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偉大なるショパン

世界には「国際音楽コンクール世界連盟」に加盟しているコンクールだけでも120ほどのコンクールが開催されています。世界三大コンクールを頂点とするコンクールは、世界中で乱立し、どのコンクールの優勝者が本当の意味でのナンバーワンなのか迷う人も多い事でしょう。

コンクールの中でもピアノ部門だけに絞り、果たして、どのコンクールが最も権威のあるものなのかをはっきりさせようと思います。コンクールのレベルは数値化できるものではありませんが、各コンクールの優勝者及び入賞者、審査員の顔ぶれなどを見てみると、自ずと絞られてきます。

「国際音楽コンクール世界連盟」加盟コンクールの中で、やはり、ピアノはメインの楽器ですから、ピアノ部門を持つコンクールは100を超えているでしょう。この中から厳選してランキングにしてみました。ここに挙げたコンクールは多くの方に納得して貰えるものと思います。

ランキング選考基準

  1. 国際音楽コンクール世界連盟の加盟しているコンクールである事
  2. 過去の優勝者・入賞者が世界的ピアニストになっている事
  3. 審査員のメンバーが世界的なピアニストである事
  4. 暗譜の演奏が求められている事

第10位 浜松国際ピアノコンクール


浜松市市制施行80周年を記念して、1991年から若手ピアニストの育成を図るために創設された国際ピアノコンクールです。静岡県浜松市のアクトシティ浜松を会場として3年に1度開催される国際ピアノコンクールであり、2018年まで第10回を数えました。

故・中村紘子が第1回から審査委員長を務め、若手を育てようと意欲的に活動していました。このコンクールの優勝者からショパン国際ピアノコンクールを始め、数々のコンクールの優勝者を輩出しています。その事もあり、今回のランキングに入れました。

浜松国際ピアノコンクール過去の優勝者

第4回(2000年):アレクサンダー・ガヴリリュク(ウクライナ)
第5回(2003年):該当者なし(第2位はラファウ・ブレハッチ(ポーランド)とアレクサンダー・コブリン(ロシア))
第6回(2006年):アレクセイ・ゴルラッチ(ウクライナ)
第7回(2009年):チョ・ソンジン(韓国)
第8回(2012年):イリヤ・ラシュコフスキー (ロシア)

浜松国際ピアノコンクール第10回(2018年)審査員

小川典子(審査委員長)、ポール・ヒューズ、ヤン・イラーチェク・フォン・アルニン、アレクサンダー・コブリン、ムーン・イクチュー、ロナン・オホラ、迫 昭嘉、エリソ・ヴィルサラーゼ、ウタ・ヴェヤント、ウー・イン、ディーナ・ヨッフェ

第9位 ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール

ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール
1958年の第1回チャイコフスキー国際コンクールピアノ部門優勝者、ヴァン・クライバーンを記念して行なわれているコンクールです。1962年から4年おきに開催されています。かつては優勝賞金が最も高額でしたが、今では他のコンクールにその座を譲りました。

アメリカで開催される世界的なコンクールは幾つかありますが、ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールが最も権威が高く、アメリカを代表するコンクールです。ですが、三大コンクールや他のコンクールのステップとして考えるピアニストが多いため、ランキングは9位としました。

ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール過去の優勝者

第2回(1966年):ラドゥ・ルプー(ルーマニア)
第3回(1969年):クリスティーナ・オルティーズ(ブラジル)
第8回(1989年):アレクセイ・スルタノフ(ソ連)
第12回(2005年):アレクサンダー・コブリン(ロシア)
第13回(2009年):辻井伸行(日本)

ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール2021年審査員(予定)

マーリン・オールソップ(審査委員長)、ジャン=エフラム・バヴゼ、リコ・グルダ、アンドレアス・ヘフリガー、ウー・ハン、スティーヴン・ハフ、アンヌ=マリー・マクダーモット、ガブリエラ・モンテーロ、オルリ・シャハム、リリア・ジルベルシュタイン

第8位 ロン・ティボー国際コンクール

ロン・ティボー国際コンクール
1943年から始まった、フランス、パリで開催されるコンクールで、従来のピアノとヴァイオリン部門に加え、2011年から声楽部門が追加されました。最初はピアノとヴァイオリンを同時に開催していましたが、財政難のため、交互に開催となり、今後は4年に1度の開催となる予定です。

