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2019年「ブザンソン国際指揮者コンクール」で優勝した沖澤のどかが、2020年秋からベルリン・フィルのぺテレンコのアシスタントになる事が決まりました。ベルリンを本拠地としている彼女にとっては良い勉強の機会になるはずです。

沖澤のどか「ブザンソン国際指揮者コンクール」の第一報には驚きましたが、その事によって仕事も増え、日本のオーケストラを振らせてもらう事も多くなっています。小澤征爾の時代から見るとずいぶんと恵まれていますが、ここからが本当の彼女の才能が試されるのです。

その意味で、ぺテレンコのアシスタント就任は願ってもない幸運でした。雑用も多いですが、何といってもベルリン・フィルのリハーサルを見学できるのは一番の勉強になると思います。沖澤のどかのこれまでの道のりと将来について見ていきましょう。

沖澤のどかの分岐点

2019年9月21日、第56回ブザンソン国際指揮者コンクールの本選の演奏です。R・シュトラウス『死と変容』のラスト部分。この演奏で見事に第1位を獲得しました。この結果、彼女は世界に飛び出す切符を手に入れたのです。

このコンクールは35歳未満の若手を対象としたもので、指揮者コンクールの中では一番の老舗です。伝統があり、レベルも高くここでの優勝はなかなか難しいものです。

2017年までの彼女はあまりぱっとせずに実質的なプロとは呼べないものでした。しかし、2018年の東京国際音楽コンクール優勝、そして翌年のブザンソン国際指揮者コンクールの優勝と見違えるように変貌したのです。

大学までの歩み

1987年生まれ。ピアノは3歳から、小学5年生からはチェロにも手を出し、高校まで地元の市民オーケストラに在籍。高校からは吹奏楽団に入りオーボエを担当しました。高校2年の時に藝大進学を決断するも、オーボエでは試験に受からないだろうと思い、指揮科へ方向転換。

指揮科も舐められたものです。指揮科の定員は2人。といっても例年は1人とか合格者なしが多くでる難関の学科でした。無知とは怖いもの知らずなのですね。藝大時代はずいぶん苦労したと言っています。半年休学して実家へ帰ったりかなり追い詰められたようです。

それでも何とか大学は6年掛かりで卒業しました。その後大学院指揮専攻に進学します。

オーケストラ・アンサンブル金沢の指揮研究員

2011年、大学5年生のとき、オーケストラ・アンサンブル金沢の指揮研究員に選ばれます。指揮者のアシスタントなのですが、実際やっていたのはそれだけでは無くて事務局員もしていて、電話を取ったり、エキストラの手配をしたり忙しかったようです。

しかし、この社会人としての経験がその後にいい経験を残してくれました。事務局にいた時にとても音楽がしたくてしょうがなかったという気持ちが強くなったといいます。

ドイツ留学

2015年、ドイツのハンス・アイスラー音楽大学に留学しました。2017年、ダニエレ・ガッティとロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団によるマスタークラスに参加。

また、音大生はベルリン・フィルの2回目からのリハーサルを自由に見学できたそうです(現在はゲネプロしか見学できなくなった)。

一流指揮者のリハーサルを見ることはは指揮者の卵にとってとても勉強になります。ベルリンに留学した者の特権です。

いくつかのマスタークラスにも参加し、研鑽を積んだようです。普段だとやらないくらいに表情豊かに指揮をしてみても「あなたの指揮はわかりやすいけど、表情が足りない」とよく言われたそうです。

ある時は「礼儀正しすぎる」「礼儀正しいことはいいことだけれども、必ずしもオーケストラのメンバーはそれを指揮者に求めていない」ともいわれ指揮者としての在り方を実地で学びました。

東京国際音楽コンクール優勝

2018年、東京国際音楽コンクールに優勝します。2度目の挑戦でした。2012年はビデオ審査には通ったものの第1次予選で涙をのみました。

この時点で多くの人が沖澤のどかの名前を認識するようになりました。それまでは本当にプロとはいっても全くの無名でしたから。

ベルリン留学が彼女を変えたのだと思います。指揮者として生きる覚悟が定まったのだと思います。

沖澤本人も言っています。「ベルリンに行って一番変わったのはメンタリティだと思います。かなり図太くなったと思う」。

ムーティのレッスンを受ける

2019年、リッカルド・ムーティによるイタリア・オペラ・アカデミーを受講する機会を得ました。日本人は沖澤だけが選ばれて1週間にわたりレッスンを受けました。

彼女にとってこのレッスンも大いに勉強になったようです。楽譜通りに演奏するということの真意を学んだと言っています。

巨匠ムーティからは「女性だからといって男性のようにする必要はない。”Be yourself”」と言われたそうです。

ブザンソン国際指揮者コンクール優勝

ムーティのレッスンを受けた年の9月にブザンソン国際指揮者コンクールにおいて見事優勝します。藝大時代の彼女のままでは成し遂げられなかったでしょう。

ベルリン留学やムーティのレッスンなどを受けて彼女自身が変化したためです。小澤征爾には斎藤英雄がいました。彼女には藝大時代の高関健の存在やベルリン留学、そして様々な指揮アカデミー参加が実を結んだのです。

優勝して思ったことは「これでもうコンクールを受ける必要はない」事だったと彼女は回想しています。あまりにも正直な感想です。そんなことまでマスコミに言ってしまう人物なのですから、裏表のない性格なのでしょう。

沖澤のどかの将来

ブザンソン国際指揮者コンクール優勝といってもまだ指揮者としての入り口に立ったところです。これからが沖澤のどかの真価が問われます。

指揮ぶりは最初の動画を見てもらえば分かるように、まだまだ振り過ぎです。小澤征爾がブザンソン国際指揮者コンクールに優勝した頃も同じでした。

指揮者としては未だ未完成ですから、振らないとオーケストラに伝わらない点もあるのでしょう。こればかりは経験を積んで学ぶしかないですね。

ぺテレンコのアシスタントとなるのですから、ベルリン・フィルに客演する様々な指揮者たちのリハーサルもよく観察できるでしょうから、ひとつひとつ学んでほしいです。

彼女はオペラを振りたいという夢も持っています。順調に伸びていけばいくつかのオペラ座からのオファーもあるはずです。

アジア人で、かつ、女性指揮者というだけでかなりのハンデがあるわけですから、それを乗り越えて、世界の「OKISAWA」を目指してほしいです。

まとめ

とても小柄でどこにそんなパワーがあるのだろうと思うような指揮をします。もっとしなやかな指揮者になる事を願うばかりです。

世界に羽ばたく切符は手に入れました。あとは本人の精進次第です。日本人の沖澤のどかここにありという存在になってほしいです。

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