室内楽の名曲

クラシック音楽というと誰しも思い浮かべるのがオーケストラかオペラというのが一般的な感覚だと思います。ピアノやバイオリンのリサイタルが真っ先に頭に浮かぶ人もいるかもしれません。

しかし、室内楽という素晴らしい世界も存在しているのです。室内楽とは少人数で行う合奏曲を意味します。例えば弦楽四重奏やクラリネット五重奏などです。

ちょっと地味なイメージがありますが、演奏者たちの楽器自体の響きが直接味わえますし、雰囲気も少し大人っぽさを感じます。たまには室内楽の名曲を聴くのもクラシック音楽の楽しみです。

演奏家にとって室内楽の意味

有名なオーケストラほど室内楽に力を入れている奏者が多いのが実態です。例を挙げれば、ウィーン・フィルの団員が作っている室内楽の団体は30ほどあります。

楽団員の話ではオーケストラという大規模な団体の1奏者として演奏しているだけでは、その中に埋没してしまい、自分の音楽を演奏できない不満がたまるといっています。

室内楽は、他奏者の響きを確かめながら演奏します。これによって、少人数によるコミュニケーションが取れ、充実感が味わえ、本来の自分に戻る事が出来るそうです。

その後オーケストラの仕事に戻っても、その感覚を忘れることなく、他の奏者の音を確認しながら演奏する事ができ、演奏レベルも高まる利点が生まれるようです。

取り上げる楽曲の基準

  1. 初心者でも楽しめる名曲である事
  2. よく演奏会で取り上げられる楽曲である事
  3. できる限り違った編成の楽曲を取り上げる
  4. 弦楽四重奏曲は除く(この特集は別にやります)

モーツァルト:クラリネット5重奏曲


(第1楽章のみ)

冒頭から清々しい魅力的なメロディで始まります。最初から聴く者の心を捉えて離しません。ドイツの音楽史家ヘルマン・アーベルトは「雲のない春の朝」と評したとか。言いえて妙です。弦楽四重奏とクラリネットの掛け合いのバランスが良く取れています。

第2楽章以降も、モーツァルトの穏やかさが良く出ていて、まるで野原で子供たちが遊んでいるような光景が目に浮かんできます。終楽章は変奏曲になっていて、これもまた楽しめます。名曲とはこんなものを言うのだよとモーツァルトが教えてくれているようです。

ブラームス:弦楽6重奏曲第1番


(第2楽章のみ)

まずは第2楽章だけを聴いてみて下さい。とても美しい旋律ですが、この何とも言えない哀愁のこもった切なさには心を揺さぶられます。気に入った方はぜひ第1楽章から聴いて貰いたいです。第1楽章もとても20代のブラームスが書いたとは思えないほどシブい音楽になっています。

第3、4楽章は前半でこんなに見事な曲を書いたのだから、ブラームス先生もう少し頑張ってくださいと愚痴の一言も出るような内容です。でも、演奏を聴き終わるとそれほど悪くはないかとつい思ってしまうのも不思議です。

シェーンベルク:弦楽6重奏曲「浄夜」


(冒頭部分のみ)

シェーンベルクは現代音楽の作曲家で、12音技法を考えた人物です。そこから現代音楽はめちゃくちゃ難しくなってしまうのですが、この楽曲はそこに辿り着く前に作曲した作品ですから安心して聴いてください。

この楽曲は、デーメルの詩に感動したシェーンベルクが作曲したため、詩の原題である「浄夜」と呼ばれています。単楽章の楽曲です。一度詩を読んでから音楽を味わうとその情景が浮かんでくるでしょう。

ベートーヴェン:ピアノ3重奏曲第7番「大公」


(第1楽章のみ)

ベートーヴェンのパトロンであり弟子でもあったルドルフ大公に献呈されたため、「大公」と呼ばれています。ピアノとヴァイオリン、チェロの組み合わせの3重奏曲です。ベートーヴェンの作品としては穏やかで気品あふれる楽曲となっています。

「大公」全曲は室内楽曲としては40分と大作です。伸び伸びとした大らかさがあり、また美しい旋律に溢れた楽曲です。内容の充実度、規模ともに比類がない作品となっています。

シューベルト:ピアノ5重奏曲「鱒」


(第4楽章のみ)

第4楽章が歌曲『鱒』の旋律による変奏曲である事からこの名が付いています。ですから、全く聴いた事のない方は第4楽章から聴き始めると入りやすいでしょう。「鱒」のテーマが色々と変奏していく様が良く分かって面白く聴けるはずです。

ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロおよびコントラバスという5重奏も珍しい編制です。22歳のシューベルトが作曲した若々しく軽快な音楽で、名曲としても知られています。

ベートーヴェン:弦楽3重奏曲作品9-3


(全曲)

ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロという編成の作品です。若き日のベートーヴェンが5曲ほど作っています。その中では特にこの楽曲が素晴らしいです。ベートーヴェン自身も自信があったらしく、この曲をパトロンに献呈する際「最高の作品」と紹介しています。

美しい旋律であり、とても魅力的な音楽だけに留まらず、3、4楽章では激しさも現れます。本当に弦楽トリオでここまで音楽が表現できるものかと驚くほどです。実際の演奏自他は少なめで、基準の「良く演奏される事」にはギリギリかなという点はお詫びしておきます。

ブラームス:ホルン3重奏曲


第1楽章のみ

ブラームスが残した唯一のホルンの室内楽曲です。ピアノ、ヴァイオリン、ホルンという組み合わせのトリオとなっています。第3楽章作曲中に母親が亡くなり、この楽章にはその追悼の意味も込められています。

第1楽章から穏やかですがやや不安な音楽が展開されますが、最終楽章は長調になり晴れ晴れとした気分で終わります。名曲の誉れ高い楽曲です。最近はホルンの代わりにヴィオラで演奏するパターンも増えてきました。

モーツァルト:ヴィオラ、クラリネット、ピアノのための三重奏曲


(第1楽章のみ)

この楽曲は「ケーゲルシュタット・トリオ」とも呼ばれています。「ケーゲルン」とは、ボウリングの原型のような遊びで、「九柱戯」と翻訳されます。何とモーツァルトはこの遊びをしながらこの楽曲を作曲したといわれている事によるものです。しかしこれは眉唾らしいですね。

モーツァルトは当時新楽器として発明されたクラリネットに興味を持ち、この楽器のための新曲をいくつか作りました。この組み合わせの三重奏は斬新な試みでした。モーツァルトの天才性が感じられる楽曲です。

ブラームス:クラリネット5重奏曲


(第1楽章のみ)

ブラームスが創作意欲の減衰から引退を決めて身辺整理をしていた矢先、クラリネット奏者のリヒャルト・ミュールフェルトの演奏を聴き、創作意欲がまた復活し、引退を撤回した話は有名です。クラリネットの名手の演奏に対して、心が揺さぶられたのでしょう。

決して筆が早くなかったブラームスが僅か2週間で書き上げました。それだけ入れ込み方が半端ではなかったという事です。ブラームス晩年の代表作となりました。明るい部分がない音楽ですが、けれども陰鬱ではありません。落ち着いた気分で聴いていられます。

モーツァルト:オーボエ4重奏曲


(第1楽章のみ)

モーツァルト唯一の「オーボエ4重奏曲」は、友人でもあった名オーボエ奏者フリードリヒ・ラムのために作曲されました。オーボエを協奏的な役割をになう独奏楽器として扱っています。ラムの腕が確かだったからこそ書けた知られざる名曲です。

全体的に明るく伸びやかな楽曲で、モーツァルト好きで有名だったアインシュタインは、協奏曲的な精神と室内楽的精神の結合という点で、この作品に比較しうるものは、晩年の「クラリネット5重奏曲」だけであると述べています。

まとめ

室内楽の名曲を10曲揚げてみました。室内楽は地味ですが名曲が結構存在するのです。これを読まれた方はぜひ自分のCDコレクションに室内楽も加えて欲しいものです。ワインなどを頂きながら聴いてみるのも大人の雰囲気が味わえます。

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