世界中で大ヒットし、歴史的なSF映画である『スターウォーズ』!!1977年にシリーズが始まり、以降も全ての作品が爆発的ヒットを飛ばしてきました。
最新の物は最初に公開された『スターウォーズ』とは最早別物と言っても過言ではない進化を遂げてきましたが、40年の時が経過しても変わっていないものがある事にお気づきでしょうか?
映画スタッフの熱い気持ち、監督ジョージルーカス・ファンからの人気などもたしかに挙げる事ができますが、メイン・テーマ始め、各シーンに流れる音楽はどの作品もイギリスのオーケストラが演奏しています。なぜ、イギリスのオーケストラが演奏を担当したのかを纏めてみました。
なんと演奏はイギリスのオーケストラ!
あの印象的な『スターウォーズ』の音楽の作曲者はジョン・ウィリアムズ、アメリカを代表する作曲家です。その名作を演奏しているのが、なんとアメリカのオーケストラではなく、イギリスはロンドンのオーケストラだったのです!
そのオーケストラはロンドンを代表するオーケストラ、ロンドン交響楽団でした。ロンドン5大オーケストラのひとつです。我々に感動を与えてくれた音楽は、この世界的オーケストラの実力によるものも大きかったのです。
冒頭から有名な『スターウォーズ』のメイン・テーマが流れます。それと同時に今に至るまでのエピソードの文字が出てきて、観客を引きつけます。とても刺激的な瞬間です。ロンドン交響楽団というビッグネームだからこそ出せた演奏だったのです。
でも、謎が残りますよね。どうしてハリウッド映画なのにロンドンのオーケストラが使われたのでしょうか?ハリウッドのあるアメリカにも世界を代表するオーケストラが数々あるのにもかかわらず、何故ロンドンのオーケストラに依頼したのでしょうか。
調べていくと『ハリーポッター』の演奏もロンドン交響楽団でした。通りで上手かったわけですね。ハリウッドが色々な映画でロンドン交響楽団を使っている理由が何故なのか、気になるところです。
『スターウォーズ』にロンドン交響楽団が使われた訳
『スターウォーズ』第1作目は撮影が大幅に伸びたため、多額の制作費を要し、音楽に使える予算が限られて、かつ、録音の時間的余裕もなくなって来ました。このことが結果的にロンドン交響楽団を使う理由となりました。
ロンドン交響楽団決定までの流れ
(1)臨時編成オーケストラが使えない
1970年代では一般のオーケストラを使わず、フリーの演奏家や、その日に仕事の入っていないプロ・オーケストラの楽員、音大生、音大教授らを集めて、その日限り・その場限りの臨時編成オーケストラを作り上げて映画音楽を録音していました。
しかし、撮影の日程がかなり押してしまい、音楽の録音の日程が組めずこの方法は使えませんでした。出来上がったラッシュを見て初めて音楽が完成される訳ですから、当然です。
(2)録音日程が取れない
撮影が終わり、ラッシュ試写も終わり、音楽をどう付けるかの監督と音楽監督の話し合いもようやく終わり、録音日も決定されました。しかし、録音に使える日にちは後2日しか残されていませんでした!
