ブザンソン指揮者コンクールは隔年ごとに開催されていますが、日本人の優勝者が2019年優勝の沖澤のどかを入れて丁度10人に到達しました。そこでこれを機に日本人優勝者の活躍度合いをランキング形式で見ていきたいと思います。
指揮者コンクールとしては老舗のコンクールで、若手指揮者の登竜門として最も有名なコンクールです。ズデニェク・コシュラー、ミシェル・プラッソン、ズデニェク・マーカル、ヘスス・ロペス=コボスらと言った世界的指揮者を輩出してきました。
ブザンソン指揮者コンクールと聞くとクラシック・ファンは小澤征爾の名前が自然に浮かんできますが、その他の日本人優勝者の事を皆さんご存じですか?知らない指揮者が多いと思います。この際名前を覚えて貰うためにも、ぜひ最後まで読んで頂きたいです。
ランキングの判定基準
- オーケストラの音楽監督等のポストにある、または経験がある
- ポスト経験がある場合、格の高いオーケストラを上位とする
第10位 沖澤のどか(おきさわ のどか)
出身地:青森県
出身大学:東京藝術大学音楽学部指揮科、ハンス・アイスラー音楽大学
2019年、第56回ブザンソン指揮者コンクール優勝。同時に聴衆賞及びオーケストラ賞を受賞。日本人としては18年ぶりの優勝でした。彼女は2018年10月に開催された第18回東京国際音楽コンクールでも優勝及び齋藤秀雄賞受賞経験があります。
彼女は才能豊かな指揮者であり、女性というハンデをものともせず、ここまで実力で伸びてきました。その指揮ぶりは、端正であり軸がぶれず、オーケストラにとって見易い指揮をします。伸びしろが多く、将来的にとても期待できる指揮者であると思います。
第9位 松尾洋子(まつお ようこ)
出身地:愛知県名古屋市
出身大学:お茶の水女子大学教育学部音楽科、東京藝術大学指揮科
1982年、第32回ブザンソン指揮者コンクールで女性として史上初、小澤征爾についで日本人二人目の優勝という快挙を達成し一躍注目を集めました。1983年『若い芽のコンサート』でNHK交響楽団を指揮。私はその時会場で聴いていました。素晴らしい演奏だった事を覚えています。
1999年から2004年までセントラル愛知交響楽団の常任指揮者。2004年から同オーケストラの特別客演指揮者を務めています。現在と違って、女性指揮者という存在がまだ色眼鏡で見られていた時代だった事もあり、とても苦労されたと思います。
第8位 曽我大介(そが だいすけ)
出身地:大阪府
出身大学:桐朋学園大学、ルーマニア国立音大
1993年、第43回ブザンソン指揮者コンクール優勝。1998年、第4回キリル・コンドラシン国際指揮者コンクール優勝。正直言って、ブザンソン指揮者コンクール優勝後の経歴があまりぱっとしていません。このコンクールに優勝したのですから、実力者のはずです。
2001年から2003年、大阪シンフォニカー交響楽団音楽監督。2006年4月から2009年3月まで東京ニューシティ管弦楽団首席指揮者。2009年4月から同オーケストラ首席客演指揮者。指揮者は50歳からと言われていますので、今後の活躍に期待したいところです。
第7位 垣内悠希(かきうち ゆうき)
出身地:神奈川県川崎市
出身大学:東京芸術大学音楽学部楽理科
2011年、第52回ブザンソン指揮者コンクール優勝。2012年4月東京フィルハーモニー交響楽団定期演奏会を指揮し東京デビュー。「鋭敏な色彩感覚の反映された名演」と評されました。日本の著名オーケストラを数多く指揮。好評を得ています。
2001年からローム株式会社の株式会社奨学金制度を利用して、ウィーン音楽大学に留学し、レオポルト・ハーガーに師事。2013年、小澤征爾の推挙を受けて小澤征爾音楽塾に出演。2016年から2019年まで札幌交響楽団指揮者を務めました。
第6位 阪哲朗(ばん てつろう)
出身地:京都府
出身大学:京都市立芸術大学
1995年、第44回ブザンソン指揮者コンクール優勝。ビール市立歌劇場専属指揮者(1992~97年)、ブランデンブルグ歌劇場専属第一指揮者(1997~98年)、ベルリン・コーミッシェ・オーパー専属指揮者(1998~02年)、アイゼナハ歌劇場音楽総監督(2005~09年)歴任。
2008/09年の年末年始に、ウィーン・フォルクスオーパーで、『こうもり』を指揮し、大きな話題となりました。日本人が起用される事は才能が認められた証です。2007年から2009年、山形交響楽団首席客演指揮者。2019年4月から同楽団の常任指揮者に就任。
第5位 下野竜也(しもの たつや)
