パソコンを観ながらピアノを弾く少年

最近ではYouTuber(ユーチューバー)は子供達のなりたい職業の上位になるほど一般的になりました。そのYouTuberの中でもピアノを演奏してサイトにアップしているピアニストが注目されています。彼らを称して「ピアノ系YouTuber」と言います。

らららクラブの『あなたの好きな日本人ピアニスト・ベスト3【2021年版】』ではベスト3が「ピアノ系YouTuber」で占められました。「ピアノ系YouTuber」の大躍進です。

多くの方が「ピアノ系YouTuber」を認知して積極的に聴くようになった結果なのだと思います。肩肘張らず気軽に聴ける事も一員なのでしょう。「ピアノ系YouTuber」の人気の秘密などを考察してみたいと思います。

『あなたの好きな日本人ピアニスト・ベスト3【2021年版】』結果を見て

第1位:角野隼斗(かてぃん)
第2位:けいちゃん
第3位:よみぃ
第4位:ふみ
第5位:反田恭平
第6位:ござ
第7位:藤田真央
第8位:石井琢磨
第9位:務川慧悟
第10位:亀井聖矢
かてぃん、けいちゃん、よみぃ、ふみ、ござとベスト10に5人も入っています!
「ピアノ系YouTuber」の人気をまざまざと示しているね。

らららクラブのアンケート結果の第10位までを載せました。らららクラブは以前放送されていた『らららクラシック』のファンクラブのような存在で、クラシック音楽が好きな方の集まりと思っていました。

そのアンケート結果がこういう結果でしたから驚いた訳です。ベストスリーは勿論、第10位までの5人が「ピアノ系YouTuber」でした。

因みに2019年の最初のアンケート結果は以下の通りです。

第1位:反田恭平 
第2位:藤田真央 
第3位:牛田智大 
第4位:大井健 
第5位:辻井伸行 
第6位:務川慧悟 
第7位:清塚信也 
第7位:鍵盤男子 
第9位:福間洸太朗 
第10位:仲道郁代 

この2年で「ピアノ系YouTuber」が台頭してきた事が良く分かります。

「ピアノ系YouTuber」の始まりと発展

YouTuber達が様々な事をやり始め、社会的に認められたあと、「ピアノ系YouTuber」はストリートピアノが流行し始めた事がきっかけで出現してきました。

ストリートピアノでパラパラと曲を弾き、それを撮影し、YouTubeにアップし始めた事で興味を抱く人々が増え、次第に広がっていったのです。

そもそもストリートピアノとは誰でも自由にピアノを弾いてもらい音楽を通して人々の交流を促すために生まれました。ピアノに触れた事の無い方でも気楽に体験できるものとして街なかに置かれ始めたのです。

「ピアノ系YouTuber」達は自分自身のパフォーマンスを披露できる場が無料で提供されたのですからすぐさまそれに飛び付きました。難曲を弾いたり有名曲をアレンジして聴かせる姿が若者を中心に人気を呼び、現在のような流行にまで発展してきたのだと思います。

そうこうするうちに、ストリートピアノを離れて自宅のピアノで同様のパフォーマンスを見せる人達も出てきました。

YouTuberですから、その人物に何らかの魅力がないとファンは付きません。それぞれの「ピアノ系YouTuber」達は自分でできる最大のパフォーマンスを見せ、多くのフォロワーを獲得した者が生き残りました。

その「ピアノ系YouTuber」がアンケートの結果として現れているのです。

人気の「ピアノ系YouTuber」はYouTubeの世界を飛び出し、個人でアルバムを発表したり、ソロのリサイタルを開くまでになっています。今までの音楽シーンを変えてしまいそうな勢いです。

何が人々を注目させているのか

一言で言ってしまうと、彼らのパフォーマンスの素晴らしさです。「ピアノ系YouTuber」も皆同じ事をしているわけではありません。アレンジが上手い人やとにかく技巧的に凄い人など、その特徴に応じた固定ファンが付いています。

クラシック音楽を中心にしている方もいますし、ジャズやJ-POPなどをメインとしている方など様々です。それもオリジナルだけではなく、自分なりのアレンジや即興を組み合わせて、いわば大道芸のピアノ版のような事をしています。

投げ銭を払わなくても、そのパフォーマンスをパソコンやスマホで無料で見られるわけですから、興味がある人にとってはこんなに美味しい話はありません。

それに「ピアノ系YouTuber」の多くの人がイケメンです。見た目がカッコ良くてピアノも上手いとなれば女性達が放っておく訳がありません。「ピアノ系YouTuber」には女性もいますが、キャラクターが立っていたり、話が上手かったり、人の心を掴む要素を持っています。

