交響詩のおすすめ名曲10選

クラシック音楽のジャンルの中に「交響詩」というものが存在します。クラシック音楽に精通しておられる方は良くご存じでしょうが、初心者には「交響詩」とは何ぞやという疑問を抱かれる方も多くいる事でしょう。

簡単に言ってしまうと標題音楽かどうかなのですが、詳しい説明はこれから紹介しようと思っています。そして、「交響詩」を理解したところで実際に「交響詩」を聴いてみましょう。

「交響詩」の中で特に有名な作品を10曲集めてみました。「交響詩」には「標題」が必ず付きます。どの作品も有名ですが、「標題」によってどんな事を表現している作品なのかが良く分かると思います。

交響詩と交響曲は何が違うのですか?
簡単に言えば「標題音楽」であることなのだ。詳しくはこれから説明するよ。

交響詩とは

交響詩とはロマン派に登場した標題を持つ音楽で、管弦楽によって演奏されます。交響曲や協奏曲にも標題を持つ作品があるのではないかと思う読者の方もおられるでしょう。

その通りですね。ベートーヴェン『交響曲第6番』には「田園」という標題があります。しかし、交響詩ではありません。これは形が違っているためです。

交響詩の多くは楽章を持たない音楽で全体が一気に演奏されます。一方交響曲は楽章に分かれ、形式がある程度決められているものです。しかし、中には交響詩でも複数の小品からなるものが存在します。この小品1曲1曲に標題が付くのが特徴です。

交響詩は音楽外の詩的あるいは絵画的な内容を表現する管弦楽曲のジャンルを指します。これを最初に交響詩と名付けたのが有名な作曲家のリストでした。

「交響詩」まとめ

(1)音楽外の詩的あるいは絵画的な内容を表現する管弦楽曲のジャンル
(2)標題音楽
(3)概ね単一楽章
(4)複数の組曲になっているものはそれぞれに「標題」を持つ
(5)リストにより名付けられた

文学や絵画のようなものを音楽にしたのが交響詩なのですね。「標題」を音楽で表現したんだ。
交響曲とは形式が違っている点も特徴のひとつだ。印象派の音楽を思い出して貰えばよく分かる事だろう。

交響詩有名曲を聴く

交響詩は多くの作曲家が作品を残したジャンルで、ロマン派が生み出した独特の音楽です。その数もかなり多く全てを聴くとなると時間が足りません。

その中で聴いておかねばならない有名な作品だけに絞りました。これらを聴く事によって、交響詩を聴くきっかけになって欲しいと思っています。順番は作曲者のABC順です。

ドビュッシー『牧神の午後への前奏曲』(1894)


(カラヤン/BPO、1978)

ドビュッシー初期の作品で、彼の出世作とされています。この作品は詩人ステファヌ・マラルメの作品『半獣神の午後』に感銘を受けて作曲されました。

この詩は「夏の昼下がり、好色な牧神が昼寝のまどろみの中で官能的な夢想に耽る」といった内容ですが、そのものを表現したのではなく、その詩を読んで感じた心象や雰囲気などを音楽で表現したものです。

ドビュッシー『海』(1905)


(カラヤン/BPO、1978)

ドビュッシーの傑作であるばかりでなく、印象主義音楽を代表する作品のひとつでもあります。第1曲「海の夜明けから真昼まで」は早朝、まだ暗い中でうごめく波。そして日が昇るにつれて見えてくる雄大な海を表現している音楽です。

第2曲「波の戯れ」は寄せては返し、はかなく消えていくさざ波のような音楽です。第3曲「風と海との対話」は風が引き起こす力強い波の様子をオーケストラが大胆に描き出します。とてもダイナミックです。

デュカス『魔法使いの弟子』(1897)


(レヴァイン、BPO)

デュカスは生涯13曲しか作品を残していませんが、その中の1曲です。この物語のストーリーは魔法使いの弟子がひとりになった事を良い事に掃除の魔法を掛けますが、まだ半人前で上手く魔法が出来ずに箒から水が溢れ出します。

止める呪文を知らないために水はますます増えてどうしようもなくなったところに魔法使いが帰って来て全てを元に戻し、弟子を叱るといった内容です。聴いていると本当にそんな感じがしてきます。まさに交響詩の代表作です。

リスト『レ・プレリュード』(1854)


(バレンボイム/BPO、1998)

曲の冒頭に標題として「われわれの人生とは、その厳粛な第1音が死によって奏でられる未知の歌への前奏曲にほかならないのではないか?」と掲げられている交響詩です。「人生は死への前奏曲」とは上手い事を言いますね、リストは。

第1部「人生のはじまり─愛」、第2部「嵐」、第3部「田園」、第4部「戦い」からなり、途切れる事無く一気に演奏されます。リストの交響詩13曲の中で最も有名な作品です。

レスピーギ『ローマの松』(1924)


(ギルバード/NYP)

『ローマの噴水』『ローマの松』『ローマの祭り』の3曲を指してローマ3部作と言います。どの作品も聴きやすく親しみ易い楽曲ですが、ここでは『ローマの松』を挙げておきます。

「第1部ボルゲーゼ荘の松」「第2部カタコンバ付近の松」「第3部ジャニコロの松」「第4部アッピア街道の松」の4部に分かれていますが、途切れる事無く一気に演奏されます。オーケストレーションの華やかさが特徴の作品です。終曲の盛り上がりは圧巻!

シベリウス『フィンランディア』(1899)


(オラモ/BBC響)

映画『ダイハード2』のラストを飾った名曲です。フィンランドの第2の国歌として国民に愛されています。「苦難のモチーフ」「闘争への呼びかけ」「勝利に向かうモチーフ」「フィンランディア讃歌」が入り乱れて、フィンランドの民族意識を高揚させた音楽です。

ロシア帝国と戦ったフィンランド人の愛国心を表現しています。その音楽はフィンランドに留まらず、世界中の人の心を打つ作品になりました。「フィンランディア讃歌」の美しさと管弦楽の盛り上がりが印象的です。

スメタナ『わが祖国』~「モルダウ」(1879)


(カラヤン/BPO)

スメタナがチェコの歴史、伝説、風景を描写した6つの交響詩からなる連作交響詩です。中でも第2曲目の『モルダウ』は知名度があって単独で演奏される機会も多い人気のある作品です。

モルダウ川の流れの様子や川のほとりで営まれている、人の様々な様子が描写されています。冒頭の川の流れの表現からして聴く者の心を掴んで話しません。絶えず川の流れの様子が表現されており、大きな長い川の織りなす魅力を伝えてくれます。

R・シュトラウス『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯』(1895)


(マゼール/バイエルン放送響、1993)

R・シュトラウスも交響詩を多く残したひとりです。その作品の多くは名作と呼べるものが多く、この作曲家の才能を表しています。この作品も名作と言えるほど描写が面白いです。『ティル』は14世紀の北ドイツに伝わる悪戯者の事で、その生涯を交響詩に描きました。

多くの悪戯をしてきたティルはついに捕まってしまい、裁判で死刑を言い渡されます。絞首台での最後までが描写されている作品です。最初は「昔々あるところに」という具合に始まり、最後はティルは死んでもその悪戯魂は永遠に残ると言っているようにティルの動機で終わります。

R・シュトラウス『ツァラトゥストラはこう語った』(1896)


(カラヤン/BPO、1984)

ニーチェの同名の著作からインスピレーションを得て作曲されました。全9曲からなる交響詩ですが、全て切れ目なしに演奏されます。何といっても冒頭の部分はキューブリックの映画『2001年宇宙の旅』で効果的に使われたので大変有名になりました。

交響詩ですから、ニーチェの思想そのものを描写した訳ではなく、同著の中から数編を選び、自分が受けた印象を自由に音符にしたと言えるでしょう。初演時は賛否両論があったと言われます。当時にしてはあまりにも先端を行き過ぎた音楽でした。

R・シュトラウス『英雄の生涯』(1898)


(カラヤン/BPO、1985)

『英雄の生涯』はR・シュトラウスの最後の交響詩です。この後彼はオペラ作曲に本腰を入れます。この作品はフルオーケストラで最低105人の演奏者が必要な大規模なものとなっています。オーケストラにとってもこの作品は難曲であり、実力が試される作品です。

英雄の誕生から死まで6部分に分かれていますが、切れ目なく演奏されます。私は大学生の頃はなんてつまらない曲だと思っていましたが、ある年齢以降この曲の言わんとしている事が分かり、大好きな作品になりました。若者にはR・シュトラウスは難しいのかもしれません。

10曲とも有名な交響詩です。どれもが素晴らしい音楽!
R・シュトラウスは難解な作品で、好き嫌いが分かれるかもしれないな。まあ、じっくり聴いてほしい。

まとめ

有名な交響詩を10作選んでみました。紹介したい交響詩はまだまだありますが、まずは入門編として入りやすいものを選びました。R・シュトラウスの『ツァラトゥストラはこう語った』『英雄の生涯』は入門編としては難しいかもしれませんが、チャレンジするのもいいものです。 

聴き進めて行くと交響詩は楽しめる、親しみ易いジャンルだと気付いて貰えるでしょう。そこからどんどんとクラシックの世界を広げていって欲しいと思います。

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