ヴァイオリンという楽器の音色はとても美しいものです。作曲家もその美しさに触発されてヴァイオリン協奏曲を作曲したのだと思います。ですからヴァイオリン協奏曲には名曲が多いのです。
ヴァイオリン協奏曲はヴァイオリンの超絶技法が聴けたり、オーケストラとの丁々発止の掛け合いが面白かったり、聴きごたえがある音楽です。バロック時代から現代音楽まで様々な作曲家が作品を残しています。
その中からこれは必ず聴いておかねばならないと思う名曲をランキング形式で紹介します。ヴァイオリニスト泣かせの難曲も多く、また体力を使う大曲もあったりと作曲家によっての個性が楽しめる音楽です。
ランキング基準
- スタンダードな名曲
- 音楽史に残るような名曲
- 演奏会で取り上げられる頻度が高い名曲
- ヴァイオリンの良さが生かされている名曲
- 1作曲家1作品とする
第10位 パガニーニ ヴァイオリン協奏曲第1番
強烈なカリスマ性と圧倒的超絶技巧の持ち主として知られるパガニーニは、生涯8曲のヴァイオリン協奏曲を発表したと言われていますが、現在確認されるのは6曲のみです。それにはパガニーニの秘密性が関係しています。
秘密主義の彼は演奏会当日まで楽譜を自分の手元に置いておき、いざ本番という時にオーケストラにも公開し、公演が終われば全て回収するという事を行っていました。自分の超絶技法の秘密を他人に調べられたくなかったのです。
ですから、オーケストラの部分は直前に見ても演奏できるように簡単な伴奏に徹している形にしています。現存する6曲の協奏曲の中で1番が最も有名です。華麗でロマンティックな作品となっています。
第9位 J.S.バッハ 2つのヴァイオリンのための協奏曲
バッハは3曲のヴァイオリン協奏曲を作曲しました。そのなかの1曲ですが、ヴァイオリン2挺による協奏曲はとても珍しい作品です。
二人のヴァイオリン奏者が対話しながら作品が流れていきます。バッハらしい端正で魅力ある作品で、非常に名曲です。
第8位 ヴィヴァルディ 四季
正式名はヴァイオリン協奏曲集『和声と創意の試み』作品8-1~4となります。とても有名な作品で、特に「春」の冒頭メロディはほとんどの方がご存じの作品ではないでしょうか。ヴィヴァルディはこの1曲だけで音楽史に歴史を刻み付け、現代まで人気の作品です。
春夏秋冬を音楽で表現していますが、言葉による解説も楽譜には書いてあります。演奏者は、これによってなお一層作品のイメージがつかめるのでしょう。「夏」の雷雨や「冬」の寒さの厳しさなど、聴いていてその風景が感じられます。
第7位 ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番
ブルッフの代表作でもあり、ロマン派を代表する名曲と言ってもいいでしょう。ブルッフはヴァイオリン協奏曲を3曲作曲しましたが、その中で最も有名で人気のあるのがこの第1番です。
第3楽章まで切れ目なく演奏される事も特徴です。絢爛豪華な協奏曲で特に第3楽章が一番盛り上がります。曲自体がそういう形で作られており、最後は情熱的に終曲を迎えるのです。
第6位 メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲
三大ヴァイオリン協奏曲のひとつ。この作品のヴァイオリン独奏の音色の綺麗さは天下一品です。どの協奏曲もこの作品には敵わないでしょう。そんな魅力満載な協奏曲です。この作品も切れ目なく演奏されます。
非常に明るさに満ちた旋律と憂いを含んだ旋律が良い対照となっていて、協奏曲の完成度から言えばこの作品が一番かもしれません。第6位なのは私にとっては食傷気味になっているためです。おそらくクラシック通と言われる人たちも同様なのではと思います。
第5位 ブラームス ヴァイオリン協奏曲
三大ヴァイオリン協奏曲のひとつ。ブラームス充実期に作られた作品である事から、この協奏曲もブラームスの全体の中でも優れた傑作となっています。如何にもドイツの作曲家の作品で格調高く重厚な作品です。まるで交響曲のような作品となっています。
第1楽章も素晴らしいですが、特に優秀なのは第3楽章です。こちらの方が聴き馴染みのある旋律ではないでしょうか。ヴァイオリンとオーケストラが一体となって交響曲的な音楽を作り上げています。ヴァイオリニストにとっては難しい作品です。
第4位 モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第3番
モーツァルトのヴァイオリン協奏曲はベスト10からは外せません。出来る事なら『第5番』も入れたいところです。モーツァルトがまだ20代の頃に次々と5曲を書き上げました。若きモーツァルトの颯爽とした響きが聴く側にも伝わって来ます。
とりわけ『第3番』は名曲です。モーツァルトの良さが全て入っていて、明るく華やかさを持っています。技巧に走るのではなくて、実に素直に音楽に向かっている姿が印象的です。軽そうな音楽に見えますが、なかなかどうして沢山の事が詰まっている作品です。
第3位 シベリウス ヴァイオリン協奏曲
第3位はシベリウスです。三大から少し広げて五大ヴァイオリン協奏曲にするとようやくシベリウスも顔を出します。静的な音楽とでもいうのでしょうか、静寂から生まれる音楽の良さを我々に教えてくれます。
おそらくヴァイオリニストからすればかなりの難易度の作品です。ここに挙げた10曲の中で最も難しいかもしれません。北欧の厳しい環境からしか生まれない音楽だと思います。
第2位 チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲
第2位はチャイコフスキーです。三大ヴァイオリン協奏曲にこの作品を入れて四大ヴァイオリン協奏曲と称されます。人気の点ではメンデルスゾーンと肩を並べていると思います。何といっても冒頭のメロディは一度聴いたら忘れられません。
初演は酷評でしたが、演奏を重ねるうちに評価が良いものに変わってきました。ロシア人にしか書けない哀愁溢れる音楽が人々の心を掴んだためでしょう。名曲です!
第1位 ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲
第1位は何といってもベートーヴェンです。三大ヴァイオリン協奏曲のひとつ。とはいってもこの作品は他の2作品をはるかに凌駕しています。ベートーヴェンの充実期「傑作の森」の中の1曲であり、全てのヴァイオリン協奏曲の王者と言っても差し支えないでしょう。
ベートーヴェンの闘争心溢れる『運命』のようなエッジが効いているような音楽ではなく、肩の力を程よく抜いた温和なベートーヴェンがそこにはいます。聴いていて幸福感が溢れてくる作品となっています。
第1楽章だけで25分ほども掛かり、全曲も45分以上と大作です。実に壮大で優雅な作品となっています。ヴァイオリンの独奏も見事な旋律ですし、オーケストラとの絡み合いも素晴らしいです。
まとめ
基準に沿って自分なりのランキングをしてきました。ベルクとかシェーンベルクなども良い曲を書いていますが、スタンダードな作品を基準としていますから、こんな結果になりました。ラロの『スペイン交響曲』も選択に迷いました。
ここに挙げた作品は最低限聴いておかねばならない作品たちです。これ以外にも多くの名曲が存在しています。どうぞ、ここから先は自分で名曲を探して欲しいと思います。自分の音楽の幅が広がっていくはずです。