難しい楽器 バイオリン

日本人のヴァイオリニストも若手が台頭してきて嬉しい限りです。若手からベテランまで日本人のヴァイオリニストは世界を飛び回っていて日々活躍しています。

弦楽器、特にヴァイオリンは日本人にとって世界的な人材を早くから生み出してきました。その伝統は今も続いており、ソリストは勿論、世界各地のオーケストラを支えています。

そんな日本人ヴァイオリニストの中で現在最も輝いているヴァイオリニストを10人紹介します。世界で活躍しているベテランもいますが、今後日本のヴァイオリン界を代表するであろう若手も選んでいます。

選考基準

  1. 日本人である事
  2. 才能があり人気も高い事
  3. 現在の活動が顕著な事
  4. 日本ヴァイオリニスト界の牽引役となりえる事

庄司彩矢香

1999年、パガニーニ国際ヴァイオリン・コンクールに16歳という史上最年少で優勝しました。日本人としてこのコンクール優勝は初めての事です。彼女を知ったのはこの優勝がきっかけでした。

16歳という年齢で既に完成されたヴァイオリニストであった事に驚きました。インタビューに答える彼女には知的な感じも覚えたものです。調べたら彼女はなんと6ヶ国語が話せるそうで、さもありなんと思ったものでした。

現在の本拠地はパリだそうで、演奏旅行からパリに帰ってくるとほっとすると話しています。美術館にも時間がある時には足を運ぶそうで、なんと自身でも絵を描き個展まで開いています。

この言葉はそう使うものではありませんが、彼女には天才という言葉がぴったりします。個性豊かな響きやよく考え抜かれた演奏を聴いているとそう感じずにはいられません。

彼女も今ではそこそこの年齢となりました。音楽活動は活発でクラシック音楽とは異なるジャンルとのコラボなども含めスケジュールを見ると恐ろしいほどに詰まっています。

使用楽器は、上野製薬株式会社より貸与された1729年製ストラディヴァリウス「レカミエ」。

辻 彩奈

1997年岐阜県生まれ。2016年モントリオール国際音楽コンクール第1位という勲章を持っていますが、まだまだ国内ではメジャーではないバイオリニストです。

何と11歳でプロデビュー。その後、国内外の主要オーケストラと共演しています。彼女の演奏を聴いた方もおられるかもしれませんね。彼女の艶やかな音色には魅了されます。

まだWikipediaもないヴァイオリニストですが、必ずやもっとメジャーな演奏家に成長してくれるものと期待しています。

使用楽器は、NPO法人イエローエンジェルより貸与されているJoannes Baptista Guadagnini 1748。

五嶋みどり

現在、日本人で最も世界に知られているヴァイオリニストです。もう彼女についてのプロフィールなどは書く必要もないでしょう。1982年、ニューヨーク・フィルとの共演は「天才少女デビュー」としてセンセーショナルなニュースとして世界中を驚愕させました。

その時彼女はまだ11歳でした。それからの大活躍は誰もがご存じでしょう。日本人として誇りの演奏家です。

ロサンゼルスを拠点として活躍しています。オーケストラとの共演だけでなく、室内楽にも熱心です。彼女の日本でのリサイタルは当時付き合っていた女性と聴きに行った事が昨日の事のようです。ちょっとほろ苦い思い出ですが・・・。

彼女こそ天才ヴァイオリニストと呼ぶべきでしょう。これだけの逸材が今後現れるかどうか難しいですね。ですから彼女のコンサートには出来る限り聴きに行く事をお勧めします。今世紀を代表するヴァイオリニストですから。

彼女は社会活動にも熱心で国連ピース・メッセンジャーという肩書も持っています。最近は後進の指導にも熱心で大学教授としても活躍しています。

使用楽器は社団法人林原共済会から終身貸与されているグァルネリ・デル・ジェス「エクス・フーベルマン」(1734年製)。

樫本大進

2010年12月からベルリン・フィルの第1コンサートマスターに31歳の若さで正式就任しました。余談ですが、2001年からヴィオラの首席も日本人の清水直子が務めています。

1996年、ロン=ティボー国際コンクール史上最年少の覇者です。ソリストの道に進まず、ベルリン・フィルのコンサートマスターに収まった事は日本人として誇りですが、少々残念でもあります。

音色の美しさと音量、そしてビブラートの上手さは独特の響きを生み出します。テクニックに優れ、解釈も癖がないのが彼の特徴でしょうか。

べルリン・フィルに入団するまでオーケストラの中で弾いた事がなかったそうです。室内楽の延長だから何とかなるだろうと思っていた由。その辺の神経の図太さが第1コンマスに採用された理由でしょうか。

彼が入団したのは、第1コンマスの安永徹が辞めることになって、安永の筋からどうだろうと声が掛かったという話です。幸運の持ち主だったのですね。

使用楽器は、1674年製アンドレア・グァルネリ。

三浦文彰

1993年東京生まれ。父は東京フィルのコンサートマスター。2009年、ドイツ・ハノーファー国際ヴァイオリン・コンクールに史上最年少の16歳で優勝し注目を集めました。

彼を一躍有名にしたのが、2016年放送のNHK大河ドラマ『真田丸』のオープニング音楽でソリストを務めた事です。

特徴はやはり音色の良さと柔軟さでしょうか。最近では彼のチケットを取る事がかなり難しくなっているそうです。すっかり人気ヴァイオリニストに成長したのですね。

意外なことに料理が得意との事です。結構手の込んだ料理も楽しく作っている様子。器用じゃないと演奏家は務まらないといいますからね。

指揮にも興味があるようです。将来は指揮者としても活躍したいので勉強していると語っています。音楽の才能に恵まれている人は最後には指揮者に転向する人が多くいますから、彼もそうなるかもしれません。

