
「オーケストラの音はお金の音」とよく言われます。予算が多ければオーケストラ団員の給料も多く、良い人材が集まりますし、世界的な指揮者やソリストを呼ぶことも容易くなります。音楽監督も世界的な指揮者に任せる事が出来ます。予算の多さはオーケストラにとって良い事なのです。
予算規模の大小はオーケストラの実力とおおよそリンクしています。東京都には9団体オーケストラがありますが、その観点からランク付けをしていこうと思います。元となるデータは日本オーケストラ連盟が発表している2018年度版(2018年4月から2019年3月)を使用します。
(注)定期会員数のみ2017年度のデータ
第9位 東京ニューシティ管弦楽団
年間予算:1億4558万円
創立:1990年
楽員数:40名
定期会員数:165名
年間予算規模1億5千万にも達していません。楽員数も40名と少なく、演奏会をするにも必ずエキストラを使わないと演奏出来ない状況です。この規模でオーケストラ活動を維持していくには大変な状況かと想像できます。定期会員数も165名と大苦戦です。
第8位 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
年間予算:4億4062万円
創立:1975年
楽員数:59名
定期会員数:570名
年間予算が5億以下ですので、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団もオーケストラとしては大変厳しい状況である事が分かります。楽員数も59名と少なく、エキストラに頼る演奏会となり、オーケストラの実力の維持も大変そうです。今後の健闘を願うばかりです。
第7位 新日本フィルハーモニー交響楽団
年間予算:11億6731万円
創立:1972年
楽員数:84名
定期会員数:3107名
年間予算が11億7千万ほどで、オーケストラとしては最低限の10億円を超えています。ビッグネームの小澤征爾が指揮していた頃と比べて定期会員数も減少し、オーケストラとしての魅力が低下したのも事実です。演奏技術は東京都のオーケストラとしては中位レベルです。
第6位 東京交響楽団
年間予算:13億6297万円
創立:1946年
楽員数:84名
定期会員数:4003名
音楽的レベルは東京都のオーケストラとしては中位と言えるでしょう。このあたりの順位は、どのオーケストラも同レベルであり、ここ数年定期会員数も横ばいが続いています。東京交響楽団としての特色を何か打ち出さないとこのままの順位から抜け出せないでしょう。
第5位 日本フィルハーモニー交響楽団
年間予算:15億3710万円
創立:1956年
楽員数:82名
定期会員数:4397名
日本フィルハーモニー交響楽団も実力的には中位レベルです。7位から5位のレベルはもう一つ何か殻を破らなければ、上位にはなれないでしょう。演奏レベルはどんぐりの背比べで、順位付けは難しいです。日フィルの魅力はこれだと言わしめる何かが欠けています。
第4位 東京都交響楽団
年間予算:18億0479万円
創立:1965年
楽員数:91名
定期会員数:4554名
東京都が運営しているオーケストラです。東京都からかなりの助成金を受けて、日本のオーケストラの三大オーケストラの一つと言われています。日本のオーケストラの中で、水準がかなり高いオーケストラとなりました。また、東京都のオーケストラの中でも、人気の高いオーケストラです。
第3位 東京フィルハーモニー交響楽団
年間予算:18億6327万円
創立:1911年
楽員数:132名
定期会員数:4795名
東京都交響楽団とほぼ同じ年間予算を維持しています。演奏会の回数では日本一のオーケストラです。世界的な指揮者チョン・ミョンフンを音楽監督に迎えてから高いレベルを持つオーケストラになりました。現在の音楽監督は変わりましたが、充実しつつあるオーケストラです。
第2位 読売日本交響楽団
年間予算:21億6187万円
創立:1962年
楽員数:95名
定期会員数:8067名
天下の読売新聞が持つオーケストラです。という事で、日本のオーケストラとしては予算的に恵まれているオーケストラです。日本の御三家オーケストラの一つで、レベルの高い音楽を聴かせてくれます。指揮者陣も充実しており、NHK交響楽団に迫るオーケストラに育ちました。
第1位 NHK交響楽団
年間予算:31億0997万円
創立:1926年
楽員数:104名
定期会員数:9223名
予算規模と言い、演奏技術と言い、日本を代表するオーケストラです。定期会員数も安定して推移しており、演奏レベルも日本一です。世界に出しても引けを取らない水準です。音楽監督もアシュケナージ、デュトワ、そして現在のパーヴォ・ヤルヴィとビッグネームに引き継がれています。
まとめ
年間予算に基づいて、東京都のオーケストラ9団体のランク付けを行いました。こうしてみると、NHK交響楽団の31億は突出していますが、世界と比べると1桁違っています。しかし、30億を超えると、客演指揮者やソリストの顔ぶれがNHK交響楽団だけは違っています。
日本の場合、アメリカと違って助成金をあてにしてオーケストラは運営されていますから、まずはその体制から少しずつ脱して行かないと、オーケストラの未来は開けません。演奏水準がより高いものになっていくように、今後の各オーケストラの奮起を願うばかりです。