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ジュリアード音楽院

イギリスのQuacquarelli Symonds Limited(QS)という会社が毎年「世界大学ランキング」を作成しています。QSが、大きく4つに分類された指標を元に、各大学の得点を算出しこのランキングが決められます。その信頼性は非常に高いと考えられています。

「QS世界大学ランキング」は国際的な大学ランキングの中でもTOPのひとつとして認知されています。他の3世界大学ランキングは総合評価しか発表していませんが、QSは総合ランキングだけでなく、研究分野別に48分野のランキングがあります。

2016年から「Performing Arts(舞台芸術)」分野でもランキングが発表されるようになりました。2019年版が発表されましたので、その結果をみていきます。「Performing Arts」ですから、音楽だけではなく、バレエ、ダンスなども含まれていますので、純粋に音楽に特化してのランキングではない事を頭においてからみて欲しいと思います。

音楽大学ランキング2019

今年も第1位は超有名な名門校でした。みなさんも納得という大学です。クラシック音楽好きならすぐに分ると思いますが、そうでなくてもなるほど良く耳にする大学だなと思うことでしょう。

QSランキングの判定基準

  • 学術関係者からの評価
  • 雇用主からの評価
  • 論文の引用
  • H指数:学者、研究者の生産性と影響力

2019「Performing Arts」TOP10

第1位:ジュリアード音楽院(アメリカ)
第1位:ウィーン国立音楽大学(オーストリア)
第3位:イギリス王立音楽大学(イギリス)
第4位:イギリス王立音楽アカデミー(イギリス)
第5位:カーチス音楽院(アメリカ)
第6位:ニューヨーク大学(アメリカ)
第7位:ギルドホール音楽院(イギリス)
第8位:ハーバード大学(アメリカ)
第9位:ノースウェスタン大学(アメリカ)
第9位:オックスフォード大学(イギリス)

QS音楽大学ランキングの印象


今年もジュリアード音楽院は第1位、調査が始まって以来第1位をキープし続ける世界的な音楽大学です。しかし今年は第1位がなんともう1校あります!!ウィーン国立音楽大学もTOP10常連の大学でしたが今年は見事同率1位を獲得しました!

パリ音楽院は残念ながら14位、シベリウス音楽院は12位とTOP10入りならずでした。パリ音楽院は意外と評価が低いので驚きです。シベリウス音楽院もTOP10常連でしたが、今年は評価が下がってしまいました。アメリカ5校、イギリス4校、オーストリア1校という事実も意外でした。

イギリスを除くヨーロッパの音楽大学が1校しかTOP10に入っていないのが驚きです。英米強しという感じですね。残念ながら日本の音楽大学は100位以内に1校も選ばれていませんでした。せめて東京藝術大学ぐらいはいつの日か100位以内には入っていて貰いたいものです。

ここからは各校の特徴や、ランキング入りした理由を細かく紹介して行きたいと思います。

第1位 ジュリアード音楽院

ジュリアード音楽院
20世紀初頭(1905年)に開設された、クラシック界ではまだ新しい部類に属する音楽院です。それが20世紀半ばから頭角を現し、今では世界のジュリアードと呼ばれるまで発展してきました。

ジュリアードは有名音楽家の宝庫

指揮者のジェームズ・レヴァイン、アラン・ギルバート、ピアノのエマニュエル・アックス、ヴァイオリンのイツァーク・パールマン、シュロモ・ミンツ、チェロではヨーヨー・マなど。日本人でも中村紘子はじめ五嶋みどり、諏訪内晶子、樫本大進らの天才を輩出しています。

音楽家といえばジュリアード!といった印象があったのでクラシック界にはジュリアード出身者がもっとゴロゴロいる印象でしたが、やはり天才はそう簡単には生まれないようです!天才の宝庫であるジュリアードですら世に名を知らしめる音楽家は僅かしかいません。

音楽の世界は本当に厳しいのだという事が非常によくわかります。ジュリアードレベルの音楽院を卒業して初めて一流への道が開かれるのでしょう。

弦楽器のジュリアード

ヴァイオリンの教師で有名だったドロシー・ディレイの教えを受けた天才が数多く在籍していました。イツァーク・パールマン、シュロモ・ミンツ、五嶋みどり、諏訪内晶子らは彼女の弟子達です。当時は彼等の存在で弦楽器のジュリアードと呼ばれていました。



