オーケストラの国による音楽性の違いとは

世界各国にオーケストラは存在していますが、面白い事にオーケストラの性格にもお国柄が出ていて、指揮者やソリスト泣かせの国もあるとか。コンサートでも、整列して登場するオーケストラもあるし、開演前から自由に練習しているオーケストラもあります。

本番の時でも、木管楽器奏者のソロが上手くいくと仲間内で喜んでいたり、面白かったり、ほんわかするような出来事に遭遇する事もあります。

指揮者がよく話題に挙げますが、どこそこの国のオーケストラは練習に集中していないとか、全く指示を守ってくれないとか言うのを聞いていると、ああ、その国だったらわかるなぁと思います。今回はそんなオーケストラを通してみた各国の国民性を見ていきたいと思います。

フランスのオーケストラはおしゃべり好きと聞いた事があります。
アメリカとドイツもまた違うイメージがあるな。国民性の違いはオーケストラにも表れている事だろう。

日本

最初は我が日本から見ていきましょう。日本のオーケストラは国民性が良く反映されていて、真面目なイメージがあります。

日本の国民性

日本人は勤勉で礼儀正しく、親切であるといわれています。これは多くの外国人の目を通してもそう思われていますから合っている事なのでしょう。

反面、できるだけ周りから目立たないようにしようと思っていたり、細かく几帳面な点や本音と建て前を使い分ける社会です。

そして企業は序列社会ともなっています。社会全体が変わってきていますが、長年築き上げてきた慣習はなかなか捨て去る事は出来ないものです。

日本のオーケストラ

日本は序列社会ですが、オーケストラにもそれが当てはまります。トップの指示には己の意思を隠してでも従うのが日本人です。来日するどの指揮者もやりやすいというのはそのためです。

どのオーケストラにも明確なリーダーシップの序列があり、メンバーは組織内の序列に常に注意を払いながら行動します。指揮者の話も注意深く聞く姿勢を崩しません。個性を感じない、指揮者に従順なオーケストラが多いのはそのためなのですね。

また、日本人の国民性として勤勉さがあります。常に一生懸命ですし、ミスなくこなそうと努力を惜しみません。この辺も指揮者がやりやすいというところに繋がるのかと思います。

日本のオーケストラは、あまり表情がありません。オーケストラの団員は世の中の悩みを一身に背負っているかのような厳しい表情で演奏しています。曲が終わってから立ち上がって指揮者と客席に向かったときにも無表情な方が多いです。

「今日の演奏は凄かっただろう」と得意満面に笑顔を浮かべたり、グッドサインを聴衆に見せてくれても良いのになと思います。そう出来ないのも国民性ならばこそでしょうか。

日本のオーケストラは真面目過ぎる事が欠点になってしまっているのですね。
真面目にやる事は大事だが、同時に楽しんで音楽を演奏して欲しいね。

ドイツ

2番目はドイツです。日本と共通する部分も多くあると言われていますが、本当はどうなのでしょうか。ドイツのオーケストラは厳格なイメージがあります。

ドイツの国民性

ドイツは日本と似て勤勉で真面目で几帳面が有名な国民性です。ドイツ語の響きがそれを象徴しているように思えます。ルールに厳しいドイツ人は、仕事にせよ家事にせよ、しっかりと計画を立ててその通りにこなすのが得意といわれています。哲学的でもあるといわれるようです。

几帳面な面はドイツ人の整理整頓の潔癖さから出ているのだと思います。そしてドイツ人は倹約家が多いようです。ちょっと悪い言葉を使うとケチとなりますが、お金も物も有限な資源という考えが浸透しています。

ドイツのオーケストラ

ドイツ人は基本的に真面目な人の多い国です。日本人と似ている部分があります。ドイツのオーケストラはホールに出てくる時も他人と話しながら出てきません。生真面目に胸を張って黙々と出てきます。

これはオーストリアにも言える事かもしれません。ドイツ語圏として理解してもらった方が良いのかと思います。

ドイツのオーケストラは指揮者の発言が納得できない時でもとりあえず言う事を聞いて、不本意ながらもその通り演奏します。ドイツ人は勤勉ですから上の人(指揮者)の言う事にNOは言わないのです。序列社会という事も関係しているでしょう。

ドイツの作曲家が重々しい楽曲を作ってきたのも完全に国民性ですね。ベートーヴェンがその代表です。オーケストラの話に戻ると、ドイツのオーケストラの響きはそれらの音楽に合わせるように、重々しい響きのオーケストラが多くあります。