若手の登竜門としての位置づけされているコンクールです。歴史はありますが、近年は財政難のため、中止する事もありました。また、最近の優勝者で活躍しているピアニストが少なくなっている事もあり、ランキングとしてはこの順位にしました。

ロン・ティボー国際コンクール過去の優勝者

1943年:サンソン・フランソワ(フランス)
1949年:アルド・チッコリーニ(イタリア)
1971年:パスカル・ロジェ(フランス)
1983年:スタニスラフ・ブーニン(ソ連)

ロン・ティボー国際コンクール2019年審査員

マルタ・アルゲリッチ(審査委員長)、ユリアンナ・アヴデーエワ、ベルトラン・シャマユ、キリル・ゲルシュタイン、マーク・アンドレ、マリー=ジョセフ・ジュード、ジャン=ベルナール・ポミエ、アンヌ・ケフェリック、チョン・シュ

第7位 ルービンシュタイン国際ピアノコンクール

ルービンシュタイン国際ピアノコンクール
20世紀の名ピアニスト、アルトゥール・ルービンシュタインを記念し、テルアビブで3年毎に開催されるコンクールです。世界各国からコンテスタントが参加し、毎回ハイレベルな競演が繰り広げられています。本選の協奏曲の伴奏はイスラエル・フィルが演奏する魅力的なコンクールです。

世界のコンクールの中で最も厳正な審査と評価する人も多くいます。しかし、最も権威あるコンクールかと言われると、優勝者の活躍が少ない事もあり、第7位としました。はっきり言うと、このあたりのランキングはどんぐりの背比べでもあります。

ルービンシュタイン国際ピアノコンクール過去の優勝者

第1回(1974年):エマニュエル・アックス(アメリカ)
第2回(1977年):ゲルハルト・オピッツ(西独)
第11回(2005年):アレクサンダー・ガヴリリュク(ウクライナ)
第13回(2011年):ダニール・トリフォノフ(ロシア)

ルービンシュタイン国際ピアノコンクール第14回審査員

アリエ・ヴァルディ(審査委員長)、セルゲイ・ババヤン、アンドレア・ボナッタ、マーティン・エングストローム、ヨヘヴェド・カプリンスキー、キム・デジン、アレクサンダー・コルサンティア、エマニュエル・クラソフスキー、ロバート・レビン、セシル・オセット、ピオトル・パレチニ、アワダギンプラット、ヨニ・レヒター、ラムジ・ヤッサ

第6位 ブゾーニ国際ピアノコンクール

ブゾーニ国際ピアノコンクール
イタリア生まれの作曲家・ピアニストのフェルッチョ・ブゾーニの没後25周年を記念し、1949年から開催されているコンクールです。当初は毎年開催されていましたが、2015年から2年おきに変わりました。マルタ・アルゲリッチ、ギャリック・オールソンなどを輩出しています。

ブゾーニ国際ピアノコンクールも若手ピアニストの発掘的な面を持ち、世界でもトップを争えるかというと、そこまでの権威を持っているわけではありません。審査員の質は高いものはありますが、ランキング的にはこの順位あたりが妥当かと思います。

ブゾーニ国際ピアノコンクール過去の優勝者

1957年:マルタ・アルゲリッチ(アルゼンチン)
1966年:ギャリック・オールソン(アメリカ)
1999年:アレクサンダー・コブリン(ロシア)
2015年:ムン・ジヨン(韓国)

ブゾーニ国際ピアノコンクール2019年審査員

ティル・フェルナー(審査委員長)、パオロ・アルカ、アブデル・ラーマン・エル=バシャ、ニコラス・ハッジス、ベネデット・ルポ 、ローランド・ピールマン、アンヌ・ケフェレック、リュー・シコン、ダン・タイソン、ジョージ・スティール、タチアナ・ゼリクマン

第5位 ジュネーヴ国際音楽コンクール

ジュネーヴ国際音楽コンクール
1939年からスイス、ジュネーヴで毎年開催されている歴史ある音楽コンクールです。ピアノ部門以外にも様々な楽器の審査を行う総合的なコンクールとなっています。第1位を安易に出さないコンクールとして有名で、グルダやアルゲリッチなどが優勝しているコンクールです。

