海岸沿いを走る車

最近の自動車はハイブリッドや電気自動車に置き換わっているため、一昔前の自動車では考えられないぐらいに騒音が無くなって、車内で音楽を聴くにも問題が少なくなってきました。

昔は騒音のためにクラシック音楽を聴くにはハードルが高いものがありました。クラシック音楽はどうしてもピアノからフォルテまでのダイナミックレンジが広いため、ピアノの部分は聴こえなくても仕方がないと諦めていたものです。

今の自動車は十分にコンサートホールのようになり得るようになってきました。ここでは長い時間高速道路をドライブするような場合を想定したクラシック音楽を選んでみます。カッコいい音楽に身を委ねて爽快にドライブを楽しみたいものです。

聴いていてカッコいい音楽を集めてみました。ドライブも楽しくなるでしょう。
弦楽器の響きが分厚くて管楽器の景気が良さそうな音楽もドライブに合いそうだな。

ランキング基準

【前提】

高速道路をある程度長い時間ドライブする時に聴きたいクラシック音楽

【基準】

  1. 颯爽とドライブできるような音楽
  2. ドライブが楽しくなるような音楽
  3. それなりの長さを持った音楽
  4. 眠くならない音楽

第10位:バッハ『ブランデンブルク協奏曲第5番』

第10位はドライブには定番のバロック音楽にしました。バッハの『ブランデンブルク協奏曲第5番』。ブランデンブルク協奏曲の中でも有名な作品ですからこれを挙げましたが、6曲ある作品はどれもが素晴らしいです。

第5番だけでは物足りない方は6曲続けて聴いてしまうというのもありかと思います。

バッハの優しい音楽が車内に広がる事でしょう。バロック特有の気品が合って、流石はバッハの作品です。

非日常的な響きが心の中に舞い込んできて、気分を高揚させてくれます。車内をバロック音楽で満たしながら走るのもいいものだと実感されるはずです。

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選りすぐりの名手たちが繰り広げるブランデンブルク協奏曲です。華やかで美しい演奏。昔の録音ですが古さを感じません。

第9位:メンデルスゾーン『交響曲第4番』「イタリア」

第9位はメンデルスゾーンの「イタリア」を選びました。実に軽快な躍動感あふれる音楽で聴いていてノッてきます。深刻な描写はなく、BGMとしても最適なので9位としました。

第1楽章の木管の軽快なリズムに乗ったメロディは楽しい気分に誘ってくれるでしょう。

全体的に軽快で流れるような音楽ですので、高揚感も味わえますし、ドライブの際に快適に聴き流す事ができると思います。

ただ、全曲で30分も掛からない音楽ですから、少し短めかもしれません。ランキング上位に置かなかったひとつの理由でもあります。

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アバドの名盤のひとつと言えるものです。後にベルリン・フィルとの録音もありますが、こちらの方がメンデルスゾーンらしくて素晴らしいと思います。

第8位:ストラヴィンスキー『火の鳥』

第8位はストラヴィンスキーの『火の鳥』としました。『春の祭典』もいいかなとは思いましたが、変拍子の連続や独特のリズムなど、運転に支障があっても困ります。

ストラヴィンスキーの世界観はきっとドライブ向きと思いますので、ハルサイではなく『火の鳥』の方を選択しました。

ストラヴィンスキーの独特な楽器の使い方は異質な感覚があり、これを聴きながらひとりで運転していると、通常では感じる事のない世界が広がっていくでしょう。

この音楽がバレエ音楽である事が信じられません。完全なる純粋音楽としても十分に通用する作品です。

全曲盤を聴く事をお勧めしますが、前半は静かな描写が多いのでつまらなさを感じる人もいるかと思います。この部分もあって、第8位としました。

しかし、後半になると激しい音楽が繰り広げられ盛り上がっていきますから、感動する事間違いありません。サウンド的にも満足する音楽です。

しっかり充実感を感じてドライブする事ができるでしょう。

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昔から名盤として名高い録音です。コンセルトヘボウの旨さがよく出ています。響きも美しく現在でも満足できる演奏になっています。

第7位:ベートーヴェン『交響曲第7番』

第7位はベートーヴェンを選びました。それも『交響曲第7番』です。ワーグナーをして「舞踏の聖化」と表現したリズム感溢れる音楽となっています。

カラヤンのような流線型の演奏で聴くとより味わい深いものとなるでしょう。

リズムの際立った音楽ですから、心も弾んできます。『のだめカンタービレ』でお馴染みになった作品という事もあり、のだめを思い出して可笑しくなったりもするかもしれませんね。