プロデューサーやジョン・ウィリアムズは恐らくアメリカのオーケストラに片っ端から連絡を取った筈です。しかし、アメリカのオーケストラは忙しい上に、労働組合が強いので、そんな急な仕事はどこも受けることは無かったと思われます。
(3)予算が足りない
撮影が押した関係で録音にかける予算も大幅に縮小されました。アメリカのオーケストラのギャラは高いので、いくら打診してもその時点で門前払いだったオーケストラは多かったと思われます。
(4)アンドレ・プレビンに泣きつく
そこで、ジョン・ウィリアムズは親友の指揮者のアンドレ・プレビンに何とかならないかと電話をして相談したそうです。プレビンはアメリカのオーケストラの音楽監督だった頃からハリウッドとは関係があったためです。
急な話でしたが、当時プレビンが音楽監督だったロンドン交響楽団が奇跡的にちょうどその日に空いていたため、このオーケストラを使う事が急遽決まったそうです。
ロンドンでも5大オーケストラが覇を競っており、ロンドン交響楽団でも収入的にも大変な状態のため、何でも引き受けますよ的なところがあり、両者にとってウィンウィンという形となったというわけです。
最初からロンドン交響楽団を使うつもりではなく、以上の(1)~(4)の流れで、このオーケストラを使わざるを得なかったという事だったのです。
というわけで、費用も予算内に抑えられ、なおかつ世界的なオーケストラが使える事になり、プロデューサーは安堵したそうです。
この映画が大ヒットとなり、その後映画音楽はロンドン交響楽団に依頼するという流れが始まったのです。
この音楽を世界的にしたロンドン交響楽団
費用面と日程面が合ってようやくロンドン交響楽団が使われることになりましたが、わずか数日(2日と言われています)で、指揮者が曲を解釈し、これだけの音楽を演奏できるまでに仕上げるのは、相当大変だったと思います。
これだけの時間であれだけの曲を録音したのは奇跡的な事だと思います。例えば『メイン・テーマ』。『2001年宇宙の旅』で使われた『ツァラトゥスラはかく語りき』のような壮大な音楽です。
未来を感じさせてくれる曲でもあり、ヒーローが出てきて活躍してくれるイメージを持った音楽です。2管編成のオーケストレーションですが、迫力あるダイナミクスを持ち、心に響いてくる勇気あるテーマです。
これから展開されるであろう物語が伝わってきます。決して難しい音楽ではありません。しかし決して簡単な音楽でもありません。この辺の力具合が天才的です。
流石はジョン・ウィリアムズです。物語のこれからの展開をイメージさせながら、音楽的効果を最大限に使って分からせてくれます。
スターウォーズの音楽の素晴らしさ
この音楽は時代を先取りしていて、あの音楽が無かったなら、きっとこの映画のイメージも変わったものになったでしょう。それだけ、名曲なのです。
メイン・テーマは先に述べたとおりカッコイイ音楽です。もっと詳しく見てみると、ルークの音楽、レイア姫のテーマ、ハン・ソロのテーマなどキャラクター毎のテーマもあります。
その人物が登場する時は勿論、その人物に関係する事柄に対して、それらの音楽が使われる事もあります。
これは楽劇を発明したリヒャルト・ワーグナーのライト・モチーフ(特定の人物・理念・状況などを表現するために繰り返し現れる短い音楽)のような感じで、音楽的には完成度の高いものになっています。まるでクラシック音楽のようです。
これだけの音楽をほぼ初見で演奏しているロンドン交響楽団も素晴らしいです。時間がタイトなところで次々に録音して行ったのでしょうから、このオーケストラのレベルの高さが分かります。
作曲家、指揮者、オーケストラが一体となった素晴らしい曲に仕上がっています。世界に冠たる映画に相応しい曲であって、まるでクラシック音楽の作曲家が作ったような作品です。
『スターウォーズ』の音楽は米国映画協会から「アメリカ映画史上最も記憶に残る映画音楽」に挙げられており、更に高い称賛を受け続けています。
ロンドン交響楽が演奏した映画
『スターウォーズ』がヒットしたおかげでロンドン交響楽団が使われる映画が多くなりました。ヒットした映画の音楽を多く手がけています。改めて聴いて見るとロンドン交響楽団のレベルの高さを感じます。主な作品だけを挙げておきましょう。
『インディ・ジョーンズ』
インディアナ・ジョーンズ博士が世界中を巡って財宝を見つける物語です。こんな説明は必要ありませんね。本当に誰でも楽しめる面白い映画でした。
『インディ・ジョーンズ』を見たときには、クラシック・ファンになっていたこともあり、彼の音楽は流石だねなどと友達と話をした事も思い出しました。
