オーボエの特徴は優しく甘美でどこか哀愁漂う音色にあります。管楽器の中で始めてオーケストラに採用されたのはオーボエだそうです。当時の人々もその音色の良さに引き込まれたからでしょう。
その音色や表現力の豊かさから、オーケストラではソロを担当する事が多い楽器です。魅力的な楽器である反面、オーボエは「世界一難しい木管楽器」として知られています。環境に影響されやすい楽器である事とリードとの相性はオーボエ奏者として一生苦しめられるものです。
そんなオーボエを自在に操り素晴らしいオーボエ奏者になった10人をランキング形式で紹介して行きます。第5位まではすんなりと決まりましたが、その先は私個人の好みも混じっている事をお許しいただきたい。
ランキング基準
今まで聴いてきた録音の中で以下に該当するオーボエ奏者である事。
- テクニックの高さ
- 音色の良さ
- 音楽性の素晴らしさ
第10位 宮本文昭
名前:Fumiaki Miyamoto
生没年月日:1949年11月3日~
最終学歴:北西ドイツ音楽アカデミー
出身国:日本
男の美学を貫いたオーボエ奏者
東京都港区出身。高校卒業後、ドイツ留学。フランクフルト放送交響楽団を経て、ケルン放送交響楽団首席オーボエ奏者を歴任。その後、サイトウ・キネン・オーケストラ、水戸室内管弦楽団などの首席オーボエ奏者を歴任し、超絶的技巧をもつオーボエ奏者として高い評価を得てきました。
自らの生き方を選択する「男の美学」を貫き、2007年オーボエ奏者として40年の演奏活動にピリオドを打ちました。その後は、指揮の世界でも活躍し、東京シティ・フィルの音楽監督にも就任した事もあります。ヴァイオリニストの宮本笑里とは親子です。
第9位 ジョン・マック
名前:John Mack
生没年月日:1927年10月30日~2006年7月23日
最終学歴:ジュリアード音楽学校、カーティス音楽院
出身国:アメリカ
ジョージ・セルを支えたオーボエ奏者
ニューオーリンズ交響楽団、ナショナル交響楽団の後、1965年にジョージ・セルによってクリーヴランド管弦楽団の首席オーボエ奏者に任命されました。2001年に勇退するまで、セルとその後継指揮者のもとで活動を続けたオーボエ奏者です。セルの音楽を支えた名奏者でした。
セルに寄って鍛え上げられたクリーヴランド管弦楽団はアメリカBIG5までに成長しましたが、ジョン・マックのような名手たちをも生み出しました。後進の指導にも熱心で、母校ジュリアード音楽院やクリーヴランド音楽院でも教鞭を執っていました。
第8位 アルブレヒト・マイヤー
名前:Albrecht Mayer
生没年月日:1965年6月3日~
最終学歴:パリ音楽院
出身国:ドイツ
現ベルリン・フィルの首席奏者
10歳からオーボエを始めました。バンベルク交響楽団で首席奏者を務めた後、1992年にベルリン・フィルの首席オーボエ奏者となりました。アバド、ラトルそしてぺトレンコと三大の首席指揮者に仕えて来た訳です。カラヤン後の新しいベルリン・フィルを支えてきたひとりとなります。
ベルリン・フィルの首席以外にも室内楽にも積極的で、ザビーネ・マイヤー主宰のアンサンブルやベルリン・バロック・ゾリステンのメンバーでもあります。最近では指揮にも手を出しており、活動の範囲を広げています。落ち着いた音色、息の長いフレーズでの安定した音色、弱音の美しさには定評があります。
第7位 シュテファン・シーリ
名前:Stefan Schilli
生没年月日:1970年8月20日~
最終学歴:カールスルーエ音楽大学
出身国:ドイツ
名門バイエルン放送交響楽団の首席奏者
1991年、僅か20歳でバイエルン放送交響楽団の首席オーボエ奏者に就任しました。このニュースは世界のクラシック界に驚きを持って伝えられました。魅力的な音色と完璧な技巧に支えられた音楽性が特徴のオーボエ奏者です。
1996年、第48回プラハの春国際音楽コンクールで優勝しました。若い頃から将来を嘱望されたオーボエ奏者で、今や名門バイエルン放送交響楽団を代表する存在になりました。室内楽にも力を入れていてその名声をより高めています。
第6位 フランソワ・ルルー
名前:François Leleux
生没年月日:1971年~
最終学歴:パリ音楽院
出身国:フランス
オーボエの限界を超えた男
14歳でパリ音楽院に入学し。18歳でパリ・オペラ座管弦楽団の首席オーボエ奏者となりました。20歳でトゥーロン国際コンクールとミュンヘン国際コンクールに優勝。21歳で指揮者マゼールに招かれバイエルン放送交響楽団の首席オーボエ奏者に2004年まで在籍しました。
現在はヨーロッパ室内管弦楽団のソロ・オーボエ奏者を務めています。世界を代表するオーケストラにソリストとして共演、室内楽などにも意欲的にです。各地の音楽祭にも招かれており、現代を代表するオーボエ奏者のひとりとなりました。繊細華麗で煌めくような美音を奏でます。
第5位 モーリス・ブルグ
名前:Maurice Bourgue
生没年月日:1939年11月6日~
最終学歴:パリ音楽院
出身国:フランス
唯一無二のオーボエ奏者
1964年から3年間、バーゼル交響楽団のソロ・オーボエ奏者を務めました。その後、指揮者シャルル・ミュンシュの招きで1967年から1979年にかけてパリ管弦楽団の首席奏者を務め、その後はフリーして活躍しています。1980年からは指揮にも挑戦しています。
教育にも熱心でパリ音楽院は勿論、一時東京藝大の教授になった事もあります。第8位のアルブレヒト・マイヤー及び第6位のフランソワ・ルルーの先生で、その他にも優秀な弟子たちを育てました。各国の著名なオーボエ奏者の多くは彼に学んだ人が多くいます。
第4位 ハンスイェルク・シェレンベルガー
名前:Hansjörg Schellenberger
生没年月日:1948年2月13日~
最終学歴:ミュンヘン国立音楽大学
出身国:ドイツ
カラヤンに見いだされた才能あるオーボエ奏者
1971年にケルン放送交響楽団のオーボエ奏者となり、1975年から1980年まで同団のソロ・オーボエ奏者となります。1977年カラヤンから声を掛けられ、1980年1月から2001年夏までベルリン・フィルのソロ・オーボエ奏者を務めました。
私の世代ではベルリン・フィルと言えばシェレンベルガーがカッコよくオーボエを吹いている姿が印象的でした。退団後は、指揮者、ソリストの仕事を中心に活躍しています。2013年からは日本の岡山フィルハーモニック管弦楽団の首席指揮者を務めています。
第3位 インゴ・ゴリツキ
名前:Ingo Goritzki
生没年月日:1939年2月22日~
最終学歴:デトモルト音楽大学
出身国:ドイツ
異色の経歴を持つ現代の巨匠
20歳の時にピアノ、フルートからオーボエに転向した異色の経歴を持ちます。バーゼル交響楽団やフランクフルト放送交響楽団では首席オーボエ奏者を務めました。録音数が多いオーボエ奏者としても有名です。
若手の育成にも力を入れ、第8位のアルブレヒト・マイヤーも教え子のひとりです。ハノーファー州立音楽演劇大学やシュトゥットガルト音楽演劇大学で教える一方、各地でマスタークラスを開いてきました。彼の弟子は世界のオーボエ界を支えているといっても過言ではありません。
第2位 ローター・コッホ
名前:Lothar Koch
生没年月日:1935年7月1日~2003年3月16日
最終学歴:フォルクヴァング芸術大学
出身国:ドイツ
20世紀ドイツを代表するオーボエ奏者
1952年、17歳でフライブルク・フィルハーモニー管弦楽団の首席オーボエ奏者として入団。その後、1957年、22歳の若さでベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席オーボエ奏者に就任。1959年、プラハの春国際音楽コンクールで優勝。若くして非凡な才能を見せて来ました。
1970年代、カラヤン/ベルリン・フィルの黄金期に輝いていたスタープレーヤーです。34年間もベルリン・フィルの首席オーボエを務め、カラヤンを支えたひとりでした。当時の映像を見るとコッホ以外にもゴールウェイ、ライスターと凄いメンバーが揃って実に贅沢です。
第1位 ハインツ・ホリガー
名前:Heinz Holliger
生没年月日:1939年5月21日~
最終学歴: バーゼル音楽院
出身国:スイス
オーボエ界に燦然と輝くレジェンド
1959年にジュネーヴ国際音楽コンクールや1961年にミュンヘン国際音楽コンクールでそれぞれ優勝しました。何でもこなす名プレイヤーです。オーボエだけの才能に留まらず、作曲や指揮者としても有名です。
バロック音楽から現代音楽まで広いレパートリーを持ち、ホリガー木管アンサンブルとしての活動も行っています。作曲と演奏両方を追求することによって、彼は自分の楽器上での技術的な可能性を伸ばしてきました。
指揮者としてベルリン・フィル、ウィーン・フィルなど著名なオーケストラを指揮してきました。作曲の分野では器楽曲からオーケストラ曲、そしてオペラまで作曲しています。素晴らしい音楽の才能です。教育者としても音大で教鞭を取っていた事もありました。
まとめ
オーボエという大変難しい楽器をいとも簡単に操る人たちです。10人共にその音色が素晴らしい!甲乙つけたいですが、あとは好みだけです。みなさん、故人またはかなりの年齢になりました。一番若い人物で49歳ですからね。
TOP10に若手が入っていない事も心配です。難しい楽器ですから、音大でも人気がないようです。何とか上手い具合に世代交代して行ってくれるといいなと思っています。