流れるような音楽がドライブにも快適な雰囲気を作り出してくれます。第1楽章もそうですが、特に第4楽章の疾走感は半端ではありません。感動ものです。

こんな音楽を聴きながら高速道路を走るのなら本当に気持ちが良いと思います。

ではなぜ第7位なのかというと、ここまでリズム感がある音楽になると、運転のリズムに影響するかもしれないと思うからです。

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カラヤンのスポーツカーでぶっ飛ばすような演奏はとてもカッコいいです。特に70年代のカラヤン/ベルリン・フィルは絶頂期であり、充実した演奏を聴かせてくれます。

第6位:ベルリオーズ『幻想交響曲』

『幻想交響曲』は音符ひとつひとつに色がついているような実にユニークな音楽です。この音楽を車内で聴かない手はありません。

楽章ごとにストーリー性があり、音楽が流れていきます。実に美しい音楽に溢れているのです。しかし、美しい音楽だけではなく、毒々しい音楽も出てきます。その部分も含めて様々な描写があって素敵な音楽です。

色彩感覚に富んだこの音楽を聴く事によって想像力が掻き立てられます。ストーリーを考えながら聴いていくのも楽しいはずです。

オーケストレーションもこの時代の作品としては独特ですので、面白く聴く事ができるでしょう。現在でも決して色褪せていません。

音楽のダイナミクスもあって、「断頭台への行進」「ワルプルギスの夜の夢」などは生々しい音楽で想像の翼も膨らみます。とにかく狭い空間で名曲に包まれるのも感動ものです。

この音楽は美しいですが、別にスピード感を増すような音楽ではないため、高速道路でなくてもいつでも楽しんでドライブのお供にできる作品かと思います。その意味で第6位としました。

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カラヤン/ベルリン・フィルならではのとても美しい演奏です。堂々としたテンポ、管弦楽の分厚さ、実に見事な『幻想交響曲』だと思います。

第5位:ホルスト『惑星』

第1曲目の「火星」が流れるとスターウォーズの音楽のようでテンションが上がるはずです。ちょっとアクセルを踏んで「行けー」という気になってくるでしょう。でも、速度オーバーはいけません。

それぞれの惑星のイメージがホルストによって上手く表現されています。「火星」もそうでしたが、「木星」が流れてくるとついに真打ち登場かという気持ちです。開始の音楽が堪りません。

この組曲のメインという事もあるのかもしれません。あの時代に宇宙を想像して書いた作品ですが、少しも色褪せていないところが凄いです。

『惑星』(特に土星、木星)を聴くと自分が異空間に行ったような感じになって、不思議な心持ちがします。特に車内という狭い空間で味わう事で、自宅で聴く感覚とは違って聴こえるのかもしれません。

宇宙船を操縦しているとまでは言いませんが、ハンドルを握っている事が楽しくなってきそうです。

宇宙に想像を馳せながら高速道路を走ると気分が変わるでしょう。その意味で第5位です。

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流石はカラヤン/ベルリン・フィル、豪快な分厚い響きを聴かせてくれる録音です。カラヤンの演奏については賛否両論ありますが、この演奏は非常に素晴らしい!

第4位:ベートーヴェン『交響曲第6番』「田園」

ベートーヴェンの「田園」もドライブにはピッタリかと思います。ゆったりとしたテンポの演奏よりもドライブで聴く時は幾分早めの演奏が合っているでしょう。

「田舎に着いた時の楽しい気分」とか楽章それぞれに標題が付いています。のどかな雰囲気から始まり、「小川のせせらぎ」に癒やされ、「嵐」に合い、それが収まると穏やかな「牧歌」に心が現れるようです。

幅寄せされたり、急に割り込みされたりして、ちょっとカッとなった気持ちも、全て忘れさせてくれるほど心の余裕が生まれます。本当に名曲なのです。

急いでいる時なども、この作品を聴く事で「気にしない、気にしない、安全運転」と穏やかな気持を生み出してくれるでしょう。

心のブレーキ役として第4位に置いてみました。

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カラヤン70年代のベートーヴェン、超高速の「田園」です。カラヤンが感じる「田園」はこのテンポなのでしょう。私はとても惹かれます。

