東京芸術大学

フジテレビ系列で不定期放送されているトークバラエティ番組『さんまの東大方程式』が2019年10月19日に放送されました。今回のテーマは「芸術の秋に東京藝大生が大集合SP」と題し、現役・OBの東京藝大生を集めての特集番組でした。視聴なさった方も多いと思います。

特番として藝大生が特集されるなんてクラシックファンとしては嬉しい限りです。現役の東京藝大生の専門分野の凄さも分かりましたが、一番は彼らも普通の若者と変わらない事が印象的でした。クラシックバカでないところに安心しました。

タイトルの話題に戻りますが、音楽学部の学生たち138人への取材で選ばれた「本当に歌が上手い歌手」はどんな人が入っているのか気になりますよね。予想してみてください。本物の音楽的才能の有る人達が選ぶ、歌が上手い歌手TOP10って果たしてどんな結果だったのでしょうか。

こんなに凄い!東京藝術大学・音楽学部

番組を見て、ピアノの9音を弾いてその音を全て当てたり、あるテーマからの即興演奏など東京藝大生の凄さを目の当たりにして、こいつら只者ではないと思いました。そこで、東京藝大の概要について調べる事にしました。こんなに才能溢れる人材が集まる音大とはどんなところでしょう。

東京藝術大学は国立では唯一の芸術総合大学で音楽学部と美術学部の2学部あります。今回対象とするのは音楽学部で、全体で毎年272人受け入れます。各学科ごとにもう少し細かく見ていくと募集人員が非常に低く、非常に狭き門であることが分かります。

2019年度合格者

【声楽科】入学定員:54名、受験者:207名、合格者:54名、倍率:3.8倍 
【器楽科】入学定員:98名、受験者:418名、合格者:99名、倍率:4.3倍 
【指揮科】入学定員:2名、受験者:6名、合格者:2名、倍率:3.5倍

主な学科の定員と合格者数を挙げると以上です。何と指揮科は2名しか取らないくて、合格者なしの年も多いそうです。器楽科もピアノからヴァイオリン、管楽器など全てをひっくるめて98名ですから、各楽器専攻を考えると本当に狭き門だと言えます。

まさに、日本を代表する音楽家を育てる教育機関である事が分かります。この狭き門を突破してきた入学生たちは皆、優秀であると言えるでしょう。本物のプロを目指す音楽家の卵たちであり、我々とは音楽の聴き方が違う若者たちです。日本で一番音楽的才能が優れた音楽家の集団です。

東京藝大生138人が選ぶ、歌の上手い歌手ランキング

東京藝大の凄さが分かった上で、そんな音楽エリートである彼らが挙げる本当に歌が上手い歌手たちはどんな人なのか、非常に興味深いものがあります。世界的な音楽家になる可能性を秘めた金の卵たちが選ぶ歌ウマ歌手とは一体…。

第10位:ISSA(DA PUMP)

da pump issa

東京藝大生のコメント

  • リズム感、グルーヴ感が気持ち良い(打楽器)
  • 高音が綺麗。踊りながら歌う事を何なくこなしている(オペラ)
  • ミックスボイスと地声が良く、踊りが出来るのは彼だけ(声楽)

ISSAはダンス&ボーカルグループ「DA PUMP」のリーダー兼ボーカルです。本名、邊土名一茶(へんとな いっさ)。「DA PUMP」はメンバーを入れ替えながら1997年から活躍し、現在では7人組のグループです。最近では「U.S.A」という曲が爆発的にヒットしました。

「U.S.A」は派手に踊りながら歌われる曲ですが、それを難なくこなし、リズム感の良さが分かります。歌の方も踊りに左右される事なく、しっかりとした高音が出ていますし、裏声と普通の声のミックスボイスを上手く使いこなしている事が評価されての第10位です。

第9位:島津亜矢

島津亜矢

東京藝大生のコメント

  • 持っている歌声が桁違い(声楽)
  • 1000の歌声を持っている(声楽)

本名は島津 亜矢子(しまづ あやこ)。熊本県のご出身で、最近では「歌が上手い演歌歌手」として演歌だけでなく、POPSをテレビで披露する機会も増えてきました。フォークソングから洋楽まで全16曲をカバーしたCDアルバム『SINGER 6』を発売し、とても話題になりました。

東京藝大生から、まさか演歌歌手の名が上がるとは思いませんでした。パワフルな演歌歌手ですから、歌声がそのまま評価されました。それと『SINGER 6』の評価も高く、誰の歌でも歌いこなせるという事で1000の歌声を持っているとして、声楽科を中心に支持を集めたのだと思います。

第8位:玉置浩二

玉置浩二

東京藝大生のコメント

  • 甘い歌声でその場の雰囲気を全てを持っていく(ヴァイオリン)
  • 人の心を鷲掴みにしてしまう天性のものを持っている(尺八)

ロックバンド『安全地帯』のボーカリスト。徳永英明さんやコブクロの黒田俊介さんが「日本一歌が上手い」と明言しており、スキマスイッチの大橋卓弥さんも「最も尊敬するボーカリスト」と評しています。同じ歌手からも絶大な支持を得ているのが本当にすごいですね。

最近ではメディアへの露出が決して多くない玉置浩二の名前が出てくるとは意外でした。場の雰囲気を独り占めしてしまう才能や人の心にさっと入っていく歌唱力が支持されたのだと思います。本当に唯一無二な個性を持つ歌い手さんですね。しっかりそこを選ぶあたり藝大生の感性恐るべし。

