いつの時代でも、イケメンは女性にモテるものです。音楽の才能が素晴らしいなら、尚更、女性は黙っていないでしょう。J-POPでもジャニーズ系の歌手たちの人気は絶大です。
クラシック音楽作曲家も同じでした。当時は、サロンと呼ばれる貴族たちの私的な催事に招かれ、ピアノやヴァイオリンを演奏する事が作曲家の人気のステータスだったのです。
単に演奏が上手いだけでは駄目で、出席しているご婦人方の眼鏡に叶うためには、顔だちも関係していたのでした。こうして人気の出た作曲家は、演奏会やピアノの個人レッスンなどの依頼が殺到するようになります。女性にモテた作曲家たちのランキングを作成してみました。
ランキングの条件
- サロンで人気があったという資料が残っている作曲家
- 女性ファンが多かったという資料が残っている作曲家
- 演奏会での人気が高かったという資料が残っている作曲家
- ①から③までの作曲家の資料から筆者が順位付け
第10位:ワーグナー
ワーグナーをランキング入りさせましたが、彼はサロンでの人気が高かったわけではありません。むしろ、サロンには呼ばれない部類の作曲家でした。現在ならば、ワーグナーは銀座の高級クラブで、お金に物をいわせ、女性にモテていた、といえば理解してもらえるでしょうか。
彼は楽劇という新ジャンルを生み出した人物ですが、人間的には最低で、豪遊するお金は全て借金でした。しかも、その借金を踏み倒すような、いわばクズ人間だったのです。
しかし、彼は複数の女性との恋愛遍歴もあり、決してモテない訳ではありませんでした。彼の妻になったコジマは、最初、指揮者のハンス・フォン・ビューローの夫人でしたが、略奪愛で自分の夫人にしています。人妻をよろめかせるような魅力を持ち合わせていたといえます。
第9位:ドビュッシー
ドビュッシーといえば女性の敵と考える人たちが多くいる事でしょう。いつも二股、三股を掛けて女性と付き合っていたのですから、そう思われても当然ですね。
そんなドビュッシーの周りには常に女性の噂が絶えなかったのですから、モテていたのでしょう。しかし、彼と関係を持つ女性は不幸になるばかり。女性の心を傷つける嫌な男性なのですが、不思議と女性はこんな男性に寄ってくるのですね。
女性を手玉に取るほどの器量もなく、いつも泥沼の最後を迎える事も最悪ですが、また次々と女性漁りをするのですから、ドンファンのような人物だったのですね。
第8位:パガニーニ
パガニーニは不思議な人でした。才能は申し分ないのに、誰かに真似されるのではないかと心配し、自作の楽譜を出版せずに、全てをひとりで管理していたのです。演奏会の日に自分で管理している楽譜を各奏者に渡し、演奏会が終わるとすぐに回収していました。
また、ケチでも有名な人でした。しかし、不思議な事に女性にはモテたのです。幾人もの女性と浮名を流し、サロンでも話題の人物でした。ヴァイオリンの上手さは恐らく史上最高で、悪魔に魂を売り渡したともいわれています。
博打が大好きで、負けて大事な楽器を取られてしまった事もありました。そんな、人間的に駄目な部分が、女性の母性をくすぐったのでしょうか。
第7位:シューマン
シューマンは身の程をわきまえた常識人でした。ですから、男としてちょっと危ない様な所へ出入りした事はありません。最後は、残念ながら精神を病んで亡くなってしまいますが、病気になる前の彼は品の良い真面目な人物だったようです。
ここに彼をランキングしたのは、彼が女性に大モテしていたからではありません。クララという音楽的才能も、頭も良かった女性との真剣な愛のためです。女性をここまで夢中にさせた事は、男性としての魅力が高かったのだ思います。
反対するクララの父と裁判にまでなり、ようやく一緒になったのですから、シューマンとクララの決心は固いものだったのでしょう。女性をそんなにまで一途にさせた事でランク入りです。
第6位:メンデルスゾーン
メンデルスゾーンはクラシック音楽家随一の大富豪でした。銀行家の「御曹司」でしたから、サロンに招かれるというより、自宅でサロンを催す事の方が多かったと思います。肖像画を見る限り、なかなかのイケメンでしたから、さぞやモテた事でしょう。
