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スタインウェイのピアノ

プロのピアニストがコンサートでピアノを弾く場合、圧倒的にスタインウェイのピアノが使用されています。スタインウェイは現在我々がピアノを聴く上でのスタンダードとなっています。コンサートピアノと言えば、スタインウェイ・ピアノという事が代名詞のようになっています。

クラシック音楽に限らず、ジャズやロックでさえ、スタインウェイが多く使われています。なぜ、こんなにスタインウェイの音が愛されているのか、不思議に思ったことはありませんか。音色の美しさ、立ち上がりの良さなど優れた点が満載です。スタインウェイが使われる理由があるのです。

クラシック音楽界において圧倒的シェアを誇るスタインウェイ!スタインウェイの歴史や概要、そしてその特徴、他のライバルメーカーとの違いや、何がそんなに差をつける要因なのかをひとつひとつ説明していきたいと思います。スタインウェイの素晴らしさが分かるはずです。

スタインウェイのコンサート使用率98%

壇上のピアノ

少し前のデータになりますが、2008年から2009年に全世界で開催された著名ピアニストのピアノ協奏曲で253回中250回スタインウェイが使用されました。コンサートでの使用率は驚きの98%!!250/253という結果は凄いとしか形容できません。スタインウェイの独壇場です。

このときの新聞広告は今でも印象的でした。新聞見開きを使って、グランドピアノの陰絵を100個書き、98個まで黒に染めて、「信頼のスタインウェイ、98パーセントの利用率」のようなタイトルをつけていたような気がします。さすがスタインウェイと感心したことは忘れられません。

2018年のスタインウェイの公式ホームページでもコンサート世界シェア98%と書いているので、今でもその数字は変わらないようです。それにしてもそこまでコンサートピアノシェアが高かったとは思いませんでした。スタインウェイはまさにピアノ界の王者と言えるでしょう。

スタインウェイ&サンズ

スタインウェイのグランドピアノ
スタインウェイ社は正式には「Steinway & Sons」社です。略称でスタインウェイと呼ばれています。創業者はドイツ人のハインリッヒ・エンゲルハート・スタインヴェグ。現在では世界的に知られるクラシック界の超一流ブランドです。スタインウェイ社の歴史をみていきましょう。

スタインウェイ社の歴史

スタインヴェグは当時、ドイツ・ゼーセンでオルガンを製造する技術者でしたが、音楽の素養と木工技術を生かし、1836年に自宅の台所で第1号のグランドピアノを完成させます。超有名ピアノメーカーであるスタインウェイ社の歴史はここから始まりました。

その後481台のピアノを製作しましたが、ヨーロッパの政情不安から長男セオドア一人を残し一家はアメリカへと移住する事になります。1853年、名前をヘンリー・エンゲルハート・スタインウェイとアメリカ風に改名し、3人の息子たちと共にアメリカでピアノ会社を興します。

ニューヨーク州で立ち上げた会社が「Steinway&Sons」でした。ここで作られた最初の製品の製造番号が483です。このピアノは今、メトロポリタン美術館に展示されています。因みに1836年の第1号も同美術館に展示されているそうです。

ピアノ作りに対する情熱

長男のセオドアは音響学と物理学を学び、数多くのピアノ構造上の特許を取得しています。スタインウェイが取得した127の特許の内、長男セオドアによるものが46もあります!次々と改良を加え人気を不動のものとします。1880年には祖国ドイツのハンブルグにも工場を開設までになります。

昔からピアノ1台の完成に1年以上掛け、職人の手で1台1台丁寧に作られています。2015年までの生産数は602,800台までに達しました。そしてクラシックのみならずジャズ、ポップスでも優れた音楽家達に気に入られ、今のように他を寄せ付けないピアノメーカーとして成長してきたのです。

スタインウェイの音の特徴

スタインウェイピアノは、よくフレーム(鉄骨)で鳴らすと表現されます。パワフルで遠くまでよく響く音、輝かしい高音、ピアニストの弾き方による音色差がほかのブランドに比べ小さいことが特徴です。この事が、世界のピアニストに愛用されている最大の理由なのでしょう。

ピアノの筐体そのものを響かせて出す音は暖かみを持つようで不思議な魅力があります。1867年のパリ万国博覧会で最高金賞を受賞するなど、様々な機関、団体からそのピアノクオリティーの高さに対して数々の賞を送られています。この事は、スタインウェイのブランド化に貢献しました。

スタインウェイピアノの構造

グランドピアノ 響板
スタインウェイピアノは、12,116個のスタインウェイ純正部品によって構成されています。これらがひとつひとつ組み合わさり、あの素晴らしいスタインウェイの音色が出来るわけですが、ここではその全てを見ていくわけには行きませんので、大切なところを掻いつまんで説明します。