そういった講師陣の素晴らしさとカリキュラムの完成度の高さでこの音楽院は世界1の称号を得ているのです!総合力、そして専門性共に世界でトップを取り続ける音楽院だからこそのランキング1位と言った所でしょうか。

同第1位 ウィーン国立音楽大学

ウィーン国立音楽大学
ウィーン国立音楽大学がジュリアードと並んで第1位獲得です。この分野のランキングが始まった2016年から順々に上り詰めてようやくジュリアードと並び立ちました。

この音大は1817年に開設された歴史ある学校で、音楽の教科書に載っているようなクラシック音楽の大作曲家も多くの出身者を出しています。

200年以上の歴史を誇る名門

クラシックファンなら一度は聞いた事のある音楽を生み出した歴史的作曲家、フランツ・シューベルト、リヒャルト・シュトラウス、ヨハネス・ブラームス、グスタフ・マーラーといった偉人の出身校という歴史のある音楽大学です。200年以上の歴史をもつ伝統ある音楽大学としての意地をようやく見せられたという所でしょうか。

様々な学部から優秀な音楽家を輩出しています。その中の1人、ピアノ科出身の内田光子も今世界で輝いている1人です。日本人として誇らしいです。

世界一の指揮科を持つ音楽大学

中でも指揮科に定評のある音大で、昔から偉大なる指揮者達を排出して来ました。ウィルヘルム・フルトヴェングラー、ブルーノ・ワルター、ヘルベルト・フォン・カラヤンなどです。そのほかにも列挙するに大変な数の指揮者達がゴロゴロいます。

カラヤンを愛する私から言わせて貰えば指揮科だけなら世界1の音大だと思っています。カラヤンの出身校という事だけでなく、現在でも各地で活躍している指揮者が多いのはこの音大だけです。

第3位 イギリス王立音楽大学

イギリス王立音楽大学
イギリス王立音楽アカデミーという音楽院もあり紛らわしいですが、こちらはイギリス王立音楽大学の方です。イギリスの王立の称号を大学名に冠しているのですから、この音大が優秀なのは当たり前といえるでしょうか。前身が国立音楽養成学校ですから、純粋に器楽演奏(ピアノ、ヴァイオリンなど)に特化した大学です。

イギリス王立音楽大学も有名音楽家の宝庫

出身者を見て納得します。作曲家はグスターヴ・ホルスト、レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ、ベンジャミン・ブリテンなどビッグネームが並び立ちます。ミュージカルで有名な作曲家アンドリュー・ロイド・ウェッバーもここの出身なのですね。

指揮者にもビッグネームばかりです。レオポルド・ストコフスキー、ネヴィル・マリナー、コリン・デイヴィスなど名指揮者が顔を見せています。まさにイギリスを代表する音楽大学といえます。

優秀だが上には上が居る

でも「第1位、第2位には適わないよな」というのが素直な感想です。クラシック・ファンなら誰もがそう思うことでしょう。でも、第3位は立派な結果です。

第4位 イギリス王立音楽アカデミー

イギリス王立音楽アカデミー
イギリス王立音楽院と呼ばれることもあります。この音楽院も王立を冠しています。音楽学科だけでなく、舞台芸術(オペラ)学科やジャズ学科などもあります。第3位と第4位の差は音楽学科に特化しているかどうかの差かと思います。

このアカデミーも錚々たるビッグネームを輩出しています。指揮者で言えばジョン・バルビローリ、サイモン・ラトル。私の最も大好きなヴァイオリニスト、アンネ=ゾフィ・ムターもここの出身です。クラシック音楽の歌手ではありませんが、あのエルトン・ジョンもここの出身です。

第5位 カーティス音楽院

カーチス音楽院
言われてみればこのカーチス音楽院も優秀な音楽院です。No.1には決して名前は挙がらないでしょうが、評価の高い音楽院です。第5位とは見事なランクインです。独自の音楽理念を持った音楽院として有名です。