青年期は、サロンの中心的存在だったろうと想像が付きます。招かれた女性たちは、彼の一挙手一投足に注目していた事でしょう。ただし、ユダヤ人だった事はひとつマイナスポイントでした。
彼の生涯は音楽に尽くし、音楽のために生きたものでした。おそらく、モテたけれども、そんな事に時間を割く余裕がなかったというのが、正直な所かと思います。
第5位:ベートーヴェン(青年期)
ベートーヴェンというと気難しくて、だらしのない、音楽バカというイメージを持っている方が多くいますが、ベートーヴェンの青年期はカッコよく(当時の肖像画はイケメン)、礼儀にも、オシャレにも気を遣っていた人物でした。
ですから、サロンでのベートーヴェンのピアノ演奏は人気があり、女性からも大変モテていたのです。40代以降のベートーヴェンとは全く違った人物でした。そのために、ピアノのレッスンを依頼される事が多かったのです。
ピアノは貴族の令嬢たちのたしなみという事もあり、ベートーヴェンは引っ張りだこでした。彼は、惚れっぽく、自分の生徒に恋心を抱く事が多く、その楽曲も多く残しています。『悲愴』や『熱情』などのピアノ・ソナタなどが有名です。
第4位:ラヴェル
ラヴェルは皆が知ってるように、フランス人です。女性関係は割と緩いお国柄ですので、ラヴェルもそうかと思いきやさにあらず。ラヴェルは女性の前にでると、緊張のあまり話もできなかったそうです。
ただし、ラヴェルは物凄いオシャレでした。カラフルなワイシャツ60枚、靴20足、ネクタイ75本、パジャマ25着を持ち歩いていたそうです。こんな洒落た人物が女性にモテなかったはずはありません。
本人がシャイな分だけ、余計に女性からの人気は高くなった事でしょう。写真で見るとダンディズムの塊のような人物です。
第3位:ラフマニノフ
ラフマニノフは近代作曲家のひとりで、何といってもピアノ演奏の大家としても名を成しました。20世紀まで生きてくれたおかげで、彼の録音が残っているのも、素晴らしい事です。
彼はモテました。長身で、イケメンで、ダンディとくれば女性がほおっておくわけはありません。ただ、ラフマニノフはいたって真面目な性格で、女性と遊びで付き合うような事はありませんでした。
パーティなどに出席してもいつも控えめで、部屋の隅にずっと立っているような繊細な人物だったようです。
第2位:ショパン
ようやくショパンの登場です。ピアノ界の貴公子といわれ、サロンでは人気のあったショパン。人気を分け合ったリストと同じ時代に生きたという事も何か因縁めいています。
サロンでのスターでもありました。ショパンが演奏する時には、女性たちは着飾って集まり、その演奏する姿に熱い視線を送っていたのです。
現代でいえば、ジャニーズ事務所に所属する人気スターのように、演奏後には黄色い声援が掛かっていたと思われます。
第1位:リスト
作曲家として、ピアニストとして名を成し、これほどのファンを獲得した作曲家はそうはいないのではないのでしょうか。リストもイケメンで、ピアニストとして超絶技巧の持ち主で、作曲の才能にも恵まれました。
サロンやリサイタルでは客層がほとんど女性たち。黄色い声援を浴びて演奏どころではないような風刺画が描かれています。中には失神する女性客も出たりと、まるで現在のアイドルスター並みでした。
これほどまでの熱狂をもたらしたのは彼の音楽性の他にも、過剰な演出など、リスト自身が油を注いでいた事も忘れてはなりません。彼はNO.1になるための努力を惜しまなかったのです。
まとめ
女性にモテた作曲家を挙げてきました。第1位から第3位までは誰もが納得すると思います。その他の作曲家についてもある程度は肯定して頂けるのではないかと思っています。
最終的にはリストとショパンの争いなのですが、リストは積極的に女性に受けるための演出を自分から仕掛けた事が差を広げました。
こんなにも女性から受け入れられた作曲家はリストが最後でしょう。そしてこんなにも女性を意識した作曲家も彼が最後だと思います。時代が作り上げたスターでした。