ドイツも基本的に真面目です。ベートーヴェンが代表と言われると妙に納得してしまいます。
ドイツには厳格なオーケストラが多くあり、昔からの伝統を重んじているところが多いのだ。

フランス

第3番目はフランスです。オシャレな国、プライドが高い、芸術を愛する国のイメージがありますが、実際はどうでしょうか。

フランスの国民性

フランス人は人と同じような格好をすることを嫌い、自分の個性を引き出すことに長けています。オシャレなイメージはそこからくるのです。自国愛が非常に強いのも特徴です。個人主義で、自己主張が強い事も良く知られています。

ヴァカンス好きで、気分的で、時間にはルーズ、ユーモア好き、そして何よりもフランス人は絶対に謝らないといわれます。すぐに謝る日本人とは違って、自分に非がある出来事でも言い訳で済ますところがフランス人らしさのようです。

フランスのオーケストラ

ドイツと一部接しているフランスですが、同じヨーロッパと言っても全く違っています。フランス人は権力全般に対し複雑な感情を抱く国民性です。

指揮者に対する奏者の気持ちも同様で、指揮者を頼りにする半面、指揮者の言葉には本能的に反発します。この辺がフランス人の変わっているところです。変わっているというか偏屈な所と言ってもいいかもしれません。

だから、なかなか言うことを聞きません。指揮者は自分は自発的にそうしているんだと相手に思わせるような言い回しで指示を出すそうです。全く厄介な国民性といえます。

練習の時でもおしゃべりが多いのは有名です。注意すると一瞬静かになりますが、また近くの者同士が話を始めます。また、指揮者に対する悪戯をするのもフランスのオーケストラが最も多いそうです。例えば1オクターブ下で演奏するなどをして指揮者を試す事があります。

フランスのオーケストラは、上手くはまれば物凄く綺麗な音色を奏でます。うっとり魅了される音色で、フランスのオーケストラにしか出せないものです。

フランスのオーケストラはやっぱり個性的ですね。指揮者が大変そう!
悪戯好きとしても有名だな。わざと69小節目で間違えたりして、指揮者を困らせて喜んでいるのだ。

アメリカ

最後はアメリカです。自由で、個人主義で、開放的なイメージの強い国ですが、実際はどうなのでしょうか。

アメリカの国民性

外向的で積極的な人が多く、個性を大事にしています。個人の自由や意見、権利などについてはとても大切にしています。自分の意見を言う事に遠慮しませんし、知らない人に話しかける時でも、とても「フレンドリー」な人が多いです。

コミュニケーションはとてもダイレクトで、人に気を遣ったりと日本人がするような事は全くないですし、年齢による上下関係はなく、愛国心がとても強いのも特徴となっています。

アメリカのオーケストラ

アメリカ人はとても自由です。コンサートに行ってホールに入ると彼らはステージ上で個人的に練習をしています。客がいようが全く関係なし。周りの奏者とジョークを交わしながら練習しています。聴衆側から分かる一番の違いはその部分ですね。

アメリカ人は現実主義者が多いために指揮者の指示はシンプルかつ明確に出せば誰もが納得してくれます。

アメリカのオーケストラは労働組合が非常に強いので、リハーサル時間が終わるとすぐに撤収です。後5分だけ伸ばしてくれと言っても受け入れて貰えません。その辺がビジネスライク的ではっきりしています。

かつてのアメリカの常任指揮者たちは独裁者が多く、トスカニーニ、メンゲルベルク、セルたちのリハーサルは容赦なく楽員を罵倒し、反論を許しませんでした。リハーサル時間も指揮者任せ。そんな歴史があったために労働組合が作られたのです。

こんな歴史的背景があるため、アメリカのオーケストラは基本的に指揮者は敵だぐらいの気持ちで接しているようです。

アメリカのオーケストラはパワフルで音量が大きいのが魅力です。金管や打楽器のフォルテはこれでもかというぐらいに演奏しています。

アメリカのオーケストラはとにかくパワフルが売り!
金管楽器の音量が大きいのが特徴だね。いかにもアメリカ人が好みそうだ。

まとめ

4ヶ国のオーケストラのお国柄を見てきましたが、やはり国民性ってあるのですね。特にフランスのオーケストラは癖の塊のようなものです。一括りにフランスのとか言っていますが、単にステレオタイプと片付けられない部分があります。

国民性が表れて当然と思っていますが、今はどのオーケストラもインターナショナルになってきて、国民性も薄れてくるのではないかと思います。これが良い事なのかどうか難しいところです。

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