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2019年8月23日にキリル・ぺテレンコがベルリン・フィルの主席指揮者に就任します。ベルリン・フィルは今シーズンのぺテレンコとの予定を発表しました。まず、首席指揮者就任演奏会はベートーヴェンの交響曲第9番が演奏されます。歴史的記念日ですから納得の選曲です。

今後の予定は下記のように発表されました。今シーズンはバイエルン国立歌劇場との契約もあり、ベルリン・フィルを振る回数は40回ほどになる予定だそうです。また、極端に録音の少ないぺテレンコですが、ベルリン・フィルとの間で数多くの録音が行われるとの発表も行われました。

ベルリン・フィルへの初登場から、わずか3回の共演で首席指揮者に選ばれたというミステリアスな天才です。ベルリン・フィル以外のオーケストラとの共演時もチケット完売続出という現在、気になるぺテレンコとベルリン・フィルのコンサートのスケジュールを追ってみます。

新生ベルリン・フィルの挑戦

大きく4点に纏められます。まず、ベートーヴェン生誕250周年である事、第2にドイツ・オーストリア系の新たなレパートリーを開拓する事、第3に20世紀ロシア作品を充実させる事、最後にマーラー演奏を発展させる事を取り上げるそうです。また、録音を数多くする事も発表されました。

ベートヴェン生誕250周年

来年2020年はベートーヴェン生誕250周年という事もあり、ベートーヴェンの3つの大作を取り上げます。ドイツを本拠地とするベルリン・フィルにとっても、ベートヴェンはとても重要な作曲家です。ぺテレンコはベートーヴェンのこれらの作品についてのコメントをしています。

‟3つのメッセージを持つ3つの作品が演奏されます。歓喜(Freude)を表現した「第9」、自由(Freiheit)を表現した「フィデリオ」、平和(Frieden)を表現した「ミサ・ソレムニス」です。この「3つのF」は、我々の時代にとって、非常にアクチュアルなテーマだと思います„

新たなレパートリーの開拓

20世紀音楽のレパートリーに新しい風を持ち込む事。そこで特に名前が挙がったのは、スーク、B.A.ツィンマーマン、ヒンデミット、ハルトマン、ヴァイルなどです。これまでのベルリン・フィルではあまり取り上げられてこなかったドイツ・オーストリア系の重要な作曲家たちです。

これらのいわゆる現代音楽はどこのオーケストラもなかなかプログラムに入れる事を躊躇しがちです。こうしてどんどん取り上げられることで、オーケストラ界が活気づくに違いないと思われます。新しい首席指揮者として、新たな風を起こそうと思っている感じです。

20世紀ロシア作品の充実

20世紀のロシアの作曲家にも力を入れる事。特に名前が挙がったのは、ラフマニノフ、そしてグラズノフ、スクリャービン、グリエールです。どれも、ロマン派の流れを継承する優れた作品群が多く紹介されることになるはずです。ラフマニノフは別として、他の作曲家は難しそうです。

マーラー演奏を発展

マーラーの演奏に関して、アバドやラトルが築き上げてきた伝統をさらに継承・発展させる事。ラトルがベルリン・フィルとの間に宿命的な意味を見出し、任期の最後に総まとめの作品として演奏した「交響曲第6番」を、再び自らの指揮で取り上げます。

これは前任者ラトルへの敬意、そして挑戦といってもいいくらいのインパクトがあります。よほど自信がなければできないことです。前のシーズンに前主席指揮者が演奏した楽曲を次のシーズンで再演奏することなどめったにありません。この曲に対しての思い入れがあるのでしょう。

録音にも積極的な2019年

レコーディングに対しては慎重な姿勢で知られるペトレンコですが、今後は積極的に行うとの事。その第1弾として、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」がリリースされました。そのダイナミックで緊迫感あふれる演奏は、今後のペトレンコの前途洋々たる未来を予感させます。

キリル・ペトレンコ指揮ベルリン・フィルスケジュール

2019年8月23日(首席指揮者就任演奏会)
ベルク:『ルル』組曲
ベートーヴェン:交響曲第9番『合唱付き』
独唱:マルリス・ペーターゼン、エリーザベト・クルマン、ベンヤミン・ブルンス、ユン・クヮンチュル
ベルリン放送合唱団

8月24日(ブランデンブルク門前の野外コンサート)
ベートーヴェン:交響曲第9番『合唱付き』
ベルリン放送合唱団

12月29、30、31日
ガーシュウィン:『パリのアメリカ人』
バーンスタイン、ポーター、レーヴェ、ヴァイルの作品
独唱:ディアナ・ダムラウ

2020年1月9、10、11日
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番
スーク:交響曲第2番『アスラエル』
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番
ピアノ:ダニエル・バレンボイム

