ヨーヨー・マのチェロを聴いた事があるでしょうか。伸びやかで、情熱的な演奏で、とても優しい音色を奏でるチェリストです。その腕前は現在の現役チェリストではナンバー1だと思います。チェロ弾きとして生まれてきたような、物凄い天才的な人物です。
幼少時から天才的な才能を見せ、ジュリアード音楽院では教師から「君に教える事は何もない」と言わしめたほどの逸材でした。音楽的なレベルはもう十代で充分に完成されていて、テクニックも音楽的な深みも見事なほどの出来栄えでした。
その音色は研ぎ澄まされ、誰にも真似できない音楽的高みに達しています。彼のチェロを聴くだけで、誰もが彼の音楽に引き込まれてしまうのです。ヨーヨー・マの現在までの活躍を纏めてみました。
ヨーヨー・マの略歴
ヨーヨー・マ(馬 友友)は1955年10月7日、フランスのパリ生まれ。父母共に台湾系中国人音楽家で、彼が7歳の時にニューヨークに移り住みます。4歳でチェロを始め、5歳で既に演奏会を開催。1962年、7歳でジュリアード音楽院入学、レナード・ローズに師事しました。
8歳でレナード・バーンスタインと共演し、テレビ出演を果たします。ジュリアード音楽院ではレナード・ローズに「君に教える事は何もない」と言われるほどの逸材でした。
1971年、ハーバード大学入学。音楽ではなく人類学を学びます。1976年、ハーバード大学院を卒業してから、本格的に音楽の道に進むのでした。
1991年に、ハーバード大学から名誉博士号を授与。2010年、バラク・オバマより大統領自由勲章を授与。グラミー賞19回、エミー賞2回受賞。バッハから現代音楽までレパートリーは広く、そのテクニックには定評があります。現代最高のチェリストの一人です。
ヨーヨー・マの音楽
バッハの『無伴奏チェロ組曲』はチェリストにとって、必ず通らねばならない音楽です。彼のこの楽曲を聴いてください。ここには彼の全てが詰まっています。テクニック、音楽性は勿論、人間性や今までのバックグラウンドが全てわかってしまうようです。
人間性が溢れた音楽になっています。この難曲をいとも簡単に弾きこなす彼は、何のケレン味もなく純粋に音楽と向き合っているようです。彼の音楽性が伝わってきます。きっと彼は人間的にも素晴らしい人であり、今まで真っすぐに人生を歩んできたのでしょう。
ヨーヨー・マが誰からも愛される事が良く分かります。心地良い音楽なのです。彼の演奏を聴いていると、心が癒されます。リラックスしながら聴ける音楽なのです。『無伴奏チェロ組曲』をこんな風に聴かせてくれるチェリストは彼をおいてほかにいません。
他の分野の人物とのコラボ
ヨーヨー・マはベルリン・フィルやウィーン・フィルなどの世界的オーケストラと共演する傍ら、クラシック音楽に限らず、様々なジャンルの人たちとコラボレーションを行っています。それらのCDもいずれもベストセラーになり、クラシック音楽界では異例な売れ行きになっています。
バッハの『無伴奏チェロ組曲』の2回目のリリースでは、6曲をそれぞれ異なるジャンルで活躍するアーティストたち(坂東玉三郎、マーク・モリス・ダンス・グループ等)とのコラボレーション作品として映像に収録し、世界的に話題となりました。
6作からなる「インスパイアド・バイ・バッハ」と題された映像作品として完成させたのです。この作品で、ヨーヨー・マの世界観はより広がりを持ちました。また、ジャズボーカルのボビー・マクファーリンとデュエットしたCD「ハッシュ」がヒットするなどクラシックに留まりません。
2008年に作った「プレイズ・ピアソラ」というアルバムも、世界中で瞬く間にヒットしました。音色や雰囲気もそれらに合わせて、全く違う世界を表現してしまうテクニックも素晴らしいです。音楽的才能に溢れた、彼ならばのアルバム。まさにチェロ界のカリスマです。
ヨーヨー・マの映画
2017年、ヨーヨー・マの映画「The Music of Strangers」(邦題「ヨーヨー・マと旅するシルクロード」)が公開されました。内容は、ヨーヨー・マの幼少期からの映像や、本人のインタビュー、親交の深いジョン・ウィリアムズ、タン・ドゥンらの彼についての証言などです。
さらに名曲の演奏シーンやセッションの数々も盛り込まれ、文化の垣根を超え、音楽を追及しているヨーヨー・マの生き方に迫っています。これを見れば、ヨーヨー・マがどんな人物かが分かるように作られているのです。DVDでも発売されており、現在でも見る事が出来ます。
ヨーヨー・マの尊敬する人物
ヨーヨー・マが尊敬する人物は、有名なチェリスト、パブロ・カザルスだそうです。カザルスを尊敬するのは、彼が次のような言葉を残したからだと語っています。「私はまずは一人の人間であり、その次に音楽家で、第3にチェリストである」。
「この言葉はとても美しく、いつまでも忘れることができません。私はこの言葉がとても好きです。そして、それを信じます。彼は人生をこのように送ってきて、多くの決定もこの信念に従って行いました。」今日のチェリストのカリスマがあるのはカザルスの影響による事が見逃せません。
まとめ
ヨーヨー・マの現在までの活躍を簡単に見てきました。とにかく人間的に素晴らしい方です。自らのタレント性を誇示せず、心が綺麗な方かと思われます。そんな人物が奏でる音楽ですから、こちらの心に染みてくるのは当たり前です。
今後も彼の様々なパフォーマンスに期待しています。人間味溢れる人物ですから、これからも素晴らしい活動をしてくれる事でしょう。楽しみに期待しています。