過去の優勝者の顔ぶれを見ると、錚々たるビッグネームが並んでいますが、シェバノワ以降、最近の優勝者の活躍が今一つと言えます。その点で、この位置にランキングしました。やはり、三大コンクールと比較すると見劣りする事は否めません。

ジュネーヴ国際音楽コンクール過去の優勝者

1939年:アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(イタリア)
1946年:フリードリヒ・グルダ(オーストリア)
1957年:マルタ・アルゲリッチ(アルゼンチン)
1976年:タチアナ・シェバノワ(ソ連)
2014年:ムン・ジヨン(韓国)

ジュネーヴ国際音楽コンクール2018年審査員

ホアキン・アチュカロ(審査委員長)、オルテンス・カルティエ=ブレッソン、ピーター・ドノホー、伊藤恵、ビョルン・レーマン、セドリック・ペシャ、アンドレイ・ピサレフ

第4位 リーズ国際ピアノコンクール

リーズ国際ピアノコンクール
イギリス、イングランド北部の都市リーズで開催される国際的なピアノコンクールです。1963年から原則3年ごとに開催されています。これまでラドゥ・ルプー、マレイ・ペライア等の名ピアニストを輩出し、その芸術性の高さが多くの若手ピアニストを魅了しています。

リーズ国際ピアノコンクールも若手ピアニストの登竜門的な面があります。イギリスで行われるコンクールの中では世界的に権威のあるコンクールですが、三大コンクールと比べると一段落ちると考えて良いでしょう。その点も含めてこの位置にランキングしました。

リーズ国際ピアノコンクール過去の優勝者

1969年:ラドゥ・ルプー(ルーマニア)
1972年:マレイ・ペライア(アメリカ)
1975年:ドミトリー・アレクセーエフ(ロシア)
2009年:ソフィア・グルャク(ロシア)
2018年:エリック・ルー(アメリカ)

リーズ国際ピアノコンクール2015年審査員

ファニー・ウォーターマン、アダム・ゲートハウス、ロバート・マクドナルド、ジョン・オコーナーなど

第3位 エリザベート王妃国際音楽コンクール

エリザベートコンクール
世界三大コンクールのひとつ。1937年から始まった、ベルギーのブリュッセルで開催される国際音楽コンクールです。ピアノ、チェロ、ヴァイオリン、声楽の4部門に分かれ、現在は部門毎にこの順番で毎年開催されています。各部門の優勝者は世界的な人材を輩出しています。

このコンクールは独特の審査方法でも有名です。そのためピアノ部門でも非常に高い権威を持つコンクールとなっています。エミール・ギレリス、ウラディミール・アシュケナージなど偉大なピアニストを輩出していますが、第2位、第1位と比較すると少し見劣りするため、第3位です。

エリザベート王妃国際音楽コンクール過去の優勝者

1938年:エミール・ギレリス(ソ連)
1952年:レオン・フライシャー(アメリカ)
1956年:ウラディーミル・アシュケナージ(ソ連)
2007年:アンナ・ヴィニツカヤ (ロシア)
2010年:デニス・コジュヒン(ロシア)

エリザベート王妃国際音楽コンクール2016年審査員

ヴァン・リーゼベース(審査委員長)、ダイアン・アンダーセン、ホーカン・アウストボ、フランク・ブレイリー、イエイン・バーンサイド、ピーター・ドノホー、ネルソン・コーナー、マルクス・グロー、キム・デジン、アレクサンダー・マドザー、セシル・ウーセ、クン=ウー・パイク、アンヌ・ケフェリック、エリソ・ヴィルサラーゼ、ボヤン・ヴォデニチャロフ

第2位 チャイコフスキー国際コンクール

チャイコフスキー国際コンクール
ロシアの作曲家ピョートル・チャイコフスキーに因んで名付けられ、1958年より4年おきにモスクワで開催されています。世界三大コンクールのひとつであり、世界的に権威のあるコンクールです。ピアノ部門は3曲もの協奏曲を演奏させる非常に厳しいコンクールです。