芸能界の歌手やグループに嵌るのと同じように、多くの女性達は「ピアノ系YouTuber」に嵌るのだと思います。

「ピアノ系YouTuber」達のピアノの腕前

例えば今回のアンケートでの第1位だった「かてぃん」こと角野隼斗は東大卒ですが、2018年のピティナピアノコンペティション特級グランプリを獲得し、国内の主要プロオーケストラとの共演を果たしています。この人は別格としても、他の「ピアノ系YouTuber」達はどうでしょうか。

第2位の「けいちゃん」も音大の音楽教育学科卒です。第3位の「よみぃ」は4歳から始めたようですがその先は具体的に発表していません。音大を出たかどうかは分かりませんが、同程度のレベルは持っていると思います。

上位3位がこのレベルですから「ピアノ系YouTuber」にとっては音大卒レベルが当たり前と言えるでしょう。

人気になっている多くの「ピアノ系YouTuber」達は耳が良いし、即興演奏が抜群です。一度聴いた音楽でもすぐに即興で弾きこなせるのですから、それだけの才能がないとできません。

「ピアノ系YouTuber」の紹介

今回のらららクラブのアンケートーでベスト3に輝いた3人を紹介していきます。3人共幼い頃からピアノをやっていて、クラシックの基礎をしっかりと仕込まれています。

この3人がどういったきっかけで「ピアノ系YouTuber」になったのか、どうしてその中で人気を勝ち取ることができたのかを見ていきます。

角野隼斗(かてぃん)

角野隼斗(かてぃん)は今までのピアニストの常識では考えられない過程を過ごしてきました。彼にとってピアノは最初は楽しみのひとつだっただけでしたが、あるコンクールの結果により音楽活動を仕事に選んだのです。

角野隼斗の略歴

1995年、千葉県八千代市にて誕生。母親は自宅でピアノを教える先生でした。その影響で3歳からピアノを始めます。

彼の学歴は開成中・高、東大理Ⅰ、東大大学院と誰もが羨む王道を歩いてきました。ピアノの腕がいいからといって音楽の道に進ませなかったご両親の考えは素晴らしいと思います。

大学院在学中に受けた「第42回ピティナ・ピアノコンペティション」で、特級グランプリ受賞した事がきっかけとなり音楽の道に進む決断をしました。

共演したプロのオーケストラは国内外をあわせ幾つかあります。ソロ活動としては2020年12月のサントリーホール公演が即日完売の好評を持って迎えられました。

「かてぃん」としての角野隼斗

「ピアノ系YouTuber」として活動するときには「かてぃん」と名乗っています。「太鼓の達人」に出てくるキャラクターの名前をもじったのが「かてぃん」の始まりでした。

2019年春ごろからYouTubeを「自分の音楽を自由に発信する場」として活用するようになり、それ以降チャンネル登録者数を伸ばしていき、2021年8月現在では80万人を超えるまでになっています。

クラシック音楽は勿論のこと、ゲーム音楽、アニメ音楽などを自在に操り、時にはストリートピアノを演奏するなどその活躍は多岐に渡り、人気YouTuberとなっていきました。

月1回程度、90分程度の生配信によるライヴを行っています。基本的にチャットでリアルタイムに送られてくるリクエストを見ながら、次から次へそれらを繋いでピアノを弾いていくのです。

また、単独でのライヴ・コンサートも人気を博しています。クラシック音楽だけではなく誰でも知っているようなアニメソングなどを即興で弾いたりと、その持てるテクニックを駆使してのパフォーマンスは聴く人の心を捉えてやみません。

かてぃんのYouTubeを覗いてみた

かてぃんのYouTubeチャンネルに入ると画面中央の動画が自動再生され『きらきら星変奏曲』(かてぃん編)が流れ出します。

通常の12変奏まであるモーツァルトの作品とは違って、かてぃん自身が編曲した第7変奏まである“7 levels of “Twinkle Twinkle Little Star””です。

挨拶代わりの1曲という感じで、実に楽しくなります。

会員にならないと見られない動画もありますし、勿論誰でも見られる動画もあり、クラシックよりもその他の楽曲の方が多いかもしれません。クラシック専用サイトではないので、万人に楽しんでほしいという事なのだと思います。

ストリートピアノ系の演奏よりも、かてぃんひとりで自宅のピアノを使った動画の方が多いのかなという印象を受けました。

様々な動画が沢山あり、時間を忘れて見入ってしまいそうです。

けいちゃん

「ピアノ系YouTuber」けいちゃんは「フリースタイルピアニスト」と称し、ピアノに軸をおいた音楽総合表現者として活躍しています。

けいちゃんの略歴

どういう経歴を持った人物なのか本人のサイトでも詳細は載っていません。その中で分かった事を記述していきます。

3歳の頃からピアノを始め、クラシックピアニストを目指し、音楽大学を卒業しています。数多くのコンクールを経験しているようですが、これについても詳細は良く分かっていません。

子供の頃からピアノ漬けの毎日だったとも話しています。ピアニストを目指して、ピアノに打ち込んできた事は間違いないようです。

高校の修学旅行でロンドンに行き、その時にストリートピアノに出会った事が現在の彼のひとつの原点になっています。

けいちゃんのYouTuber活動

2019年から音楽活動を始めました。都庁の展望台にある『都庁おもいでピアノ』で演奏した映像をYouTubeに投稿したのが、ブレークするきっかけとなります。

このYouTube投稿が人気を呼び、それから1年9ヶ月にしてチャンネル登録者100万人を数えるまでになりました。

ピアニストとして成功する道がコンクールで優勝する事以外にもあるのではないかと発想から、YouTuberの道を選択したようです。

他人の楽曲をカバーするだけでなく、自身が作曲した楽曲も注目を集め、2021年にはアルバム『殻落箱(がららばこ)』でメジャーデビューしました。

ピアニストとしてだけでなく、シンガーソングライターとしての活動も好評なようです。配信だけでなく、ライヴ・コンサートも行っています。

けいちゃんのYouTubeを覗いてみた

YouTubeを訪れるとけいちゃん自作の『√Future』というミュージックビデオが自動再生されます。3ヶ月前とありますから一定の期間で別の動画に変わるのでしょう。

けいちゃんのYouTubeチャンネルは動画1本1本いろいろな編集作業が行われていて、動画を見る前でもタイトルが鮮やかだったり、タイトル自体がインパクトがある内容だったりして、どれを見るか選ぶまでも楽しそうです。

けいちゃんはストリートピアノでの様々な演奏やハプニングなどを中心に見せたいYouTuberという事が伝わってきます。

ストリートピアノの動画を見ると、どれもが文字だけではなく、音声までも使って丁寧に編集されていました。こういった細やかさも人気の秘密なのかもしれません。

アニメやJ-POPなどのストリートピアノ動画が多いようです。聞く人が知っている曲を選ぶのも大事なのだと思います。

よみぃ

彼は自身のプロフィールや本名などを発表しておらず、彼のピアノ歴や学歴、何がきっかけでYouTuberになったのかも不明です。

よみぃの略歴

1997年10月16日生まれ。4歳からピアノを始める。それ以外詳しい音楽の経歴は分かりませんでした。

よみぃは北海道出身で2018年11月に上京しています。21歳の時ですから、大学へは行っていないと考えるのが自然です。

分かっているのは、15歳の時にゲーム「太鼓の達人全国大会課題曲公募」に応募し、初めて作曲した「D’s Adventure Note」が最年少受賞した事。作曲の才能も合ったようです。

よみぃのYouTuber歴

2011年11月にYouTubeチャンネルを開設し、YouTuberとしての活動を始めました。2013年1月にはサブチャンネルである「よみぃ Piano Yomii」を開設。チャンネル登録者は2つ合わせて210万人(2021年9月)だそうです。

2011年からですから「ピアノ系YouTuber」のはしりといっていいのかもしれません。元々は「太鼓の達人」などのゲームの音を中心に投稿していたようですが、現在ではストリートピアノの投稿がメインとなっています。

よみぃのYouTubeを覗いてみた

よみぃのYouTubeを訪ねると他の2人と同様自動で動画が再生されます。ウェルカム動画でこれも定期的に更新されるのでしょう。

今までアップロードされた動画が並んでおり、タイトルが面白く編集されて、まずどれを見ようかと選ぶだけでも楽しそうです。

動画はYouTuberらしくしっかり編集されており、見る面白さを増幅してくれます。主にストリートピアノの動画がメインで、よみぃオリジナルの楽曲の動画、ゲーム音楽の動画、太鼓の達人の動画もあります。

ジャンル別にきちんと整理されており、どのジャンルを見るかすぐに選ぶ事ができるようになっていて、動画を見始めると数時間あっという間に過ぎていくほどです。

ピアノの腕を見せる動画から、パフォーマンスの楽しさを伝える動画まで飽きない工夫がされていて、人気のピアノ系YouTuberは一味違います。

まとめ

「ピアノ系YouTuber」について見てきました。アンケートのベスト3の紹介もしていますが、彼らは自身のプロフィールを公開していないため不詳の点が多いです。

この隠された事が多いというのも人気の秘密なのかもしれません。彼らはプロフィールなどの過去の実績よりも、ただ現在のパフォーマンスだけを見て判断して欲しいと思っているのでしょう。

「ピアノ系YouTuber」の上位人気の人達はソロのコンサート活動なども始めていて、チケットもすぐに完売になるほどのようです。

彼らの活躍がクラシック人気にも火を付けてくれるようになれば素敵だなと願ってやみません。

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