この映画のメイン曲は『レイダース・マーチ』といいます。聴いてすぐに冒険アドベンチャーの音楽と分からせてしまうテクニックが素敵です。
インディアナ博士がこれからとんでもない活躍をみせるんだろうなという期待感が高まって来て、観る者の興味をいやが上でも高めさせてくれます。
もともとは2つの曲でしたが、両方を気に入ったスピルバーグのアドバイスにより、1つにまとめられたそうです。
『スーパーマン』
「空を見ろ! 鳥だ! 飛行機だ! いや、スーパーマンだ!」というキャッチフレーズは有名ですね。コミックヒーローの実写版です。
街中の電話ボックスでスーパーマンに変身する変身ヒーローの草分け的存在です。新聞記者の彼女が死んだ時、地球を逆回転させて時間を戻し、彼女を生き返らせましたが、そんなことしても時間は戻るわけが無いでしょ、と突っ込みを入れたくなる場面も多々あって、面白かったです。
ジョン・ウィリアムズが渾身の力を込めて書いた作品です。スーパーマンの代名詞的な存在になるほどの音楽。このままクラシックの演奏会に持っていけるほどです。
しかし、私的には『スターウォーズ』には適わない内容に思えます。マーチングソングと思って聴けば凄い曲ですが、『スターウォーズ』ほど視野が広くない音楽に聴こえます。
あの宇宙的な広がりをこの音楽では感じられません。いかに『スターウォーズ』が凄かったかを思い知らされます。とはいえ、誰も彼の足元にも及びませんが…。
『ハリーポッター』
魔法使いの卵達の面白い物語です。これも人気があってシリーズ化されました。私にはちょっとこの作品の面白さが分かりません。もう歳ですからね。
メイン曲は『プロローグ』。私はこの映画をテレビでしか見ていませんが、この『プロローグ』からして不思議な物語が始まる雰囲気が満々です。
不思議の世界の音楽。途中盛り上がりはありますが、冒険活劇ではないよと音楽が伝えています。メロディ、音楽展開そしてオーケストレーションは流石です。
ジョン・ウィリアムズについて
これらの映画の音楽を担当したジョン・ウィリアムズについて紹介しておきましょう。へえ~、これもそうなのという映画が多くあります。
ジュリアード音楽院卒
ジョン・タウナー・ウィリアムズ(John Towner Williams, 1932年2月8日)はニューヨーク・フラッシング地区生まれ。1948年にロサンゼルスへ一家で引っ越します。
兵役後、ジュリアード音楽院に入り、ピアノを専攻。ロジーナ・レヴィーンに師事。ジュリアード在学時よりジャズピアニストとして活動しています。
ジュリアードでロジーナ・レヴィーンに教わったという事でびっくり。音楽的才能は抜群だったのですね。ソロとしてジャズをやっていても成功したかもしれません。
映画界での活躍
まずはテレビの連載ドラマの音楽から始まり、映画『チップス先生さようなら』(1969年)、『屋根の上のバイオリン弾き』(1971年=アカデミー編曲賞)、『ポセイドン・アドベンチャー』(1972年)等の音楽担当として注目され、スティーヴン・スピルバーグ監督の『ジョーズ』(1975年)の音楽がアカデミー作曲賞を受賞。名実ともに映画音楽の第一人者となります。
一連のスティーヴン・スピルバーグ作品、ジョージ・ルーカス監督の映画『スター・ウォーズ』シリーズで確たる地位を築きました。その他にも、『インディ・ジョーンズ』、『ハリー・ポッター』などにも素晴らしい音楽を残してくれています。
指揮者でも活躍
指揮者としては、ボストン・ポップス・オーケストラの指揮者を1980年から1993年まで務め、退任後も名誉指揮者としてたびたび指揮台に立っています。
同オーケストラを指揮したホルストの『惑星』やガーシュウィンの『ラプソディ・イン・ブルー』、自作の映画音楽など多数の録音があります。
極め付きは2020年1月にウィーン・フィルまで指揮しました。『スターウォーズ』のテーマなどで聴衆を楽しませてくれました。
まとめ
映画音楽について考える事などありませんでした。しかし、映画について調べているうちにロンドン交響楽団が多い事に気付いたため、この記事を書きました。
クラシック音楽のプロオーケストラがこんな仕事も引き受けているのですね。良い映画ならより良い音楽で見たいですからね。今後もロンドン交響楽団に期待しています。
シンフォニー・オーケストラは内職で映画音楽を担当する事が多くなりました。他のオーケストラも参入しています。日本のスタジオ・ジブリの作品も新日本フィルが担当していました。