1月23、24、25日
マーラー:交響曲第6番

2月12、13、14、15日
ストラヴィンスキー:3楽章の交響曲
B・A・ツィンマーマン:『アラゴアーナ』
ラフマニノフ:交響的舞曲

4月17、19日
ベートーヴェン:『フィデリオ』(演奏会形式上演)
独唱:マルリス・ペーターゼン、ハンナ・エリーザベト・ミューラー、ピーター・ローズ、マシュー・ポレンザーニ、ヴォルフガング・コッホ、ベルリン放送合唱団ほか

《演奏旅行》

8月25日(ザルツブルク祝祭大劇場)
ベルク:『ルル』組曲
ベートーヴェン:交響曲第9番『合唱付き』
独唱:マルリス・ペーターゼン、エリーザベト・クルマン、ベンヤミン・ブルンス、ユン・クヮンチュル
ベルリン放送合唱団

8月26日(ザルツブルク祝祭大劇場)
シェーンベルク:ヴァイオリン協奏曲
チャイコフスキー:交響曲第5番
ヴァイオリン:パトリシア・コパチンスカヤ

8月28日(ルツェルン文化会議センター)
ベルク:『ルル』組曲
ベートーヴェン:交響曲第9番『合唱付き』
独唱:マルリス・ペーターゼン、エリーザベト・クルマン、ベンヤミン・ブルンス、ユン・クヮンチュル
ベルリン放送合唱団

8月29日(ルツェルン文化会議センター)
シェーンベルク:ヴァイオリン協奏曲
チャイコフスキー:交響曲第5番
ヴァイオリン:パトリシア・コパチンスカヤ

8月31日(ブカレスト、宮殿ホール)
ベルク:『ルル』組曲
ベートーヴェン:交響曲第9番『合唱付き』
独唱:マルリス・ペーターゼン、エリーザベト・クルマン、ベンヤミン・ブルンス、ユン・クヮンチュル
ベルリン放送合唱団

9月1日(ブカレスト、宮殿ホール)
シェーンベルク:ヴァイオリン協奏曲
チャイコフスキー:交響曲第5番
ヴァイオリン:パトリシア・コパチンスカヤ

2020年2月17日(ハンブルク、エルプフィルハーモニー)
2月18日(ハノーファー、コングレス・ツェントルム)
2月19日(ケルン、フィルハーモニー)
2月20日(フランクフルト、アルテ・オーパー)
2月21日(ドレスデン、クルトゥーアパラスト)

ストラヴィンスキー:3楽章の交響曲
B・A・ツィンマーマン:『アラゴアーナ』
ラフマニノフ:交響的舞曲

バーデン=バーデン・イースター音楽祭

4月17、19日
ベートーヴェン:『フィデリオ』(演奏会形式上演)
独唱:マルリス・ペーターゼン、ハンナ・エリーザベト・ミューラー、ピーター・ローズ、マシュー・ポレンザーニ、ヴォルフガング・コッホ、ベルリン放送合唱団ほか

4月6日
マーラー:交響曲第6番

4月10日
ベートーヴェン:ミサ・ソレムニス
独唱:ハンナ・エリーザベト・ミューラー、オッカ・フォン・デア・ダメラウ、マシュー・ポレンザーニ、タレク・ナズミ、コーアヴェルク・ルーア

ヨーロッパ・コンサート

5月1日(テルアビブ、チャールズ・ブロンフマン・オーディトリアム)
マーラー:リュッケルト歌曲集
ブルッフ:『コル・ニドライ』
マーラー:交響曲第4番
独唱:クリスティアーネ・カルク、エリーザベト・クルマン
ヴィオラ:アミハイ・グロス

5月2日(テルアビブ、チャールズ・ブロンフマン・オーディトリアム)
マーラー:交響曲第6番

5月3日(エルサレム、スルタンのプール)
マーラー:リュッケルト歌曲集、交響曲第4番
独唱:クリスティアーネ・カルク、エリーザベト・クルマン

5月6日(ブダペスト芸術宮殿)
5月7日(プラハ、スメタナホール)
5月9日(ウィーン楽友協会)
5月11日(アムステルダム、コンセルトヘボウ)
5月14日(ブリュッセル、パレ・デ・ボザール)
5月15日(ルクセンブルク、フィルハーモニー)

マーラー:リュッケルト歌曲集、交響曲第4番
独唱:クリスティアーネ・カルク、エリーザベト・クルマン

5月10日(ウィーン楽友協会)
5月13日(アムステルダム、コンセルトヘボウ)

マーラー:交響曲第6番

まとめ

世界中が注目するぺテレンコを迎えた新生ベルリン・フィルのファーストシーズンです。果たして上手くいくのかどうか誰もが興味津々です。ベルリン・フィルとしても自分たちが選んだシェフに期待している事でしょう。シーズンが開幕するのが待ち遠しい限りです。

何といっても世界一のオーケストラですからね。気にならないのがおかしいです。ベルリン・フィルファンにとって、決してレベルが落ちたなんて無いようにして貰いたいです。ぺテレンコにとっては、これからが本当の勝負になるわけです。世界一のシェフとなってほしいです。

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