過去の優勝者の顔ぶれを見ただけでも、素晴らしい才能の持ち主ばかりであり、このコンクールのレベルの高さが良く分かります。世界最高の権威を持つコンクールのひとつと言えるでしょう。ショパン国際ピアノコンクールと肩を並べるコンクールです。

チャイコフスキー国際コンクール過去の優勝者

第1回(1958年):ヴァン・クライバーン(アメリカ)
第2回(1962年):ウラディミール・アシュケナージ(ソ連)
第5回(1974年):アンドレイ・ガヴリーロフ(ソ連)
第6回(1978年):ミハイル・プレトニョフ(ソ連)
第11回(1998年):デニス・マツーエフ(ロシア)
第12回(2002年):上原彩子(日本)
第14回(2011年):ダニール・トリフォノフ(ロシア)
第15回(2015年):ドミトリー・マスレエフ(ロシア)
第16回(2019年):アレクサンドル・カントロフ(フランス)

チャイコフスキー国際コンクール2019年審査員

デニス・マツーエフ(審査委員長)、ミシェル・ベロフ、バリー・ダグラス、ネルソン・フレイエ、パーヴェル・ギリロフ、フレディ・ケンプ、Li Min-Chan、ウラディーミル・オフチニコフ、ピオトル・パレチニ、ボリス・ペトルシャンスキー、メナヘム・プレスラー、アレクサンドル・トラーゼ

第1位 ショパン国際ピアノコンクール

ショパンコンクール【審査方法】
ポーランドで5年ごとに開催されているピアノのみのコンクールです。ピアノ部門での世界一の権威を誇る最も歴史の古いコンクールとなっています。ショパンの真の解釈者を発掘することを開催理念としており、課題曲は全てショパン作品で占めていることが特徴です。

第2位のチャイコフスキー国際コンクールと並び立つコンクールです。こちらをランキングの第1位としたのはピアノに特化したコンクールであるためです。優勝者の顔ぶれも、審査員の顔ぶれも文句なく第1位です。ピアニストにとって最も栄誉あるコンクールとなっています。

ショパン国際ピアノコンクール過去の優勝者

第4回(1949年):ベラ・ダヴィドヴィチ(ソ連)
第6回(1960年):マウリツィオ・ポリーニ(イタリア)
第7回(1965年):マルタ・アルゲリッチ(アルゼンチン)
第8回(1970年):ギャリック・オールソン(アメリカ)
第9回(1975年):クリスティアン・ツィメルマン(ポーランド)
第10回(1980年):ダン・タイ・ソン(ベトナム)
第11回(1985年):スタニスラフ・ブーニン(ソ連)
第14回(2000年):ユンディ・リ(中国)
第15回(2005年):ラファウ・ブレハッチ(ポーランド)
第16回(2010年):ユリアンナ・アヴデーエワ(ロシア)
第17回(2015年):チョ・ソンジン(韓国)

ショパン国際ピアノコンクール2015年審査員

カタジーナ・ポポヴァ・ズィドロン(審査委員長)、ドミトリー・アレクセーエフ、マルタ・アルゲリッチ、海老彰子、フィリップ・アントルモン、ネルソン・ゲルナー、アダム・ハラシェヴィチ、アンジェイ・ヤシンスキ、ユンディ・リ、ギャリック・オールソン、ヤーヌシュ・オレイニチャク、ピオトル・パレチニ、エヴァ・ポブウォツカ、ジョン・リンク、ヴォイチェフ・シュヴィタワ、ダン・タイ・ソン、ディーナ・ヨッフェ

まとめ

改めてピアノコンクールを一つ一つ見てみると、「ショパン国際ピアノコンクール」と「チャイコフスキー国際コンクール」が他のコンクールより頭一つ抜けた存在という事が分かります。優勝者の顔ぶれが凄いピアニストばかりです。権威あるコンクールとしての頂点です。

コンクールはピアニストのキャリアにとって無くてはならない時代になりました。どのコンクールも参加者が増え、第1次審査さえ通るのも難しいものになっています。それだけピアニストのレベルが上がっているともいえるでしょう。今後もここに挙げたコンクールは気になる存在です。

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