出身地:鹿児島県鹿児島市
出身大学:鹿児島大学教育学部音楽科
2000年、第12回東京国際音楽コンクール優勝。2001年、第47回ブザンソン指揮者コンクール優勝。順調に指揮者としての道を一つ一つ昇って行っています。才能豊かな指揮者で、将来が楽しみでもあります。N響定期公演やサイトウ・キネン・オーケストラなどに招待されています。
2006年から2013まで読売日本交響楽団の正指揮者。その後、同オーケストラの首席客演指揮者の任にあります。現在は広島交響楽団音楽総監督、京都市交響楽団常任客演指揮者を務める傍ら、世界各地のオーケストラに客演しています。テレビ出演も多く、馴染みのある指揮者です。
第4位 沼尻竜典(ぬまじり りゅうすけ)
出身地:東京都
出身大学:桐朋学園大学
1990年、第40回ブザンソン指揮者コンクール優勝。優勝後は世界各地の著名オーケストラに客演。オペラ指揮者としても有名で、ケルン歌劇場、バイエルン州立歌劇場、ベルリン・コーミッシェ・オーパー、バーゼル歌劇場、シドニー歌劇場等へ客演。
2013年から2017年までリューベック歌劇場音楽総監督を務めました。その後、同歌劇場の首席客演指揮者となっています。東京フィルハーモニー交響楽団正指揮者、名古屋フィルハーモニー交響楽団常任指揮者、日本フィルハーモニー交響楽団正指揮者なども歴任。
第3位 山田和樹(やまだ かずき)
出身地:神奈川県秦野市
出身大学:東京芸術大学音楽学部指揮科
2016年までに、パリ管弦楽団、フランス国立管弦楽団、トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団など欧米のオーケストラに客演。日本ではNHK交響楽団をはじめとする主要オーケストラを指揮してきました。2009年、第51回ブザンソン指揮者コンクール優勝。
2012年からスイス・ロマンド管弦楽団首席客演指揮者、日本フィルハーモニー交響楽団の正指揮者、仙台フィルハーモニー管弦楽団のミュージックパートナーに就任。2016年からモンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団音楽監督兼芸術監督。2018年から読売日本交響楽団首席客演指揮者。レパートリーの広い指揮者としても知られています。
第2位 佐渡裕(さど ゆたか)
出身地:京都府京都市
出身大学:京都市立芸術大学音楽学部
タングルウッド音楽祭で小澤征爾、レナード・バーンスタインに師事。その後、バーンスタインの弟子になり、1989年、第39回ブザンソン指揮者コンクールで優勝し指揮者としてプロデビュー。その後、数多くのオーケストラ、吹奏楽団を指揮。
2011年にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団に客演し、定期公演を指揮、喝采を浴びました。2015年9月よりウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団の首席指揮者(音楽監督)に就任。小澤征爾のような世界を股に掛ける指揮者となる事を期待しています。
第1位 小澤征爾(おざわ せいじ)
出身地:満州国奉天市
出身大学:桐朋学園短期大学
1959年、第9回ブザンソン指揮者コンクールで日本人として初めて優勝。ボストン交響楽団音楽監督やウィーン国立歌劇場音楽監督として、世界的に有名な指揮者。クラシック音楽界でここまで有名になった日本人は彼が最初の人物です。近年は闘病生活を送っており心配です。
トロント交響楽団から始まり、サンフランシスコ交響楽団、ボストン交響楽団、ウィーン国立歌劇場と出世コースを歩んできました。それ以外にも、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を始めとする、世界各国の超一流のオーケストラを指揮してきました。
オペラにも貪欲に取り組み、ウィーン国立歌劇場、ミラノ・スカラ座、パリ・オペラ座などに度々客演し、ついにウィーン国立歌劇場の音楽監督まで昇り詰めました。小澤征爾は、世界に誇る大指揮者となった訳です。日本人としてこれほどの嬉しさはありません。
まとめ
ブザンソン指揮者コンクール日本人優勝者10人を見てきました。順調に指揮者としてのキャリアを積んでいる人物もいれば、もうちょっと頑張って欲しいと思う人物もいました。小澤征爾以外は指揮者としてはまだまだこれからの人たちですので、より一層の奮起を期待しています。