鍵盤のアクション

シンプルで美しい鍵盤のアクションは1883年に完成され特許を取得しました。現在でもほとんど形が変わっていません。他社と比べてスタインウェイのアクションは「細くてシンプル」というのが、タッチの秘密です。ピアニストにとっては、タッチはとても重要な要素です。

「打鍵のエネルギー」の損失を最小限に抑えて思い通りの音に反映させる素晴らしい仕組みなのです。これも、スタインウェイ社の特許のおかげです。現在でもこの仕組みが生かされていると思うと、感慨深いものがあります。よき伝統を守りつつ、制作されているのです。

リムと響板

メーカーを問わず、グランドピアノの形はどこも同じ形をしています。しかし、あの曲線美、実はスタインウェイが最初に創りました。しかも、薄い板を張り合わせた一枚の合板を、一気にあの曲線に仕上げてしまいます。あの曲線の部材自体を「リム」と呼びます。

ピアノの大きさによって枚数が異なりますが、薄い板15枚〜18枚を貼り合わせ、外側と内側のリムを一気に成型します。蒸気を使用せず、熱だけをかけて2時間で成型後、6〜8ヶ月の間、接着剤を乾燥させます。蒸気を使用しないため、一度リムの形が決まると、半永久的に変化しない、安定性と耐久性を兼ね備えたリムが出来上がります。

次に「響板」です。現在、スタインウェイで使われている響板材は、「アラスカ産シトカスプルース」です。スタインウェイは、アウターリムとインナーリムを、同時に「一体成型」で作り、そこに厳選された響板を、ピッタリと隙間無く貼り込みます。ここが他社と違うところです。

スタインウェイは「リム」と「響板」が一体となって音を生み出しています。弦振動が響板とリムに一瞬のうちに伝わり、スタインウェイサウンドが生まれるのです。スタインウェイのピアノは、まさに、特許の塊のピアノなのです。ですから、他社のピアノとは、音色や響きが違うのです。

サウンドベル

「サウンドベル」は、高音側リムの湾曲した部分に取付けられています。ピアノの下から覗くと、金のタマゴみたいに見える部分です。サウンドベルは、スタインウェイ社が最初に発明、1886年に特許を取得。グランドピアノのA、B、C、Dの各モデルに取付けられています。

音の響きを良くする

スタインウェイのフレームは、他社のフレームと比べると非常に薄く作られていて、響板ほどではありませんが、弦振動を受けてフレームも振動しています。そしてそのフレームの振動をリムに伝えて、スタインウェイ独特の金属的な音の成分を鳴らしているのです。

5本目の支柱

グランドピアノには中に4本の支柱があり、支柱は、約20トンにもなる弦の張力を支える役割を担っています。また、非常に強い弦の張力により、フレームには上方向に歪もうとする力が働きますが、このサウンドベルはそれを防ぐ役割も担っています。

上記のように、高音部は、フレームが上方向に歪もうとする力が最大になっている部分です。しかし、太くて頑丈な支柱を組み込むにはスペースが足りず、悩んだ末に考え出されたのがサウンドベルでした。サウンドベルは5本目の支柱の役割も担っています。

交差弦

1855年スタインウェイはスクエアピアノの「交差弦」を生み出し、1859年グランドピアノで鉄骨・交差弦の特許を取得しました。それまで平行に張られていた弦を斜めに交差して配置することで、低音の駒の位置を限りなくリムに近づけることができるようになりました。

グランドピアノの反響板を上げて中を見てみると、弦が交差しているのが分かります。より良い低音の響きを得られると同時に、低音・中音弦も長くなるため、より良い音色とより豊かな響きを得ることが可能となったのです。現在ではさまざまなメーカーでこの交差弦を採用しています。

コンサートでのピアノ選択

スタインウェイのピアノ

ピアニストは基本、ホールに備え付けのピアノから選択してコンサートに臨みます。クラシック音楽専用ホールは全て複数台のピアノを備えているのが当然です。三大ピアノメーカーのピアノを置くのが理想ですが、予算的な問題もあり、2種類というところが多いと思います。

例えばサントリーホールにはスタインウェイ4台、ベーゼンドルファー1台の計5台準備されています。ピアニストによって違いますが、わざわざ4台のスタインウェイをステージまで運んで、ステージ上で全てのピアノをチェックして選択する人もいるとの事です。

基本的にリハーサル室や、指揮者などの控え室には必ずグランドピアノが置いてあり、サントリーホールにもリハーサル室に1台、楽屋には4台置いてあります。公表はされていませんがおそらくスタインウェイのピアノかと思われます。ステージで使うピアノよりはランクが下のものでしょう。