この大学出身者はなんとあのレナード・バーンスタインを始めとしてピーター・ゼルキン、ヒラリー・ハーン、ラン・ランなどの天才達がいます。これらの顔ぶれだけでもここの音楽院の優秀さが良く分かります。今後もクラシック界の才能溢れるスターを輩出してくれる事でしょう。


第6位 ニューヨーク大学

ニューヨーク大学
このランキングは「Performing Arts(舞台芸術)」分野ですから、この大学がランキングに入ったのはおそらく音楽部門が評価されたのではなく、演劇学科と映画学科によるものでしょう。アカデミー賞受賞者等、数多くの映画監督や有名俳優を輩出している大学です。

アンジェリーナ・ジョリーやメグ・ライアンなど多くの名優が出身者に名前を刻んでいます。それでも音楽学科でも我が日本の世界的ヴァイオリニストの五嶋みどりや田中直子を生み出していますので、音楽学科のレベルも高いものがあるのでしょう。

第7位 ギルドホール音楽院

ギルドホール音楽院
2016年:第9位、2017年:第16位、2017年:第36位、そして順位はV字回復して今年またTOP10入りです。正直な話、日本ではあまり知られていない音楽院かと思います。でも、第7位ですから相当な評価かと思います。

ジャクリーヌ・デュ・プレ(生きていればどんな偉大なチェリストになったことか)、そしてソプラノ歌手のアンネ・ゾフィー・フォン・オッターなど世界的な音楽家を輩出していますので、かなりのハイレベルの音楽院と想像出来ます。

第8位 ハーバード大学

ハーバード大学
ご存知のハーバード大学!アメリカ大統領を何人も輩出しています。知らない人がいないぐらいの超エリート大学ですが、音楽学部があることを知っている人はそう多くはないでしょう。アメリカの総合大学には必ず音楽学部があることが凄いと思います。音楽も大切な学問のひとつと考えている証なのですね。

作曲家のルロイ・アンダーソン、指揮者ではレナード・バーンスタイン(ハーバードからカーチス音楽院)、チェリストではヨーヨー・マ(彼もジュリアードを出ています)などを輩出しています。我が日本の五嶋龍もハーバード出身です。ハーバードは音楽でも侮れない大学です。

第9位 ノースウェスタン大学

ノースウェスタン大学
ノースウェスタン大学は日本ではほとんどの人が知らない大学ではないでしょうか。でも、ノーベル賞受賞者の数などアメリカでは名門の大学のようです。演劇部門があって、おそらくその評価が高かったためにランキングされたのかと思います。

因みにイギリスのヘンリー王子の奥方様メーガン・マークルもこの大学の出身者でした。王子誕生おめでとう御座います。

同第9位 オックスフォード大学

オックスフォード大学
オックスフォード大学も誰もが知るイギリスの名門大学です。この大学の音楽学部はタイム誌やインディペンデント紙の調査で、イギリスのベスト音楽学部に選ばれています。きっとカリキュラムが優れているのでしょう。

出身者には指揮者のトーマス・ビーチャム、ジェーン・グラヴァー、作曲家のジョン・ガードナーらがいます。ベスト音楽学部なのですから、今後クラシック音楽界のスターをたくさん生み出して欲しい物です。

まとめ

「QS世界音楽大学ランキング」をみてきました。TOP10にはアメリカ5校、イギリス4校、オーストリア1校という面白い結果でした。ドイツの音楽大学が入っていないのはランキング要素の取り上げ方に影響するものなのでしょうか。

ドイツの大学は第50位までに全部で3校しかありません。それに引き替えアメリカ、イギリス勢のランキング数は圧倒的です。これも驚きでした。この違いは良い教師を集められるかどうかの違いだと思います。アメリカ、イギリスは待遇面にしても教え方にしても違う物があるのでしょう。

日本勢の不甲斐なさも見えてきます。日本の場合、音大を卒業してからまた外国に留学するという例が多いですから、永久に第100位にも入らないかもしれないですね。根本的な解決法を考えねばならない時期なのでしょうね。

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