第3位:ドヴォルザーク『交響曲第9番』「新世界より」

「新世界より」という標題を持つドヴォルザークの交響曲もドライブに合っている音楽です。「3大交響曲」のひとつとして超有名な作品で、近頃は全く聴く機会が無くなりましたが、高速を飛ばしながら聴く音楽には最適かと思います。

第1楽章の壮大な音楽、第2楽章の緩徐楽章、第3楽章のスケルツォから第4楽章の盛り上がりまで、何処を取っても血が通った音楽になっているのです。

次から次と音楽が湧き出てきて、実に颯爽と音楽が流れていきます。運転しているのがワクワクするような感じを覚えるでしょう。

この作品は金管楽器も弦楽器も活躍しますから、感動的に全体を聴く事ができます。

第3位としたのは第2位、第1位の音楽には敵わないかなと思っているからです。

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ベルリン・フィルと決別してからのカラヤンはウィーン・フィルと録音をいくつか行いました。それらの多くはカラヤンの良い面を反映したものとなりました。この「新世界」も素晴らしい演奏となっています。

第2位:ベートーヴェン『交響曲第9番』「合唱付き」

第2位にはベートーヴェン『第9』を持ってきました。第1位にするかどうか迷いましたが、第2位とします。

『第9』は第1楽章から最終楽章まで、音楽の構成が他の交響曲とは違っています。第1楽章からして無から音楽が湧いてくるように始まり、息詰まるような闘争の音楽が奏でられるのです。

第2楽章はスケルツォで情熱の音楽、第3楽章は愛の花園の音楽、そして第4楽章は歓喜を歌い上げます。

どの楽章ひとつとっても一話完結のような音楽で、聴き応え十分です。しかし、第4楽章で前の3楽章を全て否定し、人間にとって必要なのは歓喜だと訴えます。それも人の声を使って。

こういった音楽の構成はベートーヴェンという天才作曲家でなければできなかった事なのです。まさに音楽の金字塔を打ち立てました。

そんな音楽を車内のオーディオで聴きながら運転していると、クラシック好きには満足感で一杯になってくるでしょう。

第3楽章以外はテンポも早く、聴き進むほどノッてくるはずです。そして、合唱も融合した音楽で名曲を聴き終えた満足感が広がります。

ベートーヴェンが人類に残した最高の贈り物です。こういった味わい方も素敵だと思ってもらえるでしょう。

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ベーレンライター版による演奏。印象が違う「第9」で新鮮に聴こえます。ラトルの演奏は、鳴らすところは鳴らし、弦は美しい響きです。合唱も秀逸。ぜひ、聴いて欲しい1枚です。

第1位:ブルックナー『交響曲第8番』

第1位はブルックナー、それも第8番にしました。ブルックナーが残した傑作です。

ブルックナーの後期交響曲はどれもが神を意識したような特別な存在です。これを車内で聴くとその空間だけ別世界に包まれるようで不思議な気持ちにさせてくれる音楽です。

第1楽章から弦や管の響きが素晴らしく感動してしまいます。強烈な下降音階も聴きどころです。こんな分厚い音楽はブルックナーにしか作曲できませんでした。

第2楽章のスケルツォも非常に魅力的な音楽です。第3楽章は美しく深いアダージョ。実に深い音楽になっています。

第4楽章は勇壮なファンファーレで始まり、この作品のメインの部分です。ブルックナーの集大成のような楽章。壮大な楽章であり、聴きどころ満載です。

宇宙的な音楽が車内に鳴り響き、テンションが上ります。こんな音楽はブルックナーでなければ味わえません。

哲学的でもあり難しそうな音楽ですが、そんな事を意識せず音楽だけに集中すると、すんなり心に響いてくる音楽でもあります。

この作品の価値がよく分かってくるでしょう。

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ヨッフムのブルックナーは素晴らしい録音が多いですが、中でもこのCDは出色だと思います。ドレスデン国立歌劇場管弦楽団の音色も綺麗です。

まとめ

今回は敢えて管弦楽曲だけでランキングを纏めました。『惑星』の宇宙的な感覚を呼び覚ますものや『火の鳥』の異質な世界観を味わえるものから、純粋に感動する交響曲などです。

それなりにテンポがあり、よく管楽器も鳴らしている作品がドライブには合っています。

しかし、最も基本的な事は名曲である事が一番大事な事です。感動を与えてくれる音楽はどんなシチュエーションでも我々の心を掴んで離しません。

自分の好きな音楽に包まれながらドライブを楽しむのが最も効果的かと思いますが、その中にここで挙げた作品も取り上げて頂けたら幸いです。

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