世界中のコンサートホールや録音スタジオに備え付けられているピアノはスタインウェイのシェアが90%以上だそうで、まさにピアノ界の巨人です。コンサートピアノシェア98%、装備品としてのシェアも90%以上ですから、他社が入り込む余地は当分無さそうです。

スタインウェイ世界シェア98%の理由

 
スタインウェイから奏でられる音は、現代の大型コンサートホールでも十分に響渡り、なおかつダイナミックスも広く煌びやかなのが特徴です。この音、この響きが好きだ!というピアニストが多数派であることが、コンサートピアノシェア98%の最大の理由でしょう。

前にも記述しましたが、ピアニストの弾き方による音色差が小さいということが大多数のプロのピアニストにとって大きなプラスに働いています。自分のテクニックが素直に反映されるわけですから、このコンサートピアノを使うのはいたって当然のことです。

これらを考え合わせるとコンサートピアノシェア98%も当然かと思われます。

スタインウェイ、スタンダードピアノの値段

  1. D-274 22,300,000円
  2. C-227 16,000,000円
  3. B-211 16,400,000円

D-274が世界中のコンサートホールで1番多く使われています。いわばこのピアノがコンサートホールのスタンダードモデルであるということです。弾きやすさも、音色も、響きも最高と思っているピアニストが多数派なのですから、この結果は、至極当然の事です。

ピアニストたちのスタインウェイ賛辞

イギリス王立音楽大学の教師
内田光子
「ここぞという時にスタインウェイは信頼感が高い」「私の知るピアノの中で最も万能な楽器」

アシュケナージ
「スタインウェイは、ピアニストが思いのままの音を実現できる唯一のピアノ。まさに夢のピアノ」

ラフマニノフ
「スタインウェイ様、コンサートでスタインウェイのピアノを弾くチャンスに恵まれ、大変嬉しく思っています。スタインウェイのピアノは全てにおいて完璧です」

エトセトラ、エトセトラ・・・

スタインウェイのライバル達

世界のピアノメーカーでは三大メーカーが有名です。1社目が勿論スタインウェイ、そのほかにべヒシュタインとベーゼンドルファーが肩を並べています。最近は日本メーカーのヤマハ、河合楽器も三大メーカーに肩を並べるような存在となりました。

この三大メーカーはピアノの売り上げ台数ではなく、総合ブランド力、コンサートホール設置台数などによるものです。単なるピアノの売り上げシェアではありません。これが、ピアノの世界の難しいところで、売り上げが多いというだけでは、勝負のできないところなのです。

べヒシュタイン

べヒシュタインのグランドピアノ
日本ではクラシックに興味のある人以外は知らないメーカー名だと思います。スタインウェイと同じ1853年に、カール・べヒシュタインがドイツで創業しました。スタインウェイがニューヨークで開業した年と同じというのが興味深いところです。

第2次世界大戦後は連合軍に接収されましたが、ドイツに買い戻され、ドイツのザクセン州を製造拠点とし、べヒシュタイン=ドイツ製品という明確なモットーの基にヨーロッパ最大のピアノ企業に成長しました。高級ピアノメーカーとして、スタインウェイに追い付こうと必死です。  

音の特徴はべヒシュタインは響板で鳴らすと表現され、スタインウェイとは対照的な落ちついた木の音(金属的な音がしない)です。落ち着いた上品な響きが特徴であり、一部のプロはベヒシュタインしか弾かないというピアニストもいます。

ベーゼンドルファー

ベーゼンドルファーのグランドピアノ
1828年オーストリアのウィーンでイグナツ・ベーゼンドルファーが創業しました。数多くの音楽家達にピアノを提供し、特にリストとの出会いからその名声を広めることとなりました。大作曲家リストの名が出てくるぐらい伝統のあるピアノメーカーです。

ベーゼンドルファーは箱で鳴らすと表現され、楽器全体が響いた、甘美な音が特徴です。スタインウェイと違い、ピアニストの弾き方による音色差が大きいです。その響きは「ウィンナトーン」と呼ばれ、「ウィーンの宝」ともいわれています。

残念なことに、ベヒシュタイン、ヤマハ、河合楽器の追い上げで、売り上げが低迷し、2007年11月にヤマハに買収され、今はヤマハの完全子会社になっていまいました。ヤマハ傘下になっても、「ウィンナートーン」を忘れずに、将来へと伝えて貰いたいと思います。