使用楽器は、宗次コレクションより貸与されたストラディヴァリウス 1704年製作「ヴィオッティ」。

諏訪内晶子

早いもので彼女がチャイコフスキー国際コンクールで史上最年少優勝してから30年も経つのですね。それなりの年齢になり、人間的にも一回り成長したようです。

音楽の深みも増して、落ち着いた良い意味での色気も表現できるようになりました。それだけの才能の持ち主ですから当然でしょうか。

詳しくは書きませんが、彼女は色々とプライベートであった人物ですから、それらが全て解決して、落ち着いた気持ちでまた音楽と向き合えるようになったのでしょう。

彼女は、自らが企画した「国際音楽祭NIPPON」という音楽祭を2013年から行っています。「長く活動を続けるには演奏がうまいだけでは足りない。総合的な力がなくては」との思いがあったそうです。

「若い人への思いがこもった、未来へ向かう音楽祭」と彼女は語っています。美術館などコンサートホール以外で行われる音楽祭です。こうした社会貢献は聴衆のためだけではなく、何よりも彼女のためにもなり、より長く続けばいいなと思っています。

使用楽器は、日本音楽財団より貸与された1714年製作のストラディヴァリウス「ドルフィン」。

神尾真由子

2007年、第13回チャイコフスキー国際コンクールヴァイオリン部門で優勝しました。ニューヨーク・タイムズ紙で「聴く者を魅了する若手演奏家」「輝くばかりの才能」と絶賛されたのが昨日のようです。月日の経つのは早いですね。

以前は「良い子ちゃんがお上手にヴァイオリン弾いてるな」という感じでしたが、より積極的に音楽に挑んでいる感じが出てきてより豊かな音色を奏でるようになりました。

現在はコンサートの回数を増やすよりも、レパートリーを絞りたいと言っています。一児の母となって人間的にも変化したようです。

年齢を重ねる内に自分のやりたい音楽が分かってきたともいえるでしょう。良き夫と子供に恵まれ、人生の設計が出来てきた事が大きいと思います。

終の棲家はサンクトペテルブルクに決めたそうです。そりゃそうですね、旦那さんがロシア人ですから。

使用楽器は宗次コレクションから貸与された1731年製ストラディヴァリウス「ルビノフ」。

竹澤恭子

彼女のデビュー30周年が2018年だったのですね。私もそれだけ歳取ったのかと感慨深いものがあります。初めて聴いたのが彼女が20歳の頃でした。これは大物になるなと思った覚えがあります。

バルトークの難曲を難なく弾いていました。素晴らしいヴァイオリニストが出てきたものだと感心したものです。

インディアナポリス国際ヴァイオリン・コンクール第1位という実績がありますが、残念なのは同じ年のチャイコフスキー・コンクールに出場できなかった事です。

その年あのチェルノブイリ原発事故があって彼女は出場を取りやめたのです。もし出場していたら第1位になっていたかもしれません。それだけの実力がありました。人生何が起こるかわかりませんね。

現在も彼女の演奏活動は活発です。相変わらずに世界中を旅している様子です。パリを拠点に活動してきましたが、デビュー30周年の年から、活動のベースを日本に戻したそうです。

後進の指導にも熱心です。現在の肩書は桐朋学園大学特任教授、2020年からは東京音大の教授にも就任しました。教えることは自分の演奏にも良い影響を与えるといいます。

使用楽器は、ストラディヴァリウス・ソサエティから貸与された1699年製ストラディヴァリウス「レディ・テナント」。

服部百音

ハットリ・モネと読みます。1999年東京生まれ。作曲家服部隆之の娘、服部克久の孫娘として知られています。まだ桐朋学園大学に在学中かと思います。

音楽家の家系で彼女もその血筋を受け継いだようです。才能に溢れています。ヴァイオリンの練習のし過ぎで首筋にあとが残っているところが凄い!

テレビや他の映像で聴く限りでは、華奢な身体ながら迫力ある音色を奏でています。今ではテクニックはあって当たり前ですが、彼女の演奏はスケール感が漂っている感じです。

デビューCDがショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番というのも凄いですね。この難曲を選択するとは余程自信がある証拠です。

使用楽器は上野製薬株式会社より貸与されているピエトロ・グァルネリ。

岡本誠司

1994年千葉県生まれ。2019年、エリザベート王妃国際音楽コンクール、ファイナリスト。テクニックは優れています。

広いレパートリーと作品の深い解釈が売りで天才肌のヴァイオリニストです。彼が音楽を職業としようと考えたのは割と遅く、中学生の頃で、それまではサッカー選手、将棋棋士、宇宙飛行士、そして新聞記者にも憧れたそうです。

「バッハと同じくらいブラームス作品が好き。作品が作られた時代や背景を深く頭で考えて心で感じとりながらも、それにとらわれすぎない柔軟な活動をしていきたいです」と語っています。

オーケストラとの共演やリサイタルだけでなく、ピアニストの反田恭平たちと組んで室内楽を定期的に行っています。今後期待できるヴァイオリニストのひとりです。

使用楽器はNPO法人イエロー・エンジェルより貸与されたG.F.プレッセンダ(1827年製)。

まとめ

脂が乗り切っているベテランから、今後注目の若手まで10人のヴァイオリニストを紹介してきました。動画で聴いてもらうとわかるように10人共に素晴らしいヴァイオリニストたちです。

皆、楽器の音色が輝いています。CDで聴くのもOKですが、出来れば生で聴いてほしいヴァイオリニストたちです。全員『情熱大陸』で紹介されたヴァイオリニストという事も驚いてしまいます。

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