第7位:宇多田ヒカル

宇多田ヒカル

東京藝大生のコメント

  • テレビやCMで聴くと声がすぐわかる(個性がある)(ピアノ)
  • 多めに息を吐いていて、盛り上がるところでも優しさを感じる(声楽)
  • 音の跳躍を難なくこなしている。音程がふらつかない(声楽)

1998年僅か15歳でデビューし、すぐに大ブレーク。なんとファーストアルバム『First Love』は累計売上765万枚以上で、日本国内の歴代アルバムセールス1位だそうです。2010年に一度音楽活動休止、2016年に活動を再開しました。今でも人気、実力ともにJ-POP上位歌手です。

『花束を君に』の音の跳躍を難なくこなしているところや音程が安定しているところ、息を多めに吐きながら歌う事で優しさを感じる点、個性ある歌い方に評価が集まりました。声楽科の学生の曲の聞き方も、おー、専門的と思いました。そんな風に聴いているのかと感心しました。

第6位:久保田利伸

久保田利伸
久保田利光は1985年にメジャーデビューしたシンガーソングライターであり、現在もR&Bシンガーとして活動しています。ブラックミュージックを日本に浸透させた人物としても有名であり、「ブラックミュージックのパイオニア」と呼ばれています。歌唱力は抜群です。

東京藝大生のコメントの放送はありませんでした。

第5位:椎名林檎

椎名林檎
個性派シンガーの登場です。何曲か聴きましたが、雰囲気があって私は好印象を持ちましたが、この歌手は好みがはっきり分かれるかも知れません。1998年デビュー。2009年、芸術選奨新人賞受賞。才能ある歌い手なのだと思います。藝大生にとって共感するものが多くあるのでしょう。

東京藝大生のコメントの放送はありませんでした。

第4位:平原綾香

平原綾香
平原綾香と言えば真っ先に思い浮かぶのが、ホルスト原曲の『ジュピター』。2003年のデビュー曲です。この曲は100万枚突破しました。洗足学園音楽大学で本格的に学んだサクソフォーン奏者でもあります。近年はミュージカル俳優としても活躍しています。

東京藝大生のコメントの放送はありませんでした。

第3位:石丸幹二

石丸幹二

東京藝大生のコメント

  • 声量がある(ヴァイオリン)
  • 低い声から高い声まで綺麗な声をしている(声楽)

現在は俳優や司会者として活躍中の石丸幹二ですが、実は東京藝大声楽家出身です。卒業後は2007年まで、17年に渡って劇団四季の人気ミュージカル俳優でした。私は彼がミュージカル歌手をやっていたなどまるで知りませんでした。現在でも定期的にリサイタルをなさっています。

東京藝大・声楽科では現在でも彼のようになりたいと思っている方が多いそうです。東京藝大生にとって彼の歩んできた道は理想の姿でもあるようです。声量の素晴らしさやどの音域でも安定して綺麗な歌声を聴かせてくれる点に評価が集まったようです。

第2位:King Gnu

King Gnu

東京藝大生のコメント

  • ファルセットが凄い
  • 高音が凄く女性と聴き間違えるほど(声楽)
  • 高い声を使い分けている。カラオケでは歌えない(日本舞踊)

個性的グループが第2位です。King Gnu(キング ヌー)と言って、2017年から活躍している4人組のグループです。私はバンド名すら読めず、スタッフに聞いてしまいました。しかし、1名が東京藝大声楽科出身、もう1名が器楽科チェロ専攻で中退と元藝大生です。

ボーカルはファルセットが凄い上手で聴いていてまるで女性が歌っているようです。特に高音の出し方が半端ではなく、独特の世界観を持っているグループです。かといって、一部の人間にしかわからない音楽作りではなく、若い音楽家が嵌まってしまう感覚も分かる気がします。

第1位:MISIA

misia

東京藝大生のコメント

  • パワフルで表情があり、芯がある(リコーダー)
  • 一音一音、子音が立っていて、人の感情に訴えてくる(声楽)
  • 声量と迫力(尺八)
  • ホイッスルボイスが凄い(声楽)

ナンバー1はMISIA(ミーシャ)でした。本名非公開。MISIAは「ASIAの方々にも音楽を届けたい」という想いから名付けたようです。1998年デビュー。それ以降は順調に音楽活動を積み重ねてきた女性シンガーです。テレビ出演は特別な事情以外は断っているようです。

東京藝大生からはかなりの支持があり、パワフルな歌声で表情があり、音楽に芯がある事や一個一個、子音が立っていて感情に迫ってくる、そして何人もの方が指摘していましたが、ホイッスルボイスが凄いようです。声域が広くて、発声法が上手いため彼女には出来るのでしょう。 

全体を見渡して

第1位:MISIA
第2位:King Gnu
第3位:石丸幹二
第4位:平原綾香
第5位:椎名林檎
第6位:久保田利信
第7位:宇多田ヒカル
第8位:玉置浩二
第9位:島津亜矢
第10位:ISSA(DA PUMP)

確かにみんな歌唱力のある歌手ばかりでした。それと、驚くべきはコメントの的確さです。専門用語をなるべく使わないで、我々に伝えてくれる言葉は重みがありました。流石は耳の良い東京藝大生です。聴くべきポイントをしっかり押さえています。

わずか138人の回答でしたが、変な偏りがなく、J-POP全体的な広がりがあり、統計的にも面白いものになっているのが興味深いです。東京藝大生だからもっと変わった名前が飛び出してくるのかなと思っていました。しかし、みなさん、真面目に答えてくれた事が良く分かります。

まとめ

「さんまの東大方程式」を初めて見ましたが、結構面白い事をやっていたのですね。このテーマだけでなく、お金の掛かる楽器などもやっていたので、大変興味深く見させて頂きました。取り上げるテーマにもよりますが、今後も興味がある番組です。

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