ヤマハ

ヤマハのグランドピアノ
1897年山葉虎楠(やまは・とらくす)が静岡県浜松にて創業しました。スタインウェイのシェアを何とか少しでも奪おうと意気揚々なピアノメーカーです。バイク以外にも楽器作りにかけては超一流企業です。ヤマハは、楽器の量産化と手作りを両立させた会社です。

ピアノだけでもその生産数は今までで(2016年)、なんと6,420,000台。スタインウェイが総数600,000台ですから一桁違います。ピアノの生産台数世界一の企業です。勿論、アップライトの割合が圧倒的なのでしょう。国内だけで見れば生産台数のシェアは約60%とダントツです。

量産化が実現したおかげで品質がどれも均一となり、ピアノの値段が劇的に安くなり、普及に一役買いました。一般家庭用アップライトピアノから超高級フルグランドピアノまで多様な種類を生産しています。スタインウェイの背中を追う1番手はヤマハといえそうです。

河合楽器

河合楽器のグランドピアノ
1927年ヤマハから独立する形で静岡県浜松市に河合小市(かわい・こいち)が創業しました。同業のヤマハと切磋琢磨し、日本の音楽普及に貢献しています。ピアノの生産台数はヤマハについで世界2位です。生産台数世界1位と、2位が日本なのですから凄いものです。

アコースティックピアノの生産台数国内シェア約40%とヤマハと競い合っていますが、コンサート用グランドピアノの世界ではようやく評価がヤマハに追いついたといった感じでしょうか。この分野では、まだまだヤマハの方が多くの経験があり、一歩リードされている状態です。

両者で奮闘してもらって、日本のコンサート用グランドピアノのレベルが高くなる事を望んでいます。スタインウェイのシェアを少しずつでも奪い取るように期待しましょう。とはいっても、巨人とはまだまだの隔たりがありますから、いばらの道でしょう。

日本を席捲したロックバンド「X-japan」のYoshikiが使っているクリスタルピアノは河合楽器のものであつ事は非常に有名です。お値段は約6,400,000円と非常に高額です。最近ではこのクリスタルピアノの最新モデルが完全受注生産で一億円で販売されたとの事。

ファツィオリ

ファツィオリのグランドピアノ
パオロ・ファツィオリが1981年に創設したイタリアの新しいピアノメーカーです。完全な手作りでグランドピアノを専門に扱い、年120台程度しか製作できないそうです。新興ピアノメーカーですがピアニスト達の評判もよく三大メーカーと同じぐらい名前が浸透しています。

4本のペダルのグランドピアノなど、非常に特徴あるピアノを製作しているピアノメーカーです。ハンマーのフェルトや響板、フレームの鋳造など、伝統的な作り方で、熟練した工員たちが1台、1台作り上げています。ファツィオリのピアノだけを弾くピアニストも増えてきました。

 

ピアノメーカーのもうひとつの競争

スタインウェイのピアノ

世界にはピアノだけでも数々の有名なコンクールがあります。ショパンコンクールが最も有名ですが、コンクールでのもうひとつの戦いが我々の知らないところで繰り広げられています。特に世界三大コンクールでの熾烈な競争は、ピアノメーカーのブランド力にも繋がりますから大変です。

ショパンコンクールでは、1980年まで公式ピアノにはベーゼンドルファーが入っていましたが、その後はヤマハと河合楽器とファツィオリが採用されたことにより公式ピアノから除外されました。ヤマハは2010年の第1位のピアニストがヤマハを使用しそのクオリティを世界に示しました。

2015年のチャイコフスキーコンクール、ピアノ部門は1次予選通過者36名のうち26名がスタインウェイを選択(72%)し、ヤマハは36名中4名が選択(11%)しましたが、決勝では全員がスタインウェイを選択しました。やはり、スタインウェイは圧倒的です。

同じ年のショパンコンクールではファイナリスト10名が使用したピアノは、2次予選まで10名のうち7名がヤマハを選択し、3名がスタインウェイだったそうです。ファイナルではヤマハ5名、スタインウェイ5名となり、最終結果は1位、3位、4位がスタインウェイ、2位、5位、6位がヤマハでした。コンクールの世界ではヤマハがスタインウェイを猛追しています。

まとめ

スタインウェイは今後もコンサートシェアNo.1を維持していく事と思われます。スタインウェイの音に魅せられたピアニストがこの世界にこれだけ存在しているのですから。我々聴衆はピアノリサイタルでも、ピアノ協奏曲でもスタインウェイの音に魅了され続けていくでしょう。

コンクールの競争では、ヤマハの猛追といってもまだまだほんの数%の話。スタインウェイはそう容易く1位を譲ることはありえません。ピアノ界の巨人スタインウェイはこれからも独自のスタイルを守り通し、世界にその存在をアピールし続けていくはずです。

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