最近の日本ピアニスト界も若手が台頭してきて世代交代の感があります。若き才能あふれるピアニストが出てくる事は喜ばしい限りです。
近年はクラシック音楽の世界を取り上げる映画やテレビ番組が増えてきて、そこから一気に人気が高まった若手ピアニストも出てきました。メディアの発展でクラシック音楽界の環境も変わってきています。
今回はそんな中で活躍を続ける日本人ピアニストに焦点をあてます。若手からベテランまで現在活躍著しい日本人ピアニストを10人紹介します。
選定基準
- 日本人である事
- 才能があり人気も高い事
- 現在の活動が顕著な事
- 日本ピアノ界の牽引役となりえる事
辻井伸行
まずはこの人物を取り上げないわけにはいかないでょう。この10年最も注目されてきたピアニストです。
1988年生まれの辻井伸行についてはピアノに興味のない一般の人でも盲目ながらヴァン・クライバーン・コンクールで優勝した事で有名になりました。
両親が幼いころから好きな事は何でもやらせてあげようと自由に育て上げた結果、世界的なピアニストにまでになりました。
趣味も水泳、スキー、登山と活動的です。その中でも元も興味を持ったピアノは自発的に積極的に練習してきたそうです。元々才能があったのですね。
ベルリン・フィルとの共演もあり、その他の世界的著名なオーケストラとの共演も多数あります。リサイタルにも精力的に活動しています。
彼の魅力は何といってもその音色、そしてテクニックです。どんな楽曲でも楽しそうに弾く姿は我々を別の世界に連れて行ってくれます。それが最大の魅力です。
藤田真央
1998年生まれの若手ピアニストです。2016年、第20回浜松国際ピアノアカデミーコンクール第1位を取り注目を集め、2019年、第16回チャイコフスキー国際コンクールピアノ部門にて第2位獲得でその名を広めました。
受賞後のワレリー・ゲルギエフ指揮マリインスキー歌劇場管弦楽団と共演、喝采を浴びました。同楽団とは日本公演でも共演が実現し、その才能を日本の聴衆にも披露してくれました。
瑞々しい音色、豊かな抒情性、類まれな音楽センスを持つピアニストで、今後の活躍が期待される人物です。これからどんなピアニストに育っていくのか楽しみでもあります。
イケメンピアニストとしても人気がある理由です。また、話題の映画『蜜蜂と遠雷』では風間塵役の演奏を担当し、評判になりました。
浜松国際ピアノアカデミーコンクールで第1位を獲得した時に、審査委員長であった中村紘子が大絶賛し、日本からもこんなピアニストが出てきた事を大層喜んでいました。
反田恭平
1994年生まれの反田恭平は現在最もチケットの取れないピアニストとして有名です。子供の頃は音楽家になろうとは考えてもいなかったそうで、サッカー少年として活躍していたそうです。
音楽の分野に目を向けたのはサッカーで骨折してしまった事がきっかけで、もしそれがなかったら今の反田恭平はなかったかもしれません。
2016年『情熱大陸』で紹介された事から一躍注目を集め、現在の彼があります。2018年テレビアニメ『ピアノの森』で主人公、一ノ瀬海の師、阿字野壮介役を担当した事も人気に拍車をかけました。
圧倒的なテクニックと情熱。これが彼の人気の源でしょう。それにとても自由な事。所属していた事務所を辞めて独立したのもその表れです。
自分で新レーベルを立ち上げるなどプロデューサーとしての一面も持っています。何事にも縛られない生き方を目指しているようです。
牛田智大
1999年生まれの牛田智大は日本で生まれましたが、生まれてすぐに父親の仕事の関係で中国の上海に移り住みました。という事でピアノの基礎教育は上海で受けました。
小学校入学のために帰国。12歳でデビュー。同年日本人ピアニストとして史上最年少でCDをリリースしました。2018年、第10回浜松国際ピアノコンクール第2位を獲得しで注目をされるようになります。
これまでも数々のCDをリリースし好評を得ています。イケメンピアニストしても人気があります。ピアノの才能もあってイケメンなんて実に羨ましい!
彼は中村紘子からステージマナーについて教わったそうです。「ステージに登場する時は堂々と歩きなさい」「お辞儀は深々としなさい」「たとえ演奏で失敗してもステージ上では最後まで堂々としていなさい」
2019年の映画『蜜蜂と遠雷』の4人のピアニストのひとり、風間塵役のピアノは藤田真央が担当しました。今後も楽しみなピアニストです。
萩原麻未
1986年生まれの萩原麻未(はぎわらまみ)はそろそろ中堅のピアニストになりつつあります。2010年、ジュネーブ国際音楽コンクールピアノ部門で日本人として初優勝し注目されました。
面白いことに彼女は天然で、コンクールの優勝後に控室で居眠りをしていたとか、パスポートとクレジットカードををなくしたと大騒ぎしたら出てきたとかいろいろ騒ぎを起こしているらしいです。
母親も「ノーテンキで、突拍子もなく明るい性格」で、まるで漫画の「のだめ」のような性格だと話しています。そんな彼女は「幸せに生きられて、ピアノが弾ければいい」と。
実力は折り紙付きですが、演奏中に「のだめ」のようにならない事を願うばかりです。
小林愛実
1995年生まれの若手ピアニストです。2015年の『情熱大陸』で一躍注目されました。2015年、ショパンコンクールのファイナリストまで進みましたが、惜しくも入賞までは至りませんでした。
幼少時からその才能は認められていて14歳でCDデビューをはたします。しかし、ショパンコンクールでの挫折は大きかったようで、その後アメリカのカーティス音楽院に留学しました。
アメリカでの生活はとても有意義だったようで、ピアノを弾く意味を考え直したそうです。そして「今では好きでピアノを弾いています」と話しています。
一皮剥けた小林愛実、これからどんな音楽を聴かせてくれるのか非常に楽しみな存在です。
内田光子
あえて年齢は書きませんが、ベテラン中のベテランになりました。現在、世界で最も有名な日本人ピアニストでしょう。日本人ですが国籍はイギリスです。
1970年、ショパン国際ピアノコンクール第2位となりましたが、売れるピアニストになるまで時間がかかりました。彼女もあの時期は辛かったと語っています。
日本の音大出身ではなかった事からショパンコンクール第2位という肩書も通用せずに不遇の時代を経験したのです。当時の日本のクラシック界がいかに閉鎖的だったかを物語っています。
ロンドンに拠点を移してからは順調にキャリアを積み、世界の内田に一気に駆け上がります。彼女の実力をもってしては当然の帰結でした。
彼女の奏でるピアノはとても知的で考え抜かれた音楽です。どこにでも自分のピアノを持っていくピアニストとしても知られています。
上原彩子
1980年生まれの中堅ピアニストです。2002年、第12回チャイコフスキー国際コンクール・ピアノ部門において、女性として史上初めての第1位を獲得しました。日本人としても同部門初めての快挙でもあります。
幼少時からその才能は評価され、数々のコンクールに入賞。そして、ようやく三大コンクールのひとつのチャイコフスキーコンクールでの優勝となります。
かつては『情熱大陸』でも取り上げられました。期待の星だったのです。プレッシャーもあったでしょうがよく勝ち切りました。
華奢な体つきながら、大胆な演奏でも有名です。テクニックは勿論、響きの凄さは圧巻。今後も世界で活躍して貰いたいです。
現在は三児の母となり子育てが大変なようで仕事もセーブしている状態ですが、早く復活してくれる事を期待しています。
金子三勇士
かねこみゆじと読みます。1989年生まれです。日本人の父とハンガリー人の母を持つハーフ。6歳から15歳までをハンガリーで暮らしました。
16歳に帰国し、東京音大付属高校に入学、その後同大学に進学、大学院まで終了しました。2009年にデビューし、翌年CDをリリースします。
2019年ンの映画、『蜜蜂と遠雷』ではマサル・カルロス・レヴィ・アナトール役のピアノを担当しました。
ハンガリーのコンクールでの優勝歴はありますが、世界的な著名コンサートには参加した事がありません。
NHK『らららクラシック』が行ったアンケート「私の好きなピアニスト」では第11位となっています。今後の活躍に期待するピアニストです。
仲道郁代
この方も女性ですから年齢は秘密にしましょう。私はデビュー当時から聴いてきましたが、もうベテランになってしまいました。日本のピアノ界では重鎮のひとりとなりましたね。
その美貌からもテレビ出演も多数。中村紘子亡き後は、仲道郁代がその後を継いでいる感じです。テクニックに優れ安定した音楽を聴かせてくれます。
1987年エリザベート国際音楽コンクール第5位入賞とコンクールでは自身は満足していないでしょうが、その後の演奏活動に大きく影響しています。
2005年のイギリスのチャールズ皇太子とダイアナ妃との結婚を記念した「結婚祝祭コンサート」での演奏は絶賛されました。
彼女は結婚して子供ができてから音楽の深みが増したと思います。母親となって人間的にも大きくなったのでしょう。
2018年よりベートーヴェン没後200周年の2027年に向けて「仲道郁代Road to 2027プロジェクト」をスタートし、リサイタルシリーズを行っています。32曲のピアノ・ソナタ全曲演奏とそれ以外のピアノ曲を網羅する一大プロジェクトです。
余談ですが、太田胃散のCMのBGMでショパン『前奏曲作品28第7番』が流れていますが、それは彼女の演奏です。意外な所でも活躍しています。
まとめ
現役の勢いのある日本人ピアニストを10人紹介してきました。『情熱大陸』に出演した若手ピアニストが多く、この番組のプロデューサーの目が確かな事も再確認できました。
ここで取り上げたピアニストたちは若手からベテランまでいますが、今後を支えていくであろうと思う若手を多めに取り上げています。ピアノが好きな人は勿論の事、それ以外の方もこの10人の演奏会やCDを期待して下さい。