
ショパン・コンクールと言えば、ピアニスト誰もが優勝を夢見る偉大なるコンクールです。第2次大戦で開催年がずれた時期もありましたが、1927年から基本的に5年置きに行われており、2015年まで17回に渡って開催されて来た伝統と権威があるコンクールです。
過去17回の優勝者の顔ぶれを見てみると、錚々たるメンバーが勢ぞろいです。ダヴィドヴィチ、ポリーニ、アルゲリッチ、ツィメルマンなど「巨匠」たちが並び立っています。まさにピアノ界随一のコンクールという名に相応しいメンバーたちです。
17回の歴史の中で優勝者を1番出している国はどこか興味があります。ショパン・コンクールが始まってからの、ピアノ界で活躍している方を思い浮かべてみると、ピアノ好きな方は大体想像が付くと思います。実際はどうなのか見て行きたいと思います。
第1位 ソビエト連邦及びロシア
第 1回(1927年):レフ・オボーリン
第 2回(1932年):アレクサンドル・ウニンスキー
第 3回(1937年):ヤコフ・ザーク
第 4回(1949年):ベラ・ダヴィドヴィチ
第11回(1985年):スタニスラフ・ブーニン
第16回(2010年):ユリアンナ・アヴデーエワ
ソ連5人にロシア1人も含めて合計6人と第1位です。第4回まで連続でソ連が優勝と、まるでソ連のためにあるようなコンクールでした。しかし、それ以降は意外と苦戦しています。第5回から第10回までの優勝者の顔ぶれを見ると、致し方無いかなとも思います。
ポリーニ、アルゲリッチ、オールソン、ツィメルマンにはどこの国のピアニストも勝てないでしょう。ようやく、第11回でブーニンが優勝して以降は、ソ連の崩壊などもあり、第16回のロシア人、アヴデーエワまで優勝がありません。国の教育システムにも変化が出てきたのでしょう。
第2位 ポーランド
第 4回(1949年):ハリーナ・チェルニー=ステファンスカ
第 5回(1955年):アダム・ハラシェヴィチ
第 9回(1975年):クリスティアン・ツィメルマン
第15回(2005年):ラファウ・ブレハッチ
合計4人で第2位です。ショパン・コンクールは自国開催ですので、健闘していると言って良いでしょう。この中では何といっても、ツィメルマンの存在が光っています。今やピアノ界を支える「巨匠」の一人となりました。プレハッチにも今後期待したいところです。
第3位 アメリカ
第 8回(1970年):ギャリック・オールソン
アメリカも苦戦していて、オールソン一人です。才能豊かなピアニストを数々輩出している割には、意外に感じます。しかし、入賞者は7人となっていて、この結果は本選当日のコンテスタントのコンディションなどによるものだったとも考えられます。
第4位 中国
第3位はユンディ・リを優勝者として出した中国です。近年はアジア勢が力を付けてきており、中でも中国、韓国、日本の出場者は毎回多くなっています。中国は入賞者も4人出しており、今後の中国勢の活躍は更に拡大していくものと思われます。
第5位 イタリア
現代の「巨匠」ポリーニのみです。意外とイタリア人は苦戦を強いられています。過去の入賞者も2人となっており、ショパン・コンクールでは、イタリア人の活躍は目立ちません。イタリア人ピアニストにも才能の豊かな人物がいるのに残念な結果です。
第5位 韓国
ついに韓国から優勝者が出ました。近年、韓国では国を挙げての音楽教育に取り組んでおり、その結果が見事に花を咲かせました。入賞者数も2人輩出しており、アジアの今後の動静は、韓国と中国に注視という感じです。日本は一歩引き離された感があります。
第7位 アルゼンチン
鍵盤の女王、アルゲリッチだけです。過去の入賞者も1人だけです。しかし、この国からはダニエル・バレンボイムやブルーノ・レオナルド・ゲルバーのような天才ピアニストを輩出していますから、音楽的土壌はしっかりしています。今後も目が離せない国です。
第8位 ベトナム
ダン・タイ・ソンが優勝した時はアジア人初、しかも、ベトナムという事で、全世界が驚きました。その後、ベトナムからは入賞者も1人も出していません。その後のダン・タイ・ソンも偉大なるピアニストの仲間入りも出来ないでいます。コンクールの難しいところです。
ショパン・コンクールに関する情報
ランキングの元となっているデータです。ショパン・コンクールの現在までの優勝者と入賞者の国別の合計数です。入賞者数だけの順位も、見ていくと興味が沸く結果となっています。
第1回大会からの優勝者一覧
第 1回(1927年):レフ・オボーリン(ソ連)
第 2回(1932年):アレクサンドル・ウニンスキー(ソ連)
第 3回(1937年):ヤコフ・ザーク(ソ連)
第 4回(1949年):ハリーナ・チェルニー=ステファンスカ(ポーランド)、ベラ・ダヴィドヴィチ(ソ連)
第 5回(1955年):アダム・ハラシェヴィチ(ポーランド)
第 6回(1960年):マウリツィオ・ポリーニ(イタリア)
第 7回(1965年):マルタ・アルゲリッチ(アルゼンチン)
第 8回(1970年):ギャリック・オールソン(アメリカ)
第 9回(1975年):クリスティアン・ツィメルマン(ポーランド)
第10回(1980年):ダン・タイ・ソン(ベトナム)
第11回(1985年):スタニスラフ・ブーニン(ソ連)
第12回(1990年):該当者なし
第13回(1995年):該当者なし
第14回(2000年):ユンディ・リ(中国)
第15回(2005年):ラファウ・ブレハッチ(ポーランド)
第16回(2010年):ユリアンナ・アヴデーエワ(ロシア)
第17回(2015年):チョ・ソンジン(韓国)
第1回からの入賞者合計(一位を除く)
第1位:ソ連:26人
第2位:ポーランド:25人
第3位:日本:11人
第4位:フランス:10人
第5位:ロシア:8人
第6位:アメリカ:7人
第7位:ハンガリー:5人
第8位:中国:4人
第9位:韓国:2人
第9位:イタリア:2人
第9位:オーストリア:2人
第9位:カナダ:2人
第9位:ドイツ:2人
第9位:ブラジル:2人
第15位:アルゼンチン:1人
第15位:イギリス:1人
第15位:イラン:1人
第15位:ブルガリア:1人
第15位:ベルギー:1人
まとめ
ショパン・コンクールの国別優勝者を見てきました。優勝者そして入賞者を含めて他を大きく引き離しているソ連(ロシアも含める)は、国家戦略として、コンクール優勝ピアニストを育成するメソッドを確立していましたから当然の結果かと思います。
今後の注目は韓国を中心とした中国、日本というアジア勢です。特に韓国、中国の若手ピアニストには目が離せません。おそらく、これからもショパン・コンクールの優勝者を出すはずです。日本も負けずに付いて行きたいところです。