ヴァイオリンのリサイタルとか、声楽家のリサイタルを聴いたことがあると思いますが、独奏または独唱と言っても普通は伴奏ピアノが付きます。この伴奏ピアノの譜面をめくる人を「譜めくり」と言います。「譜めくり」はプロの方が行っている事をご存じでしたか。
誰にでも出来る、簡単な仕事のように見えますが、実は大変な仕事なのです。「譜めくり」にも上手、下手があります。演奏家に邪魔にならないで、上手く譜面をめくるのは一朝一夕には出来ないものなのです。この事実をほとんどの方は知らないと思います。
何が上手い下手かを分けるのか、人気のある「譜めくり」の方はどこが違うのか、その所を知って貰いたいと思い、この記事を書きました。この記事を読んでから、実際にリサイタルで「譜めくり」を見て欲しいと思います。その違いが良く分かる筈です。
「譜めくり」が必要な音楽
ヴァイオリンのリサイタルや声楽家のリサイタル、ピアノ三重奏曲などピアノが付く室内楽には、ほぼ必ずピニストと一緒に「譜めくり」の方が出てきます。「譜めくり」は基本ピアニストに変わって楽譜をめくる仕事ですが、大抵プロの「譜めくり」の方が付いて仕事をします。
伴奏ピアノはアンサンブルで演奏する場合は、暗譜で演奏することは滅多にありません。例えばヴァイオリンの伴奏をする場合、伴奏ピアノの譜面には、ヴァイオリンの音符の下にピアノの音符が書かれています。2つの楽器を合わせ易くするためです。
三重奏の場合なら三人分、四重奏の場合なら四人分の楽譜が同時に書かれているために、楽譜は厚くなり頻繁にめくる必要が出て来ます。そのために「譜めくり」が必要となるわけです。
プロの「譜めくり」
「譜めくり」の収入は、1仕事5,000円位だそうです。ですから「譜めくり」だけでは食べていけないので、他の仕事との掛持ちの方がほとんどです。「譜めくり」専用のプロダクションがあるそうで、そこから仕事を斡旋されるそうです。
私はこの人でなくては駄目というピアニストからの指名を受ける人も多いのだそうです。というか、そうならなければプロとは言えません。数をこなしてこその商売ですから、一度引き受けたピアニストには次もお願いされるようにならなければ本当のプロとは言えない訳です。
「譜めくり」のプロとしての基本
「譜めくり」の基本事項を纏めると以下のようになります。
- コンサート会場の壁の色やピアニストの服装も考慮した目立たない服を着る
- ピアニストが観客の拍手を受けている時に、こそこそっと登場し、指定の椅子に静かに座る。目立たない
- 無駄な動きがなく、的確なタイミングで立ち上がり、スピーディかつ正確にめくる
- 表情が常に冷静
- 退場の際も目立たずに、すっと消える
「譜めくり」本番
譜面をめくる際に注意しなければならない最大の事は、音を立てないようにすることです。楽譜をめくる時は気を付けないと、紙をめくる音が聞こえてしまいます。「譜めくり」が演奏にも影響する事もあります。ピアニストとの息をぴったり合わせなければなりません。
上手な「譜めくり」を行なう方は、演奏家の微妙なサインを読み取って、絶妙のタイミングでめくってくれます。この辺に、プロの方とそうでない人の差がありそうです。プロの方でもそこまでの域に達するには、経験の積み重ねが必要となってきます。
どうして素人では駄目なのか
譜面を有る程度読める人ならば、素人でも大丈夫じゃないかと思うとそうでもないのだそうです。「譜めくり」のプロとしてやっていくには、上に挙げたような基本に忠実な事をやれないとやっていけません。演奏家に負担を与えないやり方をしなくてはなりません。
基本に忠実は大変!
ピアニストよりも目立ってはいけない、じっとしていなくてはならない、ピアニストとの絶妙のタイミングでめくらないといけないなどは簡単に見えて誰でもできる事では無いそうです。しかも、音を立ててはいけないのも簡単なようで難しいそうです。
楽譜を音も出さずに適切なところですっとめくるにはそれなりのテクニックが必要だそうです。だからこそ、プロが必要とされるわけで、何でもない事を何でもなくやるという事がいかに難しい事なのか、黒子としての腕の見せ所でもあるわけです。
ピアニストとの相性も必要
やっぱり人間対人間の行為ですから、相性と言う物もあります。立ち上がるタイミング、譜面をめくる行為、めくった後の処し方などは初めての方とは上手く行きません。と言う事で気の合う人が出来たら次回もお願いと言う事になるらしいです。
まとめ
「譜めくり」なんて簡単な事だろうと思っていましたが、演奏家と一体にならなければやっていけないとても大事な仕事だったのですね。「譜めくり」のプロが存在するなど知りませんでした。これからのリサイタルでの見方も少し変わって来そうです。
また「譜めくり」自体難しい事も良く分かりました。目立たなくしてるようで意外と気になる存在ですからね。気付かないようにと言うのがプロの仕事。今後もひっそりと上手く仕事をしてもらいましょう。