ピアノ協奏曲は「楽器の王様」ピアノとオーケストラが真剣勝負する音楽です。時には寄り添い、時には争い、両者の掛け合いによって1曲の作品を紡ぎだします。
世には数多くのピアノ協奏曲が競い合っていますが、その中でもクラシックファンならば聴いておかねばならない名曲があります。
そんな名曲をランキング形式で紹介したいと思います。作曲家の思い入れと音楽的才能によって格の違いが生まれてきます。
ランキング基準
- スタンダードな名曲
- 音楽史に残るような名曲
- 演奏会で取り上げられる頻度が高い名曲
- ピアノの良さが生かされている名曲
- 1作曲家1作品とする
第10位 シューマン ピアノ協奏曲
詩人の中原中也はこの曲をアマチュアの音楽といったそうです。彼がどういう意味でそういったのか知る由もありませんが、確かにこの協奏曲は他のものと比べると少し異質な協奏曲かもしれません。
ピアノ協奏曲ですから、ピアノの魅力を引き出すように作曲されるのが普通ですが、この作品の場合、ピアノがオーケストラの伴奏に回るようなところもあります。
第1楽章の冒頭からして何と見事な楽曲でしょうか。ただ、第2、3楽章が第1楽章に比べると見劣りするかと思い第10位としました。しかし、シューマンの才能を余すことなく伝える名曲には違いありません。
第9位 ショパン ピアノ協奏曲第1番
ショパンはピアノの詩人として名高い作曲家ですが、ピアノ協奏曲は2曲しか作曲しませんでした。ほとんどがピアノ独奏もので、オーケストラが入る作品はこの2曲だけです。中でもこの第1番が良く演奏されます。
ショパンのピアノ協奏曲はオーケストラは伴奏のみで面白みに欠けるという批判もあります。しかし、ピアノという楽器を徹底的に突き詰めた作曲家でしたから、その部分は致し方ない事ではないでしょうか。
有名なピアノ協奏曲である事には誰しも納得するでしょう。ショパン自身にとっては大の自信作だったようですから。
第8位 リスト ピアノ協奏曲第1番
リストはピアノ協奏曲を2曲作曲しています。第1番の方がピアノの華やかな技巧が前面に出た楽曲であるために人気があります。第2番が演奏される事は滅多にありません。
4楽章で構成されていますが、決定稿が出来上がるまでは3楽章に改訂したり、次には単一楽章にしたりと悩んだようです。演奏時間は20分も掛かりません。
初演は1855年、ベルリオーズの指揮でリストがピアノを弾いたのだそうです。凄い組み合わせですね。これだけで感動してしまいます。
第7位 グリーグ ピアノ協奏曲
グリーグ唯一のピアノ協奏曲です。冒頭のティンパニ連打からのピアノの入り方は何度聴いても感動ものです。クラシック音楽に縁がない方でもこの部分は知っているでしょう。昔、ウォークマンのCMでも使われました。ピアノ協奏曲の中でも人気のある楽曲です。
グリーグはノルウェーの作曲家ですから、ノルウェーの民族音楽を楽曲に取り入れています。如何にも北欧的な感じの楽曲であり、完成度の高い作品で、グリーグの代表作です。
第6位 チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番
この作品もクラシック音楽を知らない人でも冒頭部分は聴いた事があるぐらい有名な楽曲です。ホルン4本から始まる音楽にピアノが挑戦的に覆いかぶさってくる冒頭の部分はこの協奏曲のキモとなっています。
クラシック通の人たちは飽きが来るぐらいの通俗名曲となっていますが、この冒頭部分はいつ聴いてもハッとさせられます。楽曲自体が人気が出るように作られているといっても過言ではないでしょう。
名曲となる条件を全て兼ね揃ている作品です。ですが、逆にそれがマイナスとなる事もあります。それが第6位に甘んじた理由です。
第5位 ラヴェル ピアノ協奏曲
ラヴェルのピアノ曲として最後の作品です。『左手によるピアノ協奏曲』と並行して作曲されていました。一言でいうなら聴いていてとても面白い楽曲です。
ラヴェルの天才さがこの楽曲を面白くしています。彼が持ち合わせたオーケストレーションの魔術とピアノの技巧が良くマッチした素晴らしい楽曲と言えるでしょう。
第4位 モーツァルト ピアノ協奏曲第20番
モーツァルトのピアノ協奏曲は27曲ありますが、今回は『第20番』を選びました。『第23番』の方がより名曲かなと悩みましたが、ポピュラリティの点でこちらを取りました。
第2楽章は映画『アマデウス』のエンドロールに使用されました。モーツァルトの『第20番』以降のピアノ協奏曲はどれもが名曲です。
初演以来、途切れることなく演奏されてきたのはこの楽曲だけというのも選択した大きな理由です。
第3位 ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番
ラフマニノフは3曲のピアノ協奏曲を作曲しましたが、『第2番』が最も有名で名曲の誉れ高い作品です。まるで交響曲のような協奏曲。ピアノ協奏曲の中でも最も上位に値する傑作のひとつです。
少し暗めの甘美な楽曲が人々の心をつかみます。ラフマニノフはもともとピアノの名手ですから、超絶技巧を必要とする難曲でもあります。こういう作品を不朽の名作というのでしょうね。
冒頭のメロディからして背筋がぞくぞくするような感じを覚えます。やはり協奏曲はオーケストラの前奏から入るより、ピアノも同時に入る楽曲の方がいいですね。
第2位 ブラームス ピアノ協奏曲第2番
「ピアノ独奏を伴う交響曲」と謳われるほどの堂々としたスケールを持つ作品です。どの楽章も明るい基調の音楽で満たされていて感動的な楽曲となっています。
4楽章制の協奏曲で、このスケール感はベートーヴェンに通じるものがあります。技術的にも難曲でピアニスト泣かせでしょう。
この作品はピアノ協奏曲の中で優れた傑作であり、唯一無二のブラームス独特の楽曲です。
第1位 ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
第1位はベートーヴェン『皇帝』です。数々存在するピアノ協奏曲の中で比類なき王者たる傑作。まさに世界一のピアノ協奏曲!
冒頭からして唯一無二の世界を描いています。実に堂々としていて、圧倒的です。気高く壮麗であり、他の追随を許しません。
『皇帝』はベートーヴェンがつけたタイトルではありませんが、この作品にピッタリのタイトルです。ピアノ協奏曲の皇帝そのものといえるでしょう。
まとめ
ランキングでピアノ協奏曲を挙げてきました。マニアしか聴かないような作品はあえて選びませんでしたが、スタンダードな協奏曲でもこんなに素晴らしい名曲がある事が素晴らしいです。