気になり、小澤征爾が代振りとなりました。場所は東京文化会館、普門館、サントリーホール。中でも忘れ難いのが、小澤征爾が代わりに振った公演。曲目はR・シュトラウスの『英雄の生涯』。
この日のベルリン・フィルは1年でも2、3回あるかどうかという特別な演奏だったと楽員たちが言っていました。最初から物凄い演奏が展開されました。一つの結論に向かってみんなの気持ちが一緒になって、雪崩を打って音楽が溢れ出ていました。ベルリン・フィルの底力を堪能しました。
他はカラヤン指揮でした。最初に東京文化会館でカラヤンを見た時は、不覚にも感動のあまり涙が出そうになったベートーヴェンの『英雄』でした。『英雄』の壮大な音楽を私は一生忘れないでしょう。普門館でのブラームス『第1交響曲』も非常に印象的な演奏で、カラヤンが得意としている楽曲のため格別でした。カラヤンがまだ颯爽と演奏している時代、本当に見事なものでした。
そして日本一のサントリーホールで聴いたカラヤンもまた私のクラシック人生に色濃く残っています。カラヤンの日本で最後の演奏会になってしまいました。当日、曲目変更でメインはブラームス『第1交響曲』。このブラームスは感動しました。この時期、ベルリン・フィルと仲たがいしていたのに、音楽は別とばかりに、最高のブラ1を聴かせてくれました。べルリン・フィルの機能性が存分に発揮されていました。これぞ、世界一!
ランキングを振り返って
第1位から第20位まで私のランキングはこうなりました。順位は別として、他のランキングと名前が出ているオーケストラは似通っていると思います。やはり、聴く人の耳はある程度正確で、良いオーケストラは誰が聴いても同じだという結果だと思います。
第2位 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
第3位 シカゴ交響楽団
第4位 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
第5位 バイエルン放送交響楽団
第6位 ボストン交響楽団
第7位 フィラデルフィア管弦楽団
第8位 ロンドン交響楽団
第9位 ドレスデン国立歌劇場管弦楽団
第10位 パリ管弦楽団
第11位 ニューヨーク・フィルハーモニック
第12位 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
第13位 イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団
第14位 サンフランシスコ交響楽団
第15位 ロサンゼルス・フィルハーモニック
第16位 hr交響楽団
第17位 サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団
第18位 バンベルク交響楽団
第19位 チューリヒ・トーンハレ管弦楽団
第20位 NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団
因みに2017年の音楽の友社『レコード芸術』9月号のランキングをみてみると、以下の通りです。オペラ座付きのオーケストラを除くと、そう変わらない顔ぶれです。違っているのは、私の聴いていないオーケストラ達です。世界で活躍できるオーケストラは限られているという事ですね。
2位 バイエルン放送交響楽団
3位 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
4位 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
5位 シュターツカペレ・ドレスデン
6位 パリ管弦楽団
7位 シカゴ交響楽団
8位 ロンドン交響楽団
9位 マーラー室内管弦楽団
10位 ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン
11位 シュターツカペレ・ベルリン
12位 ボストン交響楽団
13位 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
13位 マリインスキー劇場管弦楽団
13位 ミラノ・スカラ座管弦楽団
16位 サンフランシスコ交響楽団
17位 クリーブランド管弦楽団
17位 レ・シエクル
19位 NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団
20位 サンクト・ペテルブルク・フィルハーモニー管弦楽団
20位 フランクフルト放送交響楽団(現hr交響楽団)
まとめ
オーケストラに順位をつける事自体が良い事なのか悪い事なのか、未だに迷っています。しかし、ここに挙げてきたオーケストラは一流オーケストラであり、世界的な宝です。これらのオーケストラが来日した時は、迷わず聴きに行ってほしいと願っています。
ここに挙げていないオーケストラだって一流と呼ばれるオーケストラは世界に多くあります。どのオーケストラが優れているのか、考えるきっかけにはなったかなと思っています。そして、優れているとはどういう事なのかも考えて頂きたいと